艦隊これくしょん~子持ちの艦娘~   作:剣の舞姫

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今回、夕立が戦闘します。


第四話 「新体制」

艦隊これくしょん

~子持ちの艦娘~

 

第四話

「新体制」

 

 時間になった。湊は金剛、夕立、神通、大淀を引き連れて食堂へ向かった。

 食堂には既に桂島泊地第3鎮守府の艦娘が全員揃っており、皆一様に不安そうな、絶望したような表情を浮かべ、一部は憎悪の表情で食堂の入り口を睨んでいる。

 そして、湊達が入るとざわめきが静まり、全員が揃って湊に目を向けた。

 

「全員揃っているな……本日付で此処、桂島泊地第3鎮守府に提督として着任した九条湊、階級は大佐だ」

 

 そう言って敬礼する湊だが、敬礼を返してくる者は一人も居ない。もっとも、これは想定の範囲内なので特に気にすること無く横に並んだ金剛達の紹介に移る。

 

「それから、同じく本日付で着任する三名の艦娘を紹介する……金剛」

「ハ~イ! 皆さん! 金剛型1番艦の金剛デース! よろしくお願いしマース!!」

「それから神通」

「川内型軽巡洋艦、神通です」

「続いて夕立」

「白露型4番艦、夕立だよ。よろしくっぽい!」

 

 金剛達の自己紹介で、案の定だが全員がざわついた。特に神通と夕立が視線を集めているようだ。確かに改二の三人は改までの姿しか知らない者にとっては驚くのも無理は無い。

 金剛は服装に殆ど変化は無いが、それでも細かい所は変わっており、頭の電探カチューシャは完全に変化している。

 神通は服装が様変わりしていて、川内型の橙色の制服とは似ても似つかない。そして夕立だが、夕立が一番驚かれているのだろう。

 夕立は改と改二では大分変わっている。容姿は大人びて背も伸びた。スタイルも良くなってすらりと伸びる綺麗な足は魅力的と言える。何より瞳の色が緑ではなく真紅に変化しているから、初対面なら同じ白露型の姉妹でも夕立だとは気づけまい。

 

「この三人が着任するに当たって、艦隊を再編成する事にした。今までの艦隊編成は全て解除、新たに第一主力艦隊と第一水雷戦隊のみを編成する。残りの艦娘は随時作戦に合わせて艦隊編成に組み込む予定だ」

 

 ここで、湊は事前に用意しておいた編成表のメモを取り出して再び艦娘達全員に目を向ける。

 

「では先ず、戦艦金剛!」

「はい!」

「金剛には桂島泊地第3鎮守府艦隊総旗艦を勤めて貰う」

「了解ネー!」

 

 艦隊総旗艦、それはつまり桂島泊地第3鎮守府の全艦娘を統べる全艦隊の旗艦という事だ。

 

「続いて第一主力艦隊、旗艦は駆逐艦夕立!」

「ぽい!」

「随伴艦には戦艦榛名、重巡洋艦羽黒、軽巡洋艦北上、正規空母赤城、正規空母翔鶴」

 

 この艦隊編成はバランス的に問題は無いだろう。将来的に完成するのは戦艦、駆逐艦、重巡洋艦、正規空母、重雷装巡洋艦、装甲空母の編成となり、火力や雷撃力だけでなく制空能力までバランス良く整っているのだ。

 更に言うなら全員が高速艦という事もあり、速力に秀でた戦略を得意とする湊が最も指揮し易い編成とも言える。

 

「続いて第一水雷戦隊、旗艦は神通!」

「はい」

「随伴艦には軽巡洋艦川内、軽巡洋艦那珂、駆逐艦時雨、駆逐艦吹雪、駆逐艦如月!」

 

 水雷戦隊については、これはまだ暫定だ。将来的に川内や那珂には後に編成予定の第二水雷戦隊や第三水雷戦隊の旗艦として着いて貰らいたいので、今の内に神通に旗艦として鍛え上げて貰う予定なのだ。

 

「それから軽巡洋艦及び駆逐艦、潜水艦には今後、神通を教官として訓練に参加してもらう。戦艦、空母、重巡洋艦の訓練教官は夕立が勤める」

 

 湊がそう言うと、不満があったのだろう二名が前に出てきた。呉第2鎮守府時代も配下に居た艦娘なので名前は分かる。戦艦長門と正規空母加賀だ。

 

「3つほど、良いか?」

「許可しよう」

「まず金剛が艦隊総旗艦だと言う事は納得がいかん。それに駆逐艦が戦艦や空母、重巡洋艦の教官など務まるとでも思っているのか? 最後に……」

「そもそもの話として私達は貴方を信用していません」

「ふむ……まぁ偉そうな事を言いたいなら夕立に勝ってから言ってみろ」

「何? 貴様、まさか戦艦である私と正規空母の加賀が駆逐艦に負けるとでも?」

「あり得ません」

「まぁ、負けるだろ……正直夕立は、いや……金剛も神通も此処に元々居る全ての艦娘を一人で相手にしても勝てるからな」

 

 そこまで言われてプライドが刺激されない筈も無い。長門と加賀、それに一部の艦娘が殺気立って湊を睨み付けた。

 

「いいだろう、そこまで言うのなら勝負だ!! 我々が勝ったら、九条湊、貴様には即刻この鎮守府から出て行って貰う!!」

「ああ、構わないよ……勝てるのならな」

 

 勝負は夕立一人対長門、加賀を含む6名編成の艦隊だ。鎮守府前の演習場で勝負を行う事になり、全員で演習場が見える場所まで移動する事となった。

 

 

 場所が変わって演習場、そこには既に長門を旗艦に加賀、瑞鶴、陸奥、比叡、那智という火力重視の大艦巨砲主義ここに極まれりと言った面々が揃っていた。

 彼女達は全員が人間に憎悪を感情を抱いている者達で、隙あらば湊を亡き者にしようと考えている者ばかりだ。

 

「来たぞ」

 

 長門が言った通り、演習場には艤装を背負った夕立がゆっくり海上を滑るように進んでおり、余裕そうに鼻歌まで歌っていた。

 

「生意気ね、駆逐艦の癖にこの編成を相手に一人で余裕のつもりなのかしら」

「五航戦の子と一緒の意見なのは気に食わないけど、同意見だわ」

 

 夕立が定位置に着くと全員が艤装の砲門を夕立に向け、加賀と瑞鶴も弓に番えた矢を何時でも放てるように準備する。

 だが、対する夕立は右手に持った12.7cm連装砲B型改二を構えるでもなく、寧ろ何故か海面を覗き込んで泳いでいる魚を観察していた。

 

「ぽい~」

 

 そして、港に居る湊がスタートピストルの引き金を引くと、演習は始まった。始まった瞬間から長門、陸奥、比叡、那智の主砲が一斉に放たれ、加賀と瑞鶴が撃った矢が炎に包まれると九九式艦爆に変化して空を飛ぶ。

 放たれた練習用ペイント砲弾は夕立目掛けて飛翔し、全員が命中すると確信していた。だが、それは相手が唯の夕立ならの話だ。残念ながら彼女達が相手にしているのは普通の駆逐艦夕立ではなく、日本最強の艦娘5人の内の一人、“紅の悪夢”夕立なのだ。

 

「ぽいっ!」

 

 掛け声(?)と共に夕立が動き出した。動き出した、のだが……その初動から既に長門達は夕立の姿を見失ってしまった。

 

「ど、何処に!?」

 

 夕立が回避した事で着水した砲弾による水柱が立つが、その向こうには夕立の姿が無い。ならば何処に行ったのかと周囲を見渡すも、その姿を確認する事が出来ないまま……。

 

「きゃあ!?」

「陸奥!?」

 

 陸奥の悲鳴が聞こえて慌てて長門が後ろの陸奥の方を振り向くと、陸奥の艤装が真っ赤なペイントによって染め上げられていた。

 

「ど、どこから!?」

「こっちっぽい!」

「っ!?」

 

 気がつけば夕立は那智の真下に姿勢を低くして潜り込んでおり、連装砲の砲口を那智の顎下に突き付けていた。

 

「ぐぁ!?」

 

 放たれたペイント弾によって那智の顔が真っ赤に染まり、これで陸奥と那智の二人が大破判定となってしまった。

 慌てて比叡と長門が夕立に向けて砲門を向けたのだが、それは夕立にとっては遅すぎる。

 

「ぽ~い!」

 

 左手で太ももから抜き取った酸素魚雷を投擲、一本ずつ長門と比叡の艤装にある41cm連装砲と35.6cm連装砲の砲口に入り込み、爆発した。

 

「きゃあああ!?」

「ああああ!?」

 

 トドメとばかりに12.7cm連装砲B型改二の連射を受け、これで二人の艤装は使い物にならなくなった。

 真っ赤に染まる二人を無視して、夕立は飛来する艦爆に目を向けると漂ってきた長門や比叡の艤装の破片を拾い上げると、それを投擲、艦爆の主翼を破壊して墜落させる。

 

「うそ!?」

「くっ! 第二次攻撃隊、発艦」

 

 瑞鶴が驚く横で加賀が再び矢を放つも、矢が炎に包まれる前に夕立がキャッチ、そのまま手でへし折った。

 

「そんな……あり得ません」

「う~ん、素敵なパーティーにはならなかったっぽい」

 

 そんな事を言いながら、夕立は加賀と瑞鶴に向けて連装砲を向ける。数秒後、全身を真っ赤なペイントで染め上げられた加賀と瑞鶴が呆然と立ち尽くす事になるのだった。




夕立の圧勝、因みにですが夕立より神通のが強いですし、神通よりも金剛のが強いです。
そして、その金剛よりも横須賀にいる“天空の支配者”鳳翔のが強いという。

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