「スカル、日記をつけてみてはいかがですか?」
「・・・…日記?」
「ええ、毎日を振り返って思ったことを書いて頭の中を整理することは悪いことじゃないと思います」
使って下さいといわんばかりに輝いているユニの瞳を直視して、断るという選択肢はなかった。
渋々日記という名のノートを受け取った俺は、まあ三日で飽きるんだろうなと思いながら白紙の上にペンを走らせる。
さて、最近の俺の日常を書くにしてもどんなことがあったのやら……ポルポがうざぎ食べてたことくらいか?
最近、俺のハマっているゲームの中で常に上位に入っている奴がいる。
昔やりこんでいたゲームがサービスを終了し、暫く落ち込んでいた俺にギルマスが新しいゲームを紹介してくれたのでそちらを遊ぶようになったこの頃、俺は既に廃人と呼ばれる程の腕を身に付けていた。
内容は普通のガンゲームなんだが、課金無しでも満足に遊べるという点でレビューがかなり高いことから一部のゲーマーには人気のゲームだった。
かくいう俺も無課金でなんとかのし上がっているわけで、ニートだと一発でバレるような成長率を見せている。
さて話を戻すが、週一で行われるイベントにて、参加プレイヤー全員がランキングに載るのだが、上位で安定している俺と一緒でもう一人いつも名前を並べる者がいた。
そのプレイヤー名を『me』といい、
ネットの掲示板にそう書かれていただけなので本当の性格は分からないが、信憑性の高いユーザーの発言だったのもありmeはかなり癖の強いプレイヤーだという噂が固定されていた。
こいつのスコアが俺に追いつけば追いつく程俺の夢に出てくるので、俺もムキになって追い越されまいと頑張っている。
因みに一人で遊ぶシングルプレイと複数で遊ぶマルチプレイというものがあるのだが、マルチプレイはボイスチャットという俺にとって高難易度のコミュニケーション方法のために一度もそちらを試したことはないのだ。
故にシングルプレイで極めた俺は、傍から見て「ぼっちザマアなコミュ障野郎」と思われているに違いない。
そこは置いといて、俺はこのmeというプレイヤーに大層ライバル心を燃やしているのである。
俺がスコアを追い越すときもあれば追い越される時もあった。
ただ二人の間にチャットも、メッセージも一切ない。
あるのは毎回のイベントで上位に鎮座するプレイヤー名とスコアだけ。
ギルマスも一緒に遊んではいるが正直ガンゲームは得意分野というわけではなく、どちらかというと下手くその類だったのでいつもスコアが下からかぞえた方が早い場所に表示されている。
ギルマスとのマルチプレイも考えはしたが、国が異なるのでタイムラグがえげつなく断念した。
ゲームに嵌まり出したこの頃に、珍しくヴェルデが訪問してきてたな。
ヴェルデは不法侵入しないし、こちらが最低限の対応さえすれば暴走しないので嫌いじゃない。
ヴェルデ曰く、ポルポを研究したいんだが貸してくれとのこと。
勿論ポルポが断っていたが。
さて話に戻ろう、このmeというプレイヤー、その日もまたスコアを俺の隣に並べていやがる。
ぐぬぬ、いつか絶対に大差付けて上から見下してやる。
猫の、この世の絶望を全てを詰め込んだような鳴き声で目を覚ましたとある日、俺は初めてmeとボイスチャットを試みた。
相手も断る理由がなかったのか、申請を許可しマルチプレイで協力して敵モブを倒していたが、何故かどちらも最後までワンマンプレイだけして喋らず終わってしまった。
何故だ。
いや俺はあっちが喋ってきたら返事くらいはしようと思っていたんだが、まさかあっちが挨拶含めて一言も喋らないとは思っていなかった。
何か気に障ることでもしたのだろうかと悶々とした日だったので、かなり鮮明に覚えている。
あと、朝の猫の悲鳴はポルポがその猫で遊んでいたことが原因だった。
また別の日にリボーンが不法侵入してきた。
そろそろあいつは起訴されるべきだ。
ほんと、あいつ死ねばいいのに。
一度でいいのであのもみあげを引き抜きたい。
あれから数日、いきなりパタリとmeが現れなくなった。
ランキングにも奴の名前が載ることはなくて、俺は少し驚いた。
リアルが忙しいのだろうか。
あれから3週間経ったけどmeは現れない。
俺は自分の中でのライバルがいきなり消えたことにショックを隠せなかった。
あそこまで廃人並みの遊び方をやっておきながら、いきなり姿を消したmeに僅かな失望を抱く。
あれからまた数週間経ったが、meは現れなかった。
脱ニートしたのだろうか・・・……
同胞を無くしたので寂しい。
ギルマスに不満を呟けば、逆に何十年もニートやってるお前がおかしいと言われた、解せぬ。
ちょっとガンゲームを離れて、元々やっていた別のゲームをしてみた。
強引に誘われて入ったボス戦のパーティ内でレアアイテム云々で喧嘩が始まってやばかった。
ずっと無言を貫いてた俺にまで火の粉が飛んできたくらいだ。
これなら連戦の最中にHPがなくなったあの時、そのまま死んで町の方で待ってればよかった……それかそのままパーティー抜ければよかった。
チャットで抜けますの一言だけ打ってログアウトした俺が、数時間後にもう一度ログインした時メールボックス欄が全部迷惑メールで埋め尽くされていたというホラー展開に少しビビった。
やっぱり戦闘中に死んで町に戻ってパーティー抜ければよかった。
この頃からポルポが空腹を訴えるようになったので、海の魚食べればいいんじゃないかとアドバイスしたら、翌日漁業大打撃のニュースが流れていた。
見なかったことにしたい。
meが現れなくなって3カ月、もうゲーム自体飽きてやめてしまったかもしれない。
ライバルのように思っていたので残念だが、まあ仕方ない…奴にも奴の生活があるのだから。
センチメンタルな俺はガンゲームから手を引いて、元々やっていたゲームへと戻ることにした。
何だかんだで日記を続けていることに驚いたけど、そろそろ飽きてきた。
その日のことを整理というか、思ったことをそのまま一文ずつ書く上に日本語とイタリア語がごちゃごちゃになっているところもあった。
これは誰かが読んだって分からねーな………
途中途中で日付に空きがあり、日付を追うごとにその空きは広がっていくのを見ると、あからさまに忘れられつつあることが分かる。
俺はペンを持ち、今日の日付を書いた。
今日は確か俺がいない間にリボーンのもみあげ野郎がまた不法侵入してきたんだった、マジであいつ許さん。
それもユニと綱吉君まで連れてきてからの放置してどっかいくとか……何なの、俺の家ってば託児所じゃあないんだぞ。
家に帰る前に敷地内の森の中でうさぎを見かけて、最近ポルポがうさぎを食べていたことを思い出して捕まえてあげようかなと考えて追いかけてみたのが運の尽きというかなんというか………
森のくまさんを脳内再生してたのが悪かったのか、本物のくまさんに出会ったよってわけで、あれはマジで死ぬかと思った。
驚きで死んだふりもする暇なくて立ち竦んでたら綱吉君がくまさんを殴って気絶させて、俺は綱吉君に下手なこと言わない方がいいなって切実に思ったね。
すごく俺のこと心配してくれる綱吉君の背後で倒れるくまさんを見て、ああ、俺死にかけたのかって後から気付いた。
五体満足で生きててよかったー。
あとから駆け付けたユニが泣いていたけれど、そりゃ後ろでくっそ怖いくまさんが倒れてたら怖いよな、わかる。
あのあとユニと綱吉君が夕飯作るって息巻いてたけど、正直キッチンが半壊しそうな勢いで騒音を立ててからうるさかった。
やっぱ綱吉君が来ると騒がしい。
泊まっていくとか勘弁してくれよ。
……取り合えずおおまかに書けたし、今日はこれでいいかな。
沢田綱吉side
それを見つけたのは本当に偶然だった。
スカルの家に久々にユニと遊びに来たけれど、スカルが珍しく家にいないようで手持ち無沙汰になっている時、ガタン、と遠くの部屋から物音がして俺とユニが音の出所を探す為にスカルの自室へ入った。
一台のパソコンと数冊の本、ベッド、簡素な机と椅子だけがある素っ気無い部屋で、不自然に床に落ちている本に気付く。
自室の窓が開かれており、そこから入り込んだ風で机の上に置かれていた一冊のノートが落ちたのだと分かった俺は、その本を手に取り机の上へと戻す時、後ろにいたユニがふいに言葉を漏らした。
「あ…そのノートは…」
「知ってるの?」
「はい、それは私がスカルにさしあげたノートで……是非日記にと…数か月前……」
「へぇ、ちゃんと日記付けてたってことかな?」
俺は何気なしに1ページ目を捲ってみた。
ユニが人の日記を勝手に見るのは…と遠慮気味に咎めてきたけれど、イタリア語なんて読めない俺が見ても意味ないよと小さく告げる。
1ページ目を開けばそこにはお世辞にもうまいとは言えないイタリア語で文字が綴られていた。
しかし、途中から綴られいる文字に目を見開き、思わず声を零す。
「どうしましたか?」
「え……いや、ここ……このページ…こっからここまでイタリア語で何書いてるか分かんないんだけど、文章の途中でいきなり日本語になってる…それも漢字まで使われてるし」
「え?」
俺の言葉があまりにも意外だったのかユニが目を見開いてノートを覗き見る。
ノートにはイタリア語で今日の出来事を簡素に書かれていて、途中からひらがなと漢字が並列していた。
スカルがいつ日本語を覚えたのかを疑問に思い、俺は日本語の部分だけ読もうとした。
■月■日
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今日、ユニからノートを貰ったので、日記をつけ始める。
特に今日書くことはない。
日本語は、日本人である俺が読める程文章が成立していて、相当勉強したことが分かる。
でも何故スカルが日本語を…?
俺は文字の羅列に視線を流す。
■月■日
ポルポがうさぎを食べていた。
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meが近づいてくる。
「me?」
「どうしました?」
「ここ…meって書いてあるんだけどイタリア語かな?」
「me…は『私』という意味があります、目的格として使われているので文の最初に来るのは少し不自然ですが……」
「『自分』が近づいてくる…?自分って何だろう…」
俺はそのままページを捲る。
少しだけ日付が飛び、また日本語で書かれている個所に目を通す。
■月■日
――――――――――――――――――――――――――――――.
ユニが来て料理をして帰っていった、アップルパイは美味しかった。
最近奴が俺を追ってくる夢を見る。
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■月■日
ヴェルデが顔を出した、ポルポを研究したいらしい。
奴はいつだって俺の隣にいる。
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「どういうことだ?」
俺は文の内容が分からずユニにその前後を教えてもらうが、全く文脈が意味を成していなかった。
『奴』がスカルを追ってくる夢を見ていて、それは隣にいる…?
ユニに文の内容をそのまま教えると、ユニは少し考え込み始める。
「……奴、というのは最初に言っていた『me』という存在で、それはもしかしてスカル自身を指すのではないでしょうか?」
「スカル自身?」
「二重人格……というよりも、ええと………狂人……だった頃の人格のことではないかと…少し思ってしまって」
「あっ…」
そういわれて漸く腑に落ちたような気がした。
狂人であった人格に追いかけられる夢を見るということは、まだスカルが過去に囚われて苦しんでいるということなんじゃないだろうか?
そしてそれは常にスカルの隣にいる…隣というか心の中ってことなのか。
俺はそのまま日本語のある個所へと飛ぶ。
■月■日
ポルポが猫と遊んでいた、猫は本気で逃げようとしていた気がする。
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初めて奴と対話を選んだが、そこに言葉はなかった。
■月■日
勝手に俺のテリトリーに入ってきては荒らしていく。
死ねばいいのに。
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「スカルのテリトリー?…死ねばいいのにって…何があったんだ…」
俺の言葉に隣のユニが不安そうに顔を曇らせた。
ここから数日間程開き始め、俺はページを
■月■日
奴は現れない。
日本語のみで書かれたものがポツリとあり、俺はその文から視線を逸らせずにいた。
現れない……奴……自分……
繋がりそうで繋がらず、俺は違和感を覚える。
狂人であってもう一人の人格が現れなくなったことが、先ほどの「死ねばいいのに」と関係しているんだろうか…?
■月■日
もう数週間になる、奴は現れない。
ポルポが烏と遊んでいた、後で口の端から黒い羽根がはみ出していたので食べたのかもしれない。
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■月■日
奴は現れない。
少し、寂しいのかもしれない。
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――――――――――.
■月■日
やっぱりあの時死ねばよかった。
そしたらきっと俺は嫌な思いをしなくても良かったのに。
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その文字の羅列へと視線が流れ、ピタリと指が止まった。
嫌な汗が俺の背中を伝うような気がする中、じとりと汗を含んだ指で押さえていた文字が僅かに滲みだす。
「沢田さん、何て…書いてあるんですか?」
ユニが俺の様子に気付いて尋ねてくる。
俺はそのままをユニに教えると、ユニはこれでもかというほどの不安を露わにし唇を震わせた。
「あの時って……」
俺の中では、
死ねばよかった……なんて、何でまたそんなこと考えてんだよっ…
俺はくしゃりと顔を歪ませては、自分の不甲斐なさに唇を噛み締める。
今すぐ日記を閉じてスカルを探したい衝動に駆られるが、視界の端に少し後の日付の場所に日本語で書かれている個所が目に入り、文字を読む。
■月■日
もう奴を待つのはやめた。
日付はここ最近だ。
もう奴を待つのはやめた………?
嫌な予感がする。
何だか……取り返しのつかないような嫌な予感が……
『
追ってくる
いつも隣にいる
テリトリーへの侵入
死ねばいいのに
もう現れない
寂しい
あの時死ねばよかった
meというのが狂人だった頃の人格だったとしたら
今も尚地獄だった日々を忘れられず囚われているのだとしたら
その人格を拒絶して、でもそれもまたスカルの一部であったと気付いた…
だから寂しくて、死にたくなったのだとしたら
『もう奴を待つのはやめた』
待つ必要がなくなったのだとしたら――――……
「ユニ、スカルを探そう」
「さ、沢田さん!?」
最悪な事態に思い至ってしまった俺は日記を閉じて、ユニの返事も聞かずに部屋を飛び出した。
家の周辺を探したけれど姿は見つからず、俺は胸の内に広がる不安に焦り出す。
間違っていてくれ…
スカルがまた命を捨てようとしていると思っているなんて……何かの間違いであってくれ!
すると、少し先で獣の咆哮が聞こえた。
俺は直感的にそこにスカルがいるような気がして、直ぐに飛び立つ。
限界まで炎の出力を上げて向かった先には、背丈の大きな熊がいまにもスカルを殺そうと爪を振りかぶっていた。
「スカル!」
俺ははち切れんばかりに叫んだが、スカルはただ茫然と立っていた。
まるで、その爪が自身の体に深々と突き刺さるのを待ち望んでいるかのように、佇んでいた。
ダメだ、ダメだ!お前はここで死んじゃダメだ!
生きることを諦めちゃダメだ!
気付けば俺はスカルを抱きしめていた。
力の加減なんてそっちのけで精いっぱい抱きしめていた。
漸く我に返った俺は背後で気絶する熊を見て、自分が熊をぶん殴ったことをぼんやりと思い出す。
ぼんやりとしか思い出せない程俺は切羽詰まっていたんだと思うと、今になって心臓が動き出したかのように体中の血流が激しくなる。
呼吸が安定するまで待つことも出来ず、息が切れたまま俺はスカルに無我夢中で叫んだ。
「お前がっ…死んじゃうと思って………何よりも、怖かった!」
「なぁ!分かるかよこの気持ちが!………お前が死んじゃうことが……死ぬほど怖いんだよ‼」
「分かれよ!………分かって…くれ、よ……お前はもう一人じゃないんだよ!」
「お前が死んで、悲しむ人が……沢山いることくらいっ………分かれよ馬鹿野郎‼」
自分でも抑えきれなかったんだ。
みっともなく泣きたかった。
どんなに心配しても、自分の命がどれだけ重いのかこれっぽっちも分かってない目の前の小さな小さな子供に、俺は叫んだ。
「もう……これ以上心配させないでくれ………」
喉から絞り出した声は掠れていて、目の奥が熱くなっていくのが分かる。
腕の中にある体温が生きていることを証明していて、どうしようもなく嬉しくて、どうしようもなく苦しかった。
気付けばユニが
あれからどうやって家まで帰ったかはぼんやりとしか思い出せない。
ユニの嗚咽と、温かい体温と、日差しと、それと………
時計の針が日を跨ぐ少し前を指している頃、ソファに座りながら今日の出来事を思い返していた。
あの後夕飯を作って、お風呂に入って、スカルから目を離すのが怖くて泊まることになって、何だか色々あり過ぎて疲れが一気に体にきたのかソファから動けずにいる。
指一本すら動かすことが辛い。
ユニは既に空き部屋で寝ていて、灯りが一つしかついていないリビングは仄暗く、静寂が漂う。
リボーンはボンゴレ本部で色々用事が出来たとか言ってまた出かけて行っちゃったし………
一つ大きなため息を吐いた俺は膝に力をこめてなんとか立ち上がり、ベッドのある空き部屋へと歩き出す。
途中でスカルの部屋の前を通り、少し気になった俺は部屋のドアを少しだけ開けば、中から小さな寝息だけが聞こえた。
ドアを開いた隙間から僅かに見えた机の上のノートにドアを閉めようとしていた手が止まる。
少しノートの位置が変わっていることに気付き、今日のことも書いたのかと思って、好奇心に負けた腕がノートへと伸びた。
最後の日付までパラパラとページを捲れば、今日の日付が付け加えられている。
文字の羅列に視線を流しては、目を見開いた。
目の奥が熱くなり、鼻の奥がツンとしてくる。
そして頬を伝う温かい液体がノートにつかないようにノートを閉じて机の上に置き、部屋から早足で出ていった。
俺はこの時、初めて報われたような気がした。
■月■日
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―――――――――――――――――――,―――――――――――――――――.
騒がしかった。
騒がしいしうるさい。
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――――――――――.
生きててよかった。
―――Side
そこは薄暗い部屋の中、キーボートを押す音が響く最中錆びついたドアが気味の悪い音を立てて開く。
決して上質とはいえないソファに座り込んだ人物が、元々部屋にいた人物へと声を掛ける。
「おやおチビ、何をしているんです?」
「あ、ししょー、ゲームですー」
「この前ゲーム中毒になりかけてパソコン自体壊したのに…一体どこから……」
「ヴェル公から奪い取ってやりましたー」
「まぁそれなら壊しても構いませんね」
「横暴だー!」
槍から逃げ切った子供はパソコンを開き、画面を眺めた。
「あーあーこの前ししょーが壊したせいで折角のライバルがいなくなりましたー」
「ライバル?ゲームのですか?くだらない」
鼻で笑う青年に対して舌打ちをする子供は、画面に表示されるゲーム画面のとある部分を見る。
ランキングと書かれた表示欄の上位に探している名前はなく、数か月前のことだからいなくても不思議じゃないかと理解しながらも落胆を隠せない。
何故か日本語特有のひらがなの名前であったが国籍はイタリアという訳の分からないプレイヤーだったなと思い返す。
一度チャット申請が来たから許可したが、こちらのマイクが故障していて始終無言だったのは今でも覚えていた。
多分相手はコミュ障ニート野郎なんだろうと思っているが、憶測で決めつけるのもなぁ…と思いながら希望の薄い再会を望んでいる。
「気に入ってたんですけどねー……」
「すかる」というキャラ名のプレイヤーを探すことを諦めた少年、フランはパソコンを静かに机に置くと頬杖をつくのだった。
スカル:日記をつけた、しかしそれもSAN値チェックの元凶となる。
ポルポ:イタリアの漁業を壊滅へと追いやる元凶。
ツナ:日記でSAN値チェックされたが減少なし、その後熊に殺されかけるスカルを見てSAN値チェック失敗、残念でした、一応当日の日記でSAN値回復。
ユニ:日記でSAN値チェック失敗、その後熊に襲われたであろう光景を見てSAN値チェック失敗。
フラン:スカルの本性を間接的に見抜いてしまった少年、しかしスカルとの面識がないのでコミュ障ニート野郎(仮)である「すかる」=マフィア界を震撼させた狂人「スカル」の方程式が出来上がることはない。
スカルの愉悦日記の回でした。
日記の内容はほぼ最初のスカル視点に詳細が書いてます(笑)
■月■日
奴(のスコア)はいつだって(ランキング欄で)俺(のスコア)の隣にいる。
■月■日
初めて奴と
■月■日
(リボーンの野郎が)勝手に俺の
(リボーンが)死ねばいいのに。
■月■日
やっぱり(連戦してHP無くなった)あの時(パーティー抜けるために)死ねばよかった。
そしたらきっと俺は(喧嘩のとばっちり食らうことなく)嫌な思いをしなくても良かったのに。
■月■日
もう奴を待つのはやめた(他のゲームしよ)。