Skull   作:つな*

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俺は辛かった。


skullの懐柔

「スカル」

 

あの地震以来ルーチェ先生がよく声を掛けてくる。

この前は焼き立てのパイをくれた。

誰もいない場所でひっそりと渡されるのは何故だ。

あれか、俺なんかみたいなやつと交流あると思われたくないパターンか。

泣ける。

でもパイは美味しかった。

半分以上ポルポに食われけど。

今日もストーカー仮面野郎に言われて来た場所に行けば、ルーチェ先生だけが名前呼んでくれた。

既に俺以外皆集まってるんだけど、皆仲良さそうだよね…俺以外。

何だろう、俺のこのハブられ感。

ルーチェ先生も、俺がハブられてんの同情して声掛けてきてんのか?

やべぇ、目から汁が…

どうせ俺はいつもぼっちですよ、ぼっち万歳、悲しくなんてねーし。

……ねーし。

いつも通り、誰かと組まされて監視されるかと思ったけど今日は単独行動らしい。

隙を見計らって逃げても死亡フラグビンビンなんですね分かります。

皆椅子から立ち上がってどっかに行ってしまった。

俺も言われた場所に行けば、でかい立派な建物があった。

多分あれの中に入って、言われた通り探し物見つけて持って帰ればいいわけね。

楽勝楽勝。

 

と思ってた時期が俺にもありましたまる

 

「おいあいつだ!殺せ!少しの犠牲は構わん!絶対に奴を殺すんだ!」

 

うわあああああああああああん!

ニート特有の影の薄さを利用して建物の中進んでたら途中で見つかった。

そこから地獄のリアル鬼ごっこですよ。

さっきから背後をパンパンと銃声が聞こえるし、壁が削れていってる。

ハッキリ言おう、チビりそう。

きゃんっ、ヘルメットに掠った!

角を曲がれば行き止まりで泣いた。

うっそだろぉぉぉぉおおお!

くそ、こんなことならPCの中身全部消しておけばよかった‼

唯一の逃走手段は窓だけだったが、俺がいるのは5階。

無理ぽ。

楽し…くない人生だっだよこなくそー!

……………窓の外に向かってそう叫ぼうとした俺だったが、寸でのとこで止まる。

そして俺の目線の先には蛇口と、蛇口に巻かれているホース。

人って水掛けられたら一瞬怯む…よな?

そのうちに逃げ……られる…よな?

よし、どのみち死亡フラグ乱立してるし、やるだけやって派手に死にますか。

蛇口にホースを差し込み、蛇口を捻るとホースの先端から水が溢れ出す。

中々の水圧だ。

 

「そこの角だ!そこだっうわあっ!」

 

数人の足音がしたので角を曲がった瞬間にホースの口を親指で摘まみ、野郎どもに掛けまくってやった。

案の定一瞬怯んだ野郎どもの側をそっと抜け出ようとして一歩踏み出した時だった。

腰に差していたスタンガンを思い出した。

Q:いつ使うの?

A:今でしょ!

スタンガンを引き抜き濡れた顔を拭う奴等に向けてスタンガンを向けた。

まさかそれがあんなことになるなんて……………

 

「ぎゃああああ、俺の腕がっ」

「あ、足が焼けて、あああああっ」

 

俺は呆然と突っ立って、悲鳴を上げている奴等を見ていた。

結果を言えば、建物が燃えた。

 

数分前に遡ろう。

スタンガン向けたと思ったらそのまま滑って地面に落とすという失態に本気で泣きたかった。

んでもって水浸しの地面にスタンガン落ちて、その場の全員に感電するというね。

いやいやスタンガンだよ?

そこまで威力なんてな………モブ子ぉぉぉおおおおお!

確か俺の持ってるスタンガンってモブ子が渡してきた奴だよな!?

あいつか!真犯人は!

つーか俺も感電したんだけど!?

痛くて声も出なかったわ!

あれはダメだ、粗悪品だ。

感電に悲鳴をあげたり気絶してた野郎どもの隣で、今だ!と思って逃げようと足を一歩引こうとした瞬間に隣の壁が爆発。

そして爆発の衝撃で扉やら窓やらが破壊して俺まで外にふっ飛ばされたわけで。

まさか5階から命綱なしバンジージャンプするとはな。

爆風で建物から放り出された時お空が見えて、とっても綺麗だと思いましたまる

…ふざけんなよ、この野郎。

そのまま地面に腰を強打してのた打ち回ること数十秒。

漸く立ち上がって周りを見ると、地獄絵図。

ていうか何で爆発したんだよ。

味方を巻き込んでまで俺を殺したかったのかよ!

外道だなおい。

 

「痛ぇ、痛ぇよぉおおおお」

「うぐあぁ、目が…」

 

ご愁傷様で。

 

「腕が折れたぁぁ…誰か、助けてくれぇ…!」

「ぅぅ……頭が…い、てぇ……」

 

じ、自業自得だろ…

 

「あうぅ……」

「おい、起きてくれよ…目を、覚ませっ……」

 

助けてなんか………やらな…

 

ヴェルデやルーチェ先生の話聞いてる限りじゃコイツらも一応犯罪者っぽい何かだろうけど、その前に人間だもん。

ニート志望だなんて社会の底辺だと自覚している。

だけど……目の前で苦しんでる人助けないと…人として終わる気がするんだ。

怖いけど……でも助けなきゃ、いけない気がする。

直ぐ近くの片足が折れてる男に近寄り、傷の具合を見ようとした。

 

「待ってくれ!」

 

手を伸ばしたところで別方向から呼び止められて、そちらを振り向けば比較的軽症の男がアタッシュケースを片手に凄まじい形相でよろよろと近寄って来た。

 

「あ、あんたが欲しいのはこれだろ!?」

 

そう言ってアタッシュケースを投げ渡された。

なぁに?コレ。

頭の中疑問符だらけのままアタッシュケースを開ければ、中にはヴェルデから探し出せと言われた品物が入っていた。

ああ!これか、そうそうこれが欲しかったの。

じゃねぇ、何だよ渡してくれんなら何で追いかけて殺そうと…いや最初に不法侵入したの俺だけど!

これなら普通に正面から入っていけばよかったじゃん……ヴェルデも説明不足なんだよ。

 

「もういいだろ!?ソレ渡したんだから俺達の前から消えてくれよ!頼むよ!」

 

なにこれ辛い。

本気で嫌がられてる。

いやまぁそれもそうか、不法侵入者撃退しようとして爆発に巻き込まされた身としては堪ったもんじゃない…のか?

いやそれただ単に身内が外道なだけじゃね?

正直俺も爆発に大いに巻き込まれたわけで、腰痛持ちになったらどうしてくれようか。

アタッシュケースを閉じて鍵をかけたのを確認すると、俺はそのまま早足でその場を逃げた。

これ以上いたら後ろからパーンされそう。

こいつら後で身内争いするパティーンだな。

そのまま集合場所に行ったら誰もいなかった。

あれ?もしかして俺待たずに帰った的な?

いじめかな。

大方首謀者はリボーンだろうな。

あいつ俺のこと嫌ってるし。

何故だ。

いや別に野郎に好かれても嬉しくないが。

ショックを受けつつも取り合えず最初の集合場所に戻るとルーチェ先生がいた。

担任は高みの見物ですか、そうですか。

 

「スカル?早かったですね、他の者は…………待たずに先に帰ってきたのね?」

 

なんと、あいつら来てないの?

どっかで寄り道してんのか。

全く酷い奴らだ。

怒る気力も度胸もないし、ルーチェ先生に荷物渡して帰ろうかな。

 

「少しお話をしませんか?」

 

二者面談の文字が一瞬浮かんだ。

本気でルーチェ先生が小学校の先生に見えてきた。

 

「あ!そういえば玄関の方にクロユリが咲いていましたよ、見に行きましょう!」

 

クロユリ?……ああ、あの真っ黒い花か。

ルーチェ先生が俺の手を掴んで玄関まで引っ張っていく。

腕が捥げるかというほどこの人握力強いんだけど、本当に女性?

女性の姿をしたゴリラとかじゃなくて?

 

「ほら、とても綺麗でしょ?」

 

って言われても俺美的センスないし。

正直花なんてどうでもいい。

数十分ほどルーチェ先生がクロユリガン見している間、俺はいつも集まる建物を眺めていた。

何でこんな辺境の地に集めるんだ?

やっぱりあれか、裏の世界の話だから内密的な?

これ警察にチクったらどうなるんだろう。

あ、すっげーでかい蜘蛛が窓に張り付いてる。

 

「スカル、一輪落ちていたのでどうぞ」

 

落ちたの渡すなよアホー!

悪気のない笑顔が余計腹立つなオイ。

断るのもアレだから貰うけどさ。

ルーチェ先生から手渡しで貰おうとして、グローブを付けた指先が茎に触れようとした時だった。

 

茎に小さな芋虫がいた。

 

おんぎゃあああああああ!

思わず花をルーチェ先生の手ごと叩き落としてしまった。

ボトリと地面に落ちた茎からうぞうぞと小さな芋虫が地面を這って行くのを見て鳥肌が立った。

きもい、果てしなくキモイ。

 

「おい、何してんだ」

「リボーン!帰って来たのね、他の皆は?」

「今から来る、おい、てめぇも先に行ってんなら連絡くらい常識だろうが」

 

俺を待たずに置いてったのはどこの誰だよ!

ルーチェ先生の前だからって恰好付けやがって。

ッハ、まさかコイツルーチェ先生が……

人妻好きとかもう末期だな、戻れねーとこまで来てらぁ…人として。

リボーンの後ろにヴェルデ見えたから、そっちに行って荷物渡して帰った。

家に帰ったらポルポがめっちゃへばり付いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

ルーチェside

 

彼が子供だと分かってから私の中で、スカルという男に対しての印象が180度変わった。

最初は得体のしれない仲間だったが、今では生き方を知らない可哀そうな子と思うようになっていたのだ。

 

『……生きてた……』

 

あんなにも悲しい声を聞いたことがない。

あんなにも苦し気な瞳を見たことがない。

 

可哀そうな子だった。

私にはあなたが狂人だと思えない、思いたくない。

 

『………ルーチェ…』

 

酷く掠れた声を今でも鮮明に覚えている。

何も、知らないだけなのだ。

この世界の美しさを素晴らしさを。

残酷な世界だけを見てきたあの子供に、私は一体何をしてやれるだろうか。

 

それから私はスカルに積極的に話しかけることにしたのだ。

彼の鉄の様な警戒心を緩めようと努力した。

分かったことは、スカルは一度も私を拒んだことはなかった。

焼いたパイも、クッキーも全部受け取ってくれた。

いつも何かを渡した時の彼の戸惑っている様子は、見ていて辛いものがあった。

まるで今まで何かを貰ったことがないかのように、彼はいつも自身の手のひらの上に存在するプレゼントを無言で眺めていた。

 

 

スカルは愛を知らない

 

 

そう確信するまで、そう時間はかからなかった。

ある時の依頼で、私は皆の帰りを待っているとスカルが早めに帰ってきていたのだ。

 

「スカル?早かったですね、他の者は…………待たずに先に帰ってきたのね?」

 

相も変わらず無口な彼だが、前よりも距離が近くなったと思っている。

彼の警戒心の顕れは逆を言えば、無警戒である環境下を知らないということ。

 

「少しお話をしませんか?」

 

私の隣は大丈夫だと知って欲しかった。

 

「あ!そういえば玄関の方にクロユリが咲いていましたよ、見に行きましょう!」

 

私は玄関先にクロユリが咲いていたのを思い出した。

スカルの手を引いたが、本人に嫌がる素振りはなかった。

むしろ戸惑っているようですらあった。

ああ、やはり彼は人の温もりを知らないのだ。

グローブから伝わる彼の体温は確かに温かかった。

 

「ほら、とても綺麗でしょ?」

 

数十本のクロユリを指差し、スカルに同意を求めるように声を掛けた。

スカルはうんともすんとも言わなかったが、それでもよかった。

何かに触れることを知って欲しかっただけのなのだから。

数十分程クロユリを眺めていると一輪だけ地面に落ちていた。

風で折れてしまったのか、真新しい花弁でそのまま放っておくのは勿体ないと思ったのだ。

 

「スカル、一輪落ちていたのでどうぞ」

 

そのクロユリを手に取り、スカルの方へ差し出す。

クロユリの花言葉は「愛」。

愛をあなたへ。

少しでもあなたに愛が届くように…

 

 

パンッ

 

ハラリと私の前で花弁が散る。

地面にかさついた音を立てて落ちたクロユリが視界に入った瞬間、叩き落とされた手の甲がじんっと痛んだ。

スカルの指は震えていて、私は叩かれた手よりも心がズキリと痛んだのだ。

そんな時スカルの後ろからリボーンが現れた。

 

「おい、何してんだ」

「リボーン!帰って来たのね、他の皆は?」

「今から来る、おい、てめぇも先に行ってんなら連絡くらい常識だろうが」

 

リボーンがスカルを一睨みし、私とスカル、そして地面に落ちていたクロユリを見た。

スカルはそのままリボーンの横を過ぎ去り、ヴェルデの下へ行き今回の目的のものを渡すと何も言わず姿を消した。

 

「ッチ、女からの花を払い落とすなんぞ男のすることか」

 

リボーンは舌打ちをしながらクロユリを拾い、私に手渡した。

 

「ありがとうございます…」

「あんま落ち込むんじゃねぇぞ………それと、あいつに何かを期待するのはやめておけ」

 

それだけ言うとリボーンは中に入っていった。

 

「ルーチェ、右手が腫れているようだが大丈夫か」

「え、はい…何でもありません」

「それならいいが…」

 

ラルの言葉で私は自身の手の甲を見た。

そこはほんのりと赤くなっいた。

私はラルと共に中へ入り、皆の報告を待った。

するとヴェルデがスカルから手渡されたものをテーブルの上に置いて、険しい顔をしていた。

 

「スカルめ、事を大きくしたな……やはり奴に隠密行動は無理だったか」

「どういうことですか?」

「これを見てみろ」

 

そう言ってヴェルデが取り出したのは小さな手のひらサイズの機器だった。

 

「それは…」

「これは小型ラジオだ、よく聞いてくれ」

 

ラジオは雑音混じりではあったが、確かにその場の誰もがしかと耳にした。

 

 

 

『××地区にある〇〇通りの建物がアークフラッシュで崩壊しました。死者17人、重軽傷者49人と規模が大きく、現在原因を調査中で—————』

 

「スカルに頼んだ場所だ、探すのが面倒で手っ取り早く建物ごと潰して先方の戦力を削いだ後に例のものの場所を聞き出した…というところか」

「確かそこは■■ファミリーと繋がっていた場所じゃないか?」

「奴にとって関係ないのだろう…なんせ邪魔するものには死を、なんて大層な言葉があるのだからな」

 

ヴェルデは呆れたようにそう言っていたが、誰もが軽く受け止めていなかったのだ。

私は先ほど叩かれた手の甲を見た。

 

 

そこはうっすらと赤みを帯びていて

 

私はそれを見るたびに胸にズキリ、と言い様もない不安と痛みを覚えた。

 

ああ、早くあの子に愛を……

 

 

もう、残された時間は僅かだ

 

 

 

あの日が近い

 

 

 

 

 




スカル:新たに伝説()をマフィア界に刻んだ、最近ポルポが急成長しているのが気になる模様、モブ子許さん。
ルーチェ:スカルを我が子のように思っている。
芋虫:いい仕事したぜ。
リボーン達:スカルがルーチェの手を叩き落としているのを目撃し、好感度が急激に降下+今回のスカルの起こした凶行にさらに好感度を降下させる。
リボーンに至っては既に零地点突破済み。
スタンガン:100mA(死亡する可能性が極めて高い電流の大きさ)を垂れ流した兵器、なおスカルはピンピンしている。
ポルポ:ご主人様ー!と帰って来るスカルに毎回張り付いている、最近は牛も食べてる。



建物に関してトラッキング現象からのショート発火、んでもって隣のサーバー室でアークフラッシュ(電気事故)。
用語が分からないくても別に大丈夫です、私も理解していません。

取り合えず大体スカルのせいです。


……取り合えず大体スカルのせいです。




どうでもいい絶望話↓

寒くてタイピングする指が震えるこの頃……
さてスカルの8話がそろそろ半ぶ……あ"あ"あ"あ"あああああああああああっ

_人人人人人人_
> 突然の死 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


PCがフリーズしてスカルの8話が3000文字のところで吹っ飛んだ、泣きたい。



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