睡眠をたっぷりと取った俺は知らぬうちに送られてきたメールの内容に絶賛絶望中です。
メアド教えてないのにメール来てる、泣きたい。
何なの、一体俺が何したって言うの?
絶対に人違いだよ、コレ。
おい誰だよ!運び屋やってるスカルって!
PCの前で
依頼料振り込んだってあるけど、口座もバレバレってことですかオワタ。
ていうか口座に振り込まれてる金額が半端ないんだけど…。
いやあんなに命張った…ていうか張らされたんだからこんくらいないと本当に絶望するけどさ。
まだ会社の方に退職届も出してないのに別の奴からロックオンされてるとか…
それも人違いで。
ふざけんなってーの。
あ、そうだよ、退職届出すの忘れてた。
取り合えず退職届を書いて本社に向かう。
「ス、スカルさん!?事前に連絡がありませんでしたがどういった御用で…」
「スカルさんだ…」
エエエエエ!?
お前らどうしたの!?
皆ライダースーツにヘルメット被ってるんですけど。
え、これ正規の制服になっちゃったってか?
俺も一応ライダースーツにヘルメット被ってるけど、これ結構中が蒸れるぞ。
いやぁ、社長の考えは分かんねーな。
にしても皆ライダースーツにヘルメット被ってるから見分けがつかねー!
流石に男女の見分けは付くけど個人の特定は無理だ。
であるからして、俺に声を掛けてきた奴の名前が分からないという。
…誰だよコイツ。
まぁいいや、どのみち今まで人の名前なんか覚えたことも呼んだこともないし。
取り合えず目の前のコイツをヘルメット一号と名付けておこう。
一号がおれを社長室に通してくれた。
「スカル、今日はいきなりどうしたんだ」
「いや言わずとも分かる、カルカッサファミリーの今後のことだろう」
え。
違う、違います。
退職届………
「君のお陰で巨大組織へと成り上がったカルカッサファミリーだが、そろそろボンゴレに対抗する決定打となる脅威がなければいけないとは常々思っていたんだ」
俺のお陰とかなにそれ初耳、いやただの社交辞令か。
つーかボンゴレって何。
あれか、敵対企業か。
俺全く詳しくないから知らないけど…多分大企業なんだろうな。
「やはり技術力が決定的な差になると思うんだが…こちらも技術開発班の者達を集めるべきだろうか」
今後の方針をいきなり振られた。
待って、俺はただ退職届を出したかっただけなのに。
待って待って、ちょっと話を勝手に進めるでない。
手で待ての形を見せると、社長さんの顔色が変わる。
ひえっ、話遮ってごめんなさい。
「ふむ、だがやはり時期尚早かもしれないのも一理…今はただ勢力を拡大するだけでいいな」
「それと、今回の依頼を前倒しではあるが頼まれてくれないか…君が本部に現れるのは珍しいからな」
何だろう、俺のせいで機嫌が悪くなったっぽい…
だってさっきまで上機嫌な顔で俺に話しかけていたのに、今めっちゃ眉間に皺寄せてるんだもん。
やっぱり俺に社会人としてのマナーなんてないから就職なんて無理だったんだ。
じゃなくて退職届……
懐から退職届出そうと思ったら社長さんが手で制した。
え、受け付けませんってか?
これブラック案件?ブラック案件かな?
「依頼内容はこれだ、それじゃあ頼むよスカル…君を信頼している」
あー、これブラックな奴だ。
プレッシャーでやめられないようにしてるんだ。
俺に封筒を渡しながら微笑む社長の顔が閻魔大王に見えたよ。
俺の退職希望を揉み消してこれからも下っ端としてこき使っていくつもりだったんだ!
どうしてこうなった。
泣きたい。
怖くて何も言えなくなった俺は無言のまま社長室を出ていった。
あのクソ社長め、本性を表しやがったな。
今度警察にしょっ引いてやる。
「ス、スカルさん…あの、これ……」
女性の方が俺にスタンガンをくれた。
何でスタンガン?
「技術開発班で開発しているもので、試作段階ではありますが出力は一般のものとは比べ物にならない程強いです」
え、なにそれ怖い。
スタンガンって一般で売ってるやつも結構痛いのにそれ以上痛いの用意してどうするの。
「最近あなたの依頼は危険が増すばかりなので…心配は要らないと思うかもしれませんがどうぞ護身用に」
う、嬉しい………
俺の身を心配してくれるとか女神かよ。
誰も俺の心配とか一切してくれねーし。
こんなブラック企業にいるには勿体ないほどの女神じゃねーか。
もじもじとしてて一見可愛く見える動作なのだろうが、ライダースーツにヘルメットという姿が致命的だな。
全然萌えもしないし、ときめきもしない。
強力なスタンガンとか正直使いたくないけど、試作段階って言ってるしちょっと使用した感想とか言った方がいいよな。
にしてもこの会社スタンガンや銃とか色々社員の安全面の考慮はピカイチの癖に何で退職面でブラックなんだろう。
お前に金掛けてんだから元取れるまで働けってことか?
なにそれ怖い。
取り合えず貰ったスタンガンを腰に付けて渡された依頼の封筒を読みながら駐輪場まで歩く。
ふむふむ、どうやら少し海を渡るらしい。
待て、海渡るってどういう……
少し離れた離島まで持ってけと!?
これ俺がジェットスキー持ってんのバレてるじゃん。
ちくしょう、配達地域が日に日に広がっていく。
これ往復で半日かかる奴じゃん、最悪だ。
溜息を吐きながらバイクで取り合えず家に帰ってジェットスキーの鍵を取る。
配達物は封筒と一緒に入っていた金と何だろうコレ…白い…粉……
麻薬……なわけないか、ブラックな優良企業だし。
防水加工の箱に入れて厳重にロックする。
俺はジェットスキーに跨り、最近導入したナビに従って海を走る。
乗り始めの頃ジェットスキーで時速160㎞出してそのままコントロール失って海に叩き下ろされたのを教訓に、足場と腕、胴体を固定して走行するようになった。
結構スリルがあって楽しいけど、ここら辺鮫の生息地だから振り落とされたら死ぬわ。
数時間の末漸く離島が見えた。
ジェットスキーを降りて、人影を探していたら建物を見つけた。
取引場所ってここかな?
「誰だ」
ジャキ、という金属音と共に頭に何かが突きつけられた。
…………か、傘かな?
決して銃とかそういうものじゃないことを祈りたい。
「お前、カルカッサファミリーの!」
あ、ちゃんと人相は伝えてたのね、社長。
つーかここの警備怖いんだけど。
さっきから驚いているところ悪いんだけど、早く取引物を渡して帰りたいんですが。
「…ボスの所まで案内する、ついてこい」
警備の男は早足で建物の中に入っていってしまった。
俺もついていく。
建物の中は何かの研究所みたいな場所だった。
すげぇ、試験管とかめっちゃ並べられてる。
何の研究をしてるのやら。
奥の部屋に通されると、指とか首にゴールドをびっしり装着したおばさんがいた。
「お前さんがスカルか…その名は聞いているよ」
いや逆に聞いていなかったらどうしてたの。
普通取引先の人は教えるでしょ…多分。
それよりも早く商品を渡そう。
「確かに受け取ったよ」
ってなわけで帰ります。
ジェットスキーで帰りも飛ばして無事帰宅。
ふぅ、ヘルメットを外してライダースーツを脱ぐとある違和感が。
ぬめぬめした感触が…何だコレ。
脱いだライダースーツを広げてみると、背中の方にタコがくっついていた。
タコ……らしき何か……いやコレはタコか?
つーかいつくっついたんだ?
タコは鰓呼吸のくせに全然もがき苦しむ様子はない。
じゃあこれはタコじゃぁないのかな…?
取り合えずライダースーツから引っぺがして庭に置いてあったバケツの中に放り込む。
後日海に還してあげるか。
生きてたらの話だが。
正直気持ち悪いから触りたくない。
風呂を入ってサッパリした俺は疲れたのでそのまま眠った。
次の日朝起きたら、昨日のタコがベッドのサイドテーブルにへばり付いていた件について。
起きて直ぐに変な声が出てしまった。
昨日から水をあげてないが死ぬ様子はない。
やっぱりタコじゃなかったのかもしれない。
仕方なくバケツに入れたまま海に還してあげた。
数時間後、家の玄関に海に放り投げたばかりのタコがへばり付いていた。
……………飼えってか?
でもタコだぞ?
猫みたいに可愛いわけでも犬みたいに癒されるわけでもない、タコだぞ?
暫く考えたけど追い返す方法もなかったので放置してみることにした。
すごく…住み着いてます。
もう諦めて俺の食べ残しをあげれば物凄い勢いで食べきりやがった。
この前みたいに食材腐らせることもないかもしれないと少しタコに有用性を見出したこの頃。
あ、コイツの名前考えてない。
ポルポとかでいいか。
「よろしくポルポ」
足にへばり付いてきやがった。
カルカッサファミリーボスside
何の連絡もなくいきなり本部に訪れたスカルに本部内の者はざわめき立った。
かくいう私もそうだ。
何故という二文字が頭を
数分後部屋に入って来たスカルはいつも通りヘルメットにライダースーツの恰好をしていた。
未だにスカルの個人情報は何も分かっていない。
だがそれでもいいと私は思っている。
彼の表の顔がどんなものであろうとも、カルカッサファミリーをここまで伸し上げたことは揺るぎない事実なのだ。
彼は私の恩人であり、カルカッサファミリーにとっての指標のようなものなのだ。
最近では部下たちがスカルを敬愛するあまりに恰好を真似する者が出てきた。
ボスの形無しではあるが、それ以上に私もまた彼に魅了された者の一人。
誰か彼を妬むものか。
「スカル、今日はいきなりどうしたんだ」
「いや言わずとも分かる、カルカッサファミリーの今後のことだろう」
私としたことが、依頼時以外本部に立ち寄ったことすらないスカルの訪問に少し急いてしまっていたようだ。
まぁスカルが私用で訪れるとすればカルカッサファミリーの現状において何かが不満なのだろう。
「君のお陰で巨大組織へと成り上がったカルカッサファミリーだが、そろそろボンゴレに対抗する決定打となる脅威がなければいけないとは常々思っていたんだ」
そう、それなのだ。
今のボンゴレは温厚な九代目の影響で反発が強いにも関わらず、その勢力は今も尚イタリアを統べる程だ。
カルカッサファミリーもその名がマフィア界に影響を及ぼす程度には広まっている。
勢力は勿論のことだが、やはりボンゴレとは圧倒的な差が存在する。
「やはり技術力が決定的な差になると思うんだが…こちらも技術開発班の者達を集めるべきだろうか」
スカルにそう投げかけると、スカルは徐に手を前に出してきた。
待て、と聞こえもしない声が脳内再生される。
そして私は瞬時のその動作の意味を理解した。
盗聴を、されている。
一気に周囲へと警戒をしながら、怪しまれないよう話を繋げる。
「ふむ、だがやはり時期尚早かもしれないのも一理…今はただ勢力を拡大するだけでいいな」
これが本当に盗聴されているのならば誤った情報を与えることを優先した方がいいと思った私は正反対の判断を下す。
そして今この場では、私は盗聴されていることに気付いていないと相手は思っている。
下手にスカルをそのまま帰すのは愚策。
「それと、今回の依頼を前倒しではあるが頼まれてくれないか…君が本部に現れるのは珍しいからな」
盗聴を気にしながら眉を顰めていると、スカルが片手を懐に入れた。
どうやら盗聴が煩わしく壊そうとしているのだろう。
だがここで発砲するのは避けたいので、私は手で制するとスカルは大人しく手を引いた。
私は来週あたりに頼むつもりだった依頼内容の入った封筒を引き出しから取り出す。
内容はもっぱら非合法な取引ばかりで、危険度が高いものばかりだ。
「依頼内容はこれだ、それじゃあ頼むよスカル…君を信頼している」
スカルは何も言わずに依頼を引き受け、部屋から出ていった。
今回の依頼はさしものスカルですら時間が掛かるだろう。
なんたって取引所はここから数百km離れた離島だ。
これもまたスカルの移動手段を知るにはいい機会だと思った。
盗聴器に関してはもう少し放置して、嘘の情報を流しておこう。
どこのファミリーが仕掛けたのか、また誰がスパイなのか洗い出さねばならない。
その数日後、敵対していたファミリーのスパイが見つかった。
■■■■■ファミリーside
「ボス、運び屋が到着しました」
「通しな」
私は■■■■■ファミリーのボスだ。
主に生物兵器を開発している組織であり、弱小ではあるものの専門分野で名を広めていた。
今日はカルカッサファミリーとの取引があり、さきほどカルカッサファミリー専属の運び屋が到着したとの報告を受けた。
狂人の運び屋スカル。
裏を知る者ならば誰もが一度は耳にするであろう史上最凶最悪の運び屋であり、カルカッサファミリー最大の脅威。
奴の存在がマフィア界を緊張状態に陥れた。
邪魔をする者には死を、彼の名と共に伝わるその言葉に誰もが震えあがった。
私もその名には警戒を表していたが、カルカッサファミリーとの取引が上手くいけば、奴の牙がこちらに向かうことはない。
コツコツと、ブーツの靴音が響く。
それと同時に扉越しでも伝わる威圧感。
私の頬に冷や汗が伝う。
扉が開き、ライダースーツを着てヘルメットを被ってる男が入って来た。
奴がスカル…
噂に勝るとも劣らない威圧感、本物だ。
「お前さんがスカルか…その名は聞いているよ」
私の言葉にスカルは何も返さずに手元にある箱を渡してきた。
中を確認すると、粉状の毒薬が入っていた。
これは今実験中の生物に投与し、毒性の強い生物を開発する為だ。
私は箱を閉め、側のテーブルに置く。
「確かに受け取ったよ」
私がそういうと、スカルは無言で部屋を出ていく。
噂通り、何も喋らずに消えていく…か。
あのカルカッサファミリーのボスでさえスカルの正体は掴めていないとか。
警戒心の顕れなのか、はたまた表の顔がバレたらマズいのか。
謎の多い狂人のことなんて私に分かるわけもないか。
ただ彼の牙がこちらに向かないようにやり切るのが現状での最善なのだ。
数時間後、一匹の生物兵器が逃げ出したと報告があった。
一匹くらいならどうってことないと思っていたが、逃げ出した生物を確認してそうは言ってられなかった。
「あのバケモノを解き放っちまったってことかい…」
私は冷や汗が止まらなかった。
私のファミリーは生物兵器の開発をしている。
だがそれ以外にもう一つ、危険な実験をしていた。
それは、古代生物の復元だ。
海底の地層から発見される死骸を元に何度も研究を重ねて、数体の古代生物が蘇った。
しかし蘇った古代生物の中で、一体だけ直ぐに凍結された生物がいたのだ。
その古代生物の名はクラーケン。
数多くの神話で出てくるあのバケモノだ。
当初は発見したチームはただの頭足類の死骸化石だと思いながらも回収していたが、復元成功時にその推測は大きく裏切られた。
蘇った姿は、一見タコのように見えるが、
その上鱗は驚異的な硬さであり、銃弾すらもはじき返した。
そしてその生物の口には鋭い牙があり、瞳孔は夜行性の蛇のように縦長のものであった。
そんな特徴など神話とも謳われた空想の産物、クラーケンしかいないのではと嘆かれ、その生物の名をクラーケンと名付けた。
ただそれだけならば、その生物は研究に貢献していただろうが、凍結した一番の要因は毒性だ。
その生物が保有していた毒は発見されていない元素が摘出された。
タコやイカのように墨を吐く習性があり、その墨に毒が含まれていた上に気化するのだ。
毒性は非常に強く、また範囲も広い為、第一級危険生物と判断しその生物の研究を凍結した。
強化ガラスの中で仮死状態にしていたその生物が、逃げ出したのだ。
それが何を意味するか分からない馬鹿ではない。
ファミリーを総動員させ、逃げ出した生物の足取りを追うも捜索は難航した。
あれが海で成長すれば、悪夢の神話の再現となるだろう。
「くそ……どうすれば…」
この時の私は知らなかったのだ。
クラーケンが水陸両用の生物であることを。
スカル:タコ()に懐かれて微妙な心境のこの頃、会社()に退職届を出したい。
カルカッサファミリーボス:スカルのことを結構信頼していて、10年後くらいには声も聞ける程の親友とかになりたいなと密かに目標を立てている。
ポルポ:自力解凍した古代生物、俺の運命のご主人様を見つけたー!とスカルにべったりと張り付いている(愛情表現)、自我も知能もある、セコム1。
どっかでポルポside書くと思う。
▶原作通りスカルにタコ()のペットが出来ました!
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