女性サーヴァントしか召喚できないマスターの話をするとしよう   作:れべるあっぷ

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暖かい目でよろしくお願いします。


彼の話をするとしよう

 うたかたの夢。

 

 幾千もの星の数ほどありふれた夢。

 

 この最果ての地で私は夢を見る。

 

 日課であり趣味であり暇つぶしであり、これ以上にない極楽。

 

 これは人理を継続させるために奮闘するカルデアの、二人目のマスターのとある苦難に満ちたお話しである。

 

 

 

 

☆――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「あぁあああああああああっ!! ちくしょおおおおおおおおおおおっ!! 出ないっ!! まったく出ないっ!! 欲しい鯖が召喚に応じてくれないっっ!! どうしてだ!! これは最早一種の呪いか!! あれか!! 人理修復するためにもっと課金しろってか!! 貢げってか!! でも残念ー!! 俺のカルデアには課金システムなんか搭載されておりませーん!! ダ・ヴィンチちゃんに課金システム作ってもらうしかありませーん!! 作ってくれないかなー課金システム!! 人類を救うためだ!! 全財産75万ほどしかないんだが全額課金してもいいんだぜ!! えっ?? 足りないっっ?? 総人口約74億人もの命を救うのにお前の全財産などたかが知れてる?? まっ、是非も無いよねっ!!」

 

 冒頭から見苦しいのだが……

 彼はこの世の終わりかのように絶叫していた。周り見ず、羞恥など一切お構い無しに、成人したばかりのいい大人が無様にも喚いていた。

 それはいつもの見苦しい光景であった。

 

「英之助先輩、召喚システムに八つ当たりしないでください。それとカルデアは貴方の所有物じゃありませんし、今召喚したばかりのサーヴァントに失礼極まりない態度です」

「そーですよ、英之助さん。デリカシーなさすぎ~」

「フォウ………」

 

 彼は共にサーヴァントの召喚を見守ってくれていた2人の少女と1匹の小動物(キャスパリーグ)に非難された。

 

「あ、あの、マスター……その……私じゃお役に立てないのですか……いえ、皆まで言わなくて結構です。その反応を見るからにどう見ても私じゃ役不足ですよ、ね……」

「あ、すんません。そういう意味じゃないんだ、ブリュンヒルデさん……もちろん、貴女様の力も必要ですともっ!!」

「さん付けはいりません……マスター。ですが、もう、私に優しくしないでください……」

「オーマイガー………」

 

 英之助さんサイテーと、野次が彼にトドメを差した。

 

「ブリュンヒルデさん、この人の発言はあまり気になさらないでください。いちいち気にしてると面倒です」

「そーそー、この人、こんなんだけどいろいろ事情があるだけだから。マスターとしての実力はそこそこ頼りにできるし……それに貴女も可愛がってくれるよ、きっと」

「だといいのですが……いえ、やっぱり困ります」

「フォウ……」

 

 少女2人によるこの人呼ばわりだとか、ただ相槌しかうたないペットは置いといて、四つん這いになってがっくりとうな垂れ意気消沈している彼はぶつぶつとイジケていた。

 

「また女性サーヴァントかぁ……どうして、いつもこうなんだろうなぁ………笑えるほど不幸だよなぁ………ふふっ、ふふふふふふっ……」

「「「「………」」」」

 

 人理継続保障機関フィニス・カルデア―――通称:カルデア。

 魔術だけでは見えず、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐ為の各国共同で成立された特務機関。表面上は標高6,000メートルの雪山の地下に作られた地下工房が彼らの活動拠点であり、英霊を使い魔(サーヴァント)として召喚し、今はたった2人しかいないマスターと共に未来を取り戻す壮大な物語が始まっていたのだが……

 

「ふふふっ、ふははははははははっ、ふわっはっはっはっはーーー………ファッキュゥゥウウウウッ!!」

「マスター、英之介先輩がついに壊れました!! エネミーと判断し排除するのもやぶさかですが……っ!!」

「落ち着いてマシュ!! これはいつもの発作よっ!!」

 

 ワケあってカルデアに召集されたマスター候補47名の内、どちらとも一般人採用のごく普通の、青年の方が壊れた。否、いつものことであった。

 

「こ、これが……これからお世話になるマスターの、真の姿……っ!!?」

「フォ、フォウ……っ!??」

 

 今回なけなしの聖霊石でやっと出たサーヴァントもやはり女性サーヴァント。彼が守護英霊召喚システム・フェイトを回すと必ずといっていいほど女性サーヴァントしか出ない。

 それはもう1人の少女にも当てはまるのだが……

 現在のカルデアは職員を除いて、彼らマスター達の召喚に応じ馳せ参上したのは女性サーヴァントしかいないというのが現状だ。(職員の8割も女性)

 云わば、ここが桃源郷・カルデア。本来なら男性諸君には羨ましすぎるハーレム。ビバ・ハーレムっ!!

 

「マ、マスター、事情は大体把握しました。ですが、何がご不満なのですか?」

「うるせー!! 俺は知っているぞブリュンヒルデ!! お前もその内、俺を誰かに重ねて合わせて恋わずらい発症させるんだろ!!」

「そ、それは……いささか、自意識過剰じゃありませんか??」

「じゃあ俺の目を見て言ってくれ!! シャレになってねー!!」

 

 初めは彼もうひょ~ハーレムサイコーと、欲望にまみれたブタみたいな男だった。

 しかし、現実は甘いようで甘くなく、彼の理想郷は潰えて、いつしか男性サーヴァントを欲っするようになっていた。(ホモではない)

 そして、その理由が、彼が女性サーヴァントに敏感に反応する脅威が、ついにやってきた。

 

「「「うふふ、ますたぁ♥」」」

「………」

 

 彼がサーヴァントを召喚するためにココにいることは、他のサーヴァント達も知っている。

 またマスターがどこぞの女性サーヴァントを召喚することは彼女らにも知れ渡っている。

 

「あらあら、これはこれは……またお綺麗な方をナンパ……もとい、またお持ち帰りしてきたのですね。母は悲しいです……とっかえひっかえ、誰彼問わず小娘に夢うつつを抜かす息子に育てた覚えはありません。およよ……」

「………」

 

 彼は貴方の息子じゃありませんよー。

 

「マスター、男性サーヴァントを召喚するとおっしゃったじゃないですか、また嘘をつきましたね。これで何度目ですか……うふふ、嘘をついたらどうなるか、約束しましたよねぇ?」

「………」

 

 さて、どうなるんでしょうね………。

 

「マスター。あんな女よりわたしのこと、いっぱいさわってください」

「………」

 

 いろいろアウトォォオオオオ!!

 主人公よりも欲望にまみれたな肉食系サーヴァント3人衆が素早く彼を包囲した。

 

「ま、まあ、待ちたまえ君たち、話せばわかる。冷静になれ、状況を見ろ、いつも言っているだろ? 暴力では何も生まれない。解決できないこともあるんだよ!! そうだろ!!」

「うふふ、だからマスターのお部屋でお話しするのではないですか」

「お話しするだけなら縄はいりませんよね頼光(らいこう)さん!? 新たな宝具開発でも試みるつもりなんですかそれは!?」

「あらやだ、母にマスターの息子を開発させるだなんて、困った子ですわ……」

「いやいや、アンタどんな耳しとるんだ……っ!!?」

「それよりマスター、頭撫でてください」

静謐(せいひつ)ちゃん、今それどころじゃないからね!!」

「ささっ、わたくし達の愛の巣に参りましょう。今日は寝かせませんからね♥」

「きよひー、その手に持ってるのは?」

「はい、マムシドリンクです♥」

「それはアカン………」

「マスター撫でてください」

「た、たすけて、ブリュンヒルデもん!!」

「え、と、その……」

「新参者、わたくし達の邪魔をしないのであれば、マスターの取り扱いをレクチャーしてさしあげますわよ?」

「耳を貸すなブリュえもん! 俺の味方をしてくれたらお前の大好きな邪ンヌお姉様の寝室へ案内しよう!! そうだ、俺の権限で同室にしてもらえるよう邪ンヌお姉様に頼んであげてもが……っ!?」

「撫でて、ほしいです……」

 

 彼の口は奴等の手によって塞がれた。

 

「「「御託はいいですからマイルームに行きましょう、マスター♥」」」

「んんんんんんゆー………っ!?」

 

 人理の特異点を既に五つも修復した者の扱いとしては、なんともムゴい。

 

「流石サーヴァントとの絆レベル10なだけあるよねー」

「絆メーター振り切ってますけどね……」

「じゃ、マシュ、私達も部屋に戻ろっかー」

「はい、先輩♪」

「フォウ………」

 

 こうして今日も今日とて平和な? カルデアの1日は過ぎ、夢から私も覚める頃合だ。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――☆

 

 

 

 

 さて、今日の話はここまで。

 

 また明日、気が向いたら…いや、彼が生きていたら彼の話をするとしよう。

 

 私が夢で見た、カルデアの二人目のマスター・逢道英之助(あいみちあいのすけ)くんの女難に満ち溢れた物語を、ね。

 

 ただ、一言言わせて貰えれば、男性サーヴァントが召喚されても現状は変わらないだろうけども。




とあるライン風SSを読み漁っていて、自分も書きたいなーという衝動に駆られて筆を取りました。
作者は第五特異点までクリアした初心者で六章から先は知りません。ので、マーリンとかキャスパリーグが何者なのかイマイチ理解していないところとかあったり、そんな描写が多々あるかも知りません。
一ヶ月に一回投稿予定のペースを目指して頑張ります。
見切り発車もいいところですが、最後までお付き合いの方よろしくお願いします。

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