艦隊これくしょん~子持ちの艦娘~   作:剣の舞姫

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何でも、書けば欲しい艦娘が手に入るとか……。
大和、来てくれ……。


第三話 「大淀」

艦隊これくしょん

~子持ちの艦娘~

 

第三話

「大淀」

 

「金剛さん、先程の砲弾を弾いたのはどうやるんですか?」

 

 執務室に向かっている途中、筑摩が金剛に先程の砲弾弾きについて質問をしていた。

 あれは“音速”金剛の十八番、飛来する砲弾の種類を瞬時に見分けて、弾けると判断した場合は裏拳でもって弾き飛ばす絶対防御法なのだ。

 

「あれは飛んでくる砲弾の種類を確実に見分けられないと出来ないデス」

「そうなんですか?」

「Yes! 零式通常弾や徹甲弾なら弾けますが、三式弾は別の手段で迎撃しなければなりませんので、その見極めが大事デース」

「見極め……その、まだ飛来する砲弾が見えなくて」

「フム……ワタシは最初から見えてたからアドバイス出来ませんネー。夕立も凡そ同じ事が出来るデスけど、そっちでアドバイス出来ますカ?」

「ぽい? ん~……夕立は殆ど勘でやってたら見えるようになったっぽい」

 

 アドバイスにすらならなかった。夕立の場合は最初の頃は敵の砲弾の種類を勘だけで当てていたので、同じ事をしろというのは無茶も過ぎる。

 

「九条大佐の艦娘は、何と言うか個性的ですね」

「稀にな、引き当てるんだ……君もいずれそんな艦娘を引き当てるかもしれないから、個性的な娘が着たら大事に育てると良い。個性的な艦娘ほど強くなるぞ」

 

 事実、舞鶴の鳥海も横須賀の鳳翔も、いずれも他の同一個体と比べて個性的な性格をしている。

 

「参考になります……っと、ここです」

「うむ……道中も思った事だが、本当にボロボロだな」

 

 ここまで来る廊下や階段にしても、そして目の前の扉にしても、穴だらけのボロボロだった。本当によくここまでボロボロに出来たものだと逆に感心してしまう。

 

「どうぞ、お入り下さい」

 

 御高少佐が扉を開いたので、先に湊から中に入ると案の定、ボロボロのデスクや壊れた無線機、破かれた掛け軸に割れた窓ガラスの提督執務室が出迎えてくれた。

 

「ここの大淀は?」

「彼女でしたら恐らく……」

 

 御高少佐が目を向けた先に湊も向けてみると、補佐専用デスクに突っ伏す黒髪の少女の姿があった。

 特徴的な制服に黒髪、間違いなく彼女こそ軽巡洋艦の大淀だ。

 

「大淀君、起きてくれ」

「ん……これは、御高少佐」

 

 御高少佐が大淀の肩を揺すると、目を覚ました大淀が御高少佐を見上げた。その瞳には憎悪や怯えといった感情は見られず、少なくとも彼女が御高少佐を信用しているのが見て取れる。

 

「今日から着任される提督、九条大佐をご案内してきたから、ご挨拶を」

「っ!? し、失礼致しました!! 軽巡洋艦・大淀と申します、九条提督!!」

「うむ、本日付で桂島泊地第3鎮守府に着任した九条湊大佐だ」

 

 敬礼する大淀に湊も敬礼で返すと、大淀の瞳の奥に怯えの感情が見える事に気づいた。流石に初対面の男を相手に、怯えるなという方が無理だろう。

 特に、前任によって酷い目に合って来たのだから余計に。

 

「それと、俺と共に着任する艦娘を紹介する。金剛、神通、夕立」

「はい、金剛型1番艦! 英国で生まれた帰国子女の金剛デース!」

「川内型軽巡洋艦2番艦、神通です」

「白露型駆逐艦4番艦、夕立だよ」

 

 それぞれが自己紹介をすると、大淀は神通と夕立を見て随分と驚愕していた。特に、夕立を見て驚いているのが大きい。

 

「え、ゆ、夕立ちゃん? え? だって夕立ちゃんってもっとこう……え?」

「? どうしたっぽい?」

「! その口癖……うそ、え? それに、神通さんの服も、金剛さんもよく見れば少し違う……」

 

 なるほど、確かこの鎮守府では過去に轟沈した金剛、神通、夕立は改か未改装だったから、大淀は改二改装した彼女達の姿を知らないのだ。

 

「大淀、金剛と神通、夕立は既に改二改装をしているから、君の知る三人の姿と違うんだ」

「改二改装……実在したのですか!?」

「当たり前だ。寧ろ、前任が3年以上も提督をしていて改二改装まで行けていなかったのは彼が提督として三流以下だった証」

 

 一流の提督なら改二改装など当たり前で、超一流ともなればケッコンカッコカリまで到達している。

 

「それでは九条大佐、自分と筑摩はそろそろ第2に戻ります」

「ああ、ご苦労だったな御高少佐……いずれ、演習や大規模作戦で会おう」

「こちらこそ道中のお話、大変勉強になりました。次にお会いする時はもっと成長した姿をお見せしたいと思います」

「楽しみにしているよ」

 

 湊と握手をした後、御高少佐と筑摩は第3鎮守府を去った。残った湊達は早速だが仕事、とおもったのだが、先ずは先程から大淀が不思議そうに目を向けている可憐の紹介もしなければならない。

 

「すまん、忘れていたな。この子は俺の娘で、九条可憐と言う……可憐、大淀お姉さんにご挨拶だ」

「は~い! くじょうかれんデース! パパとママのむすめデス!」

「えっと、九条提督がパパですよね? ママというのは……」

「ワタシデース!」

「ええ!?」

 

 やはり大淀も筑摩と同じ反応をした。これはもう恒例行事みたいになっているので、今更なにか思う事は無いので、いつも通り説明するだけだ。

 

「え、金剛さんと提督の?」

「ああ、金剛とは結婚して5年になるのか?」

「No! 今年で6年デスヨー」

「そうだったか……そんなになるか」

 

 そろそろ二人目が欲しい湊だった。

 

「に、人間と艦娘が結婚……それに、子供まで」

「世界初の例だそうです。提督と金剛さん、それと可憐ちゃんの例は」

 

 艦娘と提督が結婚カッコガチをする例は多数存在するが、子供が出来た例は湊と金剛だけ。それだけ確率の低い事例なのだ。

 

「それより大淀、着任の挨拶をしたい。鎮守府の食堂で良いから全艦娘を集めてくれ」

「そ、それは……」

「大半の艦娘が人間に怯え、一部が憎悪しているのは知っている。だが、規則は規則だ、着任した以上は挨拶するのは当然だろう」

「了解しました」

 

 そう言って大淀は自分の机に置いてある館内放送機材のスイッチを入れた。

 

「全艦娘に連絡です。本日付で新しい提督が着任されました。至急、現在の作業の手を止めて食堂に集合してください。繰り返します、本日付で新しい提督が着任されました。至急、現在の作業の手を止めて食堂に集合してください」

 

 全員が集まるまで時間が掛かるだろう。湊達が食堂に行くのは30分後として、取りあえず今は執務室をどうにかするのが先だと思い、湊は懐からスマートフォンを取り出した。

 

『こちら大本営総合受付窓口です』

「桂島泊地第3鎮守府提督、九条湊大佐だ。山本元帥閣下に取り次ぎを頼む」

『畏まりました、少々お待ち下さい』

 

 保留音が暫く鳴って、止んだ後に出たのは受付の者ではなく取次ぎ先の山本元帥だ。

 

『山本だ、九条大佐か』

「ただいま到着しました」

『うむ、して何用かの?』

「実は、至急木材などの建物修理資材を送って頂きたく」

『成程、そこまで酷かったか……あい分かった、至急用意しよう。そちらへの到着は明日の10:00になる』

「助かります」

『うむ……湊よ』

「……はい」

『頼んだぞ』

 

 それだけ言い残して電話を切った山本元帥、彼の言いたい事が分かった湊は無言のままスマートフォンを懐に戻して一つ、頷いた。

 

「勿論ですよ……父さん」

 

 湊がまだ新人の、それも研修生だった頃、研修先で湊の世話をしてくれたのが、当時まだ現役で提督をしていた山本元帥だった。

 あの頃、まだまだ未熟だった湊に提督としてのイロハを全て叩き込んでくれた恩を、未だ忘れてなどいない。

 山本元帥への恩を、少しでも返せるのなら、湊はどんな任務だろうと全うして、彼への信頼に応える覚悟がある。

 それが、深海凄艦に家族全員を殺されて殺伐としていた湊を、厳しく指導してくれた第二の親父とも呼べる、山本元帥への忠義の証なのだから。




ぎゃあああす!!? 大和建造しようにも開発資材が残り10を切ってた!?!?
伊8狙いで建造し過ぎた……ちくせう。

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