艦隊これくしょん~子持ちの艦娘~   作:剣の舞姫

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ここらで装備を整え始めますぜ。


第八話 「開発と建造」

艦隊これくしょん

~子持ちの艦娘~

 

第八話

「開発と建造」

 

 湊が着任してから2ヶ月が経った頃、ようやく桂島第3鎮守府は資材が安定してきた。夕立と神通による教導で艦隊全体が第一次改装を終えるまでに成長した事もあって、遠征や出撃、隣の第2鎮守府との演習なんかも行った事が良い方向へと傾いたのだろう。

 この頃には湊の存在を恐怖していた艦娘達も自然と湊への恐怖心が和らいで少しずつではあるが廊下などで会えば会釈をしたり敬礼を返してくれる者も増えた。

 そこで、湊は次の段階へと進むべきだろうと判断し、金剛が可憐を幼稚園へと送っていて不在の間、代理で秘書艦を勤めている榛名を連れて工廠へと赴く。

 

「あの、提督……今日は何をするんですか?」

「一先ず開発と建造をと思ってな……ああそうだ、悪いが翔鶴か赤城、もしくは瑞鶴を呼んでくれるか?」

「はぁ、良いですけど」

 

 言われたとおり、榛名が翔鶴を呼んで、二人が工廠に着く頃には翔鶴も工廠へと到着した。

 

「提督、お呼びとの事ですが」

「うむ、今日は艦載機の開発と新しい艦娘を建造しようと思っていてな、榛名と翔鶴に手伝ってもらいたい」

 

 言いながら工廠の扉を開くと、事前に連絡をしておいたからか、明石が開発と建造の準備を整えて待っていた。

 

「お待ちしていました提督、今日は建造と開発との事ですので、既に用意してますよ」

「ああ、ありがとう」

 

 因みに、本日の建造予定は4人分、狙いは水上機母艦の千歳か千代田、それから駆逐艦、軽巡洋艦だ。

 

「軽巡洋艦は由良辺りが出てくると有難いのだがな」

「いや~そこは提督の運次第ですって」

「そうか、だが榛名を連れてきたから運自体は彼女に依存だな」

「は、榛名にですか!? そんな、榛名には畏れ多いです」

 

 とにかく建造を始める。必要な資材と開発資材を建造ドックに投入し、建造開始スイッチを押せば、メーターに建造時間が表示される。

 結果として表示されたのは第一ドックが02:20:00、第二と第三ドックは01:00:00、第四ドックは00:20:00だった。

 

「バーナーは使いますか?」

「いや、まだバーナーは数が少ない。今後の大型建造の事も考えて今はストックしておこう」

「わかりました」

 

 続いて開発に移る。今回狙っているのは艦載機、特に烈風や流星などの上位艦載機だが、出てくれるかどうかだ。

 

「翔鶴、君に全てを任せるぞ」

「わ、わかりました」

 

 開発機と呼ばれる機械の前に立った翔鶴は必要資材を中に投入、スタートスイッチを押すと、先ず最初に出てきたのは艦載機、それも彗星十二型甲という上位の艦爆だ。

 

「お、良いのが出たな」

「よ、良かったぁ」

 

 続けざまに試して出てきたのは彩雲が1、彗星十二型甲が1、零式52型が4、紫電改二が2、烈風2、零式32型が3、流星が1、流星改が1、天山が3零式水上観測機が2だった。

 

「うむ、良い結果だ」

「あの、榛名も試してみて良いですか?」

「榛名がか……そうだな、ならこのレシピで試してくれ」

「? わかりました」

 

 榛名は渡されたレシピ通りに資材を投入してスタートスイッチを押す。すると、出てきたのは増設バルジ(大型)と増設バルジ(中型)呼ばれる装備だった。

 

「よし! なら次はコレを頼む」

「はい!」

 

 別のレシピで試してみれば、今度は九一式徹甲弾が3と開発失敗の人形が2、それから三式弾3が出てきた。

 

「今日は運が良いな、この鎮守府で最初の開発でここまで揃うなんて」

 

 そろそろボーキサイトが危険域に達するので、開発はここまででストップだ。早速だが、湊は開発された装備を誰に振り分けるかを考えなければならない。

 一応、決めているのは第一主力艦隊を最優先にする事だ。

 

「榛名、君は今回出てきた徹甲弾と水上観測機を装備してくれ」

「榛名、感激です!」

「それから翔鶴と赤城だが烈風と彗星十二型を一機ずつ、翔鶴には他に流星と彩雲を、赤城には流星改と紫電を装備させる」

「了解しました」

「羽黒には水上観測機を与えようか……問題は北上だが、千歳か千代田が来たら、だな」

 

 北上と大井に必須装備である甲標的はまだ無いのだ。

 

「明石、今回は大量に開発したが、今後も随時開発を行う。艦隊全体に上位の装備を与えられるまでな」

「了解です」

 

 いずれは大型建造も行う予定だ。大和型や装甲空母の大鳳を艦隊に迎え入れれば更に艦隊の強化が可能になるだろうから。

 もっとも、当面の課題は水雷戦隊の増員と強化だ。軽巡洋艦や駆逐艦を増やして水雷戦隊を強化しなければ遠征でも偵察でも今のレベルでは限界が直ぐに来てしまう。

 

「提督、水雷戦隊の強化は理解出来ますが、主力艦隊の強化も重要なのでは?」

「翔鶴さんの言う通りです。榛名、まだまだ強くなれますよ」

「勿論、主力艦隊の強化も必須だとも。特に榛名、君にはいずれ夕立と旗艦を交代してもらわなければならないからな」

「は、榛名がですか!?」

「ああ、今は夕立に旗艦を任せているが、本来夕立は旗艦を勤めていては実力を120%発揮出来ない」

 

 随伴艦であるからこそ、夕立はその本来の力を発揮出来るのだ。だから今の状況は余り長くは続けたくはない。

 

「史実でも戦艦榛名は金剛型で最も長く戦い抜いた戦艦だ。その潜在能力は金剛をも凌ぐと俺は確信している」

「そ、そんな榛名にそのような評価を頂けるなんて……恐縮です」

 

 それに、翔鶴も潜在能力は赤城を越える筈だ。第二次大戦中、轟沈した赤城の跡を継いで第一航空戦隊の旗艦を勤めた彼女のポテンシャルは今よりも更なる上のステージを狙えるだけのものがある。

 

「いずれ、お前達二人や羽黒達には日本最強の艦娘に名を連ねられるくらいにしたいと思っている」

 

 第一主力艦隊に据えた艦娘は、湊が感じ取った勘とでも言うのか、それによれば日本最強まで上り詰められるだけの何かを持っているのだ。

 名前こそ出さなかったが、北上や赤城も、湊の見立てではそれだけの何かがある。

 

「まぁ、その為には錬度を上げて、装備も整えなければいけないがな」

「お任せください。前原元提督の下では不可能でしたが、今の九条提督の下でなら私達はもっと強くなれる……貴方に頂いた御恩に報いる為にも、まだまだ強くなります」

 

 翔鶴も榛名も、最初の頃にあった湊への恐怖心は既に無い。今あるのは待遇改善によって前よりずっと良い生活が出来るようにしてくれて、何より艦娘の意見を無視した無茶な出撃を出さず、常に艦娘に寄り添った指揮をしてくれる事への感謝と、絶対の忠誠心のみだ。

 

「ああ、期待している。それに、俺もお前達が強くなる為なら努力を惜しまないつもりだ。だから、必要だと思ったもの、事柄があればハッキリ言ってくれ」

「「はい!」」

 

 こうして見ると、この2ヶ月で随分と湊を信用してくれるようになった艦娘が増えたものだと思う。第一主力艦隊に編成した艦娘は勿論、他の艦娘も資材を取り戻し、施設をより良くしてからというものの、随分と信頼されるようになった。

 勿論、まだまだ信頼を寄せていない艦娘も数名居るし、何より問題なのは未だ憎悪の感情を向けてくる艦娘が3名ほど残っているのだ。

 

「なぁ、榛名、翔鶴……長門と陸奥、加賀はどうするべきだろうな?」

「それは……榛名も何とかしたいとは思っているんですが」

「赤城さんが言っても加賀さんは聞く耳持たずとの事ですし、長門さんも陸奥さんも姉妹揃ってですから、正直なところ」

 

 やはり、一度徹底的に話をするしか無いのだろうか。それとも、金剛に任せてみるべきなのか。

 

「まぁ、あの三人については追々考えていくか……」

 

 時間が解決する問題ではないが、急いては事を仕損じるとも言う。性急になり過ぎないように、だがなるべく早期に問題解決に動くべきだろう。

 

「よし、じゃあ時間も空いた事だし間宮で餡蜜でも食べるか。奢るぞ」

「わぁ! 榛名、感激です!」

「嬉しい! 提督、感謝します!」

 

 一先ず考えるのを後回しにして、湊は二人を連れて甘味処間宮へと向かう事にした。しかし、湊は忘れていた……榛名と翔鶴は戦艦と正規空母だという事を。

 30分後、間宮を出た湊の財布はすっかり寂しくなってしまい、夜には妻に頭を下げてお小遣いを前借する事になるのだった。




次回は新しく着任する新建造の艦娘が登場、そして初の本格的戦闘シーンとして第一主力艦隊の出撃が。

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