Skull   作:つな*

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俺は引いていない。


skullの偶然

黒い何かを轢いてしまった日の翌日、ニュースを片っ端から確認したけれど、それらしいニュースはなかった。

あるとすれば空を飛ぶ人間が目撃されたことぐらいだろうか。

技術も進歩したね、うん。

今日はバイクの微調整の日らしく、俺は大人しくホテルの一室でのんびりフグ男と戯れている。

ポルポは何故か辺りを見渡してはそわそわしているみたいだけど、何かあったのだろうか。

ポルポに昨日は何をしていたか聞かれて、ルーチェの孫に会ったことだけ教えた。

一時的とはいえロリを誘拐紛いのことをしてしまったのだから、最悪監視カメラ駆使されて捕まりそう。

 

「主」

「ん?」

「そなたはその女の子孫を…どうするつもりだ」

「どうもこうも……もう二度と会うことはないし、会いたくないな」

 

だって次会ったらタイーホされる。

 

「それでいいのか」

「うん………それがいい」

「そなたがそう決めたのなら、もう何も言うまい」

 

ポルポ一体どうし……ハッ、そうか、俺があまりにも友達いないから気を遣ってるのか。

いやいやいや、いくら俺でも幼女は範囲外だから。

友達であろうとも下心満載と捉えられるからね、俺の場合。

っていうか友達いらねーし。

お前は俺のママンかよ!

ペットに友達事情を心配された飼い主の俺氏、中々ダメージ喰らったのでフグ男連れて寝室で寝ていたら数時間経過してた。

お腹空いた…

既に箱に戻っているフグ男を呼び出して、寝室から出るとポルポがソファに鎮座してた。

そして何故か床に転がる粘々した液体と、ライフルらしきもの。

俺は寝ぼけてるのかなと思ったけどそんなことなかった。

ポルポとライフルを見比べていると、ふいにポルポが鉛臭くて食べられんって言ってきた。

嘘だろおい。

お前ライフル…っていうか金属口に入れたんか。

馬鹿なの?死ぬの?

いやいやそれよりもこれ一体どこから持って来たんだよお前…

ライフルの先端を摘まみ上げ、ティッシュで粘液を拭いていく。

少しベタベタするけどいっか…取り合えずどこから取って来たのか聞けばあっちと触手をとある方向に向ける。

ベランダに出た俺が触手の指す方角を見れば、俺のいるホテルと大体同じ高さのビルがあった。

俺の寝てる間に勝手に外に出て人のものを盗ってきたようだ、マジでやめて。

日本でライフルとか何であるし…とは思ったけどカルカッサ日本支部にも護身用として拳銃があるから何も言えない。

ライフルが珍しいのかフグ男がすごい周りをうろちょろしている。

ああああ危ない、危ないから離れろ。

手で追い払おうとしたらフグ男から炎が溢れ出して、銃が暴発した。

もう一度言う、暴発した。

断じて俺は引き金を引いてないからな。

銃口の先を見れば、先ほどのビルの奥にある森に向けられていた。

誰にも当たっていませんように!

ライフルをそのままホテルに置いておくわけにもいかず、フロントに預けに行こうと思いましたまる

前の人がベランダに置き忘れていたとでも言い訳しておけば大丈夫かな?

うん、うん、だって赤ちゃんの俺が発砲出来るとか考えるわけないもんな。

というわけで、忘れ物と書いた紙をライフルに貼り付け、フロントに持って行けば受付の人が快く受け取ってくれた。

何でだ。

俺の前に住んでた人一体どんな人やったん。

森で誰か撃たれちゃったら明日か明後日にはニュースに上がってるだろうし、そうなってたら謝りに行かねば。

捕まる気はないから謝って全力で逃げるつもりだけど。

俺は再び部屋に戻り、フグ男に説教をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

白蘭side

 

「へえ、トリカブトがやられたんだ」

 

桔梗からの報告でショックを受けることがなかったのは、トリカブトくらいの実力なら彼らにやられてしまう可能性が十二分にあることを理解していたからだ。

真・6弔花もトリカブトとデイジーがやられて、既に3人だ。

一人は未だ牢獄の中であり、僕はすぐさま復讐者と交渉して彼を投入しようと考える。

真・6弔花など彼だけいてくれさえすれば後はどうとでもなる。

所詮、僕以外は全て駒でしかないのだから。

報告の後も何やら言い淀んている様子の桔梗が気になり、訪ねてみれば、トリカブトを倒したのはボンゴレではないらしい。

 

「黒いヘルメットを被ったレーシングスーツ姿の男……ねぇ…」

「はい、壁を伝っていきなり現れました……ボンゴレたちも相当驚いていた様子から見知った者の介入ではなかったかと」

「少し予想はついてるけど、おかしいなぁ……何で彼が元の姿になっているんだろうね」

「彼…とは?」

「君は知ってるか分かんないけど、彼はユニを除く最後のアルコバレーノだよ」

「!」

「にゅや?」

「?」

 

ブルーベルとザクロは首を傾げるが、桔梗だけが表情を変える。

 

「まさか…狂人スカルとでも言うのですか?あの男が…」

「そのまさかさ、特徴も一致してるわけだし…おしゃぶりとか見えなかったの?」

「すみません、あまりの速さに確認出来ませんでした」

「別にいいけど…それよりもタイミングがいいね、彼が日本にいるなんて」

「あの…白蘭様」

「何?」

 

おずおずと桔梗が僕に問いかけてきた。

 

「何故、アルコバレーノであるスカルをこの時期まで生かしていたのです?白蘭様の言い様だと、既に面識があったにも関わらず殺さなかったという印象を受けましたが…」

 

殺さなかった、ねぇ。

違うね、僕は彼を殺せなかったんだ。

今でも覚えているよ、彼との会遇を。

 

 

 

あれは数年前、まだミルフィオーレが表立った組織では無かった頃だ。

出会えたのは偶然に等しかった。

何故なら、この世界のスカルは異質であり、並行世界の知識がてんで役に立たないからだ。

彼の経歴はどの並行世界にもなかったことばかりだ。

裏の世界では、恐怖の代名詞として恐れられた狂人スカル。

そんなスカルはどの並行世界にも存在しなかったし、似ている者もいなかった。

彼が唯一の存在なのだ。

少なくとも、ボンゴレが存在し、ミルフィオーレが存在し、今のこの世界に類似しているという条件下でだが。

当時、僕は既に並行世界の知識を共有したお陰で実力も申し分なかったし、アルコバレーノに対して遅れは取らないと自負していた。

いや、まさしく相手ではなかったのだ、並行世界では。

この世界でも既に少量のノントリニテッセが大気中に存在し、彼らは本調子で戦うことは出来ない。

 

「やぁ初めましてかな、君に興味があってね…一度話したいと思ってたんだ♪」

 

開口一言目にそう伝え、彼の足を引き留める。

そして彼の姿を見て、噂通りであると思った。

血まみれになったところで目立たぬように全身黒で覆われているその男に、言葉を続ける。

 

「トゥリニテッセを覚醒させる為にはアルコバレーノのおしゃぶりが必要でね、君のおしゃぶりも必要なんだけど、それよりも君自身に何か見出すものがありそうな予感がするんだ」

 

その言葉は本心だ。

なんせ数少ない唯一の存在だから。

彼の中身を見たいという好奇心は久しく抱かなかったものであり、既視感を抱かせない彼はまさに探求心を(くすぐ)る魅力的な存在だったのだ。

そのヘルメットの下はどうなっているのか、他の並行世界の彼と同じ姿をしているのか、どうしてこうも人格が違うのか、君の脳内はどうなっているのか、同じホモサピエンスでありながら他と一線を画する何かが彼にはあった。

 

ピリ、と肌に刺激が伝わり、一瞬それが何であるかが分からなかった。

殺気…とまではいかないこれは、ああ、そうか…警戒されてるのか。

それにしても随分刺激的なものをその小さな身なりで送ってくれるものだね。

彼の覇気に呼応するかのように大気が震えている。

これがアルコバレーノ?

いいや違う、彼が異質なだけだ。

あの晴れのアルコバレーノならば納得いくものの、目の前にいるのは全くと言っていいほどの未知の領域だ。

 

イレギュラー

 

その忌々しい言葉が脳裏を過ぎる。

苦々しい思いを顔に出さず、警戒しないでほしいと僅かばかりの希望を乗せて彼に軽く伝えてみたが、案の定この重苦しいソレが緩まることはない。

僕でなければ泡吹いて卒倒するか、その場で無様に逃げ回っていただろうに。

会話もままならない状況に思考を巡らせていると、彼の右腕がポケットに移るのが視界に入り、柄にもなく焦った。

 

「待ってよ、僕君とお話したいだけで傷つける気なんてこれっぽっちもないよ?だからそれ、仕舞ってくれない?」

 

顔に笑顔が張り付いたまま固まったように表情が動かせない。

僕の実力は並行世界からかき集めた知識の共有で補完された部分が少なくない。

正直言って、精神的に戦闘慣れしていない今、彼とやり合ったところで勝機は薄い。

彼との面識は済んだ、実力が測れないのは惜しいが自身の命が優先だ。

 

「ああ、僕は白蘭っていうんだ」

 

何気ない会話を振って、隙を見て姿を消そうかなとそう思っていると、直ぐ側から女性の悲鳴が響く。

一瞬だけ気を逸らされ、再びスカルへと視線を戻せば、既にそこには誰もいなかった。

まるで最初から誰もいなかったかのように。

目を見開き周りを見渡すが、それらしい影はなく、既にこの辺りから姿を消したのだと悟ると、漸く緊張が解けた。

近くにあったベンチに腰掛ければ、深呼吸を一度、すると安堵が胸に広がる。

 

「この能力に頼り切ってると、イレギュラーに対処出来なくなるってことか…」

 

今がまさにそれだったのだ。

彼はイレギュラーであり、僕にとって天敵になりうる存在でもある。

僕の目的の障害になる前に殺してしまわなければと固く決意するも、彼の居所が掴めない上に後ろ盾のカルカッサはボンゴレに次ぐ勢力を保持している。

カルカッサを攻撃し、カルカッサがボンゴレと同盟を組もうとすれば、ボンゴレは首を縦に振る可能性が高い。

だが逆だと別だ。

ボンゴレが攻撃され、カルカッサに同盟を申し込んでもカルカッサは見捨てることを選択するだろう、よくて不可侵であり、決して同盟には至らない。

それを見越した僕は、まずボンゴレから潰すことを決意する。

一つずつ不安要素は潰していかなければ、イレギュラーは殺せない。

ボンゴレを殺すなんてどの並行世界でも成功してきた。

だから、大丈夫……イレギュラーは必ず殺せる。

なんせ僕は、創造主たりえる者なのだから。

 

 

 

 

 

「ま、スカルのことはノータッチでいいよ…別ルートで居場所を特定しておくから」

 

少し昔を想い耽っていたが、今はそんなことしている暇はないやと、現実に思考を戻す。

桔梗にはそう伝え、とにかくボンゴレから先に潰すことだけに専念しようとした。

 

「白蘭様、今後スカルが接触してきた場合…どうしますか?」

「んー…確実に殺せると判断したなら殺してくれると助かるけど…君等じゃ彼の相手になるかどうか」

「…それは、スカルが我らの実力を上回ると?」

「彼の実力は未知数だ……いや、だからこそ慎重にいかなきゃ、ね…」

「未知数…それは白蘭様のお力を用いても、という意味でしょうか?」

「そうだね、彼はイレギュラーであり、今現在も厄介な存在だ…何の方法を用いたか知らないけどアルコバレーノの呪いを解いてるみたいだし」

 

彼について少し考え込んでいると、高く唸る声が聞こえ、ブルーベルを見やり、どうしたの?と問いかければ、彼女は眉を八の字にして呟いた。

 

「白蘭の顔少し怖ーい、いつものニコニコしてる白蘭の方が好きなのにー!」

「ああ、ゴメンね?彼のこと考えてると自然に眉が寄っちゃうんだ♪」

「にゅにゅー、白蘭にそんな顔させる奴なんかブルーベルがけちょんけちょんにしてやるんだからねー!」

「とにかく、明日の決戦に備えて君たちも休んでいいよ」

 

僕の部屋から出ていく彼らを尻目に、牢獄に待機してるであろうアイリスに繋ぎ、彼を出すように伝えると、万全とは言い難い体を引き摺るようにベッドまで向かって行った。

既に別の者にスカルの動向を探ってもらっている。

居場所が割れたら連絡が入るハズだ、それまで出来るだけ体力を温存しなければ…

僕の意識はシーツの中に埋もれていった。

 

 

 

 

『白蘭様、スカルの居場所が特定できました』

 

部下の一人がそう報告した。

よく彼を見つけられたなぁって関心するけど、単に彼が今回隠れる気がなかったのかもしれないという可能性が頭を過ぎる。

既に姿を見せた彼のことだ、何か目的があると思うが、生憎今の僕は彼に割いている時間はない。

どうやら彼は遠くない場所にあるホテルにいたとか。

何もせずに待機と伝え、僕は綱吉クンやユニちゃんが逃げた森へと足を向ける。

彼はボンゴレを全て潰した後だ。

森のとある地点で、真・6弔花と別れた僕は彼らの戦いの行く末を眺めていた。

既に満身創痍に近しいボンゴレが、修羅開口した真・6弔花に勝てるはずもなく、段々と戦力を削がれていく。

ここまで面倒な展開になった世界はここと、あと二つ程度あったかな。

どれも僕がボンゴレを潰して終わったけれど、今回はユニの魂といい今までとはまた別の展開になりそうだ。

自然と口角が上がっていることに気付いたと共に、通信機に新たな報告が入った。

スカルだ。

彼を監視していた者達が消息を絶ったらしい。

スカルが潜伏しているホテルの向かい側のビルにいた監視していた数名の部下が跡形もなく消えていた、ほんの数分通信が途絶えたかと思えば、消えていた、そう報告された。

恐らく既に殺されているだろうな、そう思っていた柄の間、通信機越しの声が途絶え、不穏な音が微かに響いた。

 

 

ゴキリ……パキ…グチャ……ゴキュ…ズズ…

 

何かが折れるような、液体を啜るような、不気味極まりない不穏な音。

ああ、彼らは既に殺された

そう頭が理解するが、体が動かず僕はただその音を耳にしていた。

脳裏に響く音が、不気味な音が、今まさに自身の目の前まで迫ってきているような感覚が背筋を駆け上る。

先ほどまで上がっていた口角も、気分も急降下し、鳴りを潜めている。

砂嵐のように、通信機の電波が途切れだし、不快さを増していくのを、ただただ耳にしていた。

 

『ザザッ――――ザ…――――――()ね――――――』

 

瞬間、心臓が鷲掴(わしづか)まれたかのような衝撃に襲われた。

息を吸うことを忘れ、息苦しさがこの身を襲う。

ブツリ、通信機が切れる音がして、僕は我に返る。

自身の指が震えているのが見え、僅かに冷や汗が背中を伝うのが分かる。

 

何だ、あれは……

 

およそヒトではない何かが、そこにいた。

脳に酸素が回り切った今、極度に硬直していた身体が弛緩していく。

藪蛇(やぶへび)だったか…

いやあれが蛇なんて陳腐なものではない、言葉では表せぬ恐怖が確かにあった。

心臓を一撫でし息を整えば、思考は幾分か明瞭になる。

最終決戦の前に思わぬ事態に襲われたが、まだ桔梗たちが時間を稼いでいる。

早くいつもの万全な状態に戻らねば…

 

無理やり(つくろ)った笑みはかつてないほど、歪なものだった。

 

 

 

 

 

ユニside

 

 

スカルと別れた後、泣いていた私を見つけてくれた沢田さんとリボーンおじ様は暫く私を気遣ってくれていた。

二人は、いきなり乱入してきた男が誰か分からず警戒していた。

どうやら私がスカルに何かをされたのかと思っていたらしいが、私は首を振ってそれを否定した。

何もなかったのだ、と…

私の本当の目的をここで悟られるわけにもいかず、何でもないと頑なに彼と過ごした短くも奇異な時は誰にも教えることはなかった。

彼と出会えてよかったと、心の底から切実に思う。

自身の思いと向かい合うには時間が少なすぎるが、それでも、直前に突き付けられるよりも幾分か楽だというものだ。

私はこの恐怖に打ち勝ち、全てを守るための礎にならなければならない。

ありがとう、スカル…

出来れば、あなたの綺麗な瞳を一目見たかったけれど、もうあなたと会うことはないでしょう。

リボーンおじ様と沢田さんの心配を他所に、他の者達との合流を急かし、森の奥へと逃げる。

最後の夜を迎えた私の心はひどく穏やかだった。

皆満身創痍であるにも関わらず明るく、笑顔を絶やすことはない。

確かにそこに灯り火を垣間見た。

明日だ…全て明日で決まるのだ。

私の運命も、皆の運命も、世界の運命も――――

 

 

陽が顔を出し、朝となった。

皆の顔は覚悟を決めていて、沢田さん以外の戦闘員は皆その場から去っていった。

どうか無事で…

私にはちっぽけな祈りしか出来ないけれど、どうか、どうか…生きて帰ることが出来るよう願いましょう。

戦闘が激しくなり、爆音や地鳴りが辺りを覆い尽くす。

心の中に残るのは圧倒的な不安のみ、それは皆も同じで誰もが不安を隠せぬ顔をしていた。

新たな敵の出現に、沢田さんが前戦に向かって行った直ぐ後だった。

聞き慣れぬ音楽が辺りを満たした瞬間、急におしゃぶりが割れ謎の結界が私を包み込んだ。

リボーンおじ様!とあらん限りの声で叫ぶが、結界は強固なもので、私は無力にも前線へと導かれる。

何故、大空同士が共鳴して……ああ、ダメだ、恐れるな…運命はすぐそこだ。

刻々と近づく運命の時に、胸の中に不安と恐怖が広がっていく。

 

「ユニ!?」

 

白蘭と戦っていた沢田さんが私に気付き、驚愕していた。

そのまま私を覆っていた結界は、彼らの結界と重なり、私は白蘭と沢田さんが戦う結界の中に閉じ込められた。

外では皆が結界を壊そうと試みるが、罅一つ付けることが出来ない。

私は悟った。

 

 

ここが、私の墓場だ。

 

 

白蘭に怯えながらも、彼らの戦いを見守ることしか出来ない自身の無力さを嘆く。

沢田さんが追い詰められることをただ眺めることしか出来ず、飛び出していきそうな自身を体を必死に抑える。

既にあれの覚醒は始まっている。

あともう少しだけ、時間が……

服の中で動き回る彼らを抑えることが出来ずに、服の外に出てしまう。

それは4つのおしゃぶりだ。

死んでしまった、彼らを復活させるための唯一残された奥の手…

白蘭は私の意図に気付き、阻止しようと動くが沢田さんがそれを阻む。

だが白蘭の圧倒的な力の前にとうとう沢田さんが倒れてしまった。

リボーンおじさまの声で意識を取り戻す沢田さんのボロボロな姿が私の心をを突き刺していく。

もう、これ以上…傷付いて欲しくなくて、でも彼しかいないのだ。

これが最後の灯り火なのだ。

ごめんなさい、ごめんなさい…生きて……死なないで………生きて白蘭に勝って!

その時だ、ボンゴレリングから初代ボンゴレが投影された。

いや、彼だけではない、他のリングから初代守護者達が投影されていく。

初代ボンゴレは、ボンゴレリングの枷を外していく。

 

Ⅹ世(デーチモ)、マーレの小僧に一泡吹かせてこい」

 

そう呟いて彼らは消えていく。

枷を外されたボンゴレリングの威力は桁違いで、沢田さんが白蘭を押し始める。

このうちに私は本格的に生命力をおしゃぶりに注ぎ始める。

足から力が抜けていき、座り込む。

 

「本気なんだね、ユニ…本気でおしゃぶりに命を捧げて死ぬ気なんだね‼」

 

白蘭の言葉に沢田さんが困惑しているが、私は言葉を紡ぐ。

 

 

「これが私にできる唯一の賭け…そして避けることのできない私の運命(さだめ)

 

 

世界の為に 未来の為に 愛する者達の為に

 

段々体に力が入らくなっている。

既に運命は確定した。

 

 

お母さん…おばあちゃん…もうすぐそちらへ行きます…

 

 

恐怖はある

あるけれど、それ以上に皆を助けたい

 

ふいに聞こえた何かが割れる音に視線を上げる。

そこには黒い、ところどころ埃まみれのスーツを着た、愛しい彼がいた。

 

「俺の命も使っちゃくれねぇか?」

 

γ(ガンマ)…」

 

両目から溢れる涙で視界がボヤけている。

 

「あんたを一人にはさせない」

 

この胸の内から湧き上がる感情は、まさに歓喜だ

でもそれと同じくらい悲しさも湧いてくる

 

愛するものと共に逝ける歓び

愛するものの命を奪う哀しみ

 

綯い交ぜになる心を包み込むかのようにγが私を抱きしめる

大丈夫だ、俺がいる、安心しろと嘆くかのように優しく抱きしめられる

 

運命の時はすぐそこまで来ている

 

 

ユニ うれしい時こそ心から笑いなさい

 

 

ふいにお母さんの言葉が聞こえたような気がして、私は笑みを作る。

笑って逝けることにこれ以上の幸せがあるものか

愛しい体温に包まれた私はおしゃぶりに炎を注ぐ

 

灯せ 灯せ 残り火を すべて

 

体が消えていく感覚に瞼を閉じた

 

その時だった

 

 

          『生きろ』

 

 

 

 

脳裏を反芻(はんすう)するその声に、瞳を最大限に見開いた。

そして ふわりと 何かが私の頭に置かれる

 

懐かしような 悲しいような どこか晴れやかな

 

上を向くと 一面に広がる青空 そして

 

 

  

        眩しい生命よ

 

 

 

 

私の視界は真っ黒に塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     こえ

 

「―――――ニ、――――――で!」

 

       声が

 

「ユ―――!」

 

   声がする

 

 

 

 

機械音が反響する

酷く重たい瞼を開けば、視界には白一面

 

眩しさに目を細め、全身が重力に包まれる感覚に目を見開いた

 

 

生き、てる…?

 

 

「ぁ……」

 

 

掠れた声が喉を通る

 

「ああ…あああああっ」

 

 

乾いた唇に、喉に、痛みが広がる

 

肌を潤すように 溢れたソレは 頬を伝う

 

 

痛みが広がるのも無視し、私は泣き叫んだ

 

しわがれた声がただひたすら木霊(こだま)

 

 

 

思い出せるのは一面の青と 

 

 

白く 美しい  小さな花

 

 

 

私は涙と共に生を噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リボーンside

 

ユニの結界を破壊しようと、バジルの匣兵器に全員の炎を注いだ。

そして、匣兵器のコンビネーション技で結界に衝撃を与えるが、大きな罅が入るだけに留まり、それは徐々に治っていく。

 

「クソっ!炎が足りなかったか!」

「どうする、もう出せる炎もないぞ!」

 

獄寺と山本の言葉に舌打ちをしたくなった。

ユニ!

 

その瞬間だった。

 

 

予期せぬ方角から、何か大きな力が結界に衝突した。

それは罅へと直撃し、パリンとひと一人が通れる大きさに割れる。

誰もが目を見開く中、γがその穴へと飛び込み結界に侵入した。

俺は謎の攻撃が撃たれた方向を見るが、周りは森ばかりで、遠くに高さのある建物が見えるだけだ。

まさかあの建物からこれを狙撃したとでもいうのか!?

驚愕していると、結界の中が騒がしくなったのに気付き、そちらに視線を戻す。

白蘭が忌々し気に結界の穴を睨んでいたのだ。

 

 

「ほんっと、邪魔で、イラつくよ………君も、彼も…」

 

白蘭は手を額に当て、何かをぶつぶつ呟いている。

俺は読唇術でそれを読み取った。

 

あいつは  最初に 殺しておくべきだった

 

まるで白蘭と敵対している者が俺達以外にも誰かいるかのような発言に、俺は心臓がざわついた。

それも白蘭の次の言葉で明らかになる。

 

 

くそ  あの  忌々しい  狂人め

 

 

それだけで、俺は分かってしまった。

誰があの攻撃を仕掛けたのかを…

 

そんな白蘭を他所に、ユニが全ての炎を使い切りγと共にその場に倒れる。

 

「ユニー!」

 

ツナのショックは隠しきれず、その場の怒りが全て白蘭へと向かう。

二人は、最後の攻撃に備え構えだす。

白蘭とツナの炎が衝突し、大空の結界に罅が入っていく。

遂に結界が壊れ、俺は倒れているユニとγに駆け寄り、山本とバジルが彼らを離れた場所へと連れていく。

白蘭がツナに押し負けてツナの炎を喰らい搔き消される。

その場にはツナが肩で息をしながら立っていた。

 

俺はすぐさまユニの下へ行き、彼女の状態を確かめた。

 

「‼」

「リボーン!ユニは!?」

 

ユニの首に手を当てると、僅かに、動いていた。

 

「生きてるぞ、直ぐに処置しねぇとヤベぇ!γもだ!」

「い、今ボンゴレの医療班を呼びました!」

 

俺の言葉にジャンニーニが応える。

全ての炎を使ってなお生き残ったのは何故だ。

γの炎の分がユニを助けたのか!?

どれだけ仮説を立てたところで、現状がどうなるわけでもなく、俺はユニとγの状態に注視する。

ボンゴレの医療班が到着し、ユニとγが運ばれて行った直後、ツナがぶっ倒れる。

ツナはボロボロで一歩も動けそうになく、そんな時にユニの炎を注がれたアルコバレーノが復活した。

安堵したツナは直ぐに気絶したが、まぁあんだけやれば合格点だ、と俺は口角を上げる。

 

数時間後、医療班からの連絡で、ユニが一命を取り留めたことが分かった。

その場にいた全員が舞い上がる。

俺も心の底から安堵し、ユニを見舞いにでも行くかと考え、ふと思い出す。

 

にしてもあの野郎が何故…

憎い相手であれど、ユニを救った要因の一つであることには変わりない。

認めたくねぇが、な。

俺の知っている10年前のあいつはまだしも、俺はこの時代の奴を知らねぇ…

心変わりなどあいつにあるわけがないと思うが、何の目的でボンゴレに手を貸したのかが分からない。

それに加えて、ユニをトリカブトから奪い去ったあの男。

背丈や特徴はまるであいつだったが、有り得ない。

アルコバレーノの呪いを解いたとでも言うのか…

 

「くそ、てめぇは一体…何を考えてやがる」

 

ユニなら何かを知っている気がするが、目覚める気配はない。

ユニが目を覚ますまで時間がかかるらしく、心に(わだかま)りを残したまま俺達は過去へと帰った。

 

 

 

 

 




スカル:何もしてない、暴発したライフルの弾丸が結界に当たったらしい

フグ男:暴発の原因、雲の炎をライフルに注いでしまったための暴発

ポルポ:トラウマ製造機、ミルフィオーレの雑魚をもれなくモグモグした

白蘭:若干のトラウマ確定、スカルに対して苦手意識を持つ

ユニ:生存、しかしすぐに過去に戻るので彼女の生存にあまり意味はない、スカルへの好感度高め

??:ユニの中にある

ヒットマンなあの人:悶々している、大事なユニを助けてもらったけど感謝したくない…ぐぬぬ、


未来編終了、次シモンね。
まだリアルが忙しい、ぶっちゃけ小説書いてる暇ないよ!ってほど忙しいけど、執筆中毒になってる気がする、ヤバイ。
忘れないうちにこの内容を書きたかった、反省はしているが後悔はしていない。


誤字脱字を確かめる為に音読機能を使ってみたんですが、腹筋崩壊しました。

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