2016年のバレンタインデーの書き物です、茶熊学園なバレンタインの日を書いた感じで主人公君がわっちゃわっちゃな感じです。
それと個人的にも自信作かなって自負したりしてる一作だったりします。

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ここは飛行島ではなく冒険家達が集う学び舎の私立茶熊学園である。時期は2/14…すなわちバレンタインである。



茶熊バレンタインデイズ

 

-茶熊学園 生徒会室-

 

生徒会室には人があった。いたのは2-A所属の会長のRASN(主人公name)と庶務の一人のアイリスと書記係ソウマ、そして2-B所属の副会長のシャナオウと生徒会所属ではないゼロキスがいた。

[シャルロットは一ヶ月後辺りに生徒会長ですので…。]

 

お茶を沸かしている人やら話し合っている人達がおり、ソウマはRASNと話していた。

 

「RASN、メアさんから預かった予算案なんだが…来月における各部活及びにクラブ活動の配分はこんな感じでいいか?」

 

「…!」

 

「そうか、そういえばそろそろ風紀委員との朝会議じゃないか?」

 

「うむ…正に時間はリミット近く…では共に行こうか。」

 

シャナオウが上に掛けてある時計を見て、書類に目を通しているゼロキスにも向かって言ってた。

 

「いや…シャナオウさん何で庶務でも何でもないのに僕も行くんですか?」

 

「そりゃ…朝の会議はどちらも三人でやらないといけないからだろ?」

 

「うん…そうなのは分かってるけどさ…、生徒会所属ではない僕は…」

 

「別に良いではないか、ゼロキスも我が生徒会のアタッチャーと同義だ。それでは参ろうかゼロキス、RASN?」

 

「…!」

 

「いやいや…そこにいるソウマ君が行けば…」

 

「悪いが俺は予算が通った事を予算係に報告しないといけないからな。」

 

「そういうことだ、いざモーニング会議へと推参ログインせん!」

 

「…!」

 

「わぁ!?引っ張んないで下さいよー!?」

 

こうしてゼロキスはシャナオウとRASNに連れられて生徒会室から去っていった。

 

「相変わらず苦労人…と言うべきなのか…?」

 

ソウマが連行されているゼロキスを見てそう呟いた。

 

そして暫くすると生徒会室の扉がガラリと開いた。

 

「おはようみんな!」

 

顔を出したのはアイリス達と同様に2-A所属で生徒会では会計係のメアであった。

 

「おはようございます、メアさん。」

 

「おう、おはよう。」

 

挨拶を済ませるとメアは鞄を置くと生徒会室に備え付けてある堀り炬燵に入り、アイリスが星たぬきの模様が描かれた湯呑みをメアとソウマに差し出した。

中には湯気がたった麦茶の様なお茶であった。

 

「はい、温かい百年茶ですよ。」

 

「ありがとうアイリス。」

 

「あぁ…そうだこの予算案だな、RASNに掛け合ったがOKだったな。」

 

「そうなの、ありがと。んー…体が暖まるわねー。」

 

メアは湯呑みを一口啜った。

 

「そうだな…なんと言うか深みの中に甘味を感じる…」

 

ソウマも一口啜ってそう呟いた。

 

「…そういえばRASNは…?」

 

「…あぁ…副会長とゼロキスとの三人で風紀委員との朝会議だな。」

 

「…そうなの、会長職は大変ね。」

 

「ふぅー!来たぜー!おっはようさーん!」

 

するとメアの閉じた扉が勢いよく開き、中からRASNがやってきた。

 

「おっ…おう…随分と早かったな…?」

 

「お帰りなさいRASN…?他の二人は?」

 

「んー?…二人って?」

 

「いや…ゼロキスとシャナオウ副長だろ?さっき風紀委員との朝会議に…って、まさか…コリンさんか!?」

 

「…なーんだ…今日は朝会議だったか…コォーン!」

 

するとRASNはくるりと身を翻して煙を撒き散らすとそこにはコリンが現れた。

 

「あはっ!どうだった?アイリスあたしにもお茶!」

 

「はいはい…どうぞ。」

 

アイリスはお茶を星たぬき湯呑みに注ぐとコリンに渡して、コリンは棚から煎餅を取り出して掘り炬燵に着いた。

 

「ふぃー…いやー化かした後の一杯は身に染みるねー」

 

「コリン…何か言い方がおじさん臭いわよ…?」

 

メアはそう言いつつも煎餅を摘まんでいた。

 

「にっしっしー…おっと、そういや朝練組のメンバーは朝の集会には来れないって言ってたぜ?」

 

「えっと…朝練の人達って…カスミにフランと…カモメね。」

 

「あーそうそうフローリアはカスミに付き添って行くから来れないってさ。」

 

「…そうなると今会議に行ってるメンバーが戻れば朝集会だな…」

 

「おっと…そういやソウマっち、これやんよっと。」

 

すると読書を始めようとしたソウマの手にコリンが自分の荷物から手のひらに置いても小さく四角いものをのせた。

 

「…?なんだこれ?」

 

「ロチルチョコだぜ?だってさ今日はバレンタインだろ?」

 

「バレン…タイン?」

 

ソウマは頭に疑問符を浮かべながらロチルチョコを凝視していた。

 

「あっ、そうでしたね。それじゃ私は…これでいいかな?」

 

するとアイリスは戸棚から一つの袋を取り出してその中に無数のチョコのうち一個を取り出し、ロチルチョコの隣に置いた。

 

「おっ…あぁ…ありがとう?」

 

そしてそれを受け取ったソウマの顔はきょとんとしていた。

 

「…おや?流れ的に次はメアがあげる空気じゃない?」

 

「…何で?」

 

コリンはメアにニコニコと笑いながらそう言うものの、メアはしかめっ面でコリンを見ていた。

 

「あー…そういや甘いもん好きだから、通学中に食べちゃってもう鞄の中には無いとか…」 

 

「…!?そんな事はしないわよ…!」

 

「ふぅん…?だったら…持ち物検査と行きますかねぇ?」

 

するとコリンは渋々と炬燵から抜け出してメアの置いた鞄へと向かって行こうとしていた。

 

「…っ!?何するつもりなの!?」

 

だがメアはコリンが鞄に触れるよりも先に自分の鞄を取り上げた。

 

「何って…検査だよ、その中に本命チョコがあるかどうかを…さっ!」

 

コリンは手をわきわきさせてメアの鞄を取ろうとするものの、メアは上手く取らせないようにしていた。

 

「やめなさいって!?」

 

「やめないよー!」

 

まるで灰色猫が茶色いネズミを追うが如くコリンとメアの追いかけっこが続いた。だが暫くしてメアはコリンによって窓際に追い詰められていた。

 

「さぁさぁ…!持ち検っ!持ち検っ!」

 

「…くっ…!」

 

ジリジリと追い込むコリン、追い込まれたメア。

そしてそれを静観するアイリスとソウマ。

 

そんな最中生徒会室の扉が開かれてRASNら達が戻ってきたのであった。

 

「帰還カムバック!…ん?これは…どういう状況だ…?」

 

「…?」

 

「…何でまたここに戻って来ているのだろ…?」

 

三人共疑問符付きである。そしてその三人の眼の先の状況のコリンは少し残念そうにして追い込むのをやめた。

 

「おっ!朝から会議ごっくろーさん!そんじゃこっちも早いとこ始めようぜ?」

 

「…無論始めるつもりだが…さてはまたか…?」

 

「んん?何事も楽しい方がいいじゃん?」

 

「…取りあえずそろそろ朝のHRはあと少しだからな、早いとこ始めよう。」

 

そうして何事もないように生徒会の各員は朝の集会を始めた。内容は風紀委員との朝会議の内容やら今後のイベントの予定の確認などであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 2-A教室-

 

 

「それじゃ、午前はこれで終わり。明日の宿題は…分かっているよね?」

 

そう言うと校内に昼休みを告げるチャイムが流れ、生徒たちは昼休みへと突入した。

 

「お昼休み!ラピュセルとフィーユに会わなきゃ!」

 

「うぉぉぉぉ!!購買の特売パン!待ってろぉぉぉ!!」

 

各々自分の教室や部室で弁当を広げる者、購買やランチを食べに食堂へと向かう者等がいた。そんな中でRASNらの生徒会メンバーは教室で机をくっつけて弁当を食べていた。

 

「わぁ…フローリアねーねのお弁当はいつも美味しそうだね!」

 

その中に生徒会の所属でない者が二人と2-Aの生徒ではない者が一人いた。二人の方は一年生でRASNをパパと呼びカスミをママと呼んでいるヒナと、とても可愛らしく元気で慕う者には「にーに」や「ねーね 」と呼んでいるコヨミであり一人の方は生徒会員で園芸部所属のフローリアであった。

 

「そんな事は…」

 

「謙遜しなさんな、実質摘まんでいる私が美味しいと思っているからさー?」

 

「ちょっと?!何でいつも私のも取るのよ?!」

 

「ピヨ…!?…ママ怒らないで…?」

 

「うぅ…!?」

 

唐揚げやらをコリンはカスミの弁当から摘まんで、カスミはそれに対して怒りたかったが膝上に乗っかっているヒナを考えてこれ以上怒れなかった。

 

「でも…どうしてこんなに美味しく出来るのでしょうか…?」

 

「そうでござる!とっても気になるでござるよ!」

 

フローリアとカスミの弁当を水泳部で生徒会の一員のカモメと、ラクロス部で生徒会員のフランは羨ましそうに見ていた。

なおカモメはちゃんと制服を着ている。

 

「ふふふ…そうですね…毎日やって上達するのがいいのですが…一番なのは作る相手の事を思って作る事ですかね。」

 

「作る相手…ですか…」

 

「ムム…セッシャならばシショーでござるかな?」

 

「……私だと…RASN君…かな…?」

 

フランは悩んだ末にそう言い、カモメも悩んだ末にだが誰にも聞こえない声で呟いていた。

 

「それじゃ、コヨミもフランねーねと一緒!にーにが良いかな!」

 

そしてRASNの膝上に座るコヨミもそう言っていた。

 

そうして他愛の無い会話やら世間話やらを話していくうちに昼休み終了まであと少しとなった。

 

「…あら?もうこんな時間ね。ほら二人ともそろそろ戻らないと?」

 

「あっ!そうだね!」

 

「ピヨ…」

 

コヨミとヒナはそれぞれ乗っていた膝からおりて、RASNの前に立った。

 

「…?」

 

「あのね…にーに、今日はねバレンタインだからね、これあげるね!」

 

「…パパにこれ…あげるね?」

 

すると二人は懐から紙袋を取り出すとRASNにプレゼントした。

 

「オーララ?何でござろうか?」

 

「気になるわね…開けてみて?」

 

メアとフランの後押しでRASNは紙袋を開けてみた、すると中には赤と黒の配色のマフラーと手袋があった。

 

「おやおや?随分といいもんじゃないか?」

 

「とっても暖かそうですね!手作りですか?」

 

「えへへ…ヒナちゃんはマフラーを編んだけど、コヨミは手袋をやったんだよ!」

 

「うん…アイリスねーねとコッペねーねに教えてもらったの…」

 

「…待て、バレンタインとはチョコをあげる日じゃ…ではないのか?!」

 

するとソウマがまるでランクを知らない決闘者のような問いかけを二人に聞いた。

 

「うん、本当はチョコが良かったけどガレア先生が前にね授業でバレンタインの事を言っていて。それで手袋が良いかなーって。」

 

「ふぅん…べつにチョコで無くてもバレンタインは成立するのか…勉強になるな…。」

 

「うん、どうしたしまして!あっ!ソウマにーににはコレをあげるね!」

 

するとコヨミは腰にあるタローポーチからロチルチョコを取り出し、ソウマの手に置いた。

 

「またコレか、まぁありがとな。」

 

「そうだ!ねーね達にもあげるね!」

 

「…ありがとね…?」

 

「メルシーでござるよ!」

 

「ふふっ…ありがとうございます。そうだ、後でローズヒップティーをご馳走してあげますね?」

 

「わぁーい!」

 

そうしてコヨミは皆にチョコを配り回った。

 

「わわっ…!本当に間に合わなくなっちゃう!?ヒナちゃん早く行こ?」

 

「うん…パパ…またね?」

 

「…!」

 

そうしてヒナとコヨミは教室から出て、それを確認するとRASN達は席を戻して次の授業の準備をし始めた。

 

「おーいRASN~?」

 

「…?」

 

するとコリンがRASNの側に寄ってきた。

 

「…どうだった?あの二人から貰えてさ?」

 

「…!」

 

「ハハッ…まぁ誰でも嬉しいさね、あんな可愛い二人から貰えたんだからさ。…あぁ、あとさ…」

 

するとコリンはゴソゴソと懐をまさぐると、リボンにくるまれた箱をRASNに渡した。

 

「これっ!私からもプレゼントしようかねぇ?」

 

「…!」

 

「…あたしのにも喜んでくれるのかい、嬉しいねぇ。あぁ…そうそう、それ手作りだからなー?」

 

そしてコリンはそう言い残すと去っていった。

 

「…?」

 

そしてRASNは中が気になり少し開けるとそこには狐の顔のチョコが入っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして時は過ぎて五時間目の座学、六時間目の水泳を経て校内は放課後となった。

 

「…。」

 

そして生徒会長であるRASNは生徒会室前におりその扉に手をかけ、そして開け放った。

 

「オララ?あっ!シショーでござるか!」

 

室内にいたのはフランとカモメであった。二人とも掘り炬燵に足を突っ込んでいる、だがカモメだけは前のめりで寝ていたのであった。

 

「…?」

 

「カモメ殿は前の授業のおかげでシェスタ中でござる…」

 

「zzzz…くぅ…」

 

「…!」

 

するとRASNは収納の中から毛布を取り出すとそっとカモメの肩に乗せた。

 

「流石はシショー…!アプチソシィが効いてるでござるな…!」

 

フランは感激してるがRASNは引き出しから書類を取り出して、カモメとは反対側にいるフランの隣に失礼した。

 

「…?」

 

「メア殿でござるか?メア殿は先程来た製菓部の依頼を受けているでござる。」

 

「…。」

 

暫く書類を書いているとフランがRASNの袖を引いてきた。

 

 

「アッ…シショー!製菓で思い出したでござるが、セッシャもバレンタインのプレゼントがあるのでござる…!」

 

 

「…?」

 

「えっと…これでござる!」

 

そしてフランは鞄から赤い箱を取り出していた。

 

「セッシャのバレンタインはこのポッキーでござる!」

 

そう言うとポッキーを箱から一本取り出すとRASNの口元に近づけた。

 

「えっと…あっ…あーんでござる…!」

 

「…!」

 

RASNは口元に近づけられたポッキーをポリポリと食べたのであった。

 

「…はは…何か少し恥ずかしいでござるな…?えっと…次はこれでござるか…。んっ…」

 

「…!?」

 

するとフランは髪をかきあげてポッキーのプリッツの部分をくわえてチョコ部分をRASNへと向けた。そして向けられたRASNは驚いていた。

 

「ふぅるふぁ?ふぉぅふぉふぁるふぁ?(プルクワ?どうしたでござるか?)」

 

「…。」

 

「…ふぇっふぁもふぁふふぁふぃふぇふぉふぁるふぁら…ふぁふぁふぅ…?(…セッシャも恥ずかしいでござるから…早く…?)」

 

フランは顔を赤らめて口にくわえてるポッキーを震わせながらもRASNに問いかけていた。

 

「…、…!!」

 

するとRASNは顔を赤くしながらも意を決してフランと向き合いポッキーの先に口をつけた、そして微かにガタリと音がしたのを二人は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

そしてその物音はフラン達と反対側の方、つまりカモメであり目を覚ましていたのであった。

だがまだ体は伏したままであった。

 

「…えっ!?…えぇ?!」

 

カモメは動揺していた。

なんせ目の前で親しい人二人が顔を赤らめて近い距離で面と向かっている事、そしてその近い距離がどんどんと近づいて来ているのであった。

なおどちらから近づいているのかは分からなかった。

 

「あわわ…?!きっ緊急…?!ひっ…非常!?いえ…異常事態です…!?」

 

カモメも伏した横目で見ていて小声で呟いていた、そして目線の先の二人の距離はどんどんと近づいていた。

 

「とっ…止めないと!?でっ…でも…」

 

顔を赤らめてカモメは動こうとしたが動けなかった。

 

「…ふぃふぉー…」

 

「…」

 

「ぁぁぁ!?」

 

フランとRASNの口と口の距離が鼻と鼻の先が会うような距離となってしまっていた。

 

だがその刹那二人を繋げていたポッキーはポキリと割れたのであった。

 

「フェ…!?」

 

「…!?」

 

「えっ…?!」

 

そしてカモメは驚きのあまり毛布をはねのけて立ち上がった。

 

「…オッ…オーララ?!カッ…カモメ殿…?!起きていたでござるか!?」

 

「はっ…はい…」

 

「どっ…どの時からでござるか…?」

 

「えっ…えっと…フランさんがRASN君にポッキーをあげてる時…かな?」

 

「…オッ…オララ…」

 

フランは赤面して踞ってしまった。だがRASNはそんな事より自分の隣にある物を見ていたそれは矢であった。

 

「…!?」

 

そしてその射線を追うと生徒会室の出入口であり、そこには弓を持って細い眼でこちらを見ているカスミがいた。

 

「…フラン…何していたの…」

 

「いっ…いや…バレンタインをしていたでござるが…?」

 

「どこが?端から少し見ていたけど…まるっきしキッ…キ…」

 

カスミは部屋に入り扉を閉じるとフランに問いかけるもののその手に持つ弓はカタカタ震えており、その顔は怒りを覚えながらも赤くなっていた。

 

「とっ…とにかく!破廉恥よ!?」

 

「プルクワ…?でもコリン殿はこれがメィリャーといわれたでござるが…」

 

「…ハァ…またコリン…」

 

カスミは頭に手を当てて溜め息をついた。

 

「フラン…あんまりコリンの言うことは真に受けなくていいわよ…あと…!RASN、流れに身を任せすぎないでよ?一応貴方は会長なんだから…」

 

「あっ…あい分かったでござる…」

 

「…!」

 

そうして二人はカスミの説教を受けており、カモメはそれを複雑そうな顔で見ていた。

 

「…あの…」

 

カモメが何か言おうとするがそれを遮るように生徒会室の扉が開き、そこにはコヨミとヒナとローズヒップが入っている容器を持ったフローリアがいた。

 

「ピヨ…!?パパ…ママ…喧嘩は駄目だよ…?!」

 

「…!?」

 

するとヒナはカスミとRASNの間に入って、涙目でカスミにそう言った。

 

「ヒナちゃん!?…フローリア…?!」

 

「あら?生徒会室が騒がしくて少し急いで来ましたが…どうしたのですか?」

 

「…。」

 

カスミは何かを言いたそうではあったが中々言い出せずに固まっていた。

 

「どうしたのですか?何か話しにくいことでは…」

 

「あの…実は私たち寝ていていちゃったんですよ…それをカスミさんに見られちゃって…」

 

するとカモメがフローリア達の前に出てきた。

 

「カモメ…?」

 

「あらあら…そうなんですか?」

 

フローリアはフランとRASNに言ってきて、カモメはその二人に目配せをしていた。

 

「…!」

 

「…そっ…そうでござったな、セッシャら水泳の授業の後は眠くなって思わずシェスタしてしまったでござる…」

 

なお冬場でも水泳の授業が出来るものも室内プールを増設した為であり、夏は屋外で冬は室内で切り替えてやっている。

 

「あら…そうでしたか…カスミ、水泳の後は誰でも疲れて眠くなってしまうものですから…」

 

そう言うとフローリアはローズヒップが入った容器を炬燵の上に置き、戸棚からティーカップを七つ取り出した。

 

「…分かってるわよ…うん…」

 

そしてカスミは少し複雑そうな顔をしていた。

 

「…ところでフローリアねーね…シェスタってなに?」

 

「シェスタと言うのはね、お昼寝のことですよ。」

 

フローリアはお茶を注ぎながらそう言っており、コヨミは炬燵の中を経由してRASNの所に着いた。

 

「…わふぅ、えへへ…にーにの体暖かい!」

 

「…!」

 

そしてRASNに体を預けて、RASNはコヨミの頭を取りあえず撫でていた。

 

「あっ…パパ…ヒナも…!」

 

するとヒナは負けじとRASNの所に向かって行った、そしてカスミはカモメの側に行き小声で話し始めた。

 

「…フォローありがとね…」

 

「そんな事は…それに…」

 

カモメが思い詰めた顔でRASNとフランを見ていた。そしてそれはカスミも同じであった。

 

「皆様お茶が入りましたよ?」

 

そうしてフローリアがお茶を配って皆炬燵の中に入った。なおフラン達の炬燵の口は四人で満員となった為、ヒナがRASNの体に寄りかかりコヨミはカモメの体に寄りかかった。

 

「ピヨ…くぅ…」

 

だがヒナは用意されたお茶を口にする事無く眠ってしまった。

 

「あらあら…」

 

「ヒナ殿もシェスタでござるか?」

 

「そうみたいですね、それにしてもこのローズヒップティーは美味しいですね!」

 

「ありがとうございます、でもこれが出来たのもヒナちゃんとコヨミちゃんのお手伝いのお陰なんですよ?」

 

「そうなんですか!えらいえらい。」

 

「えへへ…」

 

カモメは膝上のコヨミの頭を撫で撫でしてコヨミはそれに喜んでいた。

 

「それにしても…こうなると何か茶菓子がほしいわね…」

 

「ふぅむ…流石にお煎餅は変でござるか…?」

 

「十分変よ、何か洋菓子系はないかしら…」

 

カスミとフランは戸棚等を探してみたがあったのは煎餅と大福やおはぎしかなかったのだ。

 

「うーん…何もないでござるな?」

 

「おかしいわね…少なくとも一個ぐらいは…」

 

「…あっー!ねぇみんなここにお菓子あったよ!」

 

フランとカスミが悩ませる中コヨミが何かを見つけたように声をあげた。

 

「あら…?何でしょうか?」

 

「うん!コヨミね、ポッキー見つけたの!」

 

「「「「!!?」」」」

 

そして四人は戦慄した。

 

「そうですか、中々良いものですね。」

 

「うん!それでねこうするのがにーにも喜ぶって、コリンねーねが言っていたんだ!」

 

そう言うとコヨミはポッキーのプリッツの部分をくわえてRASNに近づいていった。

 

「…!?」

 

RASNは目を見開き立ち上がろうとしたが膝の上で心地よく寝ているヒナを見て立ち上がれずにチョコ部分を近づけられていた。

 

「い…イニュティリィー!?」

 

「だっ…駄目ですー!?」

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

そして生徒会室の扉は開かれ製菓部の依頼を終えたメアが少し大きな箱を持って帰ってきた。

 

「あれ…?みんな?…ってこれなに…?!」

 

メアが目の当たりにしたのはカモメがポッキーをくわえたコヨミを取り押さえて、フランがRASNの口にポッキーを詰め込んでいてRASNはヒナを起こさないように倒れていた。 

 

「あっ…あら?メア?かっ…帰ってきたのね?」

 

「そうだけど…?それよりこれ!製菓部さんからの贈り物を貰ったの。」

 

メアが炬燵の上にそれを置き開けるとそこには七号ケーキが鎮座していた。

 

「おぉ!これはグランデなケーキでござるな!」

 

「そうねですね、ちょうど菓子が欲しかったからありがたいですね。」

 

「わぁい!ケーキだ!」

 

「(…今よ…!)」

 

「(あい分かったでござる…!)」

 

コヨミが喜ぶ最中フランはポッキーを素早く回収して見えないところに隠した。

 

「それじゃ切り分けるわね?えっと…八人かしら?」

 

「そうね、仲間外れはいけないもの…」

 

そうしてカモメはヒナを起こさないようにRASNを起こして、メアはカスミの隣に入ってケーキを八等分に切り分けた。

 

「ピィラーでござる!」

 

そしてフランが皿を取り出してケーキを乗せ配り、ヒナの分は包んで冷蔵庫に入れたのであった。そしてお茶会が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして時間となり生徒会室の部屋の鍵も閉めて下校となった。

 

「…zzz…」

 

ヒナはRASNにおんぶしてもらって学生寮こぐま館へと至る道をメアやカモメ達、そしてコヨミと歩いていた。

 

「むぅ…ヒナちゃん羨ましいなぁ…」

 

「RASN君大丈夫ですか?交代しても…?」

 

「…!」

 

「本人が大丈夫って言ってるから大丈夫よ…それにしても寒いわね…」

 

季節は春まで数ヶ月だが冬であり本日は雪も少し降り積もっていたのであった。

 

「そうですねー…早く寮に戻って温泉を一浴びしたいですねー?」

 

なお温泉は少し前にセオリが温泉を掘り当てて寮と校舎に温泉の設備を置いたのである。

 

「そうね、リラックスにはもってこいのものね。」

 

そうこうしている内にこぐま館に着き、玄関で服に着いた雪を払っていた。

 

「ふぅー…!すみません私は先に…あっと!?」

 

皆よりも先に雪を振り払ったカモメはそのまま寮内に入ろうとしたが、その足はすぐ止まりRASNの方へと。そしてカモメとRASN以外はそれに気づいていなかった。

 

「…?」

 

「あの…今日は色々とあって渡せるタイミングが無かったから…」

 

そしてカモメは鞄を開き、その中からリボンの付いた包みを取り出してRASNにあげた。

 

「…?」

 

「えっと…バレンタインプレゼントです…ちょっと恥ずかしいですが…。」

 

「…!」

 

「喜んでくれて何よりです!…あと部屋に戻るまで誰にもそれ…見せないで下さいね?」

 

RASNはそう言われると自身の鞄のなかにそれを丁寧にしまった。

 

「えへへ…ありがとうございます!…へくちっ!すみません先に一浴び潜航させていただきます!」

 

そうしてカモメは寮内へと駆けていった、その時心なしかカモメの顔は赤くもなっていた。

 

 

 

「あっ…!こんな所にいた!」

 

RASNは声をかけられて振り返るとそこにはメアがいた。

 

「…?」

 

「なっ…何でって…これをあげるためじゃ駄目かな…?」

 

そう言うとメアは顔を赤らめてその手には先程カモメから受け取ったものと同じ様な物を差し出した。

 

「今日製菓部の方に行ったのも作ってあったこれを受けとる為だったから…」

 

「…!」

 

「…ありがとう、RASNには助けてもらってばっかだからこういう形でしか返せないから…」

 

「…!」

 

「相変わらずね…それじゃこれからもよろしくね…!」

 

そう言うとメアもカモメに続いて寮内へと駆けていったのであった。

 

「…相変わらずモテるわね、朴念仁君?」

 

すると今度は後ろからカスミが声をかけてきたのであった。

 

「…でもある意味朴念仁がをそのまま体現したような人ね、…あら?」

 

「…?」

 

カスミは何かに気付き近寄ってRASNの髪をサッサと払った。

 

「まだ雪がついてたわよ、全くそんなんじゃあの二人からマフラーとか貰ったのに風邪引いちゃうじゃない。」

 

「…。」

 

「ハァ…仕方ないからこれをあげるわよ…」

 

そう言うとカスミは鞄からニット帽を取り出すとRASNに被せた。

 

「うん、これなら早々に風邪は引かないわね…別にアンタの為じゃないからね、倒れたら業務がこっちに流れてくるのが嫌なだけ。」

 

「…!」

 

「…あと手作りだけど…バレンタインとかは関係ないから…!それだけ。」

 

そう言い残すとカスミは寮内へと歩いていった。

 

「あっ!にーに!」

 

そして今度はコヨミが声を掛けてきた。

 

「…!」

 

「うん!待たせたよね、早く行こっ!」

 

そう言ってRASNはコヨミに連れられて、コヨミとヒナに分け与えられた部屋に着いた。部屋のなかは少女らしさが溢れており、特にそれぞれのベッドの上には好きな物の人形が置かれていた。そしてRASNはヒナをベッドに寝かせ部屋を後にして自分の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

-こぐま館 RASN達の部屋-

 

RASNの部屋もコヨミ達同様に相部屋であり、むしろ一人部屋というケースは珍しいものである。

 

そして扉を開けるとそこにはシャナオウとゼロキスがいた。シャナオウは悠然と椅子に座っており、ゼロキスはベッドに沈んでいた。

 

「おお、帰ったか遅くまでお疲れさん。」

 

「あぁ…おかえんさい…」

 

「…!」

 

RASNは挨拶を返すと荷物を置いたが、置くとほぼ同時にゼロキスが起き上がってRASNににじり寄った。

 

「すみません…ちっと聞きたいことがあるんだけど今日はいくつチョコ貰いましたか?!」

 

「…ゼロキス…聞いてくることとはそんなことか…?」

 

「そんな事ですよ!だって今日という日はそう言う日じゃないですか!?」

 

「おっ…おう…」

 

「それじゃまずはシャナオウさんでお願いしますね、次は会長で。あとチョコ以外はノーカンですから!」

 

「うむ…分かった…俺が貰ったのは…チョコ以外なら三個だな、剣道部の後輩から貰ったんだがな。」

 

「…ふぇ…?」

 

「それじゃRASN、お前はどうだ?」

 

「…!」

 

RASNは指を三本立てて三個であることを示した。

 

「…ぇぇ…?」

 

「ほぉ…俺と同じか。それじゃ…ゼロキス、お前は?」

 

「……一個…です…」

 

「…。」

 

「…。」

 

暫く室内に静寂が広まった。

 

「…まぁ…そういう日もあるさ…あまり気にしない方が…」

 

「そういう日ってのは今日しかないんですよ!それに慰めは結構ですよ…!どうせ会長のって後輩とか同級生のでしょ?!」

 

「…!」

 

RASNとシャナオウは驚きながらも頷いた。

 

「やぁーぱりっ!あー!どうせ僕は幼なじみからの慰め義理チョコしか貰えませんよーだ!しかもこれを会長に渡してくれって言われちゃったしさー!」

 

そう言うと可愛く女子力が詰まってそうな包装の箱をRASNに投げようとしたが、そっとRASNの側に置きベッドの上で体育座りで落ち込んだ。

 

「はぁ…今日はもう駄目だ……どうせ明日も来月も駄目だぁ…今日はもう駄目だーっ!!」

 

「…!?」

 

そうしてゼロキスはお決まりのように泣きながら部屋を飛び出した。

 

「はぁ…やれやれRASN…夕食が始まる前に捕まえるぞ…!」

 

「…!」

 

暫くしてゼロキスはRASNらに取り押さえられて大人しく夕食を取ることになったのであった。

 

 



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