翌朝目覚めた俺は元の姿に戻っていた。
自由に半妖の姿になれるらしいがこれはどうも疲れがたまる感じがして、不要な時は半妖にはなりたくないと思っている。
「なぁ、おじさん」
朝飯の鮭の塩焼きをつつきながら呟いた。
「ん?どうした?」
「楼郷ってところに行ってみようと思う。世界巡り的な感じで」
「あらあら、優樹は旅人さん思考ねぇ~」
うふふふと意味ありげに麻里さんが笑う
「まあそんな感じかなー、楼郷とか、いろんなところに行けばいろんな種族がいるんだろ?だからそれをこの目で見ておきたくてね。ついでに写メ撮りたい」
「写メ?」
麻里さんが食いついた。
「そうそう、ほらこれで」
「優くんなに?それ」
「長方形の、金属?」
「不思議な板ねぇ~」
物珍しそうに身を乗り出してスマホを見ている
「カメラモードに切り替えて、ほら、なんかポーズとってよ美火」
「へっ?う、うん…こ、こうかな?えへへ」
照れくさそうにピースサインをして笑っている美火を撮った。
ちなみにフラッシュは使わない主義なのでOFFに設定している。
「ほら出来た」
「よく出来たものねぇ~」
そんなこんなで飯も済ませて出立しようとすると美火が駄々っ子の如く着いて行くとごねた。
「うーん、鳳大さんどうするこれ」
「…はぁぁ…」
鳳大さんは大きなため息を深々と付いて一言
「行ってきなさい」
と言った。
そしてまりさんが急遽もう一人分の弁当を用意してくれた。
弁当は俺の持参したリュックに詰めた。
そして美火宅にしばしの別れを告げ、美火と世界巡りに旅立つのだった。
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とりあえず俺自身の実家の方にも伝えるために美火と一緒に祠を抜け俺の世界へ戻ってきた。
「へぇ~、ここが優くん達が暮らす世界なんだね~!」
「あんまはしゃぎすぎんなよ?車とか通ってるとこもあんだし、ここじゃお前が見つかるのは避けたい」
「えぇー、バレずに行けるの?」
「ああもちろん。半妖の力さえありゃジャンプだってすげーんだから。お前もそのくらいはできるよな?」
「うん、まあ、それなりには…」
「それじゃ、静かに俺の後付いてきてな、んじゃ走るぜ」
そういうなり俺達は朝の村へ駆け出した。
いつもなら十五分かかる道が三分程度で辿り着けた。
さすが半妖。
「おばあちゃん、僕しばらく遠出するからよろしくね」
居間の襖を開け祖母が顔を覗かせる。
「どこさいくんだい?」
「ちょっと、色々だよ」
「そうけそうけ、怪我ぁしないように気をつけるんだよ?」
「うん。それとさ、もし帰りが遅くなったりしても心配しないで?その辺のことはここの友人に頼みに行くつもりだから」
「はいよ、いってらっしゃい」
「行ってきます」
引き戸を閉めて道路に出る。
俺の後に美火が続く。
「ねえねえ、友人って言ってたけど、その人のおうちどこ?」
「すぐそこだよ」
そう言って山なりに続く家々の上の方を指さす
「美火はここの植え込みの後ろで隠れてて、すぐ戻るから」
「え?うん、わかった」
俺は石畳を抜け、門の前で振り返り、美火に帽子は深めにかぶって耳を隠せと伝え友人(翔太)宅へ走った。
「半妖って便利だよな、結構動いてんのに息切れもしないし上がりもしない」
そんなことを言いつつ少し考えていたら翔太家を少し通り過ぎてしまった。早朝のおかげか人はいなかった。そして友人のいる部屋の前に伸びている太枝に飛び乗り、蛇腹剣もとい
しばらくノックしていたら
うるさいなと目を擦りながら翔太が窓を開けたが
「!?」
声にならない悲鳴を上げてひっくり返ったので、半妖化を解き再度呼びかけた。
「おーい翔太?俺だぞー俺。優樹」
翔太は驚きの目でこちらを三度覗き込んだ。
「そんなジロジロ見るなよぉ恥ずかしいだろぉ?」
とふざけて照れる仕草をしたが
「気持ち悪いわ!アホ!」
と、怒られた。
そして翠月やあの祠のことは伏せて適当に話を作り俺の学校の休みがすぎても帰らなかったら学校のホームページから学校に電話して諸事情にて遅れていると伝えてくれと頼んだ。
「それにしてもその姿さ」
「なんだ?」
「すげぇモフりたくなるんだが」
実に突拍子もないことを言われた。
まあ別に触られるくらいなら減るもんじゃないしとモフらせてやった。
「すげぇモフモフしてるやばっ」
「だろー?さすがは俺だな」
「なんか顔立ちも変わって動物地味てるもんな、まさにケモっ子…オスケモだったわ」
「だったらこれなんかどうだ?」
誇らしげに胸を張りながら妖力を集中させてみる。
「…ヤベェ胸できた」
「おお?おおおお?おおおお!!!メスケモじゃねぇか!!」
「やっぱり俺って天才だぜさすが俺。天下一だな」
「いただきます」
言い終わらないうちから翔太は俺の胸を揉んできた。
「ちょっ、おいコラてめっやめろっつのコラ斬るぞ」
迦具土神で頭をひっぱたいた。
「しかしスゲーな見せかけかと思ったら本当についてんだもん。下は?なくなってんの?」
とか言いつつ今度は股ぐらをまさぐられたので蹴り飛ばした。
「俺急いでるからもう行くぞ?」
女体化を解いて太枝に飛び乗る。
「おういってこい、帰ってこなかったら伝えとくからさ」
「んじゃ頼むわ」
そして足に力を込めて俺の家に向かって飛んだ。
そして無事に隠れていた美火を担いで祠へ向かった。
「優くん優くん私担がれるんじゃなくてお姫様抱っこされたいなって思うんだけど?流石に雑すぎないかい?」
「おおすまん」
美火を下ろして祠に潜らせる。
「少し隠しときたいなこの祠」
近くの蔦やらを集めて祠の入口にぶら下げた。
「なかなかイイじゃん、よし行こ」
祠を潜って出てくると美火はすこしムスッとしていた。
「どした?」
「べーつに?」
なお、顔はムスッとしたまま。
キスしたらこいつはどう反応するんだろうか、さらに怒るか?よしやろうこれは冒険だ、と美火の頬に軽くキスをしてみた
「~!?」
みるみるうちに真っ赤になった。
「アホォー!」
バシッと一発もらってしまった。
その後しばらくムスッとしていた。
「なぁー、ごめんってばさ~、なぁってば」
「ふん」
「…ごめん」
そして鳳大さんからもらった地図を見ては美火に方向を示しながらとぼとぼと歩くことになった
(余計なことしなきゃよかった…)
日が完全に暮れ、夜の星が輝き始めた。
「休むところないかなぁ…地図も暗くて見え…見えるわ。あ、ここ道なりです」
美火は無言で先を歩いている。
そろそろ許してくれてもいいのに。
「ここら辺なら私心当たりあるの、ほらあそこ」
急に振り返って遠方を指さした。
「え、ほんと?」
「うん、ほら。 」
「あー、あぁ、本当だ…」
目を凝らして見ると寺か神社か、屋根が見えた。
「あそこ廃れてたりしないよな?大丈夫なんだよな?」
「大丈夫よ、なに?私を疑うの?」
「い、いやそういう訳じゃないけどさ」
「それじゃ行きますかっ、ほら優くんも早くしなさい」
「あ…?はぁ…?は、うん…」
そうして僕らはその建物へと向かうのだった。
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