ポチ丸でやってるので見かけたらよろしく!
前回の後書きにも追記しましたが、今後の展開及びめぐみんのお相手についてのアンケートを活動報告にて開催しています。
ご興味のある方はぜひご参加ください。
めぐみんとマスコミ
その日、雄英高校校門前は朝から賑わいを見せていた。
登校してきた生徒達が校内に入れない程だ。
それも人だかりはほとんど大人で、カメラやマイクといった撮影機材を担いでいる。
そう、彼らはマスコミである。
昨日、オールマイトが雄英教師に就任したとの一報を受け、生徒達から情報を得るないし、あわよくばオールマイト本人を捕まえようとしていたのだ。
しかし彼らは早朝から張り込んだかいなく、良い映像が撮れていなかった。
このまま帰れるものかと気炎を揚げる報道陣。
古来から、戦場においては前進より後退の方が難しいと相場が決まっている。
更にいうなら、攻め時を逃すより、退き際を誤った時の方が悲惨な結果が待っているものだ。
人は得てして、欲望に飲まれた時に判断を間違える。
彼らは退くべきだった。
「オールマイトの授業についてお聞かせください!」
その少女にマイクを向けたのは、映える映像が撮れそうだったからだ。
まだ小柄な彼女は整った顔立ちに、赤く
———オールマイトの授業ですか?教師以前と比べると、教え方が丁寧になったと思います。
「教師以前とおっしゃいますと?」
———ええ。私は4歳の頃から彼に目をかけていただいていましたから。
「ほ、本当ですか!?」
———私の個性はとても強力でして。オールマイトからも(威力だけなら)プロと比べても5本の指に入ると太鼓判をいただいているんです。その分扱いが難しく、彼に師事しています。
「そんなに・・・!でも、そんな人が無名だったなんて・・・!」
———オールマイトから個性の使用を禁じられていましたから。中学生までは無個性で通していました。
「そんな逸材が居たなんて・・・。これは凄いスクープになるわ・・・!ねえ、貴女うちの特番に出てみない?」
———それは、生放送でしょうか?
「いえ、違うわ。編集をかけたりするから、ちょっとくらいトチっても大丈夫よ。」
———そうですか。ところで、ここにオールマイトのプライベート用のメールアドレスを記したメモがあるのですが。
「オールマイトのプライベート用!!」
———私のお願いを聞いてくだされば、差し上げましょう。
「・・・お願いっていうのは?」
———私を是非生放送に出してほしいんです。
インタビュアーの彼女は悩んだ。
相手は一介の高校生。
生放送で放送事故などやられては責任問題になりかねない。
交換条件を出してきたあたり、強かなのは確かだが、落ち着いた人物にも見える。
リスクは低い・・・はず。
だが、なにか引っかかる。
強烈な違和感を、彼女は感じていた。
それは報道に携わるものとしての本能なのか。
目の前の少女から言い知れぬ不安感を感じていたのだ。
たぶん、この子に生放送は駄目だ、と。
この手の直感は馬鹿にできないが、かといって目の前にあるオールマイトのプライベートとつながっているメールアドレスも惜しい。
悩んでいると、少女がもう一枚、メモ用紙を取り出した。
———もう一押し、いかがですか?こっちには電話番号が載っています。誰の何、と言う必要はありませんよね?
「・・・!」
オールマイトのプライベート電話番号。
メールアドレスは変更しようと思えばすぐ変えられるが、電話番号は手続きが必要だ。
多忙なオールマイトの事だ、短く見積もっても数日はオールマイトと連絡が取れる。
「貴女は、いったい・・・」
———私ですか?No.1ヒーローの直弟子にして、将来オールマイトの後を継ぎ、平和の象徴となる者です。
「オールマイトの、後継・・・!」
———さて、そろそろお返事を聞かせてください。今あなたの目の前にある二枚のメモ用紙。オールマイトのプライベート用の連絡先。これを掴めば、栄光、栄達が手に入ります。さあ、どうです?ただ私を生放送に出してくれるだけでいいのです。それだけ、たったそれだけであなたの成功と将来が約束されるのですよ?さあ、私の手をとあっはん
突如、目の前の少女が崩れ落ち、いつから居たのか、少女の後ろに立っていた小汚い男に俵担ぎに持ち上げられた。
担がれた少女は完全に白目を剥いている。
「ちょっ、なんですかあなた!え、誘拐?誘拐なのこれ?」
「オールマイトは本日非番です。お引取りください。」
小汚い男・・・相澤はそれだけ告げると踵を返し、校門をくぐっていってしまった。
梯子を外された形になったインタビュアーの女性は、つい相澤をおいかけて前に出てしまう。
「ちょ、ちょっと待って!」
「おい馬鹿待て!」
次の瞬間、校門に設置されたセンサーが反応し、分厚い隔壁が校門を閉ざした。
マスコミに雄英バリアーなどと呼ばれるこの隔壁は、学生証などのIDを持たない者が敷地に入ろうとすると強制的にシャットアウトしてしまうのだ。
「せめて、その子の名前だけでもおおおおおお!」
一方、雄英バリアーの内側では、相澤の往復ビンタによって意識を取り戻しためぐみんが相澤の右腕一本で宙に浮いたままアイアンクローを決められていた。
わりとゴリゴリと洒落にならない音が鳴っている。
「うごおおおおお!体罰反対!」
「お前大概にしとけよ。次にやったらマジで除籍処分にするぞ。」
「あい・・・」
*****
そんなことがあった朝のホームルーム。
相澤が学級委員を決めろと言い出した。
本来であれば面倒が多く押し付けられがちな役職だが、ここヒーロー科においてリーダーシップというのは大切だ。
皆がこぞって立候補するなか、めぐみんが立ち上がった。
「待ってください!学級委員、すなわちリーダーとなるからには、その人物は有能な人物である必要があります!どうせなら競いあって決めようではありませんか!」
なるほど、一理あるかもしれない。
1-Aの生徒はめぐみんの主張を聞く流れになる。
「このヒーロー社会、上に立つ人物とは得てして高い戦闘能力を有しているもの。No1ヒーローのオールマイトが良い例です。しかし、学級委員決めにトーナメントで1vs1なんてやっていられません!よって、もっと簡単に戦闘能力を測りましょう!」
バン、と強くめぐみんが机をたたく。
「ここは個性でどれだけ大きなクレーターを作れるかで勝負しましょう!」
「ふざけんな!」
「引っ込めー!」
「この爆裂狂め!」
「どうでもいいから。早よ決めろ。」
結局投票制となり、委員長は出久。
副委員長は八百万となった。
ちなみにめぐみんは1票。
無論自分票である。
そんな事があった日のお昼。
めぐみんは教室で昼食をとっていた。
クラスにお弁当派の人数は少なく、教室以外で食べる人も居るため今クラスに居るのは爆豪、常闇、障子、耳朗、峰田だけである。
めぐみんは一人で食事するのも少し寂しいため、常闇の近くの席で昼食をともにしていた。
めぐみんは未だに学級委員の決め方についてぶつくさと文句を言っている。
「完璧な流れだったはずなんです・・・。なぜあそこで大ブーイングなんですかね。」
「自明だな。」
「ワラウワ。」
常闇に言葉少なにバッサリと切り捨てられたうえ、黒影に煽られてぶーたれるめぐみん。
そんなめぐみんを眺めつつ常闇は苦笑している。
と、次の瞬間けたたましいサイレンが鳴り響いた。
クラスの全員は何事かと席を立つ。
廊下に出ると、B組の面々で教室にいた生徒達も廊下に出てきていたようで、一様に窓の外を注視している。
めぐみんは適当に近くに居たB組の男子に話しかけた。
「なにかあったんですか?このサイレン何か知ってます?」
「お?おお!?お前は入試のときの大爆発女子じゃねえか。やっぱり受かってたんだな。」
「・・・?どこかでお会いしましたか?」
「おい。俺は鉄哲徹鐵。入試のとき介抱してやっただろうが。」
めぐみんはポン、と手のひらを打ち鳴らし、
「ああ、逆からよんでもてつてつてつてつさん。お久しぶりです。B組だったんですね。」
「いや、だから逆からよんだらつてつてつてつて。っと、それは今は良いか。どうやらこのサイレン、雄英に部外者が入ってきたら鳴るらしいんだがよ。あれ見ろよ。」
鉄哲は窓の外を指差す。
見ると、昇降口に無数の報道陣が詰め掛けていた。
よく見えないが、どうやら相澤とプレゼントマイクが対応しているようだ。
それを見て、めぐみんは眉をしかめる。
「不法侵入ですか。やりたい放題ですね。普通に犯罪だと思うのですが。おや、ということは彼らはヴィランなのでは?吹き飛ばしていいですかね?」
「お前ぜってぇやんなよ。」
鉄哲は表情の抜け落ちた顔をしていたという。
そんなことがあった日の午後の授業で、出久が飯田に委員長を譲るという話をした。
どうやらこの騒動があった時、飯田が非常口の化身となって混乱する人々を纏めたという出来事があったようなのだ。
その場に居合わせた者はもちろん、その場に居なかった者も、委員長の出久の推薦ならと許容の雰囲気が流れる中、声を大にして異を唱える少女が一人。
無論、めぐみんである。
「非常口がなんですか!私なら"爆裂"で非常口どころか脱出トンネルを掘る事だってできますよ!だから私を委員長に!」
「面倒くせぇから黙ってろや一発芸女ァ!」
「にゃにおう!?今私の個性を一発芸と言いましたか!言いましたよね!お望みとあらば一発でクレーターに変えてさしあげましょうか!貴方のしょっぱい爆竹で抵抗してみたらいかがです!?」
「ンだとコラテメエエエエ!」
爆豪とめぐみんの言い合いは相澤によって強制終了するまで続けられた。
出久は爆豪を煽りまくるめぐみんに戦慄していた。
*****
マスコミが警察に連れて行かれた後。
手の空いていた雄英教師達は、校門前に集合していた。
そこには無残に崩壊した雄英バリアーの残骸が転がっていた。
「ただのマスコミがこんな事をするかい?悪意ある者が侵入したかもしれないね。」
校長の言葉に、プレゼントマイクが首を傾げた。
「どうせマスコミに紅魔族が混じってた落ちとかじゃねえのかあ?紅魔族随一の記者!とか言いながらぶっ壊してきそうだぜ。」
実は紅魔族は、プロヒーローにはそこそこ存在を知られている。
シンリンカムイのような新進気鋭の若手達は知らない者も居るだろうが、ベテラン達には知られていた。
たまにヒーローとなる者も居る紅魔族。
個性や身体能力等、総じて高い戦闘能力を持っている者が多いというのが知られている理由の一端としてあげられるが、最たるものはそのぶっ飛んだ行動と人間性だろう。
めぐみんはまだ大人しいほうだったりする。
彼らの恐ろしさは、個性使用許可や社会的地位を得て、ある程度の自由が許されるようになってから真価が発揮されるのだ。
確かに紅魔族が記者となっていれば、このような蛮行に出る者もいるかもしれない。
能力は無駄に高いのだ彼らは。
だが、校長は首を振った。
「紅魔族は報道するくらいならされる方を選ぶ一族さ。彼らが記者になったという話は聞いたことが無い。というより、彼らが記者なんてやっていたら色々問題行動を繰り返してあっというまに噂が広がるだろうさ。」
さもありなん。
校門崩壊どころかヴィラン化して職員室まで大立ち回りを演じようとするだろう。
「なんであの一族から逮捕者が出てねえんだ。」
「彼らは一様に頭がいい。尻尾が掴まれるような事はしないのさ。」
紅魔族はその高い知性を全力で使い、趣味に走りつつもグレーラインを全力で駆け抜けていく。
あの手この手でのらりくらりと法の裁きを避けつつ、司法の手をすり抜け憤慨する閻魔を指差して高笑いするような民族性を持っている。
「あいつら全員捕まったら世の中は多少平和になるんじゃねえか?」
「否定はしないよ。」
めぐみんが生放送に拘ったのは、例え一瞬でも好き放題やっている自分を地上波に乗せるためです。
言われるまでもなくわかっている?
それもそうですね。
次回:めぐみんと救助訓練
めぐみんの容赦ない爆裂が敵連合を襲う!
果たして彼らは生きて帰ることができるのか。