IS学園で非日常   作:和希

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久しぶりに投稿。一応ストックが二話出来ました。前言われたように文章を改良してみました


40話 誤解

今日は日曜日、企業の研究所(実験施設)に出向いて検査を受けていた。ちなみに俺には鼻づまりだとか目が痒いだとか肌が荒れてるだとかの微妙だけど悩ましい悩みはない。なぜか?

 仮にも世界で二人しかいない男性IS登場者。鼻がつまればすぐに俺に調整された鼻薬がもらえるし、目が痒ければ目薬とかマッサージ。肌も同じ。一週間ごとの精密検査で筋肉の疲労度から何から何まで教えてくれる。一週間ごとに必ず受けないといけないってわけじゃないけどね。一ヶ月に一回受ければいいって博士には言われてる。ちなみに栄養状況はかなり理想的と言われた。シャルのおかげだと思うとなんか、こう。嬉しいって言うか誇らしいと言うべきかこそばゆいような。まあいいや。

「博士、どうです?原因は分かりました?」

 ひとまず聞くだけ聞いてみる。三週間ぶりに使うこの言葉。原因と言うのは、俺がISに乗れる理由の事だ。

「残念ながら」

 博士、名前は一之瀬光(ヒカル)。身長170cmほどで少し痩せぎみ、顔は一夏ほどではないけどイケメン。運動能力皆無だけれども俺の知る限り束博士に次ぐ天才。師匠と幼なじみであり、師匠の機体を男にして整備総括してる。

 普通ISの整備は女がやる。車とか作り終わったら試運転してどこが悪いか調べるものだ。ISも同じだけど、男には乗れないので仕上げは厳しい。最後の微調整だとかが難しいのだ。にも関わらずIS整備を任されるのだから技術力はすさまじい。そして大和重工のIS開発総責任者でもある。大和重工は各大企業が出資して作ったIS専門企業なのでその総責任者ってのはIS関係で一番能力が高い人ってこと。でもISだけでなくてその他の部門にも手を貸していて特許も若くして大量に取得している。とにかくすさまじいらしい。

「そうですか。検査ありがとうございました。師匠によろしく伝えておいてください」

「分かりました。それでは」

 物腰の丁寧な人である。もっとフランクでもいいけれどなあ、こっちのが世話になりっぱなしなのに。でもこの人師匠に対してもこうなんだよなあ。敬語自然体って感じ。

 

 

 

「それで、どうして教えてあげないの?」

 入れ替わりで入ってきた香苗が光に問いかける。

「原因っぽいものは掴めていますが確証には至っていません。だからまだ教えることは出来ません」

「確証に至ったら教えるの?」

「悩んでいます。彼は教えても秘密にするとは思いますが、それの影響による自身の能力を知らせたら精神的に不安定になるかもしれません」

「原因だけ教えて能力は隠したら?」

「多分、原因を教えたら能力にも気付きます。レポートを見る限り福音以降能力がさらに強くなってます」

「福音ってあれ極秘重要機密だったけれど、どうやって調べたの?」

「ISの深層データから汲み取りました。浅い場所は恐らくIS学園で消されたと思います。極秘のことでしたから証拠隠滅のために」

「相変わらずすごいわね。それで、しばらく教えないつもり?」

「まだ、ですね。ですがそう遠くはないかと」

 

 

「お、今日は早いな」

「まあな」

 午後三時。いつもに比べて早めの帰宅。

「そうだ、弾と雑談してたけどISのゲームに新しく追加された希の機体つええって言ってたぞ。前学年トーナメントで見た通りの強さだってはしゃいでた」

「実際強いからな。お前のは無いよな?」

 実際にゲームで使ってみたけど、弾幕を張るもいいし接近して斬りかかってもいい。特殊武装も使えると言うマジチートな機体。

「束さん手製だし。データ公開もしてないし」

 俺の機体はある程度発表してる。企業は作ったものを宣伝しないといけないし。

 ちなみにフィギュアも売れてる。しかも近年稀に見る勢いで。取り付けれる武装は三十種類以上にも及び、可動域は二十箇所。安めのプラモデルから超合金まで。俺の顔をしっかり再現までする必要はなかったと思うけどね! 一夏が搭乗者だったら女性人気も出てただろう。

 さらに言うとCMの話まで出てきている。IS学園のイベントで勝ち続けてる限り俺の人気は落ちないだろう。負け続けてたらどうなってたか恐ろしい。

「それで、訓練行くか? 宿題も終わったし」

「いや、ちょっとシャルと出掛けてくる」

「あー、そうか。弾の気持ちが分かるな」

「どんな気持ちだよ」

「出会いが無いなーって気持ち。爆発してろ」

「はっはー、死ね。氏ねじゃなくて死ね」

「そこまで言われること言ったか俺!?」

 俺じゃなくてあいつらに聞かれてたら殺されてたな。こいつ。

「まあ、とにかく行ってくる。その言葉間違えてもあいつらの前で言うなよ」

「分かった」

 あいつら、この言葉で分かるぐらいには鈴たちと仲がいいとは思ってる、のか?

 

 

 

「はー、どこかに可愛くてナンパしたら乗ってくれる子はいねえのか」

 弾は駅前をさすらってた。ひたすらに出会いを求めて。ちなみにさっき失敗したばかりである。そしてそんな都合のいい人はまずいない。

「一夏は女に囲まれまくってるんだろうなー。しかも美少女たちに。さっきも皆と訓練きつくてとか。あー、ちっくしょー! 希はいるのかどうか微妙だなー。いい奴だけど深く関わらないと良い所に気づかないし。でも深く関わらない奴だしなー。ってアレは」

 視線の先に見つけた影。清水希その人。

「おしゃべりでもするか。ってオイ?」

 その隣に見つけた金髪の人影。

「っち、あいつも爆発してればいい場所にいっちまったか。あれ、でもあの女性?」

 ISのトーナメントで見た。希のパートナーで、世界で三番目の

「いやいやいや、ちょっと待て。え?」

 だが男だ(弾から見ると)。口をぱくぱく動かして

「う、嘘だろ。嘘だと言ってよノーゾミィ!」

 だがあの時の希のパートナーだ。男なのにここまで綺麗なやついるにかと思ったから彼は覚えていた。

「ど、どうするよ俺、どうする?」

 

 

 

「もしもし、弾か。どうした、まだなんかあるのか?」

『や、やばいんだ希が!』

「どうしたんだよ」

『さっきまで悩んでたけど伝えることにした。希が昼間、女装した男とデートしてたんだよ!』

「な、なんだってー!? そ、そんな馬鹿な!」

『本当なんだよ! 俺の(テレビで見て)知ってるやつだったんだ! 俺たちの知ってる希は死んだ! 何故だ!?』

 一夏は考える。弾はこんなタチの悪いジョークを言うような奴ではない。最後にネタ発言をしているが精神を落ちつけようと必死になってるだけだろう。となると事実である可能性がある。でもまだ確実ではない。

「と、とにかく分かった。色々と調べてみる」

『わ、分かった。じゃあな』

 

 

「どうしたのよ一夏、こんな時間に集まれだなんて」

 時刻は午後十時、希を部屋に置いたまま声をかけておいたメンバー(箒、セシリア、鈴)と合流した。

「じっ、実はだな。俺の友人がある情報を持ってきたんだ」

「何よ?」

「のっ、希が女装した男とデートしてたらしいんだ!!」

 そう言うと彼女たちは首をかしげ

「ちょっと待て一夏。私はお前が何を言っているか理解できない。しかも全部だ」

 首をかしげてはてな、という表情をする箒。

「ありのまま起こったことを話しますわ! 希さんが女装した男性とデートをしていたと言ったと思ったらそのままのこと言ってますわ。何が何だか分かりませんわ。恐ろしいものの片鱗を味わいましたわ」

口に手を当てて目を見開いている。そして棒読み口調。

「お、俺も嘘だと思ったんだ! でも弾がそうだって!」

「み、見間違いじゃない? 彼女欲しいのこじらせてそうなっちゃったのよ!!」

 弾を良く知る鈴から本人が聞いたら涙しそうな意見が飛び出た。

「いや、弾が俺の知ってる奴だって断言したんだ」

 痛い沈黙が流れた。その沈黙は今までで一番重いものだった。だが、その沈黙を打ち破る声が上がった。

「まだ、断言できないわ。まだよ。調査するのよ、アタシたちで」

「ラウラやシャルロットはいいのか?」

「あの二人を巻き込んだら余計騒ぎが大きくなるだけじゃない。下手したらシャルロットはISで暴れだすでしょ。ラウラに知らせたらシャルロットが何かに勘づくわよ。同室なんだし。問い詰められたらラウラは九割吐くわよ」

 ラウラはシャルロットに逆らう事が出来ない。

「で、ですが事実だった場合はもうどうしようもないのでは」

 その言葉に一夏が背筋を震わせた。同居人が同性愛者、しかも学園で一人しか同性はいなし、昔からの付き合い。

「おっ、俺はそれでも希の親友だぜ!!」

「声が震えてるわよ。でも、おかしいわね。だってアイツ、その、ア、アタシの事好きだったんでしょ。なのに」

「もしかしたら、それだからかもしれませんわ」

 セシリアに皆の視線が集まった。全員言葉に出さずともどういう事だ? と目が告げていた。

「初恋が無惨にも終わってしまい、希望が潰えたとき、そこにあったのは変わらぬ殿方同士の友情」

「な、もう止めよう。な?」

「とっ、とにかくこれから調査するのよ。絶対ばれちゃ駄目よ」

 この場の誰も本人に聞こうぜとは言わなかった。本当の事を言うかも分からないし、何が起こるかわからないからであった。

 

 

 次の日。

「よっす。今日はトレーニング来てなかったけどどうした?」

 不思議な顔をしながら希が問いかけた。今日の訓練の参加者は希とシャルロットとラウラだけであった。

「たっ、たまたま寝坊しただけよ!」

「そ、その通りだ!」

「何もやましいことなんて何もありませんわ!」

「ふーん、そうか」

(一夏関連で企んでる? でもラウラを誘うはずだよな、ここまで揃ってるなら。ラウラを仲間外れにしたら俺がラウラに肩入れするぐらい理解してるだろうし。となると何だろうか)

「で、一夏もどうした?」

「今日は料理の練習をしてたんだ!」

「へー、楽しみにしてるよ」

 一瞬 、彼らがざわついた。確かにざわついた。

(こいつらで企むってことは俺関連?でもシャルも巻き込むと思うけど。んー、さっぱり分からん。まあ問題ないだろうしほっといていいか。そんなことよりシャルをどこに誘うかそろそろ決めないとヤバイ)

 ちょうどその時に先生が登場した。

 

 

 

 

「ふー、今日も疲れたな、一夏」

「あっ、そ、そうだな」

 こいつ何かおかしいなあ。んー、別に俺の誕生日が近づいてるわけじゃないし。一夏の誕生日が近いけどそれならこいつがそわそわするとは思えないし。適当にカマかけてみるか、んー、まあやっぱりいいや。やっぱりまずシャルの事だ。

「そうだ、久しぶりにマッサージしようか?」

 そう言うと一夏はブンブン首を振って

「だ、大丈夫だ!大丈夫だから!」

 みるからに大丈夫じゃ無いんだよな。

 

 

 

「の、希からマッサージを仕掛けるだと」

「ま、まさかですわ」

「や、ヤバイんじゃないのこれ!?」

 

 

「ふぅん。あ、そうだ。今度料理食ってくれよ」

「誰の?」

「俺のだよ」

 俺以外ないだろ、会話的に。まあ作ること無いし聞き返したくなるのも分かるけどさ。

「ど、どうしてだよ」

「お前が良くてな」

 都合がいい。料理スキルが一番高くて口も固い、あと同性。アドバイスももらえるし。

「えっ、ちょっ!」

 

 

 

「だ、駄目ですわ!駄目ですわ!」

「何、だと」

「嘘だって言いなさいよノーゾミィ!」

 

 

「ん、何だ?」

 ふと脳に響いた。ドアに近寄って一気に開く。ドンッと三人がなだれ込んできた。ふむ、では。

「言い訳はあるか。寛大だから百字までいいぞ。ただし平仮名でな」

「そっ、そうか! ならば大丈夫だ」

「三人で百字な。出来なかった奴はおしおき」

 三人が我先にとわめくが俺は通常一人、頑張って二人までしか同時に話を理解できない。あ、もともとコイツラの話を聞く気はないけど。

「というわけなのだ」

「いや、聞いてないけど」

「喧嘩売ってんの?」

 鈴がいきり立つ。

「それまんま打ち返すぞ。はい、廊下に正座」

 三人はしぶしぶ並んだ。

「それで、どうしてだ?」

「その、希さんが……女装した殿方とデートをしていたとの目撃証言がありましたので」

「ハアッ!?」

 俺の声が廊下に響いた。

「アンタがホモなのかもって思っちゃったの! 確かめようとしたのよ!!」

「へい、どーどー。やっぱ中入れ」

 わけわからん上にこれはやばい。チラチラ聞いてるのがいる。ので部屋の中に入れて全部の話を聞くことにした。

 

 

 

 後からとても後悔した。


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