Skull   作:つな*

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俺は思い出せない。


skullの他所

Dside

 

山の守護者大山らうじが、ボンゴレ雷の守護者ランボに敗れた。

それを聞いて特別驚いたわけではないが、ここまでボンゴレが食い付いてくるのは意外ではあった。

だがどのみち炎真のシモンリングの覚醒が始まれば束になったところで勝てまい…

否、勝てたところで私の策略に気付いた頃には全てが終わるだろう。

私の目的はただ一つ、六道骸の身体を手に入れることだけ…

その為には早くあの女、霧の守護者クローム髑髏が覚醒しなければならない。

次の戦闘はSHITT・Pであると思い出した私は、恐らく彼女は負けると思っていた。

ならそれを利用しない手はないというものだ…そろそろこれを使う時か。

 

私は携帯を取り出し、予め用意していた写真と情報を表示する。

そこには沢田家光とCEDEFの過去の動向をデータにしたものだ。

7年前のあの日、古里(まこと)の銃を盗み、とあるビルの最上階でCEDEFに属する12名を惨殺した後その銃をその場に置いて去った。

そして古里真に疑いが掛かったと同時に、炎真以外の古里一家を惨殺した。

それはもう醜い惨状にして、だ。

その上数名のシモンファミリーはスカルが殺した。

あの一件を全て沢田家光に擦り付け、炎真の復讐心をボンゴレへと向けさせた。

そんな今、実行犯である沢田家光が沢田綱吉の実父であるとわかればどうなるか、一目瞭然だ。

これをSHITT・Pがやられる前に見せて、少し発破をかけてあげよう。

 

3日後の朝、復讐者に捕まった者達を除いて、朝食をとっている時だった。

 

「ジュリー、アランから何か情報は入ってないの?」

「ないない、まだあっちじゃ夜だ…(やっこ)さんまだ寝てんじゃね?」

 

アランはアランで初日の会話以降連絡を絶っている。

何を考えているのやら…

炎真とバルコニーで二人きりになった時に、俺は好機と思い携帯を取り出した。

 

「炎真、本当いうと例の件の真相がわかったぜ」

「!」

 

ジュリーの言葉に目を見開く炎真に口元に笑みを作る。

 

「やったのはボンゴレ門外顧問機関、通称CEDEFっつってな…表向きは独立組織だがボンゴレの息のかかった秘密機関と考えていい、んでもってたまげたのはそこで指揮をとる最高責任者だ……この男な」

「……?」

「沢田家光、沢田綱吉の親父だ」

「‼」

 

携帯を見せ、沢田家光の画像を見せれば炎真の目がこれでもかというほど見開く。

そして憎悪を宿した瞳が一際鋭くなり、今にも殺さんばかりの殺気を放っている。

 

「親子そろってゲスな血は争えねーってことだな」

 

炎真の中に宿す憎悪や復讐心を増すことが出来、復讐者から送られた記憶の欠片で揺らいでいた心が鳴りを潜めた。

そうだ、お前はまだやらねばならないことがある。

殺せ……腐りしボンゴレを全て…殺すんだ

 

SHITT・Pが嵐の守護者獄寺隼人に倒され、復讐者に連れていかれるというところで炎真が割り込んだ。

炎真の後ろにはアーデルハイトとジュリーもいるが、アーデルに至っては炎真を抑えようとしている。

だが先ほどの情報で怒りに囚われ我を忘れている炎真は沢田綱吉に攻撃を仕掛ける。

沢田綱吉が何かを言い放つが、それは古里炎真へは届かず。

 

「教えてやるよ沢田綱吉……君という人間は初代シモンを裏切ったボンゴレ初代の子孫というだけじゃない…僕の両親と妹を殺した沢田家光の息子なんだ‼」

「!?」

 

冷静さを失った炎真はそのまま沢田綱吉を殺しにかかるが、シモンリングの覚醒で身体への負荷が限界を超え、炎真は痛みを訴えた。

意識を失った炎真をアーデルハイトが抱え、私は後ろをついて行く。

既に沢田綱吉の戦意は喪失している…これ以上何もしなくても殺されてくれるだろう。

炎真を眠らせてくると言って寝室へ運ぶアーデルハイトと分かれ、私はクローム髑髏の眠る寝室へと足を運ぶ。

そこには逃げようと企てていたクローム髑髏がおり、私は彼女に自身の正体を明かし、体を明け渡すよう言い放つ。

 

「正確には君を入口にして君の主人たる六道骸の肉体をいただきたい」

 

頑なに拒む彼女に幻術を掛け、従順な付き添いにした後、アーデルハイトの勝負を観戦しに向かう。

アーデルハイトの相手は雲の守護者雲雀恭弥のようだ。

誰の注意も向いていない崖の上から彼らの勝負を眺めていた。

結果を言ってしまえばアーデルハイトは敗北した。

彼女に期待を乗せていた部分もあった為に落胆は隠せない。

所詮ガキ…どいつもこいつも使えぬ奴等だ。

まだアランの方が使い勝手がよかったものだ。

さて…私の思惑がほぼ可能となるのは間違いない今、アランという仲介は要らなくなった。

彼には最後にこの島を沈める役割でも与えてあげましょう…

側に佇みクローム髑髏の肩を引き寄せる。

雲雀恭弥によって居場所が割れてしまった私は潮時かと思い、その場に居る者を見渡す。

 

「ジュリー、炎真のことは…頼めるわね」

「ああ、まかせとけ…お前はよくやったさアーデル」

 

これで 漸く

 

「これで俺もキレイさっぱりシモンに見切りをつけられる」

 

  戯曲は完成した

 

      後は仮面を剥ぎ取るだけ

 

 

分厚い仮面に罅が入り、崩れ去っていく。

 

「挨拶をしたほうが良いですね……腐った若きボンゴレ達よ」

 

周りの驚愕の眼差しの中、アーデルハイトがシモンを利用したことに食い付いてくる。

 

「貴様……私達を利用したのか!?」

「私の目的はあくまで現ボンゴレの転覆…私の頭の中は次世代のボンゴレでいっぱいだ」

 

置き土産に私は彼女に本来のジュリーの精神がこの身に残っているのは微々たるものだと教えれば、彼女の涙腺は決壊した。

 

「見苦しい涙だ…所詮まだ青い子供にすぎない」

 

そんな時、水野薫が現れる。

シモンを利用していたことに怒りを露わにし、短絡的な攻撃をしかけてくる。

それを躱した私は、他の者達の攻撃をクローム髑髏を人質にして防ぐ。

その後、雨の守護者山本武の乱入と、予想外の事態に陥るが、事はうまく運び水野薫、アーデルハイトは復讐者に拘束された。

少し早いが、私の方もそろそろ準備を始めねばなりませんね。

内心ほくそ笑んでいた私を嘲笑うかのように、復讐者が渡してきた記憶の欠片に衝撃を受ける。

そう、私が殺したと思っていたコザァートは死んでいなかったのだ!

ジョットが私を騙し、コザァートを生かし、彼の存在を隠蔽した。

 

「おのれⅠ世(プリーモ)‼コザァートの死を偽装するとは‼」

 

己の中で言い様の無い怒りと屈辱が沸き上がるが、直ぐに冷静さを取り戻し、クローム髑髏を連れその場を後にした。

今はそれよりも、古里炎真の状態の確認と…六道骸の身体を手に入れねばならない。

シモンファミリーの洞窟内にある古城へと足を進めれば、古里炎真がそこにいた。

過ぎた力は身を亡ぼす…既にシモンリングに支配され古里炎真という自我があるのかすら怪しい状態になっている。

焦点はあっておらず、力が暴走し床に亀裂が走る。

被害が来ないよう注意を払いながら彼の覚醒状況に笑みを作る。

 

「ヌフフ…壊れた傀儡(くぐつ)にはお似合いの最期ですね」

 

 

 

海に沈め 海に沈め  全てはあの男の理想と共に海に沈め

 

 

 

私はクローム髑髏を拘束し、六道骸を引き出した。

 

「やはり来ましたね、六道骸…一目でわかります…まったくもって優れた術士だと」

「あなたこそ一目でわかります、僕の忌み嫌うもの全ての権化だと」

 

自身の手足を利用されたのが我慢ならないのか濃密な殺気を放ってくる彼に、笑みが零れる。

全力を出し切らずギリギリの手加減をしながら六道骸に敗北し、殺されたように見せかけた私は今か今かと待ちわびていたこの瞬間に胸を打ち震わせていた。

そう、復讐者の牢獄で拘束されている精神の入っていない六道骸を乗っ取り奪うこの時を。

 

ああ、ああ、この時を待っていた‼

水に浸る皮膚に目もくれず、拘束された瞼を無理やり開け、ほの暗い水底から這い上がる。

 

「感謝するぞ六道骸‼お前の肉体を頂いた‼」

 

最早今の私は人を超越した‼

第8属性の炎を手に入れた私は、彼らの下へと現れ、言い放った。

 

 

「さあ、終えましょう……君達の世代を」

 

 

愚かなあの男の理想を今ここで  潰す

              

 

 

 

 

 

 

 

アランside

 

 

『ええ、彼ら……CEDEFを、古里一家を殺し…シモンの憎しみをボンゴレに仕向けたのは私ですよ』

 

時が、止まった。

最初、何を言ってるか分からなかったんだ。

 

CEDEF……ってスカルが所属してる…?

古里一家を殺した?

…ならあの金髪の後ろ姿は………コイツ…D(デイモン)・スペードという奴の仕業、だった…のか?

なら、スカル…は…D(デイモン)・スペード……なのか……?

あ、頭が痛い、どうなっているんだ。

じゃあ俺が長年恨み続けていたのは別の男で、殺すべきはDと名乗る男だったというのか‼

ああ、わか、分からない…何もかも、分からない。

 

そうだ、俺に情報を流していたあの男を捕まえればっ

 

俺はすぐさま携帯を取り出し、情報屋を名乗る男に電話をかけるが、一向に取る気配はない。

舌打ちと共に上を仰ぐ。

まるで土台が壊されたような絶望がこの身を侵食する。

 

いや、考えろ……

 

スカルの正体が知れた今、俺は…このDという男を殺せばいいのだ。

でも、どうやって?

俺があの島につく頃には全てが終わっているだろうさ。

あの男を法で裁いてなるものか…俺がこの手で、死んだほうがマシというくらい痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて、痛めつけて……

 

「あ…爆弾……」

 

そうだ、爆弾だ。

あの男ごと島を海に沈めればいいんだ。

そうすれば俺はもうあの(もや)に怯えて暮らさなくて済むんだ。

きっと、きっとそうだ…

俺は盗聴器を全て引き出しに詰め込むと、掛けていたコートを羽織る。

丁度その時、オフィスのドアが開き男性警察官が入ってくる。

 

 

「アランさん、この書類どうしま――――」

「すまない、急用が出来た」

 

彼の言葉を遮り、俺はオフィスを出て家に帰ろうと走りだした。

爆弾のスイッチは寝室の中だ。

今すぐ、今すぐ、今すぐ、あのボタンを押して、奴を殺すんだ‼

 

数十分後に肩で息をしながら、家の玄関へと辿り着く。

寂れた空間になだれ込むように入り、寝室へ急ぐ。

鼻を掠めるネーブルオレンジにも、鳴りっぱなしの電話にも目もくれず、寝室に駆け付け、ベッドサイドにある引き出しの中に入れている爆弾のスイッチを探す。

引き出しの三段目には拳銃が、二段目に爆弾のスイッチと盗聴器が入っている。

すぐさまスイッチを押したい衝動を、繋ぎ止めた理性でなんとか留め、盗聴器越しに彼らの状況を確認する。

そこにはD(デイモン)という男が過去を語っていた。

貴族なんて百何年前の話をしているんだと、抑えていた怒りが沸き上がりながらも耳を傾ける。

それはまさしくファンタジーな話であった。

愛する者の為に亡霊として、体を乗り換えながらも生き永らえていたという。

悲しみ?哀れ?ふざけるなよ!

ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!

 

俺の憎しみをお前は知らない。

俺の虚しさをお前は知らない。

俺の恐怖をお前は知らない。

 

幸せだった俺を、ここまでめちゃくちゃに潰してくれやがったお前を!お前を!

 

溢れ出る涙はとうに枯れた。

今はただ、全ての元凶であるあの男を殺すことだけがっ、俺の!俺の……っ…

 

強く握り過ぎて白くなる拳を開き、爆弾のスイッチを握る。

こんなふざけた世迷言に耳を貸すボンゴレ側もそうだ、皆、皆、皆、皆、死ねばっ…死ねばいいんだ!

 

 

『エレナ…お前を救えなかった私を…許してくれっ…』

 

 

一際悲し気で切なかった声は、今の俺の怒りを触発するには十分だった。

 

 

俺は震える指でスイッチを押した。

 

 

盗聴器越しに大きな爆発音が鳴り響き、俺の心の中には爽快感と、達成感が()い交ぜになる。

困惑する声を耳にしながら、俺の中にストンと嵌まった感情は、安堵だ。

電波がズレたのか、盗聴器が壊れたのか、聞こえなくなったそれを耳から取り外す。

呆然と寝室のベッドシーツを眺めた。

 

「お、終わった……?」

 

俺の長い、長い、復讐は終わったのだろうか……?

もし奴が生きていようが、あの孤島から何もなしで出られる保証は万一にない。

島の周辺に設置した爆弾も一緒に連鎖爆発を起こしている。

あの島は地図上から消え去ったんだ……

 

俺の復讐が成就(じょうじゅ)したのだ。

もう、怯えて生きていくことも、狂ってしまうこともない……俺は生きている。

妻も娘も生きているっ……!

ああ、終わった………やっと……地獄から解放されるんだ……

 

枯れた涙の代わりに漏れた吐息は、鉛が抜け落ちたように軽かった。

 

「シ、シンディ…………ルーナ…」

 

妻と娘の名前を呼びながら、俺は携帯を取り出した。

今ならばまだ間に合う。

まだ、彼女達と、やり直せる。

頼む、一生のお願いだ、出てくれ…!

俺は妻の携帯に電話を掛けた。

 

ワンコール…それが途轍も長く思える。

 

その時だった。

 

 

prrrrrrrr…

 

 

背後から着信音が鳴り出した。

 

「…え……………」

 

俺はゆっくりと振り向く。

そこには三段目と二段目が開かれた引き出しがあり、そのあたりから聞こえた。

恐る恐ると引き出しの一段目に手を掛ける。

 

何故ここまで俺は恐れている?

恐れる者は何もない、今しがた葬ったじゃないか。

 

自身を奮起させ、引き出しを引いた。

一際大きくなった着信音と、視界に映る小さな携帯に、俺の混乱し始める感情とは逆に思考は段々と冴えていく。

携帯を手に取って開いてみれば、アランと自身の名前が表示されている。

 

これは…妻の……シンディの携帯…

 

「何で……」

 

俺は電話を切ることも忘れて、寝室を抜け出し家の固定電話へと駆け付けた。

掛ける先は妻の実家だ。

 

『はい、もしもし』

 

濃い化粧の匂いと、ネーブルオレンジの匂いが鼻につくが、今の俺にはそんなことを気にする余裕はない。

 

「ああ、僕ですアランです」

『あら、アランさん…シンディとは仲直り出来たかしら?』

「あ、いえ…それなんですが、シンディがどこにいるか分かりませんか?」

『ええ?アランさんも分からないんですか?あの子なら一度もこっちに帰ってませんよ』

 

チャリン、とポケットの中で()()()()()が摩擦している。

その音があまりにも不快で、俺は苛立ちながらポケットから鍵を取り出し、固定電話のすぐ隣にある鍵かけの、()()()()()()()を掛けている逆の突起へと掛けようとして、手を止める。

 

「わ、かりました……あの、僕…シンディを探してきます、ご心配お掛けしてすみません」

『あ、あのアラ――――』

 

ブツリ

 

通話の切れる音と共に、心臓の鼓動が大きくなっていく。

息をするのが苦しくなっていくが、目の前の何かが頭の中で違和感を残している。

 

ああ、辿り着きそうであることが なんと恐ろしいことか

 

 

娘の部屋に駆け込み、辺りを見渡す。

まるでさっきまでいたかのように散らかっている。

ノートはあけっぱで、いつも娘が寝る時に俺が片付けているあの状態で部屋の中にあった。

 

「ルーナ!いるなら出ておいで!パパと遊ぼう‼」

 

きっと彼女達は、俺に内緒で帰ってきて隠れているに違いない。

 

「ルーナ!シンディ!出ておいで!かくれんぼはおしまいだ!」

 

沈黙と静寂だけがその場に残り、虚しさとやり場のない怒りが沸き上がる。

ああ、くそったれ!俺が出てこいと言ってるんだ!出て来やがれ!

お前らもあの男のように俺の邪魔をするつもりか!

どれだけ叫ぼうが、怒鳴り声が寂しい空間に木霊(こだま)すだけだ。

 

俺は再び寝室に駆け出し、汗と少しばかりの柔軟剤の匂いのするシーツを怒りのままに破き捨てた。

そして近くにあったベッドサイドテーブルを蹴り付け、怒りを鎮めようとベッドの上に乱暴に座り込む。

 

何を 何を忘れている!?

何を思い出そうとしている!?

頭の隅っこに引っ掛かってるコレは何だ!?

 

ふと、視界が正面を向き、全開したドアの先を映した。

そこには、閉じられた玄関があった。

 

 

――――()()()()()()()()()()()()()()()――――――

 

妻は何故鍵まで閉めて出ていった?

 

違う ()()じゃない

 

 

固定電話のすぐ隣にある鍵かけに、()()()()()()()を掛けている逆の突起へと掛けようとして

 

 

――――――――――――――スペアキーは家の中なのに、妻はどうやって鍵を掛けた?

 

 

 

パズルのピースが段々と嵌まっていく音がして、口が震え歯がぶつかる音が聞こえる。

 

妻が出ていってしまった日はいつだ―――――……

約一か月前だ。

そうだ、忌々しいあの男の夢を見ていたあの日に妻は出ていった!

最愛の娘を連れて出ていった!

 

憎たらしい奴に復讐を遂げたにも関わらず二人は帰ってこない‼

くそったれ!くそったれ!

ネーブルオレンジの香りが、香りが、

 

「あなた最近おかしいわ」

 

だからこの匂いは嫌いなんだ――――!

 

『それよりもいつ復縁を?』

 

お前はこの手で殺したハズだ!

 

包丁を靄から奪い取り靄の心臓があるであろう部分に突き刺した

 

 

男を殺す夢に出てくる、()()()()()()()()()()()()()

 

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

 

 

ええい、くそったれ!()()()は全部全部俺が殺して―――――――

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

『目障りであれば殺してもらっても構わない』

 

 

 

「あ………」

 

呆然と玄関を眺めていた俺は、ゆっくりと寝室のベッドサイドの引き出しの()()()に手を伸ばす。

心臓がうるさい、息が荒い、顔が熱い

 

「すまな……すまないシンディ、ルーナ………すまない、すまない」

 

 

 

誰にも悟られず、誰にも理解されず、誰にも語らず、狂気が侵食していく。

心臓から溢れ出る黒い何かが神経を侵し、指先まで伝っていき、ついに俺は理性を失うのだ。

だが侵食した狂気は人前で鳴りを潜め、理性を表へと押し出していく。

毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日……

きっと きっと この理性が削られ 表にすら出てこれなくなった時

 

それはきっと 俺が 戻れなくなった時だ

 

 

 

 

 

俺は瞼を閉じて、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

古里炎真side

 

 

シモンリングの覚醒によって理性を飲み込まれた僕をツナ君が見捨てずに助けてくれた。

シモンとボンゴレの間にある因縁は全て無くなったかと思えば、今度はD(デイモン)・スペードが六道骸の身体を乗っ取って復讐者の牢獄から脱獄してしまう。

守護者の命と引き換えにD・スペードを倒す取引を復讐者たちと交わし、僕とツナ君の二人でD・スペードに立ち向かった。

力の差は圧倒的で、僕らはDの前で負けるかと思ったが、シモンとボンゴレリングの覚醒のお陰で、Dを無事倒すことが出来た。

そして、もう戦う余力の残っていないDは地面に横たわり、残り少ない時間で自身の過去を語る。

貴族であったこと、エレナとの出会い、そしてエレナの死………

全ては愛しい者の為に。

 

 

「エレナ…お前を救えなかった私を…許してくれっ…」

 

 

涙の浮かぶ顔でそう呟いたDが薄れていくという時だった。

地響きが島全体を覆った。

 

「「「「!?」」」」

 

その場に居た全員が目を見開き困惑している。

 

「な、地震!?なんでこんなときにっ」

「いや、これは地震じゃ…」

「そうか、奴か……」

「D!お前何か知ってるのか!?」

 

困惑している状況で、一人だけ、D・スペードだけが納得している顔で自嘲的な笑みを見せる。

ツナ君とリボーンがDに問いただし、Dは僕へと視線を向ける。

 

「…………アラン、ですよ」

「!?そ、そんな馬鹿な!」

 

Dの言葉に間髪入れずに反対する。

 

「アラン?」

 

ツナ君が僕を見て、それは誰なのか?と聞いてくるような目を差し向ける。

でも僕はDの言葉で思考が混乱し、まともに話せる余裕はなかった。

 

「私が、シモンを利用するように…仕向けた…男の名前ですよ」

「え!?」

 

Dが苦し気に答えた。

 

「アランさんが、そんな、こんなことするはずがっ」

「いいえ、島の全体に爆弾を…仕掛けたのは、彼だ……」

「嘘だ!あの人は僕らの……シモンの唯一の理解者……で……」

「あなたと同じ…復讐者だ」

 

僕はそれだけで分かってしまった。

彼は、僕らと同じ復讐者で……ボンゴレを憎んでいた…

 

「彼の…標的を、ボンゴレに……挿げ替えていたが…恐らく盗聴器か何かで真実を、知って…しまった………私が黒幕である真実に…」

 

苦し気にそう呟くDにもはや何も言い返せなかった。

今のD・スペードは弱り切っていて死に体だ…アランの、騙された恨みと今まで積み重ねてきた復讐心の矛先なんて考えなくても分かる…

でも、まだ島に僕らがいるのに……いや、アランさんが打算で近づいてくることを頭のどこかで分かっていたのは僕じゃないか…っ……

 

「それでも…彼は………僕の支え、だった…のに…」

 

絞り出した声は今にも消えそうなほどか細くて、僕は瞳から涙が溢れ出る。

 

「彼はもう手遅れです………とうの昔に彼は()()()()()…」

「そのアランさんって、シモンを裏で操ってた一人なの!?」

「どうやらそうみてーだな…」

 

ツナ君とリボーンの言葉に何も言えず、拳を握り込み黙っていると、Dがいきなり笑い出した。

 

「ふ、ふははは…そう、いう…ことか……くく、そこまでっ…」

「どういうことだよ、D!」

 

問いただすツナ君にDは口角を上げ、眉を顰めた。

 

「…全てはあの7年前からずっと……私でさえも知らぬうちに彼の…傀儡(くぐつ)となっていた…とは、はは…恐れ入る」

「おい、どういうことだよ!?」

「彼はボンゴレに興味など鼻からなかった……彼にとってボンゴレは消すべき相手に……過ぎなかったというわけか…………私が…アランを上手く、利用することさえも分かった上で………奴を狂わせた、か…」

「おいD!答えろよ!彼って誰だよ!まるでお前以上の黒幕がいるみたいにっ…」

「彼は……まるで…狂気そのものだ……なる、ほど…彼は軍師で…収まりきるものではない……」

「おい!それはまさか!」

 

Dの言葉にリボーンが反応する。

僕は何が何だか分からず、Dの言葉に耳を傾けるだけしか出来ずにいて、ツナ君も同じ様子だった。

 

 

「エレナ……」

 

それがD(デイモン)の最期の言葉だった。

地響きが大きくなり、遠くからはボンゴレとシモンの守護者達が見える。

その光景に喜ぶには、Dの言葉は重すぎた。

アラン、さん……何で………

 

「おいやべえぞ!早く脱出しねーと島が海に沈む!」

「なっ」

 

リボーンの言葉にその場の全員が目を見開くが、そうこうしているうちに段々と島は傾いていく。

ボンゴレの救助船を期待したが、どうやら島の周辺にも爆弾が仕掛けられていて、近づくに近づけないらしい。

そんな時だった。

プロペラの、いくつかのプロペラの音が上空から聞こえてくる。

 

「あ、あれは!」

 

皆が上を向くと、そこには数台のヘリコプターが飛んでいて、ヘリの胴体にはボンゴレとキャッバローネの紋章が付いている。

 

「ツナー!無事かー!?」

「ディーノさん‼」

 

ヘリの中から金髪が現れ、ツナ君がその人物の名前を叫ぶ。

こうして僕らは無事、沈みゆく島を脱出することが出来た。

 

ヘリの中から見渡す光景は感傷深いものだった。

沈みゆく僕らの聖地………

 

海に飲まれゆく、シモンの歴史

そこにどれだけの苦悩と幸せがあっただろうか…

コザァートの記憶を垣間見た今となっては、ボンゴレを憎む気持ちはこれっぽっちもない

後ろ髪を引かれるような思いで沈む島を見渡す

 

「炎真君…」

「いいんだツナ君……また、僕の代から歴史を作っていけば…それでいい…」

 

 

正しい真実を知った僕らは、過去の初代達の思想を継がずとも自分達で道を切り開く力を持った。

 

 

「…それがいい………」

 

 

唯一無二の友は、未来永劫、変わりはしない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカルside

 

 

「おはようポルポ…」

「主、朝餉(あさげ)は既に出来ている」

「お前ついに料理スキルまで持っちゃったか…」

 

何気にペットがえらい進化を遂げている件について。

起きたばかりの俺がテレビを付ければ、丁度ニュースが流れていた。

 

『○日の午前7時に、腐臭がするという近所の通報から――――――』

 

「自殺か…前よりも自殺増えたな、それも警察官かよ」

「自ら命を絶つとは愚かな…」

 

俺はトーストにスクランブルエッグとかりかりのベーコンを乗せて、その上にケチャップをかけて、口に入れる。

咀嚼(そしゃく)しながら、既に水が入ってるコップに手を伸ばす。

 

『――――の地下に埋められていた遺体が発見され、身元不明の遺体はどちらも女性ということが判明しており、遺体の腐敗進行状態から遺棄されたのはおよそ5週間前であることが判明、さらに自殺した容疑者の妻子が行方不明になっており、警察は――――』

 

「うえ、こいつ絶対奥さんと子供()っちゃってるわ…こわー」

「案ずるな主、主は我が守る故」

「いやそうじゃなくってだなー…」

 

『遺体には数十か所に及ぶ殺傷痕があり、凶器は家庭用の包丁であることが――――――』

 

サイコパスかよこいつ…と思い、チャンネルを変えて、俺は残っているパンの一切れを口に入れる。

よく噛んだあと水と一緒に流し込み、ぷは、と一息ついてコップを置く。

 

「ポルポはあんなアホな奴になるなよ」

「御意、我が使命は主の守護…その誓いを違えることはない」

 

くっ、それさえ治ってくれればなぁ…

 

 

「ああ、そういえば俺少し前におかしな夢見たんだけど…」

「ほう、夢とな…」

「10年後の世界みたいなやつで…なんかお前が今よりも大きくなってて…あとフグ男っていう―――――」

 

一通りの夢を話し終えた後、俺の頭におぼろげな人物が過ぎる。

 

「すごく……懐かしい人にあったような気がしたけど…気のせいかな」

 

 

多分気のせいだな。

 

 




スカル:今回何もしてないのに黒幕疑惑を吹っ掛けられている

ポルポ:ニュースに出た男性が昔会ったことがある奴であることを知っているが、スカルには教えていない

D:エレナ廃、クロームを抱き寄せたり拘束したり、挙句の果てにはナッポーの身体を乗っ取ってナスビに進化した、ギルティ、置き土産としてスカル黒幕フラグを立てて逝った

炎真:アランの所業に精神ダメージクリティカルヒット、信頼してた分後日流れるニュースで追撃される、その他のシモンも同様

ヒットマンなあの人:スカル黒幕疑惑浮上中…

アラン:もうこれ以上減るSAN値がない、別にこれといって恨みがなかったがフルボッコ対象、スカルのメールで人生が全て狂わされた、妻と子供を知らぬ間に殺していたことに気付き最後は拳銃自殺する


38回目の夢を見たアランが、夢と現実の区別がつかず、妻子共々殺し、遺体を埋める。その後血まみれのシーツを洗剤で洗い、再び眠る。
理性が戻った状態で起きたら妻も子供いない状況→逃げられちゃったーと解釈する。
律儀に閉められた鍵のかかった玄関はそもそも誰も開けていなかった。
狂った思考は遺体の腐敗臭をネーブルオレンジの香だと思い込み、家に帰る度匂う腐敗臭が嫌で柔軟剤を玄関に撒きつけた。
一か月近く使っていたキッチンの包丁は妻子を殺した時の凶器であり、夢に出てくる凶器と同一のもの。
一週間後とは言ったものの、シンディに謝りに()()のはあの男を殺してからだ。
復讐が成就したと共に正気に戻り、自殺する。


こんなもんか、

伏線全て回収できたか分かんないけど、とりま今回のアラン事件でシモン編の半分以上を占めてしまった(笑)
その上コメント欄のアランに対する非情さがwww

にしても漸く虹の代理戦争だー!早くラスト書きたーい(笑)
ぶっちゃけラストだけ想像してて、過程をすっ飛ばしてるから代理戦争の中身が空っぽすぎる…
代理戦争で、スカルで立てに立てまくったフラグを回収していきますね。



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