最終章です。
001
これが、最後のお話だ。
僕にとっても──みんなにとっても。
僕が語ることの出来る、淡い青春の終わりを告げるお話。
僕はこの物語を──七海千秋というかけがえのない親友と出会えたあの冬から始まるこの一年間を──語り終えなければならない。
語り終え、そして片をつけなければならない。
そういう義務をきっと僕は課せられているのだろうし、また、自分自身でもそうしなければならないのだと切に思う。
強い意志を持って、義務を感じる。
思えば、強い意志だなんてものを持ったことがない僕だけれど、今回ばかりは、そんな不慣れな心構えを持たなければならない──この事件は。この最悪の結末は。僕自身が招いてしまったのではないかと思うところがいくつもあるのだから──その責任を償うというわけではないし、償えるなんて到底思いはしないが──僕に出来ることならなんだってしたい。
そういう気持ちが、この話を語らうのに強く強く影響しているように思えるし、案外そうでもないかもしれないとも思う。何か他の意思を隠すための隠れ
流石に一字一句間違わずとは言わないが、いくらなんでもたった一人、一個人である僕だけだと、この世界中を巻き込み混乱と絶望に突き落とした一連の事件、
一人だけじゃ、無理がある。無謀極まりない。
だから、僕はこのお話を語り終えれば彼女たちに引導を渡そうと思う。
希望へと進み、また絶望への道を歩んだ彼女たちにだ。
それならきっとこの物語を語り終えることができるはずだと僕は信じているし、僕が語ろうとしても語りきれなかった部分や、また偶発的に生じてしまった語弊などを補えあえるだろうから、やはり、彼女たちの視点を交えることは必要だ。
僕が学生の頃──ついぞ最後までできなかった、助け合うという精神。
もっと僕が大人になれていれば……あんな結末を迎えることはなかったのかもしれないと、思う夜は少なくない。
だから、僕の仕事はこの物語を。
一年間続いた平和を語り終える。
この後に続く、絶望的で、希望の光なんて一切見えないお話の前置きを──語り終えるだけ。
となると、これから僕がする話は本編に対する前置きなわけだから。
前日譚であり前夜祭な訳だから。
前提としてこのお話を通し、伝えないといけない。
僕が知る限りの情報を、伝えねばなるまい。
人の本質的な死というものは、肉体的なものが失われたことではなく人に忘れられてしまうことだという──既に死んでしまった彼らが誰からも忘れ去られてしまい、その人生を知られることなく本質そのものも死んでしまうというのはあまりにも悲しい。
だから、どうか彼らのことは忘れないでほしい。
──これだと、僕が何を伝えたいのか少し混ぜこぜになってしまったように思えるけど、結局はこれ自体ただの前提なのだから、リラックスして聞いてもらっても構わない。
──僕が大学受験に挑戦するという事実を、いまだによく飲み込めていなかった頃の話だ。受験まであと一ヶ月。茶話会という予定をToDoリストに書き込み始めた、ちょうど二月のことだった。
冬の終わり。
僕らは絶望と邂逅することになる。
苦い苦い、今にも吐き出したくなるような絶望の味を、知ってしまうのだ。