Skull   作:つな*

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俺は何も知らない。


skullの敬遠

古里炎真side

 

 

「ボンゴレの継承式で我らシモンファミリーの罪を返してもらう…そして、後継者である沢田綱吉をこの手で…」

 

アーデルの覚悟の決まった真っ直ぐな眼を僕はずっと、ずっと忘れはしないだろう。

 

あれはまだ僕らが並盛中に転校手続きをしたばかりの時だった。

引っ越し作業をしていると、僕の携帯に一通の着信が来ていて、僕は皆に断って携帯を開く。

相手の名前を確認すると僕はおずおずと通話ボタンを押す。

 

「もしもし」

『炎真君?今大丈夫かい?』

「えっと…長い時間は無理…」

『分かった、じゃあ本題に入るとしよう』

 

電話の相手はアランさんだ。

身寄りのないシモンをここまで支えてくれた恩人であり、僕らと同じくボンゴレを憎む人。

僕らとはまた別の理由でボンゴレを憎み、ボンゴレに一矢報いるつもりでずっとずっと僕らを援助し続けている。

僕らにボンゴレを倒すかもしれない可能性を見出してくれた、唯一のシモンの理解者…

家族を亡くした時からなにかと僕を気に掛けてくれたアランさんは、僕としては気の許せる人だ。

何度も死にたくてしかたなかった日々に、アランさんが声を掛けてくれた。

それがボンゴレへの復讐を誘う言葉であっても、僕をその目的の為に利用していようとも、それでも、今僕が生きているのはアランさんが支えてくれていたからだ。

アーデルはアランさんを信用し過ぎてはいけないと言うけれど、彼はボンゴレを倒すまで僕らに不利なことはしないと思っている。

アランさんのボンゴレへの憎悪を僕が一番知っているから…

また、アランさんも力を持った人たちに傷つけられた人の一人なんだ。

 

「何かあったの?」

『ボンゴレ九代目が継承式の三日前にそちらに向かうという情報が入った』

「!……そう」

『どうした?声が浮かないが…』

「…僕、本当に出来るのかなって………確かにボンゴレは憎いけど、僕が今からやろうとすることってそこらの不良やボンゴレとなんら変わらないって思って……」

『………違うよ炎真君、シモンファミリーの罪を返してもらってボンゴレに過ちを認めさせることは、ただ力を誇示したくて権力と暴力を振るうことと同じではない』

「……」

『君は何年もずっと悩んで、苦しんで、傷つきながら生きてきた……だから、その心にある(わだかま)りを今こそボンゴレに伝えて欲しいんだ…俺の分もね』

「アラン、さん…」

『俺の職業柄、そちらに行けなくてすまない…君に掛ける言葉が携帯越しで遣る瀬無いよ』

「……僕が今ここで何もしなきゃボンゴレは僕らシモンファミリーにしたことを全て忘れてなかったことにするかもしれない、やっぱり僕がやらなきゃ……」

『どうか俺の努力を、君らの復讐の礎にしてくれ…健闘を祈る』

「情報ありがとう…アランさん」

 

先ほどと違って、今の僕の胸の内に揺らぎに揺らいだ不安はない。

やっぱり、僕は彼らに思い知らせてやらなきゃ……

お父さんの為に、お母さんの為に…妹の為に。

ああ、まただ…またアランさんに支えられた。

アーデルはアランさんを信用はしているけど信頼はしていない。

紅葉も、しとぴっちゃんも、ジュリーも、(かおる)も、らうじもアランさんを信用しているし、信頼してるのに…

やっぱりアーデルは警戒心が強すぎるんだよ。

彼は家族ではないけれど、外部からという意味では一番シモンファミリーを理解している恩人だ。

それが例え打算であったとしても、それで僕は…シモンファミリーは助けられている。

ああ、あと少し…あと少しすれば、アランさんの念願の復讐と共にシモンファミリーの誇りを取り戻すことが出来る。

僕なら出来る……僕なら出来る。

皆がついてきてくれてるんだ、僕ならきっと出来るさ。

携帯を仕舞い込み、皆が運送トラックに荷物を運んでいる場所に僕も戻った。

 

 

 

「僕も逃げだすこと、しょっちゅう考えるよ」

 

そう僕が呟いた先にいたのは、憎むべきボンゴレ十代目の沢田綱吉だ。

何故か行く先々よく顔を合わせてしまう綱吉君に、どこか僕と似通ってるところがあるような気がする。

十代目ともてはやされた彼は、実際会話してみて分かったが、かなりの小心者だった。

ボンゴレを継ぐことに対しても反対している様子の彼を見ていて、本当にこれが僕らの憎むべき相手なのか分からなくなった。

僕らが知っているボンゴレは何だった?

暴力的で、専制的で、自分達に不利なことがあれば直ぐに消し去って、追い出して、なかったことにして…そんな外道な奴等だ。

でも僕の目の前にいる同い年の男の子は何だ?

小心者で、優しくて、お人好しで…とても人を陥れることが出来るような人じゃない。

一体どっちが正しいんだろう。

アーデルはまだ僕が悩んでいるのを気にしてるし、皆も面には出さないけどそう思ってる。

やっぱり彼に近付かなけりゃよかった……

一日、一日と継承式が近づいてくる。

彼の家へと招かれた僕はずっと彼を見てた。

 

ボンゴレがシモンに犯した罪を忘れてはいない。

僕の苦しみを、一生分の苦しみを忘れたことはない。

彼らへの憎悪を絶やさなかったことはない。

ずっと、ずっと許すことなんてないって…

 

でも   でも…

 

「継承式のことがなくっても君達と知り合えて本当によかったって思うよ‼」

 

 

彼の言葉が嘘だと、思えないんだ…

 

 

 

最終的にツナ君と…ボンゴレと和解出来るんじゃないかと思って彼に手紙を書いて、彼の机に置いてきた。

工場跡地でただツナ君が来るのを待ってみたけど、携帯の表示が刻々と過ぎ去る文字だけしか見ることはなかった。

 

正午を過ぎる頃に、僕は工場跡地から離れた。

 

 

「沢田は今朝何事もなかったかのように登校したわ……炎真の書いた助けを求める手紙を無視したのよ」

 

アーデルの言葉で僕の中の黒い感情が(くすぶ)り出す。

やっぱりボンゴレは……

 

「これがボンゴレ…目を覚ましなさい炎真」

 

僕は漸く小心者の皮を剥いだ。

 

 

 

 

 

 

Dside

 

 

予想外の事が起こった。

水野薫の持っていたシモンリングをボンゴレ雨の守護者である山本武に見られ、動転した彼が山本武を重症へと追いやったのだ。

予想外の事態であって、別にシモンファミリーからすれば不利な状況に追い込まれたわけではない。

シモンでは何事もなかったかのような対応を取り、ボンゴレの動揺を直で感じ取る。

守護者達は皆一様に憤慨していて、直ぐ近くにその犯人が潜んでいる状況に1㎜も気付く素振りはない。

初代(プリーモ)から受け継いだ超直感はただのお飾りのようだ。

私も私で霧の守護者の動向を見なければいけないのだ。

何度かコンタクトを取ったが警戒心が強く、加藤ジュリーの仮面では逃げられるばかりだったが、あの霧の守護者は今後の私の計画に必要になる。

そう、私の計画に……

 

 

 

 

 

「”罪”は返してもらうよ…この血は僕らシモンファミリーのものだから」

 

「どうしても必要なものだったんだ…力をとり戻してボンゴレに復讐をするために」

 

「そしてこのリングを完全に覚醒させるために必要なのが“罪”と言われる初代シモンの血 」

 

「それは貴様達の先祖が自分たちの失態を隠すべく過去の真実を闇に葬り去ったためだ‼」

 

「古里炎真が10代目のシモンボスの座を継承しボンゴレへの復讐を果たすことを誓う」

 

「今こそ我々の本当の力を見るがいい」

 

 

「それこそが大空の7属性に対をなす大地の7属性」

 

 

継承式当日、シモンファミリーの計画通りにボンゴレの罪を奪うこと、私は霧の守護者を(さら)うことに成功した。

私の思い描いている通りに進んでいく物事に口元が歪み出そうとするのを抑える。

ああ、これが笑わずにいられるか。

コザァートの血を最も濃く受け継いだ古里炎真の力は予想以上に強かったのはありがたい。

早くボンゴレの腐った部分を削ぎ落して欲しいものだ。

隠れ島へ向かえば、以前訪れた時となんら変わっておらず、予め住むつもりだった建物へと向かう。

その道すがら視界の端に気になるものに気付くが、シモンファミリーと行動を共にしている今それに触れぬまま歩き出す。

拉致した霧の守護者を部屋に連れていき、ベッドに寝かせると私は懐から携帯を取り出した。

隠れ島とあって電波が飛ぶか分からなかったがちゃんと繋げたようだ。

 

『もしもし』

「アラン…俺だよジュリー」

『ああ、ジュリー君…どうしたんだい?』

「いやな、ちゃんと計画は順調だ…今漸く隠れ島に到着したんだけどな」

『それは良かった、それで、何で君から連絡を?連絡ならいつも炎真君かアーデルだろう』

「ちょっと聞きたいことがあってさ」

『?』

 

「島の所々に設置されてる爆弾…あれあんただよな?」

 

『ああ、それのことか…君たちが失敗する可能性を一応考慮しての結果だよ』

「ふぅん?俺らが失敗…ねぇ」

『別に君らが失敗した後に君らごと殺すわけで設置したわけではないよ…君らに投資した金銭的援助を思えば簡単に手放しはしないからね』

「んじゃボンゴレに対してってことか?」

『勿論、君らがボンゴレに勝てないようであれば裏道の地下に置いている小型ボートで脱出して、後は外部から島全体に設置している爆弾を爆発させるだけ…まぁそれで逃げ切れなかったボンゴレ達が死ぬかといわれれば疑問だがね』

「あの爆弾は島の周辺にも?」

『ああ、遠隔操作のものを数台設置している…援軍を呼ばれたくはないからね』

「なるほど……」

『アーデルには予め失敗した時に直ぐ報告するよう頼んでいる、君に何も教えていなかったのかい?』

「多分今日伝えるんだと思うぜ…にしても」

 

一際低い声で電話越しに呟く。

 

「ボンゴレ諸共シモンまで殺すのかと思ったぜ?アラン…ま、爆弾如きで死ぬような俺等じゃねーけどな」

『まさか俺が君らごと殺すと?』

「白々しーな、まぁ思い出してみろ?俺達シモンファミリーが復讐する者であることを」

 

 

その牙があんたに向かないことを祈ってるぜ

 

 

息を飲む音が聞こえ、私は通話を切る。

 

口元に笑みを作り、霧の守護者クローム髑髏の眠るベッドの横にあった椅子に座る。

先ほど幻術の使い魔で確認した爆弾の配置と量から島全体を海に沈める規模で設置されていた。

万一の場合を考えて、ボンゴレを殺し損ねたシモンファミリーから自身の痕跡を残さないために、シモンファミリーごと殺す算段だったのでしょうね。

復讐に囚われていると言っても保身を考える頭はあるようだ。

一応釘は刺した、奴もシモンファミリーの実力を知らない阿呆ではない。

まぁ私の計画が上手くいけばどのみちシモンファミリーは殺すつもりだ。

腐ったボンゴレを因縁のシモンと共に全て海に沈んでもらうのもまた乙なものじゃないか。

 

 

初代(プリーモ)…否、ジョット…あなたの築き上げた全てを今ここで壊してあげますよ…

 

 

過去の泥を払い二度と現れないように海に沈めて漸くボンゴレは最恐となりうる

 

私は懐から懐中時計を取り出した。

懐中時計の裏側に刻まれた忌々しい文字列をただ無機質な眼差しで眺める。

 

 

永久(とわ)の友情を誓う

 

 

 

いつまでも幻想を追いかけていた男の背中を思い出しては胸に言い様もない痛みが過ぎった。

 

 

 

 

 

 

 

アランside

 

 

 

『その牙があんたに向かないことを祈ってるぜ』

 

 

心臓が、縮むような痛みと苦しみに襲われた。

次の瞬間通話が切れ、俺は携帯を耳に傾けながら呆然と目の前の壁を眺める。

ふと我に返り、携帯を閉じる。

加藤ジュリー…シモンファミリーの中で一番陽気なおちゃらけた男子だが……なるほど、アーデルハイトとは違った洞察力というわけだ。

確かに俺は、今回ボンゴレを倒すことが出来なかった場合を考えてシモンファミリー諸共海に沈んでもらう予定だった。

そうすれば俺の関与はどこにも漏洩せず、俺はまたボンゴレへの復讐を練ることが出来る。

ジュリーは爆弾を見つけたらしいが、あれで全てではない。

地下部に埋め込まれた爆弾も合わせれば裕に千は超える。

彼らがボンゴレの継承者に勝てればそれで全て済むことだが、如何せん数が圧倒的に足りていない。

本当にこれでシモンファミリーがボンゴレに勝てるのか?

ああ、やはり島に爆弾を仕掛けて正解だった。

ジュリーには釘を刺されたが、復讐に犠牲はつきものだ。

だが彼らが勝てばいいだけの話…そう、彼らが勝てれば…な。

 

盗聴器越しにあちらの様子を確認すれば、ボンゴレが島に着いたようだ。

その時盗聴器にノイズが走り、眉を顰めていると漸く電波が安定したのか声が聞こえる。

 

『―――ザザ…――――――敗者とは誇りを砕かれたものだ』

 

「!」

 

なんだ今の……気味の悪い声は……

僅かな恐怖を抱いた盗聴器越しの、その声に耳を澄ませるも再びノイズが入り、一度完全に切れてしまう。

 

「くそっ!」

 

 

なんとか電波を捉え、再び盗聴し出した翌日だった。

既にあの不気味な声はなく、他の者の会話などを拾う。

なるほど一日で全て終わらず数日費やすのか。

既に紅葉がボンゴレの下に行っているらしいが、何故全員で行かない…

ルールを設けたのか?

先日のノイズ混じりの気味の悪い声が関係しているのかもしれないが、くそ、全体的に状況把握が出来ていない。

だが会話の流れからして勝敗が決するのは数日後か…

 

 

そんな時、既に出勤時間間近になっていることに気付いた俺は一旦盗聴器を外し、支度して家を出る。

職場に行けばそこは正しく日常に変わり、俺の中の狂気が鳴りを潜める。

 

「アランさんおはようございます」

「ああ、おはよう」

「アランさん、この資料どうしましょうか」

「そこに置いててくれるか?」

 

誰にも悟られず、誰にも理解されず、誰にも語らず、狂気が侵食していく。

心臓から溢れ出る黒い何かが神経を侵し、指先まで伝っていき、ついに俺は理性を失うのだ。

だが侵食した狂気は人前で鳴りを潜め、理性を表へと押し出していく。

毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日……

きっと きっと この理性が削られ 表にすら出てこれなくなった時

 

それはきっと 俺が 戻れなくなった時だ

 

 

 

『それよりもいつ復縁を?』

 

苛立たしいネーブルオレンジの匂いが鼻を掠め、真っ赤な口紅が電話口から溢れ出る。

驚いて電話を落とした俺は地面に広がる赤い流動体から一歩後ずさった。

すると背後の柔らかいものに当たり即座に振り向けば、そこには妻のシンディが立っている。

彼女の心配そうにしている顔は記憶に新しく、口が開く。

 

「あなた最近おかしいわ」

 

まただ…

その場にネーブルオレンジの匂いが充満し、充満し、充満し、充満し――――

 

だからこの匂いは嫌いなんだ――――!

 

我慢の限界で癇癪(かんしゃく)を起したように怒鳴り散らした。

 

 

『目障りであれば殺してもらっても構わない』

 

 

脳裏を過ぎる電子的な文字の羅列に目を見開く。

我に返れば、忌々しい匂いは跡形もなく消えていて、代わりに柔軟剤の(かす)かな香りがする。

足元の赤い液体は消えていて肩透かしを食らった気分だった。

 

 

 

チャリン、と音を立てて()()()()赤い地面に落ちて跳ねる。

 

律儀に鍵まで閉められた玄関の扉がゆっくりと開き、中から黒い(もや)が現れた。

その靄は徐々に人型を描き、その手には包丁を持っている。

 

お前はこの手で殺したハズだ!

 

あらん限りの声で叫び、その場を走りだすが、同時に靄が足音と共に追いかけてくる。

キッチンに置かれた包丁を探そうとしたがどこにも見当たらず、その靄が持っているものが包丁だと気付き、青褪めた。

靄は包丁を振りかざすが途中でスローモーションのように動きが鈍くなる。

その光景に俺は呆然としていたが直ぐに我に返り、その包丁を靄から奪い取り靄の心臓があるであろう部分に突き刺した。

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

 

息が荒く、腕が痙攣する頃には靄は跡形もなく消えていた。

 

 

『その牙があんたに向かないことを祈ってるぜ』

 

そら、まただ……

また俺の邪魔を!

ええい、くそったれ!()()()は全部全部俺が殺して―――――――

 

 

 

 

「アランさん!」

 

急な浮遊感と共に意識が急上昇する奇妙な感覚に襲われた。

額からこれでもかというほど冷や汗を流し、息が苦しい。

 

「アランさん、大丈夫ですか?凄く(うな)されてましたけど」

「あ………いや…、少し…気味の悪い夢を、見てたかもしれない……」

「体調悪いなら早退した方がいいのでは?」

「…そう、だね…少し休みたいから午前中だけ勤務するよ」

「分かりました、無理は禁物ですよ!」

 

女性警官はそう言うと、水持ってきますとだけ残してオフィスを出ていく。

一人になった空間で息を吐き、ポッケの中に入れているハンカチで汗を拭った。

時計を見れば正午までそう時間はない、30分~1時間ほど眠っていたのか。

まさか仕事中に寝てしまうとは…

にしても今日の夢は中々(おぞ)ましかったな。

あの黒い靄はいつだって俺を殺しにかかり、俺が返り討って殺す。

この前は確か殺した後に埋めて…その前は首を()いで……その前は……

 

「アランさん、お水です」

「あ、ありがとう…」

「もう若くないんですから体にお気をつけて…」

「ハハハ、まだ現役さ」

 

乾いた笑みを張り付け、その場をやり過ごす。

誰もいなくなったオフィスで盗聴器を確認すれば、既に紅葉君の勝負は相打ちで終わっていた。

次はらうじ君であると聞き取れたが、どうやら勝負自体数時間後のようだ。

俺は自身の体調が(かんば)しくないこともあり、一時間後に早退し帰路に着く。

 

玄関を開ければ、僅かに香るネーブルオレンジに眉を顰める。

 

その匂いが我慢ならず、俺は急いで洗濯機の場所に行き、柔軟剤を手に取る。

そのまま玄関に戻り、足元の地面へと柔軟剤を(こぼ)し始めた。

液体がタイルを濡らし、僅かな量が靴に跳ねるが、それも気にせず柔軟剤が空っぽになるまでずっと、ずっと溢し続けた。

 

 

『それよりもいつ復縁を?』

 

幻聴が絶え間なく脳内を行き来する中、ふいに電話の鳴る音が聞こえた。

電話を取ればいつもの化粧臭さと、ネーブルオレンジが鼻につく。

 

 

「今回の喧嘩…というよりも別居は俺が悪いんです、俺が仕事にかまけて家族を放っていたせいで……だからシンディが俺の話を聞いてくれるまで一応待ってみて、それからちゃんと頭下げて謝ろうと思います」

 

 

電話の向こう側の声が遠く聞こえる中、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 




スカル:出番なし
アラン:いい感じに狂ってる
D:知ってるか?こいつクロームにセクハラかましてんだぜ?ギルティ
炎真:何気にアランを慕っているが、その思いが報われることはない

正直、今回のシモン編!スカルの出番は最後の最後です!
んでもって次話でシモン編終了しそう(笑)


Q:アランに救いはありますか?
A:ない。


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