こんな僕に彼女は必要なのだろうか?   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 そうか……お前だったのか。

 俺が助けた女の子は……結羽。

「んじゃ! 気合い入れていくか」

 俺の友達……いや、一目惚れした女の子の元へ。



 それではどうぞ!


第87話 俺の強がり

side優也

 

 俺は走って家に帰ってきた。

 

 家に帰ってくると結羽がテレビを見ながらアイスキャンディを齧っていた。

「む? 早かったね」

「ああ、色々あってな」

 そう言って俺は結羽の向かいに座る。

 

「良いな〜。LIFEのメンバーとアポ無しで会えるんでしょ? 私も幼馴染だったらな〜」

 羨ましそうに言う結羽。

「別に……お前も昔会ったことあるだろ」

 俺は冷静な口調で結羽が見ていた恋愛ドラマの方に視線を向けながら言った。

 

 面と向かって言うと照れくさくて無理だ。

 

 すると数秒間だけ静寂に包まれた。

 結羽をチラッと見ると物凄く驚いた表情で石と化してしまっていた。もちろん比喩だが。

 すると結羽は手に持っていたアイスキャンディを落としてしまった。

「結羽。落とした」

 そう伝えると漸く自分がアイスキャンディを落とした事に気がついて「はわわわ」と言いながら片付け始めた。

 

 重症だ。

 まさか俺が当てるとは思わなかったんだろうな。まぁ、今までの行動を考えたら当然なんだが。

「ゆ、ゆゆゆ、優也!? 熱でもあるの!? 今日は寝てて! 看病は私がっ!」

「ちげーよ。なんでそう思った」

「だって、珍しく優也が鋭い事を言ってきたから……。もしかして全部思い出した?」

 俺は静かに頷いた。

 

 そして俺は凌太の絵を取り出した。

「まぁ、凌太にこの絵を見せられるまでは気が付かなかったんだけどな」

「……上手い」

 結羽もこの絵の上手さに目を点にして驚いている。

 

 この絵の上手さはもはやこの紙に本人が居ると言っても過言ではない。

 色が無いが、生きているかのような感覚がある。

 

「まぁ、そんな訳だ」

「ま、まぁ、優也にしては良くやったと褒めてやろう」

 結羽は気づいてもらえて嬉しいのか、いつもは使わない口調でノリノリになっている。

 

「それにしても……えへっえへへへへ」

 両頬に手を当ててえへえへと笑う結羽。今までに見せたどの笑顔よりも嬉しそうな顔だ。

 多分結羽はずっと俺が思い出すのを待っていたんだろう。

 

「それにしても……すまん!」

 俺は膝に手をついて頭を下げた。

 すると結羽は驚いて笑うのを辞めて、驚いた表情でこちらを見てきた。

「な、なんで謝るの?」

「まぁ、そりゃ……ずっと俺が気がつくのを待ってくれてたんだろ?」

 不思議そうな声色で聞いてくる結羽に理由を説明する。

 

「まぁ、そうだけど謝る事は」

「いや、最低だ。絶対に許されない事をした」

 俺は何度も何度も謝る。辞めてと言われても俺は謝る事を辞めない。

 なぜなら俺の気が済まないからだ。

 ここで結羽の言うことを聞いて辞めても俺の気が収まらないだろう。

 

「な、なんでそんなに謝るの?」

 今度は俺が謝ってる理由を聞いてきた。

「まぁ、それは俺が最低だからだ」

「忘れていた事がですか? それなら1回会っただけだし、あの頃は自分でも地味な子だったって分かってますから」

 そういう事じゃないんだ。

 俺だってそれだけだったらそこまで気に病まないさ。許してもらったらもういいとでも考えたさ。

 

 だけど、ダメなんだ。俺は最低だ。

 だから俺は謝り続けなければならない。

「う、うぅ……。絆成 優也っ!」

 急に結羽は俺のことをフルネームで呼んできた。

 その声に合わせて下げていた頭を上げる。

 

「私はもう怒ってません」

「はい」

「もういいんだよ? 謝らなくたって」

「だが」

 だが、まだ俺は謝り足りなかった。

 

 俺にも俺なりの考えというものがある。

 例え、結羽がもう怒ってないとしても、俺は最低なことをしたんだ。

 このまま罵られ、結羽に嫌われてもおかしくない事を……。

 

 だって……俺は──

「一目惚れした女の子の容姿を忘れてしまっていたんだからなぁ」

 俺は小さく。だけど、結羽に聞こえるような声で言った。

 

 すると結羽は顔を真っ赤に染めてまたもや固まってしまった。

 数秒固まるとプルプルと震えだし、何とか声を絞り出す。

「そ、それって……っ!」

 結羽は俺とは違って鈍いわけじゃない。俺だったら気が付かなかっただろうが、結羽はすぐに気がついたのだろう。

「そうだ。結羽。俺はお前に一目惚れしたんだ」

 俺はその事実を伝えた。

 

 だから俺は最低な男なんだ。

 一目惚れした女の子なのに忘れるなんて……。

「最低だよな。勝手に一目惚れしておいて忘れるなんて」

 

 ぼんやりと一目惚れしたことは覚えていた。だが、俺は誰に一目惚れしたのかを忘れてしまっていたんだ。

 最低だよな。

 だから俺はずっと自分を責め続けていた。

 

 だが、結羽は自分を責めている俺と目線を合わせて、それから俺の頭を撫で始めた。

「全然最低じゃないよ? むしろ思い出してくれてありがとう。そして、あの時助けてくれてありがとうね? ずっとこれが言いたかった。やっと言えたよ」

 すると結羽は涙を流し始めた。

 だが、結羽の表情を見ると直ぐにそれは怒りや悲しみによるものでは無いと分かった。

 

 嬉しそうだ。

「ねぇ、優也。私から気持ちは伝えたよ? 返事が欲しいな」

 返事と言うのは恐らくあれの事だろう。

 だが、結羽の潤んだ目や期待した表情が俺の悪戯心に火をつけた。

 

「返事ってなんのだ? ちゃんと言ってくれないと分からないな」

 多分今の俺はニヤニヤしていることだろう。

「そもそも、返事が必要な質問は一回もされていないしな」

「うぅ……。優也の意地悪……」

 確かに意地悪だったな。

 だが、結羽の表情が俺にそうさせたんだ。なんだよあの小動物を彷彿とさせる可愛い顔は。

 

「じ、じゃあ言うね?」

 結羽は意を決したのか、泳がせていた目を俺に合わせて言った。

「私は、優也。絆成 優也の事が大好きです。私と付き合ってください」

 そう言われて俺も気が引き締まる。

 

 次の一言はもう既に考えている。

 だが、言うのは緊張する。心臓がバクバク鳴り、その音が煩く、鬱陶しいと感じる。

 そして俺が言った言葉は──

 

「俺も……好きだ。俺からも言う。俺と付き合ってくれ」

 

 そう言った瞬間、元々涙を流していた結羽の涙腺は更に緩くなったようで更に大粒の涙を流し始めた。

「おいおい。どうしてそんなに泣くんだよ」

「だって、だってぇ……っ! 夢だったから……! 私、優也とこうなるのは夢だったからっ!」

 とても嬉しいことを言ってくれて俺は思わず結羽の事を抱きしめた。

 

 俺は彼女なんて要らないと言った。必要無いと言った。俺の幸せは七海の幸せだと言った。

 だが、あれらは全て俺の強がり(・・・)だったのかもしれない。

 

 ──俺は誰よりも人からの愛を欲していたんだ。

 

 今分かったよ。何が一番必要で、何が一番大切なのか。

 

 それは──

「結羽。お前だったんだな。俺の心を埋めてくれるかもしれない人は」

 そして俺は結羽の事をぎゅっと抱きしめた。

 

 抱きしめると、少し力を入れたら折れてしまいそうなほど華奢な体と感じた。

「結羽……」

「は、はい」

「もう二度と離したりしないからな」

「うんっ!」

 

 そして俺達は何時間も抱きしめ合った。




 はい!第87話終了

 遂に結羽と優也が結ばれました!

 ここまで87話もかかったんですね。長い!

 ですが漸くですよ漸く。

 次回からは二人は恋人です!

 あれ?そしたらあとの三人は?

 それでは!

 さようなら

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