それでは前回のあらすじ
結羽視点の過去が明かされた。
それではどうぞ!
side優也
「結羽。欲しい物とかあるか?」
「ん? どうしたの?」
「簡単なアンケートです」
実はもうそろそろ結羽の誕生日だ。去年も結羽の家でパーティをした。今年もやることになるだろう。
その際にプレゼントするものなんだが……。
「欲しい物か……特にないかな? 欲しい物はもう手に入れたし」
えへへと笑いながらそんな可愛いことを言ってくれる。いや、可愛いんだけど困る……非常に困る。あれだよあれ、人に「何食べたい?」って聞いたら「何でもいい」って言われた時くらい俺は困っているぞ。
「ねぇ、なんで急にそんな事を聞いて来たの?」
しまった。勘づかれたかっ! 俺は昔からこういう隠し事をするのが苦手だ。すぐバレてしまう。
ここは何としても誤魔化そう。
「まぁ、七海の誕生日がもうすぐだからお見舞いに持っていこうと思ってな」
嘘だ。本当は1月8日だからまだまだ誕生日では無いんだが、結羽に言ったことは無いからバレる事は無いだろう。
「そうなの? うーん……女の子が喜ぶものと言えばぬいぐるみかな? うん。それがいいと思うよ」
「そうか。ありがとうな」
「ぬいぐるみはどの女の子でも好きだと思うよ」
どの女の子でもか……。確かに結羽の部屋には結構ぬいぐるみがあった記憶がある。結羽も好きなんだろう。
だが、俺はイマイチそこら辺のセンスがないんだよな……。
「で、私ですか?」
「ああ。もう露木ちゃんしか頼める人は居ないんだ! 頼む!」
俺は今、結羽の言葉を頼りにしながら露木ちゃんにぬいぐるみ選びを手伝ってもらおうと相談していた。
「そうですかそうですか。告白されたのにそれを振り、違う人と付き合ったのにも関わらず振った相手を頼るなんて……馬鹿ですか?」
「ば、馬鹿!? っておい! 俺は露木ちゃんに俺らが付き合ってるって言ったことは無いんだけど!?」
俺が今露木ちゃんに言ったことは結羽がもうすぐ誕生日の事、プレゼントはぬいぐるみにしようと考えてる事。そしてそれを手伝って欲しいという旨。これしか言っていない。
もちろん過去にも露木ちゃんには結羽と付き合った事など言ったことは無いのだ。
「寧ろ隠す気あるんですか? 馬鹿ですか? そこまで結羽先輩への思いを語っておきながら付き合ってないとほざき出したら強○魔に襲われたと大声で言うところでしたよ」
「やめて!? 俺はそんなことやってないからデマを流して俺の好感度下げようとするのやめて!?」
あと、結羽の耳に入ったら確実に殺される。付き合ってから数日しか経ってないのにそんな噂が広がったら確実にゴミのような目を向けられる。いや、いつであろうともゴミのような目を向けられることには変わらないけど。
「で、先輩は私の失恋の傷口を抉る気ですか? 悪趣味ですねお姉ちゃんに言っていいですか?」
「色々とヤバそうな気がするのでやめてください」
神乃さんに俺がそんなことをする鬼畜だと思われてしまったら確実に色々とヤバい。生徒会長の運命とやらで面白がって俺の愉快な仲間たちに言いふらしてしまったら俺は確実にあいつらからやばい目で見られる。結羽に至っては何するか分からない。
「まぁ、私だから大丈夫ですけど彼女さんがいるのに他の女の子とは二人きりで会わない方が良いですよ? ましてや昔、好意を抱かれていた相手なら押し倒されてもおかしくありません。力技で奪う人も少なくありませんから」
そうなのか。普通に俺にとっては可愛い後輩って考えだからあんまり気にしてなかったが、露木ちゃんにも告白されたもんな。それに女の子だもんな。
「わかった。今度から気をつけるわ」
「それで宜しいです」
うんうんと頷く露木ちゃん。
「それでは行きましょうか」
「行くってどこに?」
「ん? プレゼント選びですが」
「え? 手伝ってくれるのか?」
純粋に驚いた。あれだけ言ってたから付き合ってくれないかと思っていたんだが。
「私は一度も断った記憶はありません」
確かに断られてはいないけどさ。あれだけ言ってたからな。勘違いなら良かった。
「んじゃ、御教授お願いします」
そう言って俺らのプレゼント選びが始まった。
side結羽
「もうすぐ誕生日かぁ……」
私は去年の事を思い出す。
「去年は優也、ハンカチをくれたっけ」
そのハンカチは机の引き出しに大事に保管している。汚したくないからだ。
そして今年もその時期だ。
今年は色々あったし優也は私の誕生日の事を忘れてるかもしれないなぁ。
そう考えながら私は貯金を取り出す。
私はアルバイトとかしていないからあんまりお金は無いけどコツコツ貯金していたんだよね〜。そしてこれは自分へのお祝い。ずっと前から欲しいと思っていた服をやっと今日、買いに行くことが出来る。
「ふふっ」
考えただけでも笑みが零れる。
その服を着て優也の前に出たらなんて言うかな? そんなことを考えてわくわくする。今から服屋に行くのが楽しみすぎる。
そして私はお金を財布に入れて家を出た。
今の時間は何故か優也も居なかったため、お父さんはお仕事、お母さんもお仕事で誰も居ないからちゃんと施錠する。
そして数分間歩くと服屋が見えてきた。
ここら辺は確か優也の行きつけの喫茶店があったな……。最近は休みの日の昼間はよく昼間は喫茶店に行って「落ちた学力を取り戻してくる」とか言ってたな。
今日も知るかもしれない。と少し喫茶店の中を窓ガラス越しに見るとやはり優也が居た。だけじゃ無い。何故か露木ちゃんまで居る。しかも楽しそうに話して。
私はショックだった。
そして私の頭の中に一つの単語が浮かんだ。それは
私は悲しくてその場を思わず走り去ってしまった。
はい!第89話終了
いやー。大変なことになりました。
結羽に誤解された優也。果たしてどうなるのか?
それでは!
さようなら