艦隊これくしょん~子持ちの艦娘~   作:剣の舞姫

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なんか、プロローグだけだと気持ち悪かったので一話だけ書きました。


第一話 「異動前」

艦隊これくしょん

~子持ちの艦娘~

 

第一話

「異動前」

 

 大本営の施設を出た湊と金剛は新幹線で広島に戻り、広島駅に駐車していた自家用車に乗り込んだ。

 湊が運転する横で、助手席に座る金剛はハンドバックの中から紅色のスマートフォンを取り出すと何処かに電話を掛け始める。どうやら娘を預けている相手に掛けているようだ。

 

「あ、神通デス? 今、広島駅を出た所デース。カレンは迷惑掛けてマセンカー?」

『いいえ、とても良い子にしていますよ。今は夕立ちゃんと一緒に遊んでいるところです』

「なら良かったデース! ワタシとダーリンはちょっとスーパーに寄って買い物してから帰りますので、もう暫くカレンのこと、お願いするデース」

『はい、任されました。金剛さんも提督も、道中お気を付けて、お帰りをお待ちしてますね』

「No problemデス、今夜はカレンのRequestでMacaroni au gratinにするので、神通と夕立も一緒に食べると良いデスヨー」

『あら、マカロニグラタンですか……そうですね、では遠慮なく』

 

 因みに、金剛は結婚してから間宮や鳳翔といった料理上手な艦娘に料理を習っていて、今では二人に並ぶほどの料理の腕前に成長している。

 神通と夕立は湊とケッコンカッコカリをしている関係もあって、金剛とは仲が良く、よく金剛は夕飯に二人を誘う事があるのだ。

 

「金剛、スーパーに行くのは良いが、途中で着替えろよ」

「oh! 途中で道の駅に寄ってくだサイネー」

「トイレで着替えるのか……」

「他にありマスカー!」

「……無いな」

 

 因みに現在、金剛の服装は艦娘・金剛としての正装である改造巫女服のような格好なので、スーパーに寄るなら車に積んだままにしてある私服に着替える必要があるのだ。

 別に今のままでも問題は無いのだが、この辺りは金剛の気持ちの問題で、艦娘としてではなく湊の妻として行動するのなら私服が良いという彼女なりの拘りなのだろう。

 

 

 呉に到着した湊と金剛はスーパーで買い物を済ませて呉第2鎮守府内にある自宅へと帰宅した

 既に鎮守府の大淀には戻ってきた旨を報告してあるので、直接提督執務室へ行く必要は無かった為、こうして自宅の方に来れたのだ。

 

「ただいま」

「戻ったヨー!」

 

 玄関の扉を開けると、二人の声に反応したのかリビングの扉が開いて一人の幼女が飛び出してきた。

 金剛より若干色素の薄い金色に近い茶髪をストレートに伸ばし、左側頭部にだけお団子を作った髪形の幼女は真っ直ぐ湊と金剛の下へダッシュする。

 

「パパー! ママー! おかえりデース!!」

 

 この幼女こそ、湊と金剛の間に生まれた一人娘、人間と艦娘のハーフとして世界初の例となった奇跡の子、九条可憐だ。

 因みに、母の影響で喋り方が見事にデース口調になってしまったのは、父として湊の悩みの種でもある。

 

「oh! カレン、良い子にしてマシタカー?」

「いいこにしてたデース! じんつうおねえちゃんと、ゆうちゃんがあそんでくれマシター!」

 

 まぁ、こうして母親に抱きついて笑顔を見せる娘が可愛いので、湊としてはデース口調も愛嬌があって良いだろうと、親馬鹿な結論に至るのが常ではあるのだが。

 

「提督、金剛さん、おかえりなさいませ」

「ああ、神通も留守を任せて悪いな。可憐の面倒まで任せて」

「いいえ、好きでやっている事ですので」

 

 自然と湊から鞄を受け取った神通は金剛や可憐と共にリビングに入っていった。湊もそれに続くとリビングでは夕立がシステムキッチンにて先に夕飯作りの用意をしている姿がある。

 

「あ、提督さんおかえりなさいっぽい!」

「ただいま、すまんな夕立、可憐と遊んで貰って」

「いつもの事っぽい」

 

 夕飯作りを金剛が代わったので、手の空いた夕立は足元にじゃれ付いてきた可憐を抱き上げてソファーに座ると、膝の上に可憐を座らせてTVのチャンネルを変える。

 丁度、今の時間から可憐の好きなアニメが始まるらしく、可憐は夕立と共にそちらに釘付けになったので、湊もソファーに座ってゆっくりする事にした。

 

「提督、お茶が入りました」

「ああ、ありがとう」

 

 いつの間にか神通がお茶を淹れてくれていたらしく、目の前のテーブルに湯呑みが置かれた。そのまま神通は湊の隣に座ると夕立と可憐の前にもジュースを置く。

 

「それで、大本営の召還命令の内容は……」

「来月から桂島泊地第3鎮守府に異動となった。金剛、神通、夕立と共にな」

「では、ここの艦隊は……」

「それぞれ指定された鎮守府に転任だ。国内全体の戦力底上げがしたいんだと」

「なるほど……しかし、桂島第3ですか」

 

 どうやら湊は知らなかったが神通たち艦娘は噂程度だがブラック鎮守府だという事を知っていたらしい。

 なんでも、艦娘だけの独自ネットワークというものがあるらしく、そこで噂にはなっていたのだとか。

 

「向こうではお前に第一水雷戦隊の旗艦を任せる予定だ。いつも通り、教官役として水雷戦隊全体の指導も、頼むな」

「お任せください。この神通、提督のご期待には必ずや応えてみせます」

 

 華の二水戦の名は伊達ではない。日本最強の神通として、軽巡最強と呼ばれる水雷王の名に賭けて桂島でも鬼教官を務めるだろう。

 

「提督さん、夕立はどうするっぽい?」

「夕立は、向こうで再編成する第一主力艦隊旗艦を任せる予定だ」

「ぽい? 夕立が旗艦? 金剛さんは?」

「あいつは艦隊総旗艦をやってもらうから、基本的に艦隊編成には含まれない」

 

 タ級flagshipすらも一撃で撃沈する程の狂った性能を持つ紅の悪夢、並みの戦艦なら容易く下せる夕立なら旗艦としても十分に勤まるだろう。

 事実、呉では第一主力艦隊旗艦を勤めている金剛の副艦として艦隊を纏めているのだから。

 

「後、これは大本営でも噂程度にしか流れていないんだが……“奴”が最近、桂島近辺で複数回目撃されているらしい」

「! “奴”が、桂島の近くにいるっぽい?」

「ああ、嘗て……金剛と夕立、神通を揃えた最大戦力ですら下せなかった“奴”がな」

 

 夕立と神通の脳裏には、嘗て戦った最悪の敵の姿が浮かんだ。

 轟沈者こそ出さなかったが、撤退するだけで精一杯の状況に追い込まれた嘗ての苦い戦いの経験、その時に戦った最悪の敵が、桂島の近海で目撃されたとなれば、やるべき事が増えたという他に無い。

 

「ブラック提督の所為で心に傷を負っているであろう艦娘達のケアや鎮守府の建て直しだけじゃない、“奴”が現れた場合……今の桂島第3の戦力では戦いにすらならないだろう」

「教官として、水雷戦隊の戦力叩き上げは急務、という訳ですね」

「夕立も、主力艦隊の教導が必要っぽい」

 

 本当なら、“奴”と戦うには金剛や夕立、神通クラスの実力を持った艦娘で艦隊を組まなければ勝負にならない。

 しかし、この三人クラスの実力を持つのは、日本には後二人しか居ない上、その二名……“狙撃手”と“天空の支配者”は別々の鎮守府に居る。

 更に言えば、この五人の艦娘とて最初から日本最強の実力を持っていた訳ではなく、年単位で時間を掛けて今の実力まで駆け上がったのだ。桂島に行ったからとて、直ぐに育つわけではない。

 

「ぶぅ~、パパたちむずかしいおはなしばかりでつまらないデース」

 

 すると、アニメを見ていた可憐が頬を膨らませながら抗議してきた。確かに、子供の前でする話ではなかったかと反省しつつ、湊は夕立の膝に座る可憐を抱き上げる。

 

「よし! ならパパが面白いお話をしてやろう」

「おはなしデスカー?」

「うむ、これはパパがママと初めて会った時の話なんだがな? ママが初めて紅茶を淹れようとした時……」

「こらー! カレンになんて話をするデスカー!!」

 

 話が聞こえていたらしい金剛がキッチンから大声で話を遮って来た。勿論、当時を知る神通と夕立は内容を知っているので、苦笑している。

 

「? ママ、どうしたデス?」

「あ~、ママにとっては思い出したくない話みたいだから……この話は後でコッソリと、な?」

「っ! りょうかいデース」

 

 因みに、内容は単純明快、初めて金剛が紅茶を入れた時、間違えて紅茶の茶葉ではなく隣にあった煎茶の茶葉を入れてしまったというだけの話だ。




九条可憐の容姿ですが、まんま金色モザイクの九条カレンです。髪の色が金髪ではなく、金剛より薄い茶髪、金に近いブラウンヘアーです。

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