Fate/Ideal hero   作:タガタメ
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さてさて、前回の話にて、色々と疑問を抱いた人はいるとは思いますが、取り敢えずは深く考えずに読んで頂けると嬉しいです。




二つの理想





ㅤ誰のための何のための理想なのだろうか。

ㅤごく普通の少女ですら、王を目指すというのだから、英雄になれる。なってみせる。

ㅤ王と騎士。立場は違えど、望むものは同じである。

ㅤならば、お互いに認め合い、競い合い、磨きをかける。

ㅤお互いの光を語り合い、より良き光のために確かなものにしていこう。

ㅤ例え、それがどんな形を得ようと、決めてしまった道なのだ。

ㅤ振り返ることなく、走り続けてみせよう。

ㅤ理想を追い求めた先に、光に焼かれようとも、走り続けてみせる。








第三話__二つの理想。








ㅤ何と可憐な少女なのだろう。

ㅤアビジットがマーリンから騎士になることを勧められてから、二日経過した。その間は治癒に専念しながら、ことの顛末を聞いていた。できるかぎり、その土地を利用したいのか、焼かれた故郷は近いうちに畑にする予定である。焼かれたとはいえ、国のためになるのならば、これに勝ることはなく、アビジットは張り詰めていた糸をほぐすように肩の力を抜いた。守りたいと願っていてもすぐには無理。というのを彼は自覚しているため、少しでも早く回復するよう大人しく過ごした。

ㅤそして、約束の日。エクターに案内された場所はかなり盛んな街であった。エクターはその義理の息子ケイという少年と、アルトリアという少女とこの場所で過ごしているのだ。マーリンはなんでもアビジットに関することでやることがあるらしく、同行していない。

ㅤ街の中を歩いていくと、一人の少女の姿が確認できた。勿論、アルトリアである。一度は彼女も説明をされているだろうが、改めてエクターから情報の見直しをしていた。そして、ある程度の時間が経ち、アルトリアはアビジットの方へと身体を向けた。

「騎士にですか。なるほど、ということは将来の私の騎士、というのは何だが少し照れくさくはありますが……私もまだ未熟者なので、共に励んでいければ良いですね」

ㅤアルトリアはアビジットが騎士になるということを拒みはしなかった。いや、寧ろ肯定的だといってもいいだろう。マーリンの勧めもあってか、事はスムーズに進んでいった。というのも、そもそもアルトリアもマーリンやエクターにお世話になっているので、彼女自身からは何も言えないのだ。人と触れ合う機会がなかなかないアルトリアからしてみればいい機会ともとれる。

ㅤアビジットからしてみれば、初対面の人に対してこれほど気が許せるというのは、眩しいぐらいの思いで、ふと、両親の顔が頭をよぎる。何度も名前を呼んでくれて、ここまで育ててくれた人たち。つい、この前までは存在していた暖かな空気を噛み締めるかのようにアビジットは一歩前へと足を踏み入れた。

「聞いているとは思うが、アビジットだ。呼び捨てで構わない」
「はい、アビジットですね。私はアルトリア、です。なかなか上手くいかないことも多くあるとは思いますが、頑張りましょう!」

ㅤそう言って、無邪気に微笑む姿は眩暈を起こしてしまいそうになるほどであった。その純真で清らかな精神に、なんと可憐な少女なのだろう。と関心をしつつも過去を思い出して、だからこそと意気込んだ。この小さな少女に王を務めることができる器があるのなら、と。

「あぁ、アルトリアになら、仕えてもいい。そう思えたよ。これから数年間、だったか?よろしく頼む」

ㅤその様子を見守っていたエクターはゆっくりと二人へ近付いていった。

「よし、何かの縁だろう。アルトリア、彼の師となって上げなさい。人に何かを教えるというのもいい経験になるだろう」

ㅤその言葉にアルトリアは驚愕に顔を染めた。無理もない。未熟者と自らをそう叱責したばかりではあるが、エクターはそれでもと言わんばかりの表情をしていた。その役目はお前がやるべきだと。

「私が、師ですか?」

ㅤ彼女とて、師という者の重さを理解している。理解しているからこそ戸惑いが生じた。

ㅤ何かを失いつつもそれが正しいと信じてこれまで歩んできた。その背景にはいつもといってもいいほどに他人の助力があったからこそだ。そんな人間に成れるのだろうか。今の自分に手を差し伸べることが可能なのか。と少し不安が積もっていた。

「そう、真面目に考えんでもいい。私も見ているからな、そう大事にはならん。それに、だ。何も今日からというわけでもない。今日のところは街を案内してあげなさい」

ㅤ心底面白そうに笑うその様は、アルトリアの不安を振り払うかのようだった。これから、彼女が統治する街で、アビジットは守るために剣を抜く土地である。まずは街のことを知り、それからでも訓練は遅くはないだろう。ということだ。親睦を深めるというのも、後々役にたつであろう。という判断だった。

ㅤアルトリアは少しほっとしたのか、胸をなでおろして、そっと肩の力を抜いた。師になるということには変わりはないのだが、心の余裕が持ててひと安心したのだろう。

「なるほど、明日からですか。ならば、少し考える時間がありますね。では、アビジット少し散歩に行きましょうか」

ㅤ話は進んでいくのだが、アビジットの許可なしに決められていくことに少し苦笑しながらも強く頷いた。彼にとっても街を見るというのはいいことだ。これからお世話になるということも考慮した上で、未来のことよりはまずは今を生きるために彼は生きる場所を見に行くと決めた。

ㅤアルトリアはこれでもかというぐらいの勢いで先導して手を引っ張っていく。その様子を見届けたエクターは暖かい目を向けながら、虚空へと問いの言葉を吐いた。

「で、どうだったかな、彼は」

ㅤすると、ほんの少しの音ともにゆっくりとながら、人がゆらりと現れた。何か思い詰めた表情をしていて、その中に憎悪にも似た感情が現れているのが分かる。

「……そんなに王やら騎士ってのが凄くて偉いのか?俺には一生理解できそうにない。俺でも位置的な意味では理解できるが、ただの少女、たかが少年である、あいつらを見ていると反吐が出る」

ㅤあぁ、なんてくだらない。そんな言葉が聞こえそうなぐらい嫌悪して、反吐が出ると吐き捨てた。その人物はどこまでも嫌そうな顔をしつつ、エクターへと向き直った。

「どうせ、マーリンあたりの仕業だろうが……他人を巻き込むんじゃない。理想の生贄はアイツだけで十分だろうが」

ㅤアルトリアの義兄でもあるケイという少年というには少し年を重ねた青年はまた一人、また一人、と増えていく理想の盲信者にうんがりしながら、愚痴をこぼした。アルトリアはまだ分かる。彼女は王になるべくして生まれてきた存在ともいえるのだから。

ㅤしかし、彼はどうだろうか。平凡の中の平凡。特になにか付け加えられるようなものは持ち合わせていない、普通の少年なのだ。それが騎士になる?身に余るような理想を抱いて生きていくのがそんなに楽しいのだろうか。ケイは出てくる疑問にすら嫌気がさしていた。そんなケイに対して、ただ冷静にエクターは言葉を発した。

「この地には必要なのだろう。彼女も彼もそれを望んでいるし、何を企んでいるのかは分からねぇが……少なくとも、無駄にはしないし、したくはない。国のため、世のため、そう思って生きていかなければならないほど、この地は滅んでいる」

ㅤ誰がなんと言おうと、アルトリアが、アビジットが定めた道なのだ。ならば、その後は本人たちの気持ち次第であるし、二人は希望や光といった民を救うための気高き道を行くのだ。暴君になる訳でもなければ、大虐殺をしようなどとは思ってもいない。ならば、背中を押すことすれども、引くことなどしない。

「あぁ、そうだろうな。止まることなんて考えもしねぇ馬鹿どもだ。だが、俺は認めない。そんなアイツらを、それを作ろうとするあの魔術師もな」

ㅤ知っている。アルトリアが王にならなければ、このままブリテン島内での戦争は終わらず、激化していくだけなのだと。アビジットが騎士になれば、その戦争の期間が少しでも縮ませることができるのだと。国を思えば応援すべきであり、嫌悪感を抱くなどしてはならない。あぁ、でも、どうしても、只の人である二人がそんなものを背負わないといけないのか。

ㅤだからこそ、認めない。マーリンならば他に適任者はいるだろう。マーリンならば、他の人でも別に構わないのだろう。マーリンならば、マーリンならば……

「そう、だから、認めねぇよ。こんなくだらねぇことはな」

ㅤこう複雑そうな表情で告げるとケイはその場を去っていった。エクターはただ、ただ、目をつぶって静かにケイの言葉を聞き遂げていた。



ㅤ場所は少し変わり、アビジットとアルトリアは街中を勢いより駆けていた。正確にいうのであれば、アルトリアがアビジットの手を引き、無理やり走らせていた。

ㅤ微笑ましい光景であるのだが、訓練を受けているアルトリアと村人のアビジットの身体能力を比べるとアルトリアの方がかなり上をいくため、アビジットはヘトヘトになりながらも、何とかアルトリアに合わせて走っている状況である。

「さぁ、アビジット。もうすぐです!」
「アルトリア、はやい、はやいからッ!」

ㅤ思わず、声を荒げた。しかし、その顔にはこの二日間見ることのできなかった笑顔がそこにあった。普通の日常。当たり前の日々。確かに存在していたソレが戻ってきたかのような、暖かな気持ち。高揚感にも似た感覚を覚えながらにも彼はアルトリアという少女を理解してきた。彼女は人と真の意味で関わることはなかったのだろう。と。

ㅤだからか、アビジットは次期の王なる者に憐れみの視線を向けた。せめて、自分だけは良き理解者になろう。そう思っていた。

「見えてきましたよ!」

ㅤ気が付けば、アビジットがいた村とは違い、賑やかな場所へとついていた。活気に溢れていて、通る人に不安の影をまるで感じない。それどころか、希望に満ち溢れているようなそんな感覚すらあった。戦時中。しかも王が不在という国として不安定な時期にこうも人は明るくなれるのか、と彼は驚いていた。

「ふふ、凄いでしょう?皆、こんな時だからこそ、と日々を過ごしているのですよ」

ㅤ開いた口が塞がらない。とはまさにこのことなのだろうか、暫しの硬直後、アビジットは漸く言葉を発した。

「……いや、すまない。言葉が見当たらない。なんと言えばいいんだろうな」

ㅤ出たのは彼の心情を表す言葉だった。彼自身、信じられないと言わんばかりに今も尚驚いている。ここにいる人たち一人一人が何を思い、何を背負い、何を成すのかは分からない。けれど、止まってはいない。寧ろ、明日どころか今日すら生きていられるのか分からない世の中でこうまでして、希望を持てるとなると、不思議でならなかった。

「驚いているようですね。ですが、私からすれば、御身こそ不思議でならない。故郷とともに両親すらも焼かれ、自身だけが生き残ってしまった。絶望するのも分かります。ただ、屍のように過ごすのも頷けます。復讐に縛られるのも理解できる……が」

ㅤ途端、アルトリアが少し凛々しい顔をして、アビジットをじっと見つめた。そこまでいって、少し彼女は言葉を止めた。まるで見定めるかのような視線を向けてくるアルトリアに、少し戸惑いつつも言葉を待つ。そして、アルトリアは真剣な顔で問いただした。

「が、何故、何故、貴方はそうならない?何故、ただ、明日へと、未来へと、希望を見ていられるのですか。守るために、騎士になるため、英雄になるため。それが理解に苦しみます」

ㅤ泣き喚いて全てを捨てて、ただ戦災孤児として育つ道もあった。生を諦めて死を選ぶ道すらあった。いや、それこそ、考える間もなくショック死してもおかしくはない。けれど、彼は違った。地獄の中で静かに願った。

「それは……」

ㅤ何故、と言われても、そう思ったから。としか言いようのない問いに、けれど真剣に向かい合い、思考を加速させていく。確かに、それもあっただろう。生きて、と言われてから。それも違う。では何故か、何故なのだろう。そんな自問自答の嵐が彼の頭を支配していった。出てくる答えに否と決め付けて、次を探す。

ㅤそして、見つけた答えは__

「……そうだな。色々と考えて、でも、これしかないのかもしれない」

ㅤ何処か恥ずかしそうな表情をしながらも、アルトリアの方を向いて、言い放った。

「男だから」

ㅤ男だ。そう、彼は男である。英雄に憧れて何が悪い。騎士に憧れて何が悪い。誰かを守りたい、そう思って何が悪い。男ならば、何かに怯え隠れ過ごすより、勇敢に戦って見せるのが普通なのだろう。

ㅤ改めて、実感したこの願いに彼自身、苦笑をしていた。けれど、そこに不思議と違和感を感じなかった。

「男だから、誰を守りたい。誰を救いたい。そう、思うんだ」

ㅤ理由とは言い難い、けれど、少し筋の通っていそうな答えにアルトリアは少し戸惑いを覚えた。男だからという理由のみでこうして立っているのだ。彼女は戸惑いながらも数瞬後には迷いを断ち切ったかのように笑顔を見せた。

「そう、ですか。であるならば、きっと、この街の人たちも同じですよ」
「俺と、同じ、か?」
「えぇ、誰しもが幸福を願い、望んている。だから、こうしてこの国は滅んでいない」

ㅤエクターは、国のため世のため、とはいったがアルトリアは違った。彼女らしい光に満ちた言葉で表されていた。

ㅤ経緯はどうであれ、思いは同じ。そう言い切った彼女の言葉にどこか納得をし、街をゆっくりと見渡した。その言葉を聞いた後だからか、アジビットから見た街の人たちは少し輝いて見える見えた。

「……ならば、その願いを形にしないとな」

ㅤ初めて訪れた街の初めて吸った空気。故郷とは似て非なる場所ではあるが、自分のいるべき所なのだろう、と感じたのだろうか。その言葉は自然と口に出ていた。

「えぇ、その為の王であり、騎士ですよ。改めてよろしくお願いしますね、アビジット。一人でできないことでもきっと二人なら」
「二人なら、できる。か?なんであれ、こちらこそ、よろしく頼む」

ㅤ暮れゆく、時の中で確かに、二人は己の内にある祈りにも似た理想を感じながら、挨拶を交わした。

「それは、そうと……具体的な形は決まっているのですか?」
「というと、救う方法か?それこそ、模索中のというか、マーリンの講義の中で定めていきたいな、って。アルトリアはある程度の決まっているのか?」
「えぇ、ある程度は決まってきましたね。例えば__」

ㅤこの後、二人はめちゃくちゃ理想トークを楽しんだ。




やっぱり、一日一話は無理だったよ(知ってた)

二、三日に一話が限度ですわ。土日にストック貯めるに貯めたいと思いますので、少しは改善されるかも……←自信が無い。

ヒロインポジはご覧の通りアルトリアです。

王と騎士の恋愛っていいよネ。

え?ランスロもガヴェインも似たようなことしてるって?ハッハッハ……どうなってんの、円卓。

ご感想お待ちしておりますので、ジャンジャンくださいッ!

あ、あと。冒頭のアレは全く本編関係ありませんよ。格好いいから書いているだけですので。というか三話にしてネタ切れ感パネェ