1-1 プロローグ
「う……うん?」
あれ?なんだここ?
周りは暗いのに、ここだけ明るい空間は?
「目を覚ましましたか、比企谷八幡さん」
俺は、声のした方を向くと…そこには天使、いや!女神がいた!
「あの大丈夫ですか?」
「ひゃ、ひゃい!」
おいおい、はいの一言でも噛じまったよ。
いや、でもこんな美少女にいきなり声掛けられたら普通噛むでしょ?
だから、俺が噛むのは世界の道理だ!
とりあえず、一呼吸入れて…
「あ、あの、此処はどこですか?あと、あなたは?」
「私の名はエリス。女神エリスです。そして、ここは死後の世界です。」
はぁ?女神?死後の世界?何を言って…
その瞬間、記憶がフラッシュバックを起こした。
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バレンタインイベントが無事に終わってから数日が経っていた。
俺はいつものように、授業を終え部活も終えて帰宅していた。
てか、この季節はやっぱし冷える。こういう時は、マイフェイバリットドリンクのマッ缶ことマックスコーヒーを飲みながら帰るのが一番。
「さみぃ。早く買って帰ろ」
マッ缶が売ってる自販機に足を運んでいたら、背中に急にドスっと衝撃が走った。俺は衝撃のあった場所を触ると、触れた手が真っ赤に染まっていた。
「うっ…くそっ、なんだよ、これ!」
怒りと痛みが混じりながら、後ろにいた人物を確認した。そこには、文化祭の時に依頼をしてきた相模南が立っていた。
「……あんたが悪いんだからね……あんたが……」
「なに言ってんだよ」
「あんたが、なんで幸せそうに日々を過ごしてて、ウチが不幸になるの!なんで!なんで!なんでよ!これも全部あんたのせいなんだから!」
「訳わかんねぇよ!うぐっ…」
痛みを抑えるかのように、刺された箇所を抑え相模から逃げるように歩き出した。
「ねぇ!なんで!逃げるのよ!答えてよ!」
それから、俺は何分、いや何十分間相模から逃げた。時説、痛みから意識が飛びそうになったが歯を食いしばって逃げた。
俺が食いしばって、痛みから泣きそうな時、相模が壊れた人形のように笑いながらゆっくりと追いかけてきた。
なんとか、俺は隠れる場所を探して路地裏へと行った。廃材などが置かれた物陰に隠れ、意識が朦朧としていたが壁に持たれ掛けた。
「うっ……ハァハァ…うぐっ!」
内心では、分かっていた。俺は、もう助からないと。だから、俺は自分が助かる道ではなく相模が俺以外の奴に手を出さないようにするしかないと。
ポケットからスマホを取り出し、雪ノ下陽乃に電話を掛けた。
「はろはろ~、比企谷くんから連絡なんて珍しいねぇ~。なに?お姉さんとデートしたいの?」
電話口からは、いつものテンションの雪ノ下さんの声が聞こえた。
「…伝えたい事があります」
「うん?いつもと雰囲気違う?なに、やっぱしお姉さんに告は「いいから!今は黙って、聞いて下さい。」…」
「小町と雪ノ下と由比ヶ浜……それに俺に関わってきた奴らを守ってやって下さい。俺は…もう…「やっと、見つけた……早くさっきの質問に答えてよ!」っ。」
相模が遠くからゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。俺はもう立つ力すらなかった。だから最後の抵抗としてスマホを相模にバレないように、廃材の隙間に隠した。
「相模、お前が、あの時真面目に仕事とかしていれば、なにもなかった。それに、お前がちょっとハブられ始めたからって、それを不幸とか言うんじゃねぇよ!全部お前の自業自得だ!」
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
相模は、俺の腹部に何度も何度もナイフを刺してきたが、もう叫ぶ気力も残っていなかった。
俺は刺される度に、この1年間の思い出が1つ1つ蘇ってきた。
(あー、本当にいろいろあったな。本当に…)
そこで、俺の意識が無くなった。
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