紅魔女中伝   作:ODA兵士長

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少し間が空いてしまった……
夏休みだからね、仕方ないよね、うん()

申し訳ありませんが、次回ももしかしたら遅くなっちゃうかもです……
出来るだけ頑張ります。出来るだけ……←

感想、評価等くれると更新ペース速くなるかもです(露骨なコメ要求

それでは本編です。








第25話 幽霊楽団

 

 

「霊夢、いきなり上空に向かうなんて、一体どうしたんだ?」

「私は風上に向かってるだけ」

「風上?」

「花びらが舞うのなら、風の吹く方から舞ってくるはず……そういうことでしょう、霊夢?」

「ええ、正解よ。もうすぐ雲を突っ切るわ」

 

 やがて霧のようなものに包まれた。

 今は夜。

 その暗い中で目視はできなかったが、おそらく雲の中にいるのだろう。

 

「春ですよー」

 

 雲の中で声がした。

 声の主の姿を目で捉えることはできなかった。

 

「ありゃ春告精だな」

「春告精?」

「その名の通り、春を告げる妖精さ。こんな寒い時期にはまだ見かけないんだがなぁ……」

「へぇ……」

「さあ、そろそろ雲を抜けるぜ」

 

 魔理沙がそう言うと、間も無く雲の上に出た。

 

「上空の方が暖かいなんて……」

 

 雲を抜けると、そこは月明かりに照らされており、かなり明るく感じた。

 薄暗い色をした雲が、少し輝いているようにも見えた。

 

「素敵すぎて涙が出るわ」

 

 無意識的に、私は呟いていた。

 本当にそれは幻想的な風景だった。

 

「それにしても、雲の上まで桜が舞ってるのは何故?」

「空の上の、そのさらに上から舞ってるって事か?」

「そんなことが……」

「ん? 何だあそこは……?」

「結界が張られてるわね。私の知らない術式で」

「ほえー、この結界は凄いな。素人にはさっぱり解き方が分からないぜ」

 

 魔理沙は少しニヤりとして言う。

 

「何を隠してあるんだか」

「えへへ〜」

 

 唐突に背後から声が聞こえた。

 私たち3人は、驚きながら振り返る。

 

「企業秘密」

 

 空間的な能力を持つ私も、勘の鋭い霊夢も、そしてもちろん魔理沙も、背後に気配など感じていなかった。

 振り返って目視した今でも、気配は感じられない。

 しかしそこには、赤い服を着た少女がいた。

 

「いつからそこにいた?」

「ついさっきよ」

「お前は誰だ?」

「どうでもいいでしょ?」

「……ああ、どうでもいいぜ。どうせ倒せば扉が開くんだろ?」

 

 魔理沙はその手に八卦炉を持つと、少女に向けた。

 

「なんだか物騒ね。リリカのお友達?」

 

 またしても気配のないところから声が聞こえる。

 赤服の少女を"リリカ"と呼ぶ、黒服の少女。

 その横には薄桃色の服を着た少女もいた。

 

「お友達だぜ」

「お友達よ〜」

「それは良かったわ。ようやくリリカにもお友達が出来て」

 

 桃色服の少女が言った。

 それはとても嫌味っぽく聞こえたが、リリカは特に気にしてない様子だった。

 彼女には本当に友達なんていないのかも知れない。

 友達という概念が存在するかすら分からないが。

 

「で、早速だが。友達のよしみで、この結界を解いて欲しい」

 

 そして魔理沙が、さらに嫌味っぽく問う。

 

「その前に一曲聴いてからにしない? 友達のよしみで」

「お代は見てのお帰りよ。友達のよしみの所為で」

「よしみ~」

 

 3人はふざけた様子で、立て続けに言った。

 

「どうにも、あんたらじゃこの結界を解けそうに無いぜ」

 

 魔理沙は深くため息を吐く。

 

「さぁ演奏開始よ~。姉さん、やっちゃいな!」

「お友達なんだから、たまにはソロでやりなさいよ」

「うぇ~」

「わかったよ、いつでも手助けする」

 

 3人の少女は、魔理沙や私たちの事などお構いなしに話を進めた。

 どうやらリリカと呼ばれる赤服の少女が、魔理沙と戦うようだ。

 魔理沙はもう一度深くため息を吐く。

 

「私も舐められたもんだぜ」

「やるの? 意味なさそうだけど」

「ああ。売られた喧嘩は買わないとな」

「まあいいけど、私達は先に行ってるわよ?」

「ああ、咲夜を宜しくな」

「分かってる。ほら咲夜、捕まって」

「ええ、ありがとう」

 

 霊夢が差し出した手を、私は握る。

 すると持ち上げられるようにして、箒から私は降りた。

 私はポケットから例の球体を1つ取り出すと、サイズが変わり大きくなったそれに乗った。

 この球体は、どういう仕組みか、浮遊している。

 その上に乗る事で、霊夢にかかる負担を減らそうとした。

 

「その飛び方、なんだか懐かしい気がする」

「え?」

「なんでもないわ。ほら、行くわよ」

「ええ」

 

 私は霊夢に連れられて、結界の方へと向かった。

 

「この結界、どうするの?」

「どうもしないけど?」

「それじゃあ前に進めないでしょう?」

「まあ……来てみなさい」

「……え?」

 

 霊夢は結界を上から通過した。

 意味のない結界に、私は驚き、呆れながらも少し笑ってしまった。

 

「お粗末な結界ね」

「まあ、結界なんかで足止めする気はないんでしょ」

「へぇ……」

「そろそろ異変の犯人に会えるかしら?」

 

 

◆◇◆

 

 

「あの人間、強いね」

「ええ、とっても」

 

 薄桃色の服の少女と、黒服の少女が、魔理沙達の弾幕ごっこを見ながら言った。

 彼女達の名前は、メルラン・プリズムリバーとルナサ・プリズムリバー。

 魔理沙と戦う赤服の少女の名は、リリカ・プリズムリバー。

 彼女達は、とある人間の少女から生み出された騒霊(ポルターガイスト)の三姉妹である。

 

「リリカ、負けちゃうかしら」

「負けちゃうでしょうね、例え私達が手助けしたとしても」

「姉さん、随分悲観的ね」

「私はメルランほど楽観的にも、リリカほど狡猾にもなれないだけよ」

「嫌味な言い方するなぁ」

「……あ、やられた」

「そろそろ手助けに行こうよ、姉さん」

「そうね。やられに行きましょうか」

 

 

 ––––大合葬「霊車コンチェルトグロッソ」

 

 

◆◇◆

 

 

 私と霊夢は、階段を登っていた。

 明るく照らされているようだが、不思議と先の見えない、かなり道幅の広い階段だった。

 飛んで行くには危険すぎると判断したため、自らの足で階段を登っていた。

 

「咲夜」

 

 唐突に、霊夢が私の名前を呼ぶ。

 

「何?」

「あんたさ……結構前の話だけど、私に興味があるとか言ってたわよね?」

「ああ、言ったわね。そんなこと」

「あん時は気持ち悪いって思ってたんだけどさ……今なら、分かる気がする」

「……?」

「私もあんたに興味がある。というか最近湧いてきた」

「あら、両想い?」

「そうかもね」

 

 私は少し揶揄(からか)う様に言ったのだが、霊夢は恥ずかしがるわけでもなく冷静に答えた。

 なんだか、私の方が恥ずかしくなってしまった。

 私の視線は、不自然なほど前を向いている。

 

「あんた、自分のこと何も話さないでしょ?」

「それは貴女も同じことじゃなくて?」

「だって、聞かれないから」

「私も同じよ。聞かれれば答えるけど、自分から話そうとは思わない」

「ふーん。ま、そんなもんよね」

 

 私たちは階段で少し息が上がっている。

 その上会話もしていると、少し疲れを感じていた。

 

「この異変を解決し終えたら、あんたの話聞かせてよ」

「貴女の話も聞かせてくれるなら」

「私の話なんて、面白くないと思うけど」

「私だって、面白いことなんてないわ」

「それでもいい。約束よ?」

「ええ、分かったわよ」

 

 私達はそこで足を止めた。

 休憩を取るわけではない。

 前に……何らかの気配を感じた。

 

「貴女達……人間ね? ちょうどいい。貴女達の持ってる、なけなしの春を全て頂くわ!」

「そんな所に居ないで、もっと前に出てきな。顔が見えないわよ?」

 

 うっすらとだが、気配を感じる。

 ハッキリと声も聞こえる。

 しかし姿形は、暗さのせいか、ぼんやりとしか伺えない。

 

「顔なんて見えなくていい。私は、春を渡してくれさえすれば、それでいいの」

「残念だけど、渡すつもりはないわ。春を持ってれば、少しは暖かくなるから」

「暖かく……? それに何の意味が?」

 

 違和感を覚えた。

 やはり目の前の彼女もまた、人間ではないのだろう。

 しかし、どこか妖怪とも違う気がする……

 その違和感は、先程出会った3人の少女にも感じたものだった。

 

「この不吉な感じ……あんまり喜ばしくはないわね」

 

 そう呟く霊夢も同じことを感じていたのだろう。

 

「もしかして、貴女達……あぁ、なるほど」

 

 少女は何かを納得したように、首を縦に振った。

 そしてやっと姿を現した。

 少女は銀髪のボブカットで、白いシャツに緑色のベスト、そして同じく緑色のスカートを履いていた。

 少女の背中に二本の剣が背負われているのも確認できる。

 私と同じく、刃物を使うタイプだろうか?

 

「みんなが騒がしいと思ったら、生きた人間だったのね」

「……みんな?」

「あら、貴女達には見えてない? まあ、いいけど」

「怖いことを言うのね。……まさかと思ったけど、ここって……」

「昔は生きていた者が住む処よ」

 

 霊夢は少し察しがついていたようだが、私には想像もつかなかった。

 しかし違和感については合点がいった。

 相手が幽霊だから気配が薄かったのだろう。

 ということはつまり、先程少女が言っていた"みんな"とは、幽霊のことなのだろうか?

 

「ようやく、原拠まで辿り着いたようね。丸一日かかってしまったわ」

 

 だがしかし、私にとって別に幽霊など恐怖に値しなかった。

 気味が悪いとは思うが、それ以上はない。

 そんな私には、やっとここまで来れたという思いが強かった。

 

「こんなところまで来て、余裕あるわね。ここは白玉楼。死者達の住まう処よ?」

「それは分かってるって。でも疲れたのよ。さっさと異変を解決させてもいいかしら」

「随分と呑気なのね。でも、生きた人間の常識で物を考えると、痛い目に遭うわ」

 

 少女は私達をキッと睨みつける。

 私に限らず、霊夢も緊張感はなかった。

 それに怒っているような睨み方だった。

 敵なのに。

 

「ねぇ、こんな言葉を知ってる? "死人に口なし"」

「ほんと、よく喋る幽霊だ」

「私は半分は幽霊ではない!」

「……え、そっちを訂正するの?」

 

 私達が少し揶揄うと、少女は真に受けて怒り出した。

 それだけでも十分に面白いのだが、怒る点がさらに可笑しい。

 私にはこの少女が、なんだか可愛いとすら思えてきていた。

 

「まあ何でもいいわ。大人しく春を返してもらおうかしら?」

「あと少しなのよ」

「少しでもダメ」

「あと少しで西行妖(さいぎょうあやかし)が満開になる。普通の春じゃ絶対に満開にはならないのよ」

「ダメだってば」

「あなたの持っているなけなしの春で、西行妖もきっと満開になる」

「話聞いてる? そんなもんの為に、私は寒い思いをしてきたのよ」

「ここは暖かいでしょ?」

「そういう問題じゃないと思うんだけど……まぁいいわ。死人に口無しよ」

「死人に口無しだわ。その春を全て戴くまでよ」

 

 その言葉は、暗に私を殺すと言っているのだろう。

 

「咲夜、あんたが戦うの?」

「ええ。貴女はこの先にある西行妖とやらを何とかしてきなさい。異変の犯人も、そこにいるだろうから」

 

 おそらく、異変の犯人は西行妖の所にいるのだろう。

 それは容易に想像がついた。

 異変を起こすキッカケにもなった、満開にしたいとしている西行妖から離れるとは思えない。

 それに目の前の少女の風格からして、彼女が異変の犯人だとは思えなかった。

 使用人とか雑用係とか……何だか私に近いものを感じていた。

 

「分かった。でもあんた、さっきの約束、守りなさいよ?」

「分かってるわよ。まさか、私が死ぬとでも思ってるの?」

「いや、思わない。私でも殺せなかったんだもの。でも……」

 

 ––––なんだか、嫌な予感がする。

 

 霊夢の目がそう言ってるような気がした。

 

「はぁ……大丈夫。お嬢様を殺すまでは死ねないのよ、私は。だから、安心して行って来なさい」

「……わかった、また後で」

 

 少し不安げな顔をしながらも、霊夢は颯爽と飛んで行った。

 少女はそれを阻もうとするが、私はナイフを投げて妨害する。

 

「ッ……」

 

 少女は(すんで)のところでナイフを避けると、再び私を睨みつけた。

 

「ところで……」

 

 私は新しくナイフを手に取ると、それを少女に向けて言う。

 

「この私のナイフは、幽霊も斬れるのか?」

 

 少女も応えるように刀を抜いた。

 

「妖怪が鍛えたこの楼観剣に……斬れぬものなど、少ししか無い!」

 




いつもご愛読ありがとうございます。
この度少しご報告がありまして、あとがきを書かせて頂きます。

皆様の応援のおかげで、なんとこの『紅魔女中伝』のUA数が9000を超えました。
本当にいつもありがとうございます。

そこで感謝の意を込めて、UA数1万突破した暁には、記念企画を行おうと思っています。
ただ、あんまり具体的な良案は浮かんでいなくて…………

もしよろしければ、皆様の力をお貸しください。
詳しいことは作者の活動報告にて記載しております。
是非、作者の活動報告まで足を運んで下さると幸いです。

長文失礼致しました。

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