Skull   作:つな*

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俺は知らない。


skullの狂気

沢田綱吉side

 

「ここが…スカルの居場所への手掛かり…」

「ひとまず近隣住民にスカルを知っているか聞くぞコラ!」

 

コロネロが足を進め、皆がそれについていく。

瞬間移動出来たってことはこの町のことを知っているのかとリボーンがバミューダに聞くと、バミューダが一度だけ…と答える。

 

「十年ほど前に、血の掟(オメルタ)を破り復讐者から逃亡し、ここで神父の真似事をしていた奴がいたのだ」

 

牢獄で発狂し既に死んだがな、と後付けしたバミューダに俺は苦い顔になる。

前方を歩いているコロネロとラルが住民に聞き込みをしているが、皆首を傾げていた。

もっとその人の容姿が分かればなぁ、と呟く若い男の人の言葉に俺はリボーンに、スカルのヘルメットの下って見たことあるのか聞いてみる。

 

「ねぇな…奴は自分以外のアルコバレーノに一度も素顔を見せたことはない」

「じゃあずっとヘルメットを?」

「その上、スカルというのが本名かさえ疑わしいというのが事実だ」

 

ヴェルデが俺とリボーンの会話に入ってきて、俺はスカルの秘密主義がヴェルデ以上であることに内心舌を巻く。

何件か家を回ったところで、60代ぐらいのおばあさんが漸くスカルという名前に反応した。

既にこの村にはいないが、ずっと昔に…その名前と同じ子供がこの村で生まれ育ったと言っていた。

 

「私はその子のことは大して知らんよ…ただその子が村八分にされていたこと以外はね」

「村八分…?何故だ」

「だから私は詳しいことは知らないったら…ただ周りの人たちがその子に近付かない方がいいと言っていたんだ……もっと知りたいんなら少し行ったところに孤児院があるから、そこのシスターに聞きなよ」

「分かった、ありがとう」

 

村人から有力な情報を聞き出せたラルが俺達の方へ戻ってきて、先ほどの話をそのまま伝えられた。

村八分、という聞き慣れない言葉に俺とクローム、ユニが首を傾げていていると、風がその様子に気付いて言葉の意味を教えてくれた。

 

「村の掟や秩序を破った者に対しての制裁行為で、村全体で対象の者との交流を断ち切ることです」

 

分かりやすく言えば村全体で行われる仲間外れですねと付け加えた風に続き、法律で禁止されている事柄だがここみたいに田舎の地域じゃまだそういう風習が残ってたんだろ、と言ったリボーンに俺達三人の顔が強張る。

村全体でいじめてるようなもんだろそれ…と思っていたが、スカルの歪んでる価値観は恐らくそういったことが原因だったのかもしれない。

スカルの過去がこの村にあって、骸はスカルの精神世界がこの村で固定されていた、って言ってた。

それって、スカルがずっと過去から抜け出せないからじゃないのか?

俺はスカルの闇を垣間見たことに一抹の不安を覚え、さきほどのおばあさんの言葉通り、孤児院の方へと足を進める。

後ろの方をついてくるクロームの顔色が悪いような気がして、大丈夫?と聞いてみたが、クロームはうんと首を縦に振るだけだった。

少し歩けば古びた孤児院と図書館があり、ここで二手に分かれる。

何で図書館かと言うと、骸の言葉通りなら図書館での閲覧記録が残っているのではというヴェルデの言葉からだ。

そこから少しでもスカルの居場所を特定できるものが見つかるかもしれないと、二手に分かれることとなった。

孤児院には、俺とクローム、リボーンにバミューダ、風で、図書館にはコロネロ、ラル、ヴェルデ、マーモン、ユニで向かう。

孤児院に着けば、子供の笑い声が聞こえ庭でシスターと思わしきおばあさんが子供たちと会話をしていた。

シスターは俺達に気付き、子供達に何かを言うと、子供達から離れ俺達の方へと近寄ってくる。

 

「何か…用でもありましたか…?」

 

村の者ではないからか、少し不安げに聞いてくるシスターに俺がスカルを探していることを教えると目を見開いて視線を忙しなく泳がせている。

胸に下げている十字架を握りしめ、ああ、神よ…お許しくださいと呟き始めた。

シスターの不安げな態度に風が優しく(なだ)め、ただスカルのことを聞きに来ただけであることを言い聞かせた。

漸く落ち着いたシスターは、俺達を孤児院ではなく隣の教会の中の応接室へと通す。

5人で座るには少し狭いソファがあり、リボーンとバミューダがソファの後ろの壁へと背を預けながら立つ。

風はソファの隣で立ち、俺とクロームに座るよう施してきて、代理戦争からそのまま動き続けていて結構疲れていたので、風の言葉に甘えて座ることにした。

シスターは俺達の様子を見て、深く深呼吸をして恐る恐るといった様子で言葉を放つ。

 

「何故……スカルを探しているのか聞いても?」

「とっても大切な用事があって……それをスカルに伝えなきゃいけないんです」

「あの子は……スカルは今何をして……いえ、これを聞く資格は私にはありません…罪深い私には…」

「あ、あの!それってスカルが村八分にされたことと何か関係があるんですか?」

「………え、ええ…そう……ですね……」

 

ああ、神よ…と再び十字架を握りながら、シスターは震える声で語り始めた。

 

 

 

私がスカルのことを知ったのは、彼が7歳くらいの頃でした。

呪われた木の下に入っていく子供を見かけた、という噂がこの近くで流れ始めたので、私はその子供に注意をしようとしました。

呪われた木とは、昔からある大きな樹木で、数百年前にそこが罪人や悪魔落ちという悪魔に憑かれ魂を売ってしまった堕落者の処刑場となっていたのです。

そこで殺された者達の怨念が住みつき、樹木の表面には人の苦しみもがいたような模様が現れ、それ以来あの樹木は怨念の集まった呪われた木と呼ばれていました。

そこは村人たちに忌避(きひ)され、遠ざけられていた場所であり、村ではそこに立ち入ってはいけないという掟があったので、立ち入っている子供を直ぐに出さなければ罰せられると思った私は呪われた木の下へ向かいました。

そこで、私はスカルと出会ったのです。

ええ、呪われた木の下にいた子供が、スカルだったのです。

私はここへは立ち入ってはいけないと叱りましたが、彼は頑なに首を横に振ってはその場所から離れませんでした。

私や村人たちは呪われた木へ来ることを大層怖がって誰も近寄れないというのに、スカルは平然と、まるで近所の公園とでもいうかのように呪われた木へ通い続けました。

何度か注意を施しましたが、彼がそれに従うことはなく、何度かあの子を村八分しようという話に上がることもなかったとは言えないんです。

まだ彼は子供だから分かっていないだけ、という意見もありましたが、とあることがきっかけでスカルが10歳の頃彼は実質村八分にされました。

それは、この教会にいた神父の一言から始まったのです。

スカルには悪魔が憑いている、と……神父はスカルに向かってそう言い放ちました。

スカルの母方の方がクリスチャンだったので、神父の言葉を信じ、スカルの悪魔祓いを願い出たのです。

それがきっと、彼にとって……歪み始めた最初のきっかけだったのかもしれません。

抵抗するスカルを椅子に座らせ、悪魔祓いを始める神父は何時間にも渡ってスカルに聖水を掛けては悪魔の名を吐かせようとしました。

ですが隙を見て逃げ出したスカルを追いかけようとした者達を、神父はこれ以上はスカルの身体がもたないかもしれない、と言って止めました。

だからもう少しだけ体が大きくなり、スカル君の精神力が安定しさえすれば再び悪魔祓いをする、と母親に言ったのです。

それからスカルに悪魔が憑いているという神父の言葉が村全体に広がり、彼は実質村八分状態になってしまいました。

ただこの時には既に村八分は法律で禁止されていた上に、他の村から度々警察が来ていたので、露骨な迫害は出来ず彼は周りから忌避されながらも集団の中に居座り続けました。

この時村から遠く離れたところへと移っていれば、あの子はあれ以上傷付きはしなかったというのに……

ものを投げられている時もありました、暴言を吐かれている時もありました、それでもあの子はただひたすら口を(つぐ)み、あの木の下に通い続けたのです。

それが悪魔憑きであることに拍車を掛けていき、最後には両親からも見捨てられたのです。

私は、何度か神父にこう言ったのです。

早くあの子を悪魔払いしなければ、周りがあの子を悪魔そのものであると思い始めてしまう、と。

これ以上はあの子やあの子の両親の心が壊れてしまう、と。

ですが神父は首を縦には振らず、悪魔祓いをしないままスカルは15歳へとなってしまいました。

あの子が15歳になって直ぐの頃、あの子の母親が無理心中を図り家に火をつけたのです。

だがスカルは生き残り、両親は亡くなりました。

親も、帰る場所も失ったスカルをこの孤児院が引き取りました。

あの子の両親の葬儀に私も参列し、あの子の隣で土葬されるまで見届けましたとも…

私はただじっと両親の棺を眺めているスカルに、辛ければ泣いてもいいのですよ、と言ったのです。

そしたら彼はこう言いました。

もっと笑えばよかった、と……

この時、私は本当に彼に悪魔が憑りついていることを信じて疑いませんでした。

彼に憑りついている悪魔が、炎の中で苦しみながら死んで逝った彼らを嘲笑っていたのだと、そう思っていたのです。

だから、なんの感情も宿さない瞳で土に還る両親を眺める彼が、怖くて仕方ありませんでした。

私は怖さのあまり、あの葬儀からスカルに声を掛けることが出来ず…そんな時に神父が突然姿を消してしまったのです。

神父を探す為に町の中を大勢で探し回っている時、ふと気付きました……あの者は、神父ではないと。

この者が神父ではないということに何故今まで分からなかったのかが理解出来ない程それは明白でした。

今まで本当だと思い込んでいたことが全て嘘であるという確信のようなものが芽生え、あの神父の発した言葉が全て虚言であることを理解しました。

それはスカルに悪魔が憑りついていないことを意味していて、私はすぐに孤児院に戻りスカルを探しましたが…既に彼は村を去って行ったのです。

誰にも何も言わずに…夜明け前にこっそりと村を去ったのです。

数日後、本来この村の神父をしていたであろう男性は、白骨で教会の裏庭から発見されました。

私は自らの罪に気付いたのです。

あの子は……スカルには悪魔など憑いてなどいなかった……いなかったのです。

あれは全て神父の出まかせに過ぎなかったのに、私は悪魔という恐ろしい言葉を通してでしかあの子を見れなかった!

なんて罪深いことを……ああ、どうしよう……きっとスカルは、この世を憎しみながら、恨みながら、絶望しながらこの村を去ったに違いない。

この村が、あの子に業を押し付け、縛り、苦しめてしまった!

悪魔であれと……残酷であれと…彼を狂わせてしまった!

きっと、きっと、どこかで彼の本質に触れた時に気付けたはずなのに、私は彼を遠ざけ、恐れてしまった…

ああ、ああ、私のなんと罪深いことか………神よ、私はどうすれば…っ…

どうすればこの罪を償えるのですかっ………どうすれば彼は救われるというのですか!

 

 

 

 

錯乱してしまったシスターは十字架を握り、泣きはらして枯れてしまった喉で何度もごめんなさいと呟いていた。

これ以上はシスターの体調が悪くなると思いシスターを宥めていると、シスターのすすり泣く声を聞いた神父が応接室に入ってきて、彼女の繰り返す言葉に状況を察したのか彼女を応接室の外へと連れだしていく。

応接室に残された俺達は、語られたスカルの過去があまりにも重すぎて、言葉に詰まっていた。

俺は先ほどのシスターの話で気になることがあり、バミューダに向けて話しかける。

 

「な、なぁ…もしかして神父の真似事してた男って…」

血の掟(オメルタ)を破って復讐者から逃亡していたマフィアの者だ…この村一帯に幻術を掛けることが出来るほどの力量の持ち主だった」

 

やっぱり…、ああ、どうしよう…さっきのシスターの話から、スカルが精神的に歪んじゃったのってその下っ端の人の嘘がきっかけで、スカルの行動の元凶ってマフィアってことになるの!?

 

「なるほど、狂人の紛いものを世に解き放ったきっかけはこの村であり、周りの全てだったのか」

 

バミューダの言葉に風が険しい顔を一層歪ませ、俺はバミューダにどういうことだと聞き出す。

 

「人は誰もが自らの物語(ストーリー)を持っていて、それは周りの相互関係によって創られていく…これは人間の根本的な在り方として形成していて、自己(キャラ)が弱ければ物語(ストーリー)も歪みやすくなり、自身を形成する物語を失えばそれは思考の欠如…自我の喪失と同等である」

「な、何だよ急に…」

「先ほどの女が語っていたスカルの年齢は7歳弱…人格形成に最も重要視されている時期だ」

「……?」

 

バミューダの難しい言葉について行けない俺に気付いた風さんが、つまりと付け加える。

 

「彼の場合自分というものを失い、周りが押し付けた狂人(誰か)を自己と誤認識し演じている…と、彼は言っているんです」

他者(まわり)から押し付けられた物語(ストーリー)が、まさしく狂人であった……それだけのことだ」

「それっ…て、スカルが周りに狂わされたってことだろ?」

「僕が言いたいのはその先だ…スカルに狂人という自己を押し付けたのは村人であって、狂人であれという物語(ストーリー)を押し付けたのは奴の周りである、ということだ」

「待てよ、それって!」

 

「そう、奴を最悪最恐の狂人にしたのは、奴を狂人だと恐れ(おのの)いた村人であり、裏の世界の者達であり、僕たちってわけだ」

 

奴は少し頑丈なだけの、数万人の狂った恐怖が押し込まれた、哀れな偶像だ。

僕たちが奴を狂っていると認識すればするほど、奴は自身が狂人であるという人格形成をし続ける。

皮肉なものだね……僕たちが狂人を創っていただなんて…

 

 

バミューダの言葉に、俺はショックを隠し切れなかった。

言葉を失ったまま拳を握りつぶす俺に、リボーンが他の奴等と合流するぞと応接室を出ていき、俺は直ぐに追いかけようとしたけど立ち上がる前にクロームの異変に気付いた。

クロームの顔色が目に見えて悪くなっていて俺は慌てる。

 

「クローム、どうしたの?」

「ボス………わ、私…スカルの精神世界に行った時、見たの…」

「え?」

「神父みたいな恰好をした人がずっと男の子に怒鳴ってたり……炎が蔓延してる家の中を……」

「それって!」

「うん、私が見た男の子がスカルで……私と骸様はスカルの過去を見ていたの…」

 

クロームは涙目になりながら、あの時見た景色を教えてくれた。

燃え尽きた両親の死体を間近で見ていた男の子のことや、木の下でノートに何かを綴っていたこと…

 

「子供達の声が色んな所から聞こえて……あの子は悪魔だよ、って……ずっと、ずっと…」

「クローム、もういいよ…もう、思い出さなくていいよ」

 

顔色が悪くなるばかりのクロームを宥めた俺は、一旦外に出ようとクロームの手を取る。

既に風やリボーン、バミューダは外で待っていて、顔色の悪いクロームに風さんが声を掛けてきた。

クロームが過去視をしてしまったことを伝えれば、風さんは悲しげに大丈夫ですよと言いながらクロームの頭を撫でる。

少し歩いたところで図書館に行っていたメンバーと合流することになった俺達は、合流場所で待機していた。

数分後にコロネロたちの姿が見え、漸く合流を果たした。

ユニは直ぐにクロームの顔色の悪さに気付き、クロームと共に近くのベンチへと座る。

 

「こっちはこれといって得るものはなかったぜ」

「そうだな、殆ど六道骸が言っていたことと同じだった」

「興味深い文献があると思ったが、残念だよ」

「そっちは何か聞けたのかい?」

 

コロネロ、ラル、ヴェルデ、マーモンの順で口を開くが、少しばかりの沈黙が俺達の方に流れた。

俺が口を開いては閉じたりしていると、リボーンがハットを深く被りながら呟く。

 

「胸糞悪ぃ話しかなかったぞ」

「なるほど、往来で話すものではないか…ならあちらはどうだ?」

 

ヴェルデが親指を向けた先には、脇道がありそのまま森のような場所へと繋がっている。

図書館で見つけたこの町の地図で、村人の立ち入り禁止区域があったからそこがいいだろうと言うヴェルデの言葉に俺は嫌な予感が過ぎる。

 

「ああ、確かにあったな…確か…」

「呪われた木、だろう…僕らアルコバレーノには御(あつら)え向きじゃないか」

 

皮肉ってみせるマーモンの言葉に、俺らはやっぱり…と眉間に皺を寄せる。

呪われた木という単語に俺らが過剰に反応したと勘違いしたマーモンに風さんが首を振った。

 

「その場所がスカルの過去に大きく関係していた場所だったんです…ともかく見るだけ行ってみましょうか」

 

風さんの言葉に従い、皆歩き始める。

俺はベンチに座っていたクロームにまだ休んでいいよと言ったけれど、自分も行くと言って皆の後ろをついて行った。

フラフラなクロームを心配して、俺とユニが両側で支えながら歩き出す。

10分以上歩いたところに大きな樹木が(そび)え立っていて、近くには錆びついた立ち入り禁止の看板が地面に倒れていた。

シスターの言葉通り不気味な樹木に俺は怖がりながらも近寄れば、クロームが樹木を見て目を見開く。

 

「ボス……ここ…あの辺りに…スカルがずっと…いたの」

「やっぱり…ここがそうなんだね」

「それで、一体奴の過去に何があったんだ」

 

ラルの言葉に俺じゃ説明不足だと思った風さんが、俺の替わりシスターの話をそのまま語り始めた。

スカルの過去が段々と明らかになっていくにつれ皆の顔が険しくなっていく。

風さんがシスターの話とバミューダの推測を伝えれば、コロネロが舌打ちした。

 

「チッ、胸糞悪ぃな!コラ!」

「僕らが狂人を創っていたなんて…皮肉にも程があるよ」

 

マーモンがそう吐き捨て、結局奴の居場所を割り出せる情報はなかったかとヴェルデが零す。

先ほどから黙り込んでいるユニが心配で声を掛けようとしたら、クロームが俺の袖を引っ張って来た。

 

「ボス……私がもう一度スカルの精神世界に行ってみる」

「え!?」

「骸様が絞り出したスカルの居場所に行ってみて、スカルの精神世界を特定して居場所を探してみる」

「だ、だめだよ!骸がいない今クロームだけ行かせるなんて危ないし…!」

「でもこれ以外に見つける手段はないの…お願いボス」

 

クロームの言葉は尤もで手詰まりな今打開策はクロームに掛かってるが、クロームの状態も良くはないしその表情は疲労を感じさせた。

俺が迷っているとラルが休憩を入れた方がいいのではと提案し出した。

 

「どうせ今焦っても仕方ないしあと2日と半日もあるんだ、クローム…休めば出来そうか」

「は、はい」

「ならば一旦休んだ方がいい…俺達アルコバレーノはいいとして、沢田やクロームは戦いっぱなしだからな」

「そうだな、古代生物と戦うことになった時の為に色々準備もしたいところだ」

 

ラルの言葉にヴェルデが賛同し、俺とクロームは一度休息を取るために森の広場で横になる。

日本に戻ることも考えたが、今日本に戻ってしまえば緊張が切れて集中出来なくなりそうという理由でその場で休息を取ることになる。

周りにはアルコバレーノ達がいる世界中において一番安全そうな場所で、俺達は安心して眠りにつくことが出来た。

 

 

そう、安心しきって周囲を疎かにしていたから、ユニの変化に気付くことが出来なかったんだ。

 

 

 

 




スカル:狂人から一気に哀れな人間認定された、出番はまだない、過去を洗い出されていることなんて思いもよらない。

バミューダ:今までスカルを罵倒したり憎んだりと、向けていた負の感情がそのまま自分の良心に反射するという愉悦式ダメージ反射機能を考案しスカルに付与してしまった、なんてこったい。

リボーン:バミューダの推測が正しかったらスカルをより狂人たらしめたのは自分であると理解してしまって、今までの憎しみとか恨みが全部すっ飛んだ、バミューダ考案愉悦式ダメージ反射機能によって一番ダメージを食らうのはコイツ、多分これからスカルに対して罪悪感的なものを覚えてくれれば御の字、ある意味被害者。

愉悦:この展開、我々の勝利だ!

愉悦レベル:★★★★★(Max)



※以下蛇足


「人は誰もが自らの物語(ストーリー)を持っていて、それは周りの相互関係によって創られていく…これは人間の根本的な在り方として形成していて、自己(キャラ)が弱ければ物語(ストーリー)も歪みやすくなり、自身を形成する物語を失えばそれは思考の欠如…自我の喪失と同等である」


このバミューダの台詞に、「悪について」の参考文献を1~2冊読みました、疲れましたね。
悪論はまだまだ心理学分野や哲学分野において開拓途中の命題なので、以上の文は参考文献を読んだ私なりの解釈です。
一番分かりやすいのはミルグラム実験かアイヒマン実験かな…
正直スカルの今までの行動をどうやって勘違いさせようかで迷いに迷い続けて、遂に哲学分野に手を出したことには驚きを隠せません。いやぁ、愉悦が為にここまでするとは……(笑)

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