異世界の片隅で君と   作:琥珀色

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遅れましたーすみせん
できれば感想などをお聞かせ願います


世界巡り―鬼蛇千― 上

「······きて·········お···て···」

 「んん···」

 「おきて!」

 「なに!?」

 大声でゆすられて俺は飛び起きた

 「あ、あれ?ここは」

 「楼郷の宿屋、優樹くんたらもうぼけちゃったのー?」

 ···は?いやいやいや、だってお前ら犯されてたじゃん。

 「え、いや、お前らあいつらに捕まって服剥がされて無理やり犯されてたじゃないか」

 「···何気持ち悪いこと言ってるのかな?」

 「私達はそんな人知らないしそんな目にもあっていない」

 あれぇー?

···夢?夢なの?まさかの夢オチなの?いや別に犯されるのが良かったとかなんて思ってないしそんな事実なかったならほんと安心なんだけどさ。

 「そ、そうなの···うーん。正夢とかになったらホント堪ったもんじゃないよな···。」

 「何をゴニョゴニョ言ってるのよ」

 「うん、今すぐここ出よう、鬼蛇千行こう、ね?ほらいこう」

 手早く荷を纏めて支度する。

 そして会計を済ませて鬼蛇千へ向かう。

 「久々に元の姿にでも戻ってみるか」

 「元の姿?」

 「楓にはまだ言ってなかったな」

 「?」

 「俺は、元人間なんだ」

 「!」

 ピンと耳を立て手驚いてる楓すごく可愛いんだけど何この可愛い生き物。

 「この剣と鎌を抜刀して戦うにはこの姿じゃなきゃならねーからな、今は納刀してるけど、便利すぎてこっちのがいいなってさ。そんでこれが」

 妖体化を解き、くるっと1回りしながら続ける。

 「本当の僕だよ。」

 「僕?」

 「半妖になってると口調が変わるんだよ」

 「そうなの」

 「美火~、何むくれてんのさ」

 「べーつにー」 

 「···ふふっ」

 「どうしたの?楓」

 「ううん、なんか私、こっちの優樹もいいなって」

 「···??」

 「優樹くんたらにっぶーい」

 僕の数歩先をくるくると回りながらはしゃぐ美火。

 それに続くように僕の手をひいて走る楓。

 ···これが、モテ期ってやつなのかなぁ。

 「残金二十六万、かぁ。あんまり使いたくないなー」

 「鬼蛇千ってね、害獣駆除とか除霊依頼だとかを取り扱ってる施設があるんだってー。そこで少しお小遣い稼ぎしてみる?」

 「そんなのあるんだ」

 美火って意外と物知りなんだなー

 ···僕が知らなすぎるのか

 「鬼蛇千っていい感じの雑木林ってないの?」

 「いい感じって?」

 「多分あると思う。旅館街からちょっと歩いたところに森もあるよ」

 「ふむふむ···じゃあこいつが役に立ちそうだね」

 「?」

 僕はおもむろにバッグを漁り、派手に取り出して見せた。

 「野宿セットさ!」

 「「えっ」」

 秘密基地感あっていいかなって思ってたけどなんか、すごい引かれてしまった。

 だ、大丈夫だって居住性もいいんだしさ

 「ね?ね?いいでしょ?」

 「···しょうがないなぁ、あんまり野宿はしたくないよ?優樹くん」 

 「わ、、わかってるって」

 二人はむくれながらも承諾してくれた。

 そしてやっぱり半妖化して走って鬼蛇千へと向かった。

 

◇----------------------------------------------------------------------------------------◇

 

 「今度は船かー」

 八咫烏のような鳥が俺の頭上を飛んでる。

 「あと1時間って言ってた」

 「おぉ、ありがと楓」

 わしゃわしゃと撫でると、楓は気持ちよさそうにそれを受けていた。

 「あー!楓ちゃんだけずるーい 私もー」

 「はいはい」

 「んふふ〜」

 美火も気持ちよさそうn··· にやけすぎだよなんだよその顔芸。

 「···あ」

 「?」

 「どうした?」

 ふと思い出した。初めてあの剣を持った時に、繰り出した衝撃波のようなあれを最近出してないことを。

 「この鎌、あの岩以来使ってないような」

 「争い事がないだけいいじゃない」

 「うんうん」

 二人は楽観的にそう言った。

 「でもさ、夢で見たあの胸糞悪いことが起こった時、やっぱり抜刀しなきゃなんだよね」

 「「うわ···」」

 あからさまに引いた風にあしらわれた。

 「いやなんでそうなるのさ··· じゃなくてさ、そういうのもあるかもしれないから、刀、抜刀してちょっとだけ振り回してみようかなって」

 「んー、まあ、あんまりあたりを荒らさないでよ?」

 「そんなにすごいの?優樹の持ってる剣」

 「まあ見てみればわかるよ、ほら、あんまり近いと危ないからこっちおいで?」

 「うん」

 おっふ、これは可愛い。

 背の低い楓の後ろから手を回しているさまは、まるで萌の一種の頂点を彷彿とさせるものだった。

 「それじゃ、いくよ··· ハァァッ···!」

 いつもと違って赤黒い妖気が俺を包んだ

 「あれ···おかしいぞこれ···ぐッ」

 「優樹くん!?大丈夫!?」

 妖気が一瞬巨大な旋風のように渦をまいたかと思うと、以前とは違う姿になった。

 「美火、か、鏡持ってきて」

 鏡を受け取り自分の姿を見る。

 「わぁお。すげぇ。狼じゃねこれ」

 「優樹、優樹」

 「んぁ?なんだー?楓···んおっ!?」

 楓が俺に抱きついてきただとおお!?

 なんという、なんという神回!

 「こっちのがいい」

 ちょっと俺を否定された気が···

 「さ、さあ、ほれ離れてな よーっし、いっちょやりますか」

 大鎌剣を抜刀して一振してみた。

 「あれ?なんともなんねー。」

 「なんで?」

 「さぁ?」

 「もっと気合い入れなよ」

 「えぇ···」

 ぶつくさいいながらもう一度試してみる

 「集中集中···ふぅ、いくぞ···ォォオラァ!!」

 思い切り縦一線に斬りつける。

 刹那、雷鳴のような轟音とともにとんでもない衝撃波が前方に飛んでいき、爆散した。

 「ひっ!?」

 「ぉー」

 「おー出来た」

 楓はビビり、美火は感心したような声をだし、俺はできたことに対して若干驚いた。

 「すげーなんか前よりでかくね?これ」

 「う、うん 前よりも桁違いよ」

 「な、なんなのこれ」

 ビビりまくった楓さんがとてつもなく可愛いのです。頬擦りしたいのです。萌え死にそうですね。

 「わかんね、衝撃波って呼んでるけど どういう原理で出るのかはわからない高威力っぽい何か、みたいな?」

 「いやいや、あの廃屋消し飛んでるんだから高威力以外の何物でもないでしょうが」

 「廃屋ってわりと朽ちてんだぜ?んなモンぶっ壊して高威力ってちょっとなぁ」

 「ぇー」

 「ぇーじゃなくてだな···ちょっと壊したとこ見てくる」

 ピョンピョンと爆散したところに向かってまた驚いた。

 衝撃波の傷跡は建物の後ろ森の方へ放射的に伸びていた。

 「わぁ、、これ危ないから加減しないとダメだな。恐ろしいわ」

 その後すぐに二人の元に戻りどうなっていたかとかを伝えた。

 「それは危ないね」

 「うん」

 「だろ?だから加減しねーとなぁーって。とりあえずさ、鬼蛇千行こう。日が落ちそうなんだけど」

 「鬼蛇千に行くにはね、船に乗らないと行けないからそこに向かわないとね。夜は船出ないから船着場の近くに宿あるし、そこで待ちましょ?」

 中々物知りだな、、とは思いつつ美火の言う通りにすることにした。

 「にしても何ここ。部屋クッソ狭いじゃん。ダブル席のネットカフェかよ」

 「「?」」

 「あーいやなんでもねーよ、こっちの話」

 「狭いのは仕方ないじゃない。一人用なんだから」

 「私はここまで狭い人利用の個室は初めて見た」

 「楓もそう思うよな」

 「うむ」

 「うーむ···マットタイプか···仕方ない···。」

 とまあこの日はギュウギュウ詰めで一夜を過ごしたが、やたら甘い匂いが両側から香ってきて木っ端ずかしくなり眠れなかったこと以外は特に何もなかった。

 

 「···ぅーん···」

 いつもより体が重く、且つ息苦しいが、甘い匂いが鼻腔を駆け巡り、脳をピリピリと刺激したまらず目が覚めた。

 「ぅゎ···」

 美火と楓が俺を抱き枕にしている。

 しかも手足を俺の四肢に絡ませていて、身動きが取れない。

 いや、解こうと思えば解けるのだろうが、この場合動かすと。

 このとおり更にしがみついてくるから声をかけて起こさないといけない。

 「おーいお前ら、起きろよ」

 が、反応がない。

 「美火、起きないといたずらするぞ?いいのか?」

 今度は耳元へ声を投げる。

 「ぅぁ···ふぁあ〜···おはよお」

 耳元に声をかけると割とすぐ起きる。

 今度は空いた手を使って楓を揺さぶり、起こしてやった。

 「おはよう優樹」

 「おはよう楓」

 俺は楓の寝起きな頭を撫でてやると、楓は目をしぱつかせながら受けていた。

 「優樹くーんそろそろ最初の船くるよー」

 「おーう、割と早いなー」

 船の始発は8時半のようだった。

 そして俺達は乗船し、しばらく揺られて鬼蛇千へと到着した。

 「うぉー、紅葉すげぇな」

 「凄いねぇー···」

 「うん···」

 一面赤や黄に紅葉した樹木に出迎えられつつ今日の宿になりそうな所を探すのだった。

 




また次の話をのんびりと書いていきますから長い目で見てやってくださいまし

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