お姉さんの愛し方。   作:とととー腑

1 / 10
出会いと想いは突然に。

ある日の昼下がり。

俺は街の中にある喫茶店で優雅に甘いコーヒーを啜っていた。

ただ、何をするわけでもない。

ひたすらにコーヒーを飲んでいる。

 

この瞬間が他の人には0点に見えるかもしれない。

でも、俺にとっては100点の時間であり、これが俺の青春なのだ。

誰にも邪魔できない。

誰にも邪魔させない。

 

店内に流れるジャズに耳を傾ける。

思いついたことをひたすら深く思索してみる。

窓から往来する人々を眺める。

 

そんなことが出来ることに幸せを感じる。

窓の外に広がる世界はなんだか自分とは関係ないような気がして。

ここだけは乖離した世界のように感じた。

 

…だから窓の外からチラッと見えたあの人は関係ないのだ。

明らかにこっちを見て、笑ったあの人は喫茶店の中の世界とは違うのだ。

現実ではない。

だから、ありえない。

 

と、自分の中で思考を決め付けてプイッと窓から目を外す。

慌てた思考を落ち着かせるように甘いコーヒーを飲む。

どうやら、すっかり温くなってしまったようだ。

 

カランコロンとドアのベルが来客を店内全員にお知らせする。

嫌な予感が右耳から突き刺さって、左耳から抜けていった。

 

絶対違う。

そもそも俺はなんも聞いていない。

目を合わせてすらいない。

 

「いらっしゃいませー、お一人様ですか?」

「いえ、先にカレシが来ているので」

「あぁ、どうぞー」

 

それは恐ろしいことをのたまいながらヒールをカツカツ言わせながら歩き始める。

目に入れてしまったら、始まってしまう。

から俺は下を向く。

俯いたらあの人でも分からんだろ。

 

「ひゃっはろ〜」

 

間抜けた声が右斜め前からする。

俺は確信めいたものを感じながらも、最後の抵抗として窓の外に目をやる。

すると、魔王さまは不満げだった。

 

「ひ・き・が・や・く・ん?」

「…」

「あのねぇ、いくら君がね俯いて腐った目を隠そうとしてもアホ毛は隠せないの。分かる?」

 

まさに腐り目隠してアホ毛隠さずである。

やっべ、俺にしか需要のないことわざが誕生してしまった。

 

魔王さまの次の言葉を待っていたが、いつまで経っても次はこない。

俺はふぅっと息を吐いて、前を見る。

 

「…こんにちは、雪ノ下さん」

「うん、久しぶり!」

 

俺の幸せな昼下がりはどっかいってしまった。

きっと、この人ならまた何かを始めるであろう。

すっと、陽乃さんが俺と向かい合うように座る。

 

「いつぶりだったっけ?」

「さぁ?どうでしたかね…」

 

本当にわからない。

だって、俺がどっか出かけると25パーセントぐらいの確率で遭遇してしまう。

その度にどうにか巻いている。

が、今日は運悪く捕まってしまった。

 

「む、雑だなぁー。あ、もしかして照れてんの!?私と話せたから!」

 

目を輝かせて自分で自分の予想に食いつく陽乃さん。

ないから。

 

「いえ、ありえません」

「むむ。断言しなくてもいいじゃん」

 

顔だけで不機嫌そうな表情を作る陽乃さん。

それが本当の顔なのか、偽物の顔なのか俺には判断がつかない。

なぜなら、俺が陽乃さんを理解していないからだ。

 

いつだって分からない。

この人は何を考えているのか。

手を伸ばしても、きっと触れられない。

テーブル間僅か70センチが遠い。

 

「で?今日は何の用ですか?」

「いや、別に用事はないんだよ。たまたまカレシくんがこっちを見てたから」

「彼氏じゃありません」

「少なくともさっきの店員さんの前ではカレシなわけだからね。カレシくんって言っちゃったし」

 

正論を言われてムッと黙ってしまう。

まぁ、正論もなにも陽乃さんが原因なのだが。

そんな俺の顔を見て、ニッコリ笑う陽乃さん。

なんすか。そんなに俺が困ってるのが嬉しいですか?

 

「ふふふ。あ、用事を思い出したよ!」

「嘘ですよね。絶対今思いつきましたよね」

「カレシくんとして今日1日、私とデートすることを命じる!」

「嫌です」

 

自分でも驚く程その4文字が出てきた。

やっべ。俺のIQ高すぎ。

 

「なんでー?」

「嫌なものは嫌です」

 

予想通りブーたれる陽乃さんを頑張って回避しようとする。

 

「理由になってないよ!」

「大体ですね。なんで俺とデートすることを提案するんですか?なんも面白くないですよね?」

 

率直な疑問を口にしてみる。

しかも、正論だろう。

 

「…ふーん。そういうこと言っちゃうんだ」

 

あ。ダメだこれ。

俺のシックスセンスが危機を予知した。

陽乃さんの笑顔が温度を失っていく。

 

「じゃあ、私が楽しんでることを1番近くで見せてあげる。行くよー!」

 

陽乃さんはそうひとりでに言い切り立ち上がると、俺の腕を取ってきた。

 

「うわ、ちょっと!」

「ダメ。待たないよ」

 

グイグイ引っ張られて、そのまま喫茶店の外まで追いやられてしまう。

おい。勝手すぎるだろ。

俺のコーヒーまだ余ってたんだけど。

俺は不満を視線で表現してみる。

 

「あ。そういう顔しちゃうんだ」

「どういう顔ですか?」

 

あえてとぼけてみる。

もしかしたら呆れて開放してくれるかもしれない。

 

「…ねぇ、カレシくん。手を繋ごうよ!」

「へ?」

 

俺の返事なんて聞かずに陽乃さんが俺の手を繋いでくる。

ギュッと握られた左手から、陽乃さんの体温が伝わってくる。

なんだか、手が汗ばんでくるのを感じた。

 

「ちょちょちょ」

「なに?」

 

そう言うと、グングン前に陽乃さんは歩いて行った。

まるでこっちの返事には興味がないと叫んでるみたいに。

どうせ聞く耳を持たないだろうが、一応抗議しておかないと要求がどこまでエスカレートするか分からない。

 

「マズイですって」

「なんなの?さっきから。あ、そんなにお姉さんと話していたい?」

 

ニヨニヨと嫌味ったらしく笑いながら聞き返してくる。

 

ーーまぁ…話していたいのは嘘じゃ無いですけどね。

 

なんだか、フッと頭の中に出てきた言葉。

頭の中でその言葉が外に出ようと、頭蓋骨を中から叩く。

俺はそれを頭を振って止め、言葉を紡ぐ。

 

「大体、恋人関係ですらないじゃないですか。こういうのは恋人がするもんじゃないんですか?」

 

チクリ。

胸の中に手を入れられたような感覚。

それが俺には分からない。

 

「…なんで分かんないかなぁ」

「ん?なんですか?」

 

低く、小さい声は俺には聞こえなかった。

 

「バーカ!」

「な、なんですか!?」

「バカはバカって言われて然るべき!バーカ!」

「いや、俺馬鹿って言われることした覚えないです」

「そこがバカなの!バーカ!」

「もう馬鹿でいいです…」

「それでいいの!バーカ!」

 

陽乃さんはプイッと反対方向を向いてしまう。

俺は苦笑しつつ、どうやって機嫌を直してもらおうと思索する。

 

「…きなんだよ。ばか…」

「?」

 

ゴニョゴニョ言って、ちょっと赤くなる陽乃さん。

俺としては首をかしげるしかなかった。

 

「…今日はもう絶対に離さないからね。私が満足するまで絶対に帰さないからね…」

 

拗ねたような声で言ってくる陽乃さん。

ちょっとかわいいな。

って思った俺は間違えていないだろう。

 

「…はい。分かりましたよ」

「やった。ほら行くよ!」

 

一気に機嫌を直した陽乃さんはグイグイ俺の手を引いてくる。

まさか…演技?

そう考える暇もなく、グイグイ引っ張られる。

見事に踊らされた俺としては、笑うしかなかった。

 

ーーーーーー

 

連れてこられたのは割と最近に完成した大型複合ショッピングセンターだ。

まだ心配なのかギューっと力を込めて手を握ってる。

もう逃げませんって。

 

「なにか買うんですか?」

「うーん…」

「うーん、ってあなた…」

「まぁ、いいや。適当に色々回ろうよ。ね?」

「…まぁ約束したんで。雪ノ下さんが飽きるまでついて行きますよ」

「…」

「ん?どうしました?雪ノ下さん」

 

つい先ほどまで何故か怪訝な顔をしていた陽乃さんが、あっ!と声をあげて俺に向き直る。

 

「それだよ!それ!」

「何がです?」

「その雪ノ下さんって呼び方だよ!」

「あぁ、そういう…」

 

ぶっちゃけ、どうでも良くないですか?

俺はただ3つ上の人を下で呼ぶのに抵抗があっただけだからな。

 

「他人行儀すぎない?もう結構出会ってから時間経つよね?」

「でも、一応年上ですし…」

 

一応の部分にアクセントを置いてみる。

正直、年上に見えないんだよな。

体つきとかは完璧大人なんだが。

おっと、コレだと俺が変態みたいだ。

 

「一応ってなぁに?」

 

ニッコニッコの顔で問われる。

声が冷たすぎるのが問題だが。

その恐怖に当てられた俺は軽くパニックになってしまった。

 

「いや、まぁ、言葉の綾というかなんというか…」

 

口元でゴニョゴニョ言っている俺を見て、陽乃さんは軽くため息をついて。

でも、次の言葉は明るくて。

 

「うんまぁ。比企谷くんが私のことを敬ってないのがよーく分かったよ」

「まぁそうっすね」

「肯定しちゃうんだ…それで、将来比企谷くんが可愛くて美人で美しくて容姿端麗なお姉さんに恋しちゃうかもしれないでしょ?」

「うん。無駄に長いですね。あとほとんど同じ意味です。最後」

「その時にお姉さんの下の名前で呼べないとダメでしょ?だから練習しないとね」

「別にダメではないと思いますが…」

「ん?なに?呼んでくれるって?」

「どんな鼓膜の形してるんですか。音の振動の取り方おかしいですよ」

「…んー?」

「…はぁ」

 

やっぱり、このお姉さんはよく分からない。

なにを考えてんのかも。なんで俺に構うのかも。

いっそ、突き放してくれた方が楽だ。

なんだろう。この胸の鬱屈は。

今日はこんな思いをしてばっかりだ。

この胸のつっぱりが取れるかもしれない。

から、俺は意を決して口を動かす。

 

「陽乃……さん」

「む。一瞬呼び捨ててくれたかと思ったじゃん!」

「俺も一瞬だけ血迷いましたが、やっぱり思い止まれました」

「思い留まらなくて良かったのに!って、血迷うってなによ!」

「まぁ、言葉の通りですね」

「はぁ…まぁいっか。これからずっとそうやって呼ぶんだよ?」

「えっ!マジですか!?」

「まじまじ。超大マジだよ」

 

うっへぇ。

マジか。

結構恥ずかしいんだけど。コレ。

 

「さ、行こっか」

「あ、はい」

「私はなんて呼んだ方がいい?」

「と言いますと?」

「カレシくんか、八幡のどっち?」

「比企谷でお願いします」

「ぶー、ノリが悪いなぁ」

「陽乃さんならノリで終わらせないでしょ」

「あ、バレた?」

 

テヘッと舌をちろっと出しながらこっちを見てくる。

薄桜色とでも言うのだろうか。

鮮やかなまでに綺麗な舌は、彼女いない歴が自分の年齢の俺には刺激が強すぎる。

フイっと目を逸らしてしまう。

 

「あれ?あれれれ?見とれちゃった?」

「うぜぇ…見とれてないですよ」

「そっか…もう一回やってあげよっか?」

「さっきから俺の言葉を勝手に解釈しすぎですよね?」

「えー、別にそんなつもりはないんだけどなぁ」

「俺がそう思ってるんです!」

 

そんな風に2人で雑談をしながら、ショッピングセンターの中に入っていく。

さすが休日といったところか。

かなり家族連れやカップルでごった返していた。

 

「うわ、人多いな」

「ほらほら、カレシくん。手を離しちゃダメだよ?」

「分かってますよ…」

 

結局、俺の呼び方はそれなのね…。

ま、今日だけだろう。

 

「まず、私の服を選んでくれない?」

「はい?」

 

耳を疑う。

俺が?なんで?

 

「やっぱりカレシくんの好みの服を着たいんだよね」

「いやいや、本物の彼氏とやってください」

「…それってカレシいない歴が年齢の私を煽ってる?」

「え?マジすか?」

「うん」

 

ええ。この人なら選び放題だと思うのに。

俺の驚愕ぶりを察してくれたのか、陽乃さんは言葉を続けてくれる。

 

「近付いてきた男の子はみんな私の家柄にビビっちゃってねー。ま、それ以前に良いなって思った人がいなかったんだけど」

「なるほど…」

 

それって、俺も遠回しにダメだって言われてるのか?

いや、別に言われてもいいが。

この人苦手だし。

でも、なんかヤダ。

 

「でも、比企谷くんはいいよ!面白いし…私を見てくれてる」

「俺が…ですか?」

「うん」

 

陽乃さんの言葉になんだか嬉しく思う。

体が熱くなる。

胸が波打つ。

 

「ねぇ…先にどっか入ろうよ。愚痴りたくなっちゃった」

「はい。構いませんよ。そもそも俺は今日陽乃さんと約束したので、どこにでもついて行きますよ」

「…トイレも?」

「刑罰に問われない範囲内で」

「ふふふ。冗談だよ……ありがとう」

「いえいえ」

 

そのままゆっくりとしたペースで歩き出した陽乃さん。

なんだか弱々しく見える。

こんな風な人じゃなかったはずだ。

 

いつも、強そうで偉そうで。

たまに、乙女で可愛くて。

 

ーーーーーー

 

陽乃さんが入って行ったのはコーヒーのチェーン店だ。

そのままお互いにコーヒーを注文し、向かい合わせで座る。

周りも混んでるは混んでるが、皆何かをしていて周りを見る余裕はなさそうだ。

話をするにはうってつけの環境である。

 

「ごめんね?突然」

「だから謝んなくていいですって。今日は陽乃さんが俺を扱っていいんですから」

「…そうね。じゃあこれから私が何言っても引かない?キライにならない?」

「まぁ、大丈夫です」

「良かった。なら話すよ」

 

そう言うと陽乃さんは、ゆっくりと、静かに語り出した。

 

「私ってさ。昔から仮面を被ってたの。まぁキミが言うところの強化外骨格だっけ?それでさ。色々できたの私。勉強しかり運動しかりね」

 

そこで陽乃さんは一旦言葉を切る。

やっぱり昔から優秀だったんだな。

 

「でさ。いつしか周りが期待してたの。次はどれぐらいできるのだろうか?次は?ってね。私はその期待に精一杯応えたよ。頑張った。褒めて」

 

唐突に振られる。

えっ。このタイミングで?

 

「え、まぁ。すごいですね。そうやって頑張れることが。俺にはできません」

 

なんかすごい白々しい。

それでも陽乃さんは満足したのか、首を縦に振ってまた言葉を続けた。

 

「ありがと。でさ。期待の水準が上がりすぎたの。雪ノ下陽乃ならコレくらいやって当然だってね」

「あぁ、そういうことですか…」

 

できてる人には自然と期待してしまう。

それはしょうがないことなんだろう。

無責任な期待だから。

 

「そ。私はさ…怖かったんだ。いつしか見捨てられるんじゃないか。いつか失敗しちゃうんじゃないか。ってね」

「…」

「誰も彼も私を見てくれなかった。仮面だけを見てた。仮面の下の泣き声には誰も気づいてくれなかった。」

 

陽乃さんは今まで孤独と戦ってたんだろう。

本音には誰にも気づいてもらえなくて。

 

「ねえ……私は…変わらなきゃダメなの?仮面の私を私にしなきゃいけないの?」

 

泣きそうな声で、尋ねてくる。

…俺は答えを出せる自信がない。

なぜなら俺は陽乃さんという人物をまだ計り損ねている。

 

それでも。それでも。やっぱり。

俺に陽乃さんは託した。

自分を俺に。

だったら。俺は。

 

「ダメです。変わらないでください」

 

キッパリと。他に何の感情を発生させないように言い切る。

陽乃さんはその大きな瞳を2、3回瞬かせた。

俺はそれを受けて更に言葉を続ける。

 

「たとえ、全人類から1人を除いた誰もが仮面を被って欲しいと望んだとしても、その1人が被って欲しくないって言ったら、被んないでください」

 

これが俺の本音だ。

ワガママとも言う。

やっぱり陽乃さんは、陽乃さんでいてほしい。

 

俺の前で憎まれ口を叩き、からかってくる陽乃さんが仮面を被ってるとは思わない。

素面で笑っている陽乃さんはどうしようもなく素敵で。

そして、近くにいてくれて。

 

「……うん。分かったよ。私は、その1人のために頑張る」

 

ニッコリと笑う陽乃さん。

その顔にさっきまでの陰りはなく、その名の通り、陽が射したような笑顔だった。

 

「っ…。それならその1人も安心すると思います」

 

そんな笑顔に胸がどきりと跳ねる。

あぁ、なんでだろう。いつからだろう。

こんな気持ち。

昨日までは苦手だったはずなのに。

全然、好きじゃなかったのに。

 

「良かった…その人がきっと私を見つけてくれるから。信じてるから」

「…さぁ。その人は現れるでしょうかね」

 

俺はそっけなく言い放ってみる。

 

「うん。きっとね」

「そうですか…」

 

帰ってきたのは肯定の返事だった。

 

…あぁ。

俺は恋してしまったかもしれない。

可愛くて美人で美しくて容姿端麗なお姉さんに。

 

「…今、目の前で見てるかもしれませんね」

「そうだね。素っ気ない顔しながらも若干顔を赤くしてそうだね」

「多分その人は陽乃さんが欲しいんですよ」

「そうなの?」

「ええ。多分」

「確証がないなぁ…」

「始まったばっかりの気持ちですからね」

 

こんなもどかしいやり取りにドギマギしてしまう。

お互いに望んだ言葉じゃないはずなのに。

ただ、安心が欲しいだけだ。

なら俺はそれをぶち壊す。

 

「あのですね…陽乃さん」

「なぁに?」

「俺…あなたのことが好きになったかもしれません」

「…えっ。なにそれ。自分の気持ちでしょ!ハッキリしなさいよ」

 

陽乃さんは呆れている。

ただ、その赤くなりすぎた顔でほんとの感情をハッキリさせている。

…どうやら交際経験がないのは本当っぽい。

 

「まだ、わからないんですよ。だから、1番近くで教えてくれませんか?」

「…ナマイキだなぁ。そんな輩には年上のお姉さんが教え込んじゃうな」

 

そう言うやいなや、陽乃さんはテーブルから身を乗り出してグイッと距離を詰めてくる。

 

唇がまるで火花がほとばしってるみたいに熱い。

頭がぼうっとする。

 

あぁ、もう気づいたかもしれません。

でも、まだ教えてください。

 

一生かけて、俺にお姉さんの愛し方を教えてください。

 

 

初めてのキスの味は、なんだか甘ったるいコーヒーの味だった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。