Skull   作:つな*

4 / 58
俺は怖かった。


skullの狂行

「こんなものでしょう、不満や意見のある者はいますか?」

 

ルーチェの言葉に誰も声をあげる者はおらず、各自割り当てられた仕事を確認する。

依頼内容はイタリアで規模を拡大している宗教団体の宣教者の暗殺及び宗教団体の壊滅だ。

宗教団体と称しているがそれは表の顔であり、裏の顔は麻薬取引を仕切っている組織だ。

税金の免除やら布教と称しての麻薬売買などかなりイタリアの市民が毒されている状況である。

政府が治安維持部隊を導入しているが改善の様子は見られなかったという。

チェッカーフェイスから資料を見てルーチェが采配を取った。

風、リボーン、バイパーは現場へ、ルーチェは司令塔、そしてラルは離れた場所で援護、ヴェルデとスカルは逃走手段の確保とその補助となった。

囮は風で、バイパーが幻術を駆使しながらリボーンをターゲットまで誘導する手筈だ。

 

「逃走手段なら私が用意しよう、丁度試作したかったものがあったんだ」

「では三人の準備が整い次第、実行しましょう」

 

ヴェルデの言葉にルーチェがそう返し、いざ依頼内容を遂行する為現場へと足を向ける。

その時リボーンがスカルへと視線を移す。

 

「俺はお前を信用も、信頼もしてねぇ」

「…」

「変な真似してみろ…おめーの頭に風穴を開けてやる」

 

リボーンの射殺す様な目線にスカルは何の反応もせず、リボーンは風に宥められながらその場を去っていった。

 

 

 

『では、突入して下さい』

 

突入組は既に指示通りの配置に待機し、ラルも狙撃場所を確保したところでルーチェから合図が下りた。

すると最初に風が玄関にいた見張りへと向かって行き、バイパーとリボーンが建物の裏側から侵入する。

 

『次を左に曲がれ、10秒後相手と鉢合わせする』

『了解だよ』

『了解』

 

ヴェルデは敵の情報をいち早く把握し、建物の構造を見ながら別行動をしているバイパーとリボーンへと指示を出していく。

ラルが風を援護しながら遠距離射撃をしている。

バイパーは建物内の殺し漏れを消していく。

数分後、リボーンはヴェルデの指示通り建物を進んでいくと、奥の部屋に辿り着いた。

 

「き、貴様ら何者だ!ここがどこか分かって————」

 

部屋の中に突入すると、一人の小太りの男性と両サイドに2人のボディーガードがいたが、リボーンがすぐさまボディーガードを射殺する。

 

「殺さないでくれぇ!助けてく」

 

小太りの男が最後まで言葉を言い切ることはなく、リボーンの銃口からは煙が漂っていた。

 

『暗殺完了、建物に爆弾を設置していく』

『了解、逃走用のヘリで屋上に向かう』

 

リボーンの報告にヴェルデが応答し、風、バイパー、リボーンの三人は屋上へと撤退する。

すると上空からプロペラの回る音が屋上に響き渡った。

そこには一機のヘリが屋上へと着地する。

 

「早く乗れ、爆破まで残り1分だ」

 

ヘリを操縦していたヴェルデの言葉と共に屋上に集まった三人はヘリに乗り込む。

ヘリの中にはスカルが既に待機していて、リボーンが一瞬足を止めるがすぐにスカルの横へと詰めて座る。

そんな時だった。

 

『ぐっ、敵襲!』

 

通信機越しでラルの言葉が響き渡りその場に緊張が走る。

 

「敵襲、増援か…迎えに行く、先ほどの場所か?」

『いやそちらから数百m東に離れている場所だ、見えるか?』

「確認した、直ぐに向かう」

 

ヴェルデがラルの位置を確認し、そちらへとヘリを向ける。

ラルが視認出来たと同時にヴェルデがあることに気付く。

 

「ヘリを近づけるには地形が危険すぎる…」

 

ヘリから見えるラルは増援と対峙していて、こちらの指示に従える余裕はなかった。

ヴェルデが何度かラルに近寄ろうとするも、プロペラがどうしても崖に引っ掛かってしまいそうになる。

 

「なんとかはしごが届くところまで移動する、右の扉のロックを外すから開けてくれ」

 

ヴェルデがヘリの右側の扉のロックを外すと、一番近かったスカルが扉を開けた。

するとはしごが下に垂れていく。

 

「ラル!はしごを降ろした!届くか!?」

『相手からの攻撃が止まない…先に撤退しろ、後で合流する』

 

その言葉にヴェルデが増援の数を見る。

ざっと数えて三十人はいることを確認して再びラルの状況を考える。

ラルの実力なら勝てないことはないが、今のラルの残弾は多いわけではない。

 

「分かった、後で合流しよう」

 

数秒考えたヴェルデがそう判断した瞬間、後ろからガタリと音がした。

 

「なっ」

「「スカル!?」」

 

リボーンと風、バイパーの声に反応しヴェルデも後ろを見ると、開いていた右側の扉からスカルが飛び降りたのだ。

これにはリボーンも驚愕し、扉から真下を覗く。

そこにはスカルがはしごの先端に足を掛けて逆さまにぶら下がっていた。

そんなスカルに視認した増援達はスカルに向けて発砲し始める。

 

「何をしている!スカ——――――」

 

ヴェルデが最後まで言い切る前に、直ぐ側で何かが爆発した。

ヴェルデは一体なんだと周囲と敵勢を見渡す。

爆発の被害で慌てふためいている様子に、先ほどの爆発はスカルがやったのだと悟る。

そして今ならばと、ヘリをラルへと近づけた。

バックミラー越しにスカルが崖から飛び下りたラルを抱きとめているのを視認すると、ヴェルデはすぐにヘリを陸から離し合流地点へと向かった。

数秒後、後方で大きな爆発音が聞こえる。

どうやらバイパーとリボーンが設置した時限爆弾が作動したようだ。

その後、ラルがはしごを登って上がって来た。

 

「危ないところだったな」

「別に俺一人でもどうにかなった」

 

リボーンがラルを揶揄うように声を掛けたがラルは眉を顰めて一蹴する。

 

「スカルはどうしたんですか?」

 

風の言葉にラルが指で扉の外を指す。

 

「上がるつもりはないらしい」

 

ラルの指の先には、スカルがはしごの先端で佇んでいた。

上がってくる様子はなく、それはまるでスカルの警戒心の顕れのようだった。

流石に初対面であれだけ警戒されれば、無理もないのかもしれないと風は密かに思う。

だがあの警戒心は当然でもあった。

濃密な死の匂いを誰もが敏感に感じ取った。

そして誰もが本能的に危険だと感じたハズだ。

 

だが少し…あからさま過ぎたか……

 

風はヘリのはしごの先端で静かに海を眺める彼を見つめながらバツの悪そうな顔をした。

集合場所へと到着するとルーチェが出迎えていていた。

 

「皆お疲れ様です」

 

その言葉に数名が返す中、スカルが他の者とは反対方向へと歩き出した。

 

「おい!お前どこ行くんだ」

 

ラルがチェッカーフェイスからの報酬がまだだと暗に言っていたが、スカルがそれに応えることはなくその場から去ってしまった。

 

「ッチ、いけ好かない野郎だ」

 

舌打ちをしながらリボーンはルーチェと共に指定場所へと戻っていき、他の者もそれに続いて戻っていった。

これが選ばれし最強の7人が集められた最初の依頼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカルside

 

 

 

変な集団にチームの一員だと間違われた挙句、何だか裏のある仕事を押し付けられた。

そのままこっそり帰ろうかと思ったのにリボーンって奴がめっちゃこっち睨んできて逃げられなかった。

極めつけはあの言葉。

 

「変な真似してみろ…おめーの頭に風穴を開けてやる」

 

これもう本物の殺し屋じゃん!

裏の世界の人じゃん。

俺が何したって言うんだよぉぉぉおおお。

俺の様な善良な一般市民巻き込んでおいて警察が黙ってないんだからな!

………俺ごと全部消される気がして通報出来ない。

涙目だけどヘルメット被ってるから目が擦れない。

そのまま目的地だけ教えられた。

そこ行けってか?

ヴェルデって人と行動しろとか言われたからビビリながらついて行く。

妊婦のルーチェさんはお留守番みたいだ。

 

「これは私の試作品でね、中には6人乗れる」

 

そう言ってヴェルデが紹介したのはヘリコプター。

うぉおお、ヘリだ…この時代じゃまだヘリは発明されて数年しか経ってないハズなのに、この人もしかしてヤバいくらい頭良いのかもしれない。

 

「今回は試運転も兼ねて私が操縦する」

 

!?

試運転?だ、大丈夫なのか…

ヴェルデがPCを取り出しては通信機でなんか話している間、俺はどうやって逃げようか考えていた。

だってこれどうみても人違い以外のなにものでもねぇよ。

おおお俺何も出来ねーし…

唯一持ってるのって催涙スプレーだけだぞ…何をすれと?

何だか通信機越しから不穏な音が聞こえるんですが。

銃声じゃないよね…爆発音じゃないよね。

 

『殺さないでくれぇ!助けてく』

 

あー!アカンって、これヤバイ場面じゃねーか!

うわあああ逃げたいヤバイ怖い。

泣きたい、いやもう泣いてるわ。

ヘルメット被ってるから首元に涙が溜まってヒリヒリする。

 

『暗殺完了、建物に爆弾を設置していく』

『了解、逃走用のヘリで屋上に向かう』

 

「君も早く乗れ、行くぞ」

 

へ?

俺も乗るの!?

やべ、怖すぎて鼻水出てきた。

逆らえずにヘリに乗って飛行すること数分後、何だか所々から煙が立ち込めてる建物が見えた。

うわぁ……うわぁ…………地獄絵図。

ヴェルデがその建物の屋上にヘリ止めたら、リボーンと風とバイパーの三人が一斉に入って来た。

なんでよりによってリボーンが隣なんだよ!

この人すっげー睨んでくるし、銃持ってるし、怖いんだけど。

隣に暗殺者とか俺の心臓がもたない。

うぷ、やばい緊張で吐きそう

 

『ぐっ、敵襲!』

 

ヴェルデの通信機越しから不穏な単語がががががが。

どうやらラルって人のところに敵の増援が来たようだ。

苦戦してるの悪いんだけど早く帰りたい。

こんな場所に一秒でも長くいるだけ俺の寿命が少しずつ削れていくんだけど。

さっきから手や顔から汗という汗が出まくってんだからな。

グローブの中がびっしょびしょだよ。

うええ、銃声が聞こえるぅ。

いくら丈夫な俺でも流石に銃弾とか耐えきれませんって、多分。

ヴェルデに命令されて震える手足でなんとかヘリの扉を開けた。

はしごを垂らしてみたはいいけど長さが若干足りない気がする。

風が強くて落ちそう、早く閉めたい。

 

「ラル!はしごを降ろした!届くか!?」

『相手からの攻撃が止まない…先に撤退しろ、後で合流する』

 

え、じゃあ扉閉めるよ!?

これ以上開けててもいつ弾丸が飛んでくるか分かんなくて危ないもんね!

ラルの言葉に俺は即座に反応してヘリの扉を閉めようとした時だった。

腰を若干上げたせいで扉から入ってくる風で上体が前のめりになり、そのまま扉から落ちてしまった。

その時俺はあまりの出来事に一瞬意識を飛ばした。

次に目を覚ますと目の前で何かが爆発。

再び意識を手放しそうになったけど何とか意地で堪える。

そして自分の状態を確認してみて絶句した。

いやぁ、人間って本気でびっくりしたときは声が出ないって本当だったんだね、と後の俺は語る。

ささささ、さ、逆さま!?

慌てて足をバタつかせようとしてふと気が付いた。

はしごの先端に足が引っ掛かってる…

つまり足を動かせば落ちる。

落ちる即ち敵からハチの巣。

=死。

あああああああああああああああああああああ!

死ぬ!し、ししし、し、死ぬぅぅぅぅううううう!

涙も鼻水も涎も全部垂れ流しながら俺の身体は万歳の体勢のまま硬直する。

 

「スカル!」

 

俺の名前が聞こえて直ぐだった。

反応する間もなく、俺の首元に柔らかい何かがズッシリと当たる。

俺は状況を把握出来ずにいて、取り合えず恐怖から目の前の何かにしがみ付いた。

数秒程すると後ろの方で爆音が聞こえて我に返った。

ッハ、俺は一体何を……を、を、おぎゃあああああああああ!

ちょま、高い高い高い、逆さまって怖い、待って、ああああああああああああ!

内心パニックになりながら何かにしがみ付いていた腕の力を強める。

こわ…こ、ん?…………ん?

俺は何にしがみ付いているんだ……?

Q:首元に柔らかい何かが触れてるがこれは何ですか。

 

「スカル、もう離してもらって大丈夫だ」

 

A:ラルの胸

ぶふっ……

鼻血と共に一瞬意識が遠のき、腕の力が一気に緩まる。

それに乗じてラルが俺から離れてはしごに足を掛けて登り始めた。

俺は離れていったラルに焦って、上体を起こした。

今まで怖くて忘れてたけどこれ以上は足がヤバイ。

ずっと足を直角に保つとか俺の貧弱な筋肉が死ぬ。

う、唸れ俺の腹筋んんんんんん!

んがあああああああああ!

あ、なんとか上体を起こせた。

何か一週間分の運動量を一気に消費したぞ、おい。

漸くはしごの二段目に腕を絡めて体勢が安定したところで一息つく。

暫くボーっと足元の地形を眺めていると上の方から声がした。

 

「おい!お前は登らないのか!?」

 

ラル姉さん…

あのね、上に登りたいのは山々なんだが、さきほどの恐怖を再び思い出して腰が抜けて足に力が入らないの。

今も落ちないようにはしごに腕引っ掛けてなかったら落ちてるからね、俺。

恐怖で竦んでいる足同様に声も出ず、ラル姉さんの方さえ見ることが出来ない。

誰か助けてぇ…

ただ体を縮こまらせてはしごにしがみ付くことしか出来ずに、陸地に下りたいと切実に願っていた俺氏。

穴という穴から色々垂れ流していたお陰でヘルメットの中がナウ〇カの腐海みたいになってる。

早くお家に帰ってお風呂入りたい。

その後ヘリは数十分という地獄の旅の末に着陸を果たした。

大地だ!地面だ!足が着く!

漸く命の危機から脱出した俺は半ば放心状態のままバイクのある場所まで向かった。

あ、そういえば催涙スプレーなくなってる……どっかで落としちゃったのかな。

催涙スプレーを探す気力もない俺は一刻も早く家に帰りたかった。

呆然としながらアクセル全開だったお陰でいくつか信号無視した挙句山道に入って近道で帰った。

マイホームに帰るとふらふらしながらもお風呂に入ってベッドにダイブする。

上質とは言い難いベッドの上で今日会ったことを思い返していた。

 

「怖かったぁ……」

 

俺は誰もいない部屋で、いつものように一人寂しく毛布に包まりながら泣いた。

そして泣き疲れて重たくなった瞼をそっと閉じた。

 

 

 

 

 

PCメールの方で『今回の依頼料、次の依頼』と書かれた内容を見るまであと10時間…

再び地獄に突き落とされることをスカルはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 




スカル:善良な市民()、ラッキースケベ
ラル:リボーンキャラでのツンデレ代表、スカルに助けられたのでスカルへの警戒心が半減
風:スカルに対しての警戒心は低め、リボーンの宥め役
ヴェルデ・バイパー:スカルの奇行に本気で引いていた
リボーン:スカルへの警戒心max
ルーチェ:スカルへの警戒度は一番低いけど、声を掛けあぐねている。
催涙スプレー:彼は犠牲になったのだ…

催涙スプレーって引火すると小規模の爆発を起こすらしいです。
海外でのニュースで偶然見つけて思いつきました。


スカルのヘリの場面は、久しぶりに鑑賞したラピ〇タを参考にしました。
あのシ〇タを助け出すシーンってカッコ良すぎると思うこの頃。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。