Skull   作:つな*

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俺はいなかった。


skullの包囲

沢田綱吉side

 

 

「復讐者こそがアルコバレーノの果ての姿だ」

 

黒い貴族風のローブをはためかせたその黒い影は、淡々と俺達にとって最悪ともいうべき事実を言い放った。

チェッカーフェイスの真の目的、アルコバレーノの末路、そして役割…全てが語られた今、俺は自身の師に何を言えるのだろうか。

リボーンは、このまま代理戦争を進めれば高確率で死んでしまう、そう知ってしまったのだ。

バミューダが嘘をついている様子はなくて、俺はその事実に固まったまま会話を進める彼らを眺めていることしか出来なかった。

 

思えば復讐者が出てきたときから、少しづつこの代理戦争の核心がリボーンの言う"呪いを解く"だけの戦いではないことに気付いていたんだ。

復讐者が参戦してきた理由や、スカルが復讐者に代理戦争の参加権を譲渡した理由が分からず、違和感と困惑が残るまま代理戦争を続行していたけど、復讐者の奇襲でただ彼らが代理戦争に参加した理由は"呪いを解きたい"という事実から来るものじゃないと頭のどこかで分かっていた。

何らかの執念がありチェッカーフェイスと関りがある彼らが、どうして今、このタイミングで乱入してきたのかを考える暇もなく3日目の戦闘に突入し、3体の復讐者と当たってしまった俺は戦闘を始めた。

なんとか勝てた後もリボーンと共に俺は謎の空間に連れていかれるし、そこで衝撃の事実を聞かされるし、もう俺の思考は一杯一杯だ。

ただ隣のリボーンが冷静でいることが、唯一の救いだったのかもしれない。

 

目の前でリボーンとバミューダの会話が進んでいく。

チェッカーフェイスに復讐を果たしたいバミューダの勧誘に、リボーンは現状把握に努めている。

 

「じゃあこれが最後の質問だ…チェッカーフェイスを倒したらオレ達現アルコバレーノはどうなるんだ?」

「死ぬね」

 

俺は咄嗟(とっさ)にリボーンを見たけど、リボーンはユニとラルの心配をしていて勧誘に否定的だ。

俺としてもユニとかラル以前に誰にも死んでほしくないから、バミューダの案には反対だ。

なら他に考えでもあるのかって聞かれたら、答えようがないんだけど…それでも、俺はこんなの可笑しいって胸を張って言える。

 

「じゃあリボーン君はこれからもこんな不幸が繰り返されてもいいのか?」

 

バミューダの言葉に、リボーンよりも先に俺が食い付く。

多分バミューダにとって俺の言葉は綺麗ごとかもしれないけれど、俺はそれでも誰かが傷つくのも死ぬのも嫌だ。

絶望していい未来なんてないんだ。

 

「代理戦争でお前達には優勝させない‼他の道を探すんだ‼」

 

皆が助かる道があるのなら、俺は最後までその光に縋ってみせる…そして、自分で切り開くんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

リボーンside

 

ツナがバミューダに啖呵切って宣戦布告してから、ひと悶着あった後運よく無事に元の場所に帰ることが出来た。

だがイェーガーの戦闘力をこの目でみてから、今まで少しの可能性でも見通すことが出来たツナの勝利が全く見えない。

それほど、バミューダが俺達にとって脅威ってことか………

 

「オレ達虹の赤ん坊のために死ななくていい」

 

アルコバレーノ(俺達)の問題に教え子を巻き込むのは、俺としても避けたいのは事実で、わざとツナを突き放す。

3日目の戦闘があった現地に戻れば、誰もが事情を問いただしてくる。

俺はそれにアルコバレーノだけを集めるよう指示し、ツナには家に帰るよう促した。

これは、アルコバレーノの問題でありあいつらにこれ以上を望んじゃならねーっていう俺にとっての線引きでもあった。

 

 

「この代理戦争は次期虹の赤ん坊を探すための茶番だったのか‼」

 

スカルを除くアルコバレーノ同士で集まり、俺はアルコバレーノの役割、そして真実の全てを教えた。

真実にショックで固まっている中、一番に反応したのはヴェルデだった。

憤慨するヴェルデに続き、コロネロが愕然と呟く。

 

「ここ最近体調がいまいち優れない気はしていたが…」

「俺もだ…残された時間は意外と少ないのかもな」

 

今この場でも絶好調とは言えない程度で、僅かに不調が見え隠れしている。

恐らくこの場にいる者全員に当てはまるだろう。

まだショックの残るあいつらに俺は残酷な言葉を吐く。

 

「オレ達に残されたのは生きるか死ぬかではなく……何をして死ぬかっていう選択だけだ」

 

バミューダの案を蹴って代理戦争を勝ち残っても、バミューダと協力してチェッカーフェイスを倒しても、あるのは死のみ。

俺の言葉にマーモンが吠えた。

 

「僕は聖人じゃない‼アルコバレーノのシステムと心中して死ぬなんてゴメンだ!僕はもっと生きたいよ‼生きたいんだ‼」

 

その言葉は誰もが望んでいるものだった。

まだ、生きたいんだ。

次々とバミューダへの反感が募る中、風が何も言わず静観していて、俺は何を考えている、と声を掛ける。

すると風は、少し思ったのですが…と前置きをして言葉を放つ。

 

「スカルは…その真実を知り、チェッカーフェイスの手のひらで踊るのは癪に障ったから破棄したのでは、とふと思って」

「確かにな、大方バミューダから聞いて代理戦争自体に興味を失くした…というところか」

「狂人のことなんか放っておいて今は僕らのことを考えなよ!」

 

風とヴェルデの会話にマーモンが噛みつく。

アルコバレーノの中でも一番呪いを解きたがっていた上に、生への執着心があるマーモンは先ほどから平常心を放り出して焦っていた。

生きたい、と本心を曝け出してまで切羽詰まっている。

もう、出来ることはないと俺が強く言えば、マーモンは何も言えず押し黙り、その場に重い空気ばかりが残った。

 

 

アルコバレーノ同士の情報を共有したところで、俺達は一度各自チームの下へと戻る。

俺はツナに呼ばれ、共に人気(ひとけ)のない場所へと移動する。

今回の虹の代理戦争をツナに破棄してもらうことを言えば、ツナが激怒した。

ツナのここまで怒っている様子は珍しく、俺は面食らった。

 

「ろくな死に方を期待してないってなんなんだよ‼そんなふざけた事考えながらいつも隣にいたのかよ!みんなと笑い合ってる時も一人でそんな寂しい事考えてたのかよ‼お前なんか家庭教師失格だ‼」

 

全て言い切ったのか肩で息をしているツナに何も言えず、俺はただ教え子の成長に素直に驚く。

 

「オレ、お前を絶対に死なせないから」

 

俺は、ツナの言葉に何も返せず、寝たふりを決め込んだ。

俺が寝ていることに気付いて愕然としている様子のツナを他所に、俺はこれから大波乱を起こすであろう4日目の戦闘に不安を抱く。

ツナが何を言ったところで、俺はツナに戦わせるつもりはない。

戦ったところで、それがチェッカーフェイスの意の中であり、ツナは必ず次期アルコバレーノに選ばれる。

俺としてはバミューダの案もありなんじゃねーかって思うが、他のアルコバレーノが猛反対しているし、ツナの方も戦う気満々だ。

自分の代で終わらせないと、教え子に呪いを受け継がせてしまうことへの負い目があるのは、アルコバレーノの中でも師を(にな)った俺だけ。

個性的な奴等ばっか集まりやがって……全然意見が揃わねー…

こんな状況になるくらいなら、スカルみてーにどっか行ってれば楽だったのかもな。

ヴェルデの言葉を思い返す。

 

『確かにな、大方バミューダから聞いて代理戦争自体に興味を失くした…というところか』

 

あのスカルが興味を失ったからと言って、ウォッチを渡すなんてバミューダの狙い通りに動く馬鹿とは思えねー。

これ以上あいつを疑ったとしても、俺の死もあいつの死も揺るがねーんだ、時間を無駄にするだけ、か。

 

「チッ、最期まであいつのあのイラつくヘルメットぶっ壊せなかったってことか」

 

既にツナのいなくなったその場で、俺の舌打ちだけがやけに大きく響き渡った。

 

 

 

翌日になって、俺は再びツナと面と向かって言葉を交わす。

代理戦争を破棄することを訴えたところで、ツナは頑なに首を縦に振ることはないどころか、俺に向かって言い放つ。

 

「ボンゴレⅠ世(プリーモ)はこう言うはずだ、仲間を見捨てるような奴にボンゴレはまかせられない…仲間のために死ぬ気になれないやつはボンゴレ10代目失格だ‼って」

俺はその言葉にツナの成長を見出した。

ボンゴレ10代目になれるよう育てたつもりのツナが、俺が気付かない間に俺にここまで言ってのける程成長したことが、何よりも嬉しかった。

それと同時に、言うようになったじゃねぇかと、一抹の哀愁(あいしゅう)を覚える。

 

…そうだな、俺がコイツに仲間の大切さを教えた。

なら、コイツが食い下がるのも仕方ねぇ。

 

「いつ死んでも悔いはねえつもりだったが…もうちっとお前の成長を見てえって欲がでてきちまった…だから生かしてくれ、ツナ」

 

俺は、生きることを望んだ。

最後まで諦めねーで死ぬ気で生きろ、といつかのツナに放った自分の言葉をふいに思い出した。

 

 

 

「もっと………生きてえ」

 

 

 

俺もまだ諦めるには早ぇ、ってことか。

口角をあげた俺に、ツナはぎこちない笑みを浮かべた。

 

 

 

結果だけ言えば、俺達は復讐者に勝利した。

ただ、こちらの被害は凄まじく、死人こそ出なかったものの重傷者が続出する。

特に心臓を破壊されている白蘭とスクアーロ、片腕と両足を負傷したザンザス、胴体をバッサリと斬られたディーノ、その他にも数名軽傷とは言えないような傷を負った者がいる。

バミューダとイェーガーの実力は凄まじかったが、最終的には数で押し切ったようなものだった。

骸と雲雀が二人掛かりで拘束したイェーガーにツナが大ダメージを与えることができ、その後のツナとバミューダの決戦でもツナが辛勝した。

犠牲の上に成り立った勝利にツナは喜んじゃいなかったが、死人が出なかったことに安堵する。

誰もが俺達の勝利を見届け、チェッカーフェイスが姿を現すのを待つ。

バミューダのウォッチが破壊され、尾道が現れた。

ツナが尾道を威圧すれば、尾道の背後から声が降ってくる。

 

「彼を責めてはいかんよ、尾道は本当に何も知らぬのだ」

 

それは、俺達が憎んで仕方がない男で、今一番に問いただしたい人物だった。

奴に対してまず初めに感じたことは、気配がないことだった。

気配がない、それはそこに存在していないということ。

ホログラムか何かか?と思考を巡らせていると、ツナがチェッカーフェイスの登場に驚いている。

バミューダがチェッカーフェイスを警戒している中、チェッカーフェイスは自身の仮面に手を伸ばす。

 

「この顔に見覚えがあるだろう?」

 

そういって仮面を剥がした奴の顔に、見覚えがありその場の者達は皆驚愕する。

それは未来で俺達を(かくま)った川平不動産の男だった。

誰もが驚いている中、チェッカーフェイスはアルコバレーノ達の殺気を指摘し、奴自身の炎をその場にいた全員に当てる。

それは容易くその場を飲み込み、炎圧はツナの比ではなかった。

それを呼吸をするほど容易いと奴は言い放ったことに、真っ先にバミューダが絶望するような声をあげた。

チェッカーフェイスを倒して、ということが根本的に不可能である事実を突き付けられた俺達は、攻撃を加えることが出来ずチェッカーフェイスの一挙一動を睨みつける。

 

「話すつもりはなかったがたまにはいいだろう…気が変わったら君たちの意識か君達そのものの存在を消せばいいだけの話だしな…」

 

チェッカーフェイスの意味深な言葉にヴェルデが反応すると、チェッカーフェイスがトゥリニテッセについて語り始めた。

チェッカーフェイスが人類よりも前に存在していた種族であること、トゥリニテッセを守る使命のこと、トゥリニテッセは世界を安定させるためのものであることを、その口で語った。

 

「私が直接 姿を現すのはおしゃぶりの維持、すなわちアルコバレーノの世代交代と決めている……では現アルコバレーノのおしゃぶりを返してもらおうか?」

 

チェッカーフェイスのその言葉に、その場のアルコバレーノが身構える。

実力的に格が違うことは理解しているが、大人しくおしゃぶりを渡すのとはまた別だ。

生きてぇってツナに言ったばかりだ、こんなあっけなく死んでたまるか。

もはや意地でもおしゃぶりを渡すつもりはなかったが、ツナがチェッカーフェイスに食い付く。

 

「君は現アルコバレーノの心配ばかりしているが、次期アルコバレーノの筆頭候補だぞ」

「その覚悟はできてる」

「‼」

 

ツナの言葉に俺は目を見開いた。

このままでは俺が予測した最悪な状況になりかねない、と焦りを見せた時だった。

錬金術師のタルボが現れ、おしゃぶりの替えとなる器をその手に持っていた。

驚くチェッカーフェイスにタルボがその器の造りを教えると、バミューダの夜属性の炎が必要であることを告げた。

バミューダがそれに了承し、おしゃぶりをバミューダに任せることに対してユニがチェッカーフェイスを説得する。

ユニの予知能力を信じることにしたチェッカーフェイスは、バミューダにおしゃぶりを任せることを了承した。

 

だが、俺はそこでとある事実に気が付く。

それはチェッカーフェイスも同じだったのか、だが…と付け加えた後、同じタイミングで発言する。

 

 

「「スカルがいねぇ/いない」」

 

 

その言葉にツナもその場に居た全員もスカルの存在が必要であることに気付く。

俺は前々から疑問だった質問をバミューダに問う。

 

「おいバミューダ、お前はウォッチをスカルから貰ったのか?それとも奪ったのか?」

 

バミューダは殴られて腫れた頬を歪ませる。

 

「どちらも違う、僕は彼の捨てたウォッチを拾っただけに過ぎない…」

「捨てた?」

「ああ、彼はこの代理戦争で呪いを解く為のものではないと気付いていた…だから彼にウォッチを譲渡してもらえないだろうかと話を付けようとしたがその前に彼はウォッチを捨てようとして、予定よりも早い段階で交渉に持って行ったんだ」

 

だが、奴は交渉を蹴ってウォッチを捨てて姿を消した、とバミューダは苦虫を嚙み潰したような表情のままそう言い放つ。

バミューダの言葉に、チェッカーフェイスは手を顎に伸ばし、考え込む仕草をする。

 

「ふむ…スカルがこの代理戦争が私の誘導であることに気付いていたことは盗聴器越しでも分かっていたが、代理戦争をそのまま破棄することは少し予想外ではあったな」

「どういうことだ」

「彼は"呪いを解く"ことにさして興味はない……元々彼は代理戦争への参加意思すらなかった男だ」

「!?」

 

チェッカーフェイスの言葉に現アルコバレーノが驚く。

何故ならあの夢の中で、参加意思を確認した上でチェッカーフェイスは代理戦争の説明を始めた。

いや、あの場であいつは一度も言葉を発していないどころか、何の行動も起こさなかったな…

 

「私が彼と交渉したのだよ……代理戦争で勝利する代わりに君の望むものを、と」

「だがスカルを代理戦争に参加させることに意味はあったのか?」

「単に大きな脅威は慢心(まんしん)への(いましめ)めにもなるというだけの話だ…緩い気持ちで代理戦争をしてもらっては次期アルコバレーノの候補を絞れないのでな」

 

その言葉に一部が少し殺気を帯びるがチェッカーフェイスは知らぬふりをし、話を進める。

 

「それに彼の望みは、勝利してもしなくてもどのみち叶うものだった…」

「…?」

 

 

 

「彼の望みは死ぬ(殺される)ことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沢田綱吉side

 

 

「彼の望みは死ぬ(殺される)ことだ」

 

チェッカーフェイスの言葉に、俺は言葉を失う。

一先我に返ったリボーンが、どういうことだ、と問いただすがチェッカーフェイスも明確な動機は分からないと答える。

 

「彼は半不死性の体質を持っている…だから誰かに殺されたかった、と思っていたが、如何せん彼の思考回路は私にも読めないものでね」

「半不死性?」

「ふむ…失ったものを復元するという意味での不死性ではなく、単に人間の枠を超えた強靭さをその身に宿してしまった…というべきか」

 

俺の疑問にチェッカーフェイスは考える仕草をしながら、言葉を発する。

高所から落ちれば誰だって骨を折る、傷を作る、体を痛める、受け身を取ろうともそれなりの高さから落ちれば体のどこかに負荷がかかる。

だがスカルは違う。

数百m上から落ちたところで痛覚は痛みを訴えるが体のどこにも支障はない。

運悪く骨が折れたところで数時間でくっつく。

肌が焼けただれようが、内臓を傷付けても、動脈を切り裂いたとしても、脳に大きなダメージがなければ死ぬことは難しい。

その不死身の身体(アンデッド・ボディ)はまさしく呪いであるかのように、彼を生かしている。

彼の行動は、死にたがっているという自殺思考から来る自殺紛いのものであり、彼が狂っていようがいなかろうが、彼は自殺志願者だ。

彼の望みを聞いて私はそう結論付けた、とチェッカーフェイスは淡々と告げる。

 

死にたくても死ねない体…

 

俺の視界の端で、固まるリボーンと愕然としているアルコバレーノを捉える。

チェッカーフェイスの考えが本当なのだとしたら、スカルはずっと死にたいって思いながら生きてきたんだろうか。

 

「待て、なら何でスカルは代理戦争を破棄したんだ?そのまま参加していたら自ずと死ねたハズなのに」

「さて、ね…彼が私の手の上で転がされるのが癪に障ったのか、それともバミューダの言葉に思うところがあったのか、死に方に(こだわ)りがあったのか……言っただろう、私には彼の思考回路は測りかねる、と」

 

リボーンの疑問にどこ吹く風で答えるチェッカーフェイスの言葉に、俺は拳を固く握りしめる。

碌な死に方しないだなんて考えながら過ごしてたリボーンもそうだけど、ずっと死にたいって思いながら生きてたスカルも可笑しいよ。

 

「死にたいって思いながら生きるなんて…可笑(おか)しいよ……」

「おいツナ、あいつはマフィアの中でも飛びっきりの極悪人で、虐殺者だぞ…要らねー情は持つな」

 

絞り出したような俺の声にリボーンが反応する。

 

「チェッカーフェイスの考えはあくまで憶測だ、奴がただの狂人であるという可能性もあるんだぞ」

「でもリボーン…」

「死にてーなら一人で死んでりゃいいものを…死ねねーからって周りを巻き込む奴が正常な思考をしてるわけがねーだろ」

 

これからスカルと対峙するかもしれない時に下手な情を持つな、と言外言われている気がして、俺は押し黙る。

でも、それでも死にたがるには絶対に理由があると思うんだ。

狂ってるとか、狂ってないとか…そういうんじゃなくて、スカルが死にたいって思えるようなことがあったんだ。

リボーンの意見は尤もで、その可能性だってある。

でも、それでも……

 

『指きりげんまん 嘘ついたら 針千本呑ーます』

 

…え?

 

『指きった』

 

急に脳裏に過ぎる誰かの聞き覚えのある声に、俺は頭を抱える。

どこかで、どこかで俺はこれを聞いたはずなんだ。

一体どこで……

 

 

『なんだかその姿がとっても…悲し気だったから』

 

あ……

 

 

「リボーン」

「……何だツナ」

「お前の考えを否定するわけじゃないけど、俺はスカルが狂った極悪人じゃないと思うんだ」

「………おめーの甘ったれた考えからくるもんなら、そんな考え捨てろ」

「違う……」

「じゃあ何だってんだ」

 

僅かに苛立った声をあげるリボーンに、俺は小指を立てた。

思い出したんだ、上下に揺れた二つの小指が離れる現実味を帯びない光景を。

 

「思い出したんだ」

 

京子ちゃんの、微笑ましいものを見るような……暖かくて優しい笑顔を。

 

 

 

リボーンの訳が分からないというような顔から視線を逸らし、俺はチェッカーフェイスへと視線を移す。

 

「チェッカーフェイス、これからスカルを探し出して連れてくる…それまで待っていて欲しい」

「ふむ……こちらもずっと待てるほど時間があるわけではないのでね…そうだな、3日だ」

 

チェッカーフェイスが右手の指を三本立てて、俺の瞳を覗き込む。

 

 

「3日以内に、スカルをこの場に連れてくることだ…それを過ぎれば強制的に現アルコバレーノからおしゃぶりを返してもらおう」

 

 

 

俺は立てられた3本の指を見つめ、ごくりと唾を飲み込んだ。

 

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 




スカル:今回お休み、今頃バカンス中。

ツナ:原作通りに進んだけど、最後にスカルを連れて来なきゃね、スカルの勘違い(第一層)を突破した。

リボーン:スカルの捜索(という名の捕縛)に取り掛かる、普通にスカルが狂人だと思ってる、半不死性と聞いたので手加減無しでスカルを追い詰めようと思っている人。

チェッカーフェイス:アルコバレーノにするまで手間かけた上に、代理戦争にやっとのこと参加させたと思えば途中で逃げられるし、スカルに振り回されている中の一人、スカルの勘違い(第二層)への到達者。

超直感:ニ段構えとか無理やん!………無理やん…



愉悦レベル:★★☆☆☆




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