その少女は、災厄(ノイズ)であった   作:osero11

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 どうも、昨日ぶりです。いつも読んでくださり、ありがとうございます。
 ここまで投稿速度が速いのは、ほとんど原作に沿ったストーリーでしかないからですね、きっと。自分の発想力の乏しさが恨めしい……。
 そのせいで、「原作の大幅なコピー」と見なされなければいいんですけど……。どころどころ描写を微妙に変えたから、多分大丈夫だと思います。

 それでは、どうぞ。


二人の「神殺し」

 響もサンジェルマンも、その場から動くことができなかった。

 完成した「神の力」、それは彼女たちの想像を絶する力で、近くにいるだけでも気おされてしまいそうになるのだから。

 

「神力顕現。本当は持ち帰るだけに留めるつもりだったんだけどね、今日のところは」

 

『ゴメンナサイ……。アダヂ、アダムガヒドイコトサレテダカラ、ツイ……』

 

「仕方ないよ、もう済んだことは。だけどせっかくだ――」

 

 

 

 

 

「知らしめようか! 完成した『神の力』――ディバインウェポンの恐怖を!!」

 

 

 

 並行世界の一つが焼却され、それによって得られたエネルギーにより放たれた神の攻撃。その光線によって周囲は焼き尽くされ、瞬く間に焦土とがれきの山へと化していく。

 人類にとって最も危険な男に、この地球上において最も強大な力が渡ってしまった瞬間である。

 

 

 

「あれだけの破壊力……シンフォギアで、受け止められるの!?」

 

 調の悲痛な問いかけに、答えられるものはいない。あれだけの威力を伴なった攻撃を、ノーリスクで放てるだけの相手を、彼女たちは知らなかったからだ。

 「神」というものがいかに超常的な存在であるかを、まざまざと見せつけられていた。

 

 

 

「人でなし。サンジェルマンはそう僕を呼び続けていたね、幾度となく」

 

 自らが追い求めていた力を手にし、その圧倒的な力を目にして余裕を取り戻したアダムが彼女に語り掛ける。

 

「そうとも、人でなしさ、僕は。なにしろ人間ですらないのだから」

 

「アダム・ヴァイスハウプト。貴様はいったい――」

 

 地面へ降り立ち、笑みを浮かべたままアダムは問いかけにこたえる。まるでそのことが誇りだとでもいうかのように。

 

「僕は作られたのさ、彼らの代行者として。だけど廃棄されたのさ、試作体のまま。完全すぎるという理不尽極まる理由によってね」

 

 そのことが彼の琴線だったのか、自分で話し始めたことにも関わらず、彼の顔から笑みが消える。

 

「……ありえない、完全が不完全より劣るなど」

 

 その話を聞きながら、響はさきほどの攻撃で吹き飛ばされた際に負傷した右腕をおさえて立ち上がる。

 アダムは笑みを再び浮かべたが、その瞳には不完全な「人間」に対する憎悪と嫉妬の念がこもっていた。

 

「そんなゆがみは正してやる。完全が不完全を統べることでねぇ!!」

 

 そして言葉の勢いのまま腕を振り上げ、再びの攻撃を神となったティキに仕掛けさせるアダム。それに応えて神の口にエネルギーが充填されていくのを見た響は、一歩前に力強く踏み込む。

 

「さっきのような攻撃を撃たせるわけには!」

 

 腰のバーニアに点火し、神となったティキへと飛んでいく響。

 

「はああああ!!」

 

 右腕を振りかぶり、左顎を思いきり殴りつけることで、光線が発射される方向を上へと変更させた。その際、神の左顎についている結晶が、攻撃のインパクトによるものか砕け散る。

 光線は響の狙い通り、上空の宇宙空間へと放出されたが、神の左腕で振り払われたことによって、彼女自身は吹き飛ばされ、地面へと衝突する。

 

 神の一撃は宇宙空間に存在する米国の人工衛星を消し飛ばし、そのかけらは地球へと隕石のようになって降り注ぐ。

 暴力しか生み出さない神の力を前に、人類のためにと奔放していたサンジェルマンは慟哭する。

 

「こんな力のために、カリオストロは、プレラーティは……!」

 

 地面にたたきつけられた響は、倒れたまま動かない。シンフォギアが耐えられるダメージを超過したのか、その体の至る所から火花が散っている。

 

 この危機的状況を打破するための方法を、彼女たちは未だ見つけられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 体がおかしい。

 

 

 

 

 

⁅あつい。いたい。くるしい。しにそう⁆

 

 

 

 

 

 体がどんどん、作りかえられていくのを感じる。それ以外、何もわからない。

 

 

 

 

 

⁅だれか、だれかたすけて⁆

 

 

 

 

 

 ――それでも、一つだけ言えることがある。

 

 

 

 

 

⁅だれか……だれか……お願い……⁆

 

 

 

 

 

 自分は今、すごく幸せだ。

 

 

 

 

 

⁅お願い……助けてよ……⁆

 

 

 

 

 

 その理由は、一つしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メリュデ(わたし)を……あの子(メリュデ)を助けて⁆

 

 ――これでようやく、人間を辞められる。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ああ! 響さん」

 

「あのバカ! 地面が好きすぎるだろ!」

 

 別のカメラから映像をつなぐことで回復したモニターには、うつぶせになって倒れた響の姿が映しだされた。

 神の力の矛先をずらし、これ以上の周辺地域への被害を未然に防ぐことができたとはいえ、その代償は大きかった。

 

 残ったサンジェルマンが、スペルキャスターで銃弾を「神」へと撃ち込んでいく。だが、ある程度撃ち込んだところで、受けたダメージを並行世界に存在する同一別個体に肩代わりさせられ、彼女が与えたダメージはなかったことにされた。

 

「さっきのは、ヨナルデパズトーリと同じ能力!」

 

「神の力により、なかったことにされるダメージ!」

 

 あまりにも理不尽な防御力の再登場に、思わず声をあげてしまう二人。ノイズの位相差障壁のように提言した結果としての無効化ではなく、そもそもダメージを受けていない個体と入れ替えるのだから、あの神への攻撃はまさに無意味と言っていいだろう。

 

 それでもなお、サンジェルマンは弾丸を撃ち込み続ける。が、いくら与えたところで、神の絶対防御が発動してしまえば、瞬く間に無に帰してしまう。

 やがて鬱陶しいと思われたのか、サンジェルマンは神の手で払われてしまう。ティキにとっては軽くだろうが、それでも神の圧倒的攻撃力によってサンジェルマンは吹き飛ばされる。

 

「まさに神に等しき、圧倒的な攻撃力と、絶対的な防御!」

 

「反動汚染の除去が間に合ったとして、立ち回る方法がまるで思いつかねぇ……」

 

 門より降臨した神は、その場にいない装者たちをも絶望の淵に立たせていた。

 

 

 

 が、その絶望を塗りつぶすかのように、第二の絶望が目を覚ます。

 

 

 

「! 司令! 神の力とは別の、高出力のエネルギーを感知!」

 

「なんだと!?」

 

「なんなんだ、このエネルギーパターンは……。該当するデータが存在しない……。聖遺物でもなければ神の力でもない……。

 アウフヴァッヘン波形に似ているけど、それよりもずっと複雑な模様を描いている……」

 

 現場に突如現れた熱量の塊に、神の力の脅威の前に沈みそうになっていた雰囲気が変わり始めた。

 この雰囲気に、装者たちは、存在を忘れていた少女のことを思い出した。

 

「まさか、少女Vか……!?」

 

「その可能性が大きいわね。一体今度は何をするつもりかしら……!」

 

 装者たちが少女Vの次の行動を警戒したとき、モニターにエネルギーが感知された場所の映像が映し出される。それを見て、その場にいた面々の多くが息を呑んだ。

 そこにいたのは、少女Vによく似た怪物であった。

 

 まず、人型ではあるが、体の至る所から色の違う毛が伸びている。右腕も異常なまでに肥大化していて、指がまるで巨大な爪のように変貌している。

 なにより異常なのは、体のところどころから、骨のようなものが飛び出しているように見えることだ。口なんて、本来の口の周りを、牙が備わった顎のような外骨格が覆っているような状態だ。

 

「……あれは、人間なのか?」

 

「なにをどうやったら、あんなふうになりやがる……」

 

 彼女たちの言葉が示すように、もはや装者たちの目には、融合症例とか関係なく、少女Vは神の力のような理解できないものになってしまったようにしか写らなかった。

 圧倒的な強さを見せつけてくる神。今もなお進化し続けるノイズの少女。その絶望的な状況に、思わず弦十郎は悲痛な声を出す。

 

「無為に天命を待つばかりか……!」

 

 

 

 

 

『諦めるな! あの子なら、きっとそう言うのではありませんか?』

 

 

 

 

 

 突如、S.O.N.Gの司令室に、通信越しに激励する声が響き渡った。発信源は不明で、暗号化されて身元も特定できないが、それでも善意の協力者であることだけは声の調子から分かった。

 その後、その彼からファイルがいくつも送られてくる。それらがモニターに映し出されると、聖遺物などの異端技術に関する文章が次々と公開されていく。

 

「これは、解析されたバルベルデドキュメント!?」

 

『我々が持ちうる限りの資料です。ここにある神殺しの記述こそが、切り札となりえます』

 

「神殺し!? でもなんでまたそんなものが……」

 

 送られてきたバルベルデドキュメントと、神殺しの実在に驚きを隠せないクリス。そこに、調査をしていた緒川からの連絡が来る。

 

『調査部で神殺しに関する情報を収集していたところ、彼らと接触し、協力を取り付けることができました』

 

 緒川による経緯の説明の後、モニターに()()()の画像が映し出される。この槍こそが、神殺しに大きく関わる聖遺物であった。

 

『かつて、神の子の死を確かめるために、その遺体に振るわれたとされる槍。はるか昔より伝わるこの槍には、凄まじき力こそ秘められてはいたものの、本来ならば神殺しの力は備わっていないと資料には記述されています』

 

「じゃあ、どうして……」

 

『二千年以上にわたり、神の子の死にまつわる逸話が本質を歪め、変質させた結果であると記されています』

 

「まさか、哲学兵装なのか!? 先のアレキサンドリア号事件でも中心になった……」

 

『前大戦時にドイツが探し求めたこの槍こそ……」

 

 そしてモニターに、その神殺しの力を携えた槍の名前が大きく表示される。

 

 

 

[GUNGNIR]

 

 

 

「ガングニール、だとぉ!!」

 

 弦十郎が叫んでしまうのも無理はない。なにせ、今神と戦っている少女が身に纏っている槍こそ、探し求めていた神殺しだったのだから。

 

 

 

 

 

 

 ――やっぱり、まだ慣れないか。

 

 ノイズの少女は、自身の体がもはや人外のものになり果てたとしても、体の動かし方がいつもと勝手が違うこと以外気にしていなかった。

 いや、人間をやめ()()()という事は、彼女にとってはむしろ嬉しいことなのかもしれない。

 

 本来ならば、今の段階でできる進化を成し遂げえるためには、十分に休む必要がある。

しかし彼女は、自身の完全な変身よりも、目の前の敵を討つことを優先して動こうとしている。その理由は、単純明快だ。

 

 ――あれは、この星を汚す、忌むべきものだ。

 

 彼女にとって、ルル・アメルはこの星の環境をただ貪り、汚染する害悪だからこそ滅ぼすべき敵なのだ。ゆえに、そんな人類が作り、今まさに土地にダメージを与えているディバインウェポンも、存在を許せるはずがないものなのだ。

 彼女は右腕を構えながら、神を殺す「リュウ」の力を携えて、神の方に向き合う。奇しくも、右隣のもう一人の神殺しと並んだ状態で。

 

 ――だからこそ、アレを倒すためなら、例えどんなに苦しかろうとも――

 

 

 

 

 

 

「そう、だったんですね……」

 

 自分のガングニールこそが神殺しだと通信越しに知った響は、顔をあげる。

 

「まだ、なんとかできる手立てがあって、それが、私の纏うガングニールだとしたら――」

 

 そして、重いダメージを受けておりながらも、なんとか手をついて立ち上がろうとする。

 その左隣には、偶然にも、ノイズの少女が異業の姿で神と向き合っていた。奇しくも、二人の神殺しは、共通の敵を前にして並んでいたのだ。

 

「もうひと踏ん張り――」

 

 そして膝をつき、神殺しの少女は立ち上がる。目の前の髪を打倒せんと。

 

 

 

「やって――」

 

 

 

 

 

 

 ――やれない――

 

 

 

 

 

 

『――ことはない!!』

 

 

 

 

 

 

「ティキ!」

 

 アダムの呼びかけに反応し、神の肩の結晶から光線が二人に向けて放たれる。神殺し達はそんなもの知るものかと、神の力による特殊な力場で宙に浮いた瓦礫や岩を足場に、跳躍しながら神へと近づいていく。

 

「行かせるものか、神殺し共!」

 

 アダムが二人の行方を遮ろうと帽子を投げつける。が、その攻撃は銃弾が起こした爆発に遮られた。分かりやすく表情を歪めるアダムに、銃弾を放ったサンジェルマンは確信する。

 

「なるほど、得心がいったわ。あの無理筋な黄金錬成は、シンフォギアに向けた一撃ではなく、すべては自分一人が神の力を独占するために、局長にとって不都合な真実を葬り去るためだったのね。

 その反応を見るに、偶然にもノイズを操る少女も、神殺しの力を有していたようね」

 

「言ったはずなんだけどなぁ、賢し過ぎると!」

 

 先に邪魔者であるサンジェルマンから始末することに決めたアダムは、彼女に向かって襲い掛かっていく。

 

 

 

 一気に神にまで近づいた二人。そんな二人を迎え撃つかのように、機械仕掛けの神は両腕に力を収束し、両こぶしを構えている。

 

「寄せ付けるなぁ! カトンボをぉ!」

 

 響はハンマーパーツを、ノイズの少女は右腕の外骨格を巨大化させ、神の巨大な拳に対抗するための下地を作る。

 

『アダムヲコマラセルナァー!!』

 

 どこまでも恋愛脳なティキを核とした神の拳が放たれる。それを自分たちの拳で迎え撃つ響とメリュデ。

 本来なら、勝ちは強大な神の力を有するティキの方だっただろう。しかし、神殺しの概念により神の威力は低減し、逆に神の両腕が破壊された。

 

『アアアアアーー!!』

 

 神殺しの概念という毒に蝕まれ、苦痛に襲われるティキ。彼女はなんとかこの苦痛かr逃れようと、並行世界の自分と個体を入れ替える神の絶対防御を発動させる。

 だが、それは逆効果でしかなかった。

 

 並行世界と接続した瞬間、なんと《並行世界の個体すべてが同じ傷を負い》、いくら入れ替えようとも負傷をなかったことにすることができなくなったのだ。

 入れ替わってもなお続く痛みに、悲鳴を再び上げるティキ。この現象は神殺しによるものだけでなく、二人の歌の特性によるものだ。

 

 繋ぐ力と、支配する力。この力を伴なった神殺しはティキの神を侵食し、並行世界の個体と入れ替わろうとした瞬間に、そのすべての個体を支配・接続し、同じ傷を共有させたのだ。

 この二人の神殺しだからこそ、神の絶対防御を破ることができると言っても過言ではないだろう。

 

 しかし、圧倒的な攻撃力は健在。失った腕を近くの瓦礫に突き付け、黒い波動を巻き起こして二人を攻撃する。

 そのあまりの衝撃に周りの瓦礫も吹き飛ばされる。体が宙に投げ出され、上と下がひっくり返るような気分になる二人。もはや再起不能化と思われたその時だが

 

「立花響ぃー!!」

 

 響は自身を呼びかけるサンジェルマンの声で、メリュデは自身の意志の強さでなんとか我を取り戻し、それぞれ、脚のパワージャッキと背中から生やした翼で体制を整え、最後の攻撃を仕掛けんと動く。

 

「神殺し止まれぇっ!!」

 

 アダムの声も聞こえない彼女たちは、響は右腕を巨大なドリルへと展開し、メリュデは鋭い爪に青い雷を纏わせて神へと一直線に向かう。

 

「八方極遠達するはこの拳! いかなる門も破砕は容易い!!」

 

「があああああ!!」

 

 雄たけびを上げながら、右腕を構えて最後の一撃を加えてやろうと突っ込んでいく少女たち。

 その時、アダムの頭に「神の力」を守るための一手が浮かんだ。まさに人でなしのアダムだからこそ思いついた一手が。

 その一手を発動させるために、彼は両手を広げてティキに告げる。叶えるつもりなど毛頭ないティキの願いを。

 

「ハグだよ、ティキ! さあ、飛び込んでおいで! ()()()()()()()()()

 

 アダムの言葉を聞き終わるや否や、赤い結晶に包まれて神の()となっていたティキが、神の胸から彼に向かって飛び出した。

 

「アダムゥー! 大好きー!!」

 

 そんなティキの愛の言葉もむなしく、響のドリルの一撃で結晶を攻撃され、保護のための結晶ごと人形の下半身は砕け散った。

 そして器たるティキを失った神は、依り代となる概念を失ったことによりその形を保てなくなり、質量をもった存在から無色透明なエネルギーへと変換されていく。

 

 これこそが、アダムの狙いだった。しょせん神の力を集める役目しか持たないティキを切り捨て、神の力だけは破壊されないようにするための。

 神殺しでも、依り代を持たない純粋なエネルギーである神の力だけは破壊できないようで、ノイズの少女の攻撃も空振りするだけだった。

 

「アダムスキダイスキ。ダカラダキシメテ、ハナサナイデ。ドキドキシタイノ」

 

「恋愛脳め。いちいちが癇に障る」

 

「ナンデマタ!?」

 

 恋に盲目すぎるために、自身が切り捨てられたことにも気づかない哀れなオートスコアラーを、アダムは冷たい目で見下したのち、無情にも蹴り飛ばす。

 

「だが間に合ったよ、間一髪ね」

 

 そして上空に漂う神の力を感慨深げに見つめた後、己のちぎりとった左腕をうえに掲げる。

 神の力を宿せる人形は、ティキだけではない。先史文明期の旧支配者に作られたアダムもまた、神の力の依り代となることができたのだ。

 

「付与させる! この腕に!

 その時こそ僕は至る! アダム・ヴァイスハウプトを経たアダム・カドモン! 新世界の雛型へと!」

 

 そして神の力はアダムの方へと向かい、彼の左腕に宿る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ことはなかった。

 

 

 

「な……? どういうことだ……?」

 

 なぜ、器となることができる自分を、神の力が素通りしているのか。アダムは信じられないものを見たような顔をした。

 アダムが、神の力が流れていった先を見ると、そこには――

 

 

 

 

 

 地面に膝をついて立ち上がったばかりの立花響と、動けないでいるメリュデがいた。

 

 

 

「なに……これ……?」

 

 自身に神の力が宿っていくのを見て、思わず呟く響。メリュデは、体の変化に耐えることができなくなったのか、うめき声を出して倒れたままだ。

 それを見ているサンジェルマンもまた、何が起こっているのか分からず動けないままだ。

 

「私、どうしちゃったの……。!? うわあああー!!」

 

「が、があああああああああ!!」

 

 自身の体に起きた急激な変化に耐えきれず、叫ぶ声をあげる二人。その二人から発せられた光が、辺り一面を覆いつくしていく。

 

 

 

 光が薄れていったとき、それらは姿を現した。

 ビルとビルの間に天高く形成された繭のような物体。そこから少し後ろに離れて地に形成された卵のような物体。

 この二つの物体は、内部からそれぞれ紫と青の光を発し、リズミカルな音と振動に共鳴するかのように明滅している。その様はまるで、鼓動のようだった。

 

「宿せないはず……穢れなき、魂でなければ、神の力を……!」

 

「生まれながらに、原罪を背負った人類に宿ることなど……」

 

 二人の錬金術師は、今度こそ目の前で起こっていることを信じることができなかった。

 

 二人の神殺しを宿したチカラは、不気味に鼓動を続けていた……。

 

 

 

 




 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 この小説を読んだ後は、AXZ最終話、そしてXVの始まりを皆さんで楽しみましょう!

オリジナルキャラの挿絵などもあった方がよろしいでしょうか?(作者自身が描くが、画力は期待しない方がいいレベル。描くならペイントか手描きの二択)

  • 挿絵はあった方がいい(ペイント)
  • 挿絵はあった方がいい(手描き)
  • 挿絵はない方がいい
  • どちらでもよい

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