skullの覚悟
マフィアランドでのリボーンとの会遇から数年、俺は未だカルカッサにいる。
ポルポに道徳を教えることに諦めを覚え始めたこの頃…
「スカルさん…これを、私の努力の結晶です!」
モブ子が俺に真剣な眼差しで渡してきたのは、ゴツイ紫色の指輪。
え、これいわゆるプロポー…
「カルカッサリングです!既に幹部数名には渡していたんですが、スカルさんのリングを作成するまでに時間を掛けてしまって…先日漸く完成したんです」
アッハイ。
秘密裏に指輪作ってて、ついで感覚で俺が最後に渡された、と。
にしても何で指輪?
それもこんなゴツイやつ……
どこかの冒険者が女神やNPCから貰うようなファンタジーな柄をしている。
ポケットに入れようとしたらモブ子の視線に気付いた。
俺が指に嵌めるのを待っているかのような待望の眼差しに口元が引き攣る。
俺にこの中二病っぽいリングをつけろと?
え、マジで?
もう少しコンパクトでシンプルを所望したい。
指輪を見て、モブ子を見て、再び指輪を見る。
なんたる羞恥プレイ………
ぼくのかんがえたさいきょうのそうび!を体現したかのような指輪を嵌めるにも覚悟が必要だろ、コレ。
羞恥に耐え決死の思いで指輪を中指に嵌めてみた。
グローブしているにも関わらずジャストフィットした。
するといきなり指輪から紫色の炎が出て、俺は一瞬頭の中が真白になる。
すぐさま指輪を外そうとしてふと気付く。
全く熱くない……っていうか熱気さえない。
あ、そういえばこのグローブ、スーツ同様に耐熱性だった。
「流石スカルさん!いきなり炎を灯せるなんて!」
モブ子の様子からして、この指輪に何か仕掛けられてるんだろうなと分かった。
だがしかしどれだけ見つめても、ただの指輪である。
一体どこに発火する要素があったのか。
俺は科学方面に全く知識がないので、科学技術が進歩したのかという程度にしか思わなかった。
正直この世界の科学技術の発展は凄まじい。
スマホが開発されたかと思えばホログラム技術が直ぐに到来してきた。
前世と今世が同じ世界線だと思っていたが、もしかして違う可能性もあるのだろうか。
並行世界という単語が浮上したが、これ以上何かを知りたいというわけでもないので頭の片隅に追いやる。
「
ん?色で何か名称でもあるのかな?
設定凝ってるところがこれまた痛いが、聞かなかったことにしよう。
モブ子が何やらカルテらしきものにペンを走らせて、書き終わったかと思えば喋り始める。
「それとスカルさんの
ボックス兵器?何それ。
何が何だか分からずモブ子の後をついていけば、数本の大きな水槽が並ぶ研究室に辿り着く。
いつこんな施設作ったんだ。
ラベルに属性・名称が書かれて水槽の下の方に貼られている。
水槽の中には色々な生物がいて、ライオンを見た時本気でビビった。
「スカルさんは雲属性なので、増殖、絶対的遮断力の性質を帯びている匣兵器がいいかと」
痛い痛い痛い痛い、誰かぁ!絆創膏もってきてェェ‼できるだけ大きな人一人包み込めるくらいの‼
目の前をモブ子が直視出来なくなったが、視線を逸らしながら水槽を眺める。
ふと、奥の水槽のつぶらな瞳と目が合う。
目と目が逢う~
俺の視線は一点に釘付けとなった。
モブ子の説明を無視して、そのつぶらな瞳へと足を進めると、漸く全体像を捉えることが出来た。
それは、プックリとした小さな身体、触れば刺さりそうなトゲ、なによりもそのつぶらな瞳。
モブ子が後ろから追いついてきて、息を飲んだ音が聞こえた。
「
フグ…可愛い……
なにこいつ、可愛い。
ポルポの友人になってくれればなお良し。
「では今すぐ匣に入れますのでリングとの接続、相性を確認してください」
モブ子が何やらフグのいる水槽の隣のモニターに指を置いて操作している。
するとフグが一瞬で水槽から消える。
俺は目を見開いてモブ子に視線を移せば、モブ子の手には小さな手のひらサイズの箱があった。
「どうぞ、炎を注入してみてください」
モブ子から渡された箱をまじまじとみれば、先ほど貰った指輪の表面が入る穴があることに気付く。
この穴は何だろうと思ったが、モブ子の言葉からして先ほど発火した炎をこの穴に突っ込めばいいのかな?
っていうかどうやって炎出すの。
……なんか俺の思考回路が段々と厨二になっていってるような気が……
アイタタタタタ、痛い、心が痛い。
指輪と箱、技術の進んだ研究室……そういう思考が蘇りそうだが、年齢的にアウトだ。
羞恥に耐えてると再び指輪が発火した。
一体何をしたら発火するのか分からないが、取り合えず箱にある穴に炎を入れてみた。
すると目の前で有り得ない…というか常識を凌駕する光景が広がった。
箱が開口されたかと思えば中からフグが出てきたのだ。
紫色の炎に包まれて現れた、つぶらな瞳をしたフグに俺は目を見開く。
フグは辺りを飛び回ると俺の目の前の宙を浮遊する。
俺の周りを一周すれば膨らませていた身体が萎み始める。
「威嚇を解いた証拠です、スカルさんを主と認識したようですね」
モブ子の言葉に納得し、手を伸ばせばフグが指先を齧り始める。
グローブ越しで噛まれている感覚は鈍いが、まるでじゃれているような様子に和む俺氏。
なにコイツ可愛い。
にしてもどうやって箱にこのサイズの生き物を閉じ込めていたんだろうか。
生物を生命活動を維持させたまま分子レベルに分解する技術でもあるのかな。
俺には分からないけれど今の科学技術はヤバイってことだな、うん。
モブ子曰くコイツはこれといって餌を与える必要はないらしい。
なるほど、これからの時代こういうのがペットになるのか。
まだ試作段階って言ってるから、一般公開はもう少し先だろう。
フグを貰ってご機嫌な俺は帰り道、フグを出しながら帰路に着いた。
「主、その横にいる小物は何奴か」
ポルポが物凄い眼力でフグを睨んでる件について。
やべぇよ、めっちゃフグ睨んでる。
え、フグ嫌いだった?
フグが怯えてらっしゃる。
「………貰った」
「そこな弱者にそなたは守ることすら出来ぬ」
ポルポの言葉にフグは怒ったような、でも怯えたような態度で抗議し始める。
三割増しで睨んできたポルポに白旗を上げたフグが可哀そうになり二匹の間に割って入った。
「ポルポ、そこまでにしてやれ…」
「……そなたが側に置くに値すると判断したならば、それに従おう」
静かにそう言ったポルポはフグから目線を外し、その場を離れる。
やきもちでも焼いたのかな?
ポルポからフグへと視線を移せば、かなり震えているフグがそこにいて、俺はあることに気付く。
名前決めてない……
「お前の名前…何にしようか………」
つぶらな瞳を覗き込みながら考え込む。
「よし、決めた」
お前の名前は
「フグ男、フグ男だ」
それが名前であると理解したのか嬉しそうに宙を飛び回るフグに和む。
何故魚類が空中を浮遊しているのかという疑問は、癒しに駆逐された。
その後、紫の炎が消えたと思えば箱の中に戻ってしまったフグ男をもう一度出そうとしてみたがポルポの視線が痛くてやめた。
何故かポルポの機嫌が悪いので、一緒にいさせないほうが良いのかもしれない。
フグ男とポルポが喧嘩をし始めて数年、今のところポルポの全勝であるこの頃…
「やぁ初めましてかな、君に興味があってね…一度話したいと思ってたんだ♪」
買い物途中、ペド野郎に出くわした件について。
おまわりさん、こっちです。
俺の目の前には白いウニみたいな頭してて、目の下にタトゥーを入れてるヒャッハー系の若者がいるわけだが、赤ちゃんの姿をしている俺に向かって聞き捨てならぬ言葉を言い放った。
まさにペド野郎。
おまわりさーん、ここに不審者いるよー
「トゥリニテッセを覚醒させる為にはアルコバレーノのおしゃぶりが必要でね、君のおしゃぶりも必要なんだけど、それよりも君自身に何か見出すものがありそうな予感がするんだ」
トゥリニテッセが何か知らんけど、おしゃぶりが欲しいだなんてコイツ相当の上級者と見た。
バブみを欲するあまりおしゃぶりを求めて、ついには赤ちゃんにまで目を付けてしまったペド野郎に救いはない。
これは通報案件ですわ。
「君は最後って決めてるからそんな警戒しないで欲しいな♪」
言動がとても不審者なこのペド野郎、まさに幼女に飴ちゃんあげるからついてきてーを実行しているつもりなんだろうなぁ。
俺の中身が大人であることなど知らずに。
バイクで逃げようと思い至り、ポケットの中にある鍵を確認する為右手を動かそうとしたらペド野郎が両手を上にあげて、降参のポーズをとってきた。
「待ってよ、僕君とお話したいだけで傷つける気なんてこれっぽっちもないよ?だからそれ、仕舞ってくれない?」
俺のポケットの中身まで把握されてた、何それ怖い。
俺の隙を伺っているのか始終ニコニコニコニコ、逆に気味悪いわ。
「ああ、僕は白蘭っていうんだ」
白いに
取り合えず逃げよう。
一気に駆け出そうとした瞬間、女性の叫び声が聞こえた。
「キャー!ひったくりー!」
ひったくり犯らしき男が俺とペド野郎の間に割り込むように入ってきたことをいいように、俺はペド野郎の死角から逃げた。
駐車場に停めていたバイクに跨り一目散にスーパーを出て帰宅する。
もう不審者に会いたくないので、あの近辺にはいかないようにしよう。
あれから数か月、モブ子が興奮して俺を研究室に招いた。
何ごとかと思えば、研究室にあるのは大きな装置と、黒いレーシングスーツ。
新しい性能のレーシングスーツなのかと思えば、サイズが今までとは異なっていた。
大人サイズなので俺用のスーツではないと一目瞭然だった。
はて、何をするつもりなのだろうか。
「スカルさん!これが我がカルカッサの技術開発力の最先端を駆使した装置です!」
そう言ったモブ子が取り出したのはボタン。
そして俺の背中をぐいぐいと押して大きな装置についている照明の下に立たせる。
いつものおかしな研究だろうなと諦め半分だった俺にモブ子言い放った。
「百聞は一見に如かず、ですよ!」
その言葉に首を傾げようとしたその時、モブ子がボタンを押して照明が明るくなる。
俺は眩しさにヘルメット越しに目を細めた。
すると景色が少しづつ変わるのが分かる。
あれ……皆が小さく、なって………
いや、これは…
「
モブ子の言葉で、漸く俺は理解した。
俺の身体が大きくなったのだ、と。
モブ子の興奮も、俺の驚愕も、取り合えず横に置いといて……
一つ、いいですか。
これどこのビッグライ〇ぉぉぉぉぉぉおおおお!?
心の底でそう叫んだ。
落ち着くまで数分を要したが、無事冷静になりなんとかモブ子の説明を聞いていた。
曰く、呪いの手がかりが一向に見つからなかったので強硬手段に出てしまっただとか。
曰く、呪い解けずとも体を元にすれば万事解決だと思ってしまっただとか。
問いただしたいことはいくつかあるけど、俺が絶望する事態であることに変わりはなかったとだけ明記しておこう。
要らぬ世話をぉぉお!
YESニートNO社畜がモットーな俺には完全に迷惑以外のなにものでもない。
ていうか大人用のバイクとか何年も触ってないから錆びてるぞ絶対。
「取り合えず身体検査しますね」
笑顔なモブ子にギリイしながら色々検査して分かったことといえば、身体能力が赤ちゃんの時のままってことぐらいだった。
大きくなっても意味ないじゃん。
どっちかっていうとマイナス面のがでかいじゃんコレ。
見た目が大きくなっただけで中身はそのままとかなにそれ辛い。
まさかこんな弊害が…って様子を醸し出して落ち込んでるモブ子には悪いけど、赤ちゃんの姿に戻して欲しい。
改良頑張りますと張り切っているモブ子を他所に別の人に姿を戻してもらった。
あまり頑張らないで欲しいが…
あれから数週間後、家の中でぐーたらしているとポルポとフグ男が喧嘩し始めた。
喧嘩…というかまぁじゃれ合いだろうなと思っているので仲裁はしない。
ポルポが放つ墨が床を溶かしたり、庭の雑草を枯れさせたりするけどもう慣れっこだ。
フグ男も中々多芸のようで、表面のトゲを発射したりする。
トゲの数が底をついたりしないのだろうかという疑問は発射と同時に生えてくるトゲを見て解決した。
びっくりアニマルに驚かなくなった最近、珍しく驚いたことと言えば指輪から出る炎に直接触れても熱くないと気付いたことだろうか。
紫色だから、赤色の炎よりも熱くないのかな?と自己完結した次第である。
「ミルフィオーレファミリーの勢力が日に日に拡大していく今、我らカルカッサはボンゴレと不可侵を締結した」
社長から呼び出されたと思ったら、なにやら真剣な顔でそう言われた。
ミルフィオーレ………ああ、最近皆が噂している企業か。
どんな企業か知らないけど相当脅威であることだけは分かった。
ボンゴレと争ってる場合じゃねぇってなるほどヤバイんだろうな。
にしてもその…なんだっけ……ミルフィーユファミリーはどんな企業なんだろうか、少し気になる。
と思っていた数か月後、再び社長に呼び出された俺氏。
「ミルフィオーレの勢いは増すばかりだ……既にアルコバレーノはスカル、君のみだ」
これまた深刻そうな顔をしている社長がいた。
アルコバレーノ……とは。
「ミルフィオーレのボスがアルコバレーノを狙っているのは周知の事実、君にはここイタリアから遠く離れた日本へ避難して欲しい……」
あ、そういうことね。
異動願い出されてるってことね、ハイ。
でも異動先日本って…まぁ逆に嬉しいかも?
俺の知ってる日本とは別物になってそうで少し気になる。
「すぐに向かってくれ、カルカッサ日本支部には既に言い伝えている」
とのことで、俺は日本へ向かうことになった。
飛行機の手続き以前にパスポートすら持っていたなかった俺は、社長の自家用ジェットに乗って日本に行くことに。
ポルポとフグ男も連れて日本に着いた。
さてと、まずは秋葉原行きますか。
カルカッサファミリーボスside
ほんの少し前から頭角を現していたミルフィオーレファミリーがついに行動に移ったのがつい最近だった。
ボンゴレ重役を片っ端から殺していき、今やボンゴレは壊滅状態へと追いやられている。
つい先日、ボンゴレボスである10代目、沢田綱吉が暗殺されたという情報を手に入れ、ボンゴレもここまでかと悟った。
だが、ボンゴレが消えるのはそう遠くない未来であるという事実に楽観視出来るほど私は軽い頭をしていなかった。
私はすぐさまボンゴレと不可侵を確約し、ミルフィオーレの魔の手から避け続けた。
ミルフィオーレのボスである白蘭がアルコバレーノの命を狙っていることは知っている。
そして奴が、ノントリニテッセというアルコバレーノに有害な物質を大気中に放ったことも。
幸い、カルカッサの技術開発班が数年前に発見したノントリニテッセ物質から作り上げた、耐ノントリニテッセスーツがあったお陰でスカルは今もなお生き永らえている。
スカルはカルカッサの象徴だ。
なんとしてでも生き延びて欲しい。
それが、カルカッサの繁栄に繋がるのだから。
つい先日、イタリアでミルフィオーレが動き出すという情報を掴んだ。
恐らくボンゴレを殲滅させる大規模な作戦を実行する気だろう。
だがボンゴレも最後の砦である最強暗殺部隊ヴァリアーがいる、そう易々と潰されないことくらい分かっている。
万一のことを考えてスカルを日本支部へと避難させようと思い至った。
あちらはミルフィオーレの大きな戦力が固まっているものの、周りへの捜索範囲は限りなく狭い。
ヨーロッパ圏内は既にミルフィオーレの捜索範囲内だ。
灯台下暗しとは確か日本のことわざだっただろうか、まさにそれだと言わんばかりに私はスカルを日本へと向かわせる。
少しでも奴らの目を欺くために…
自らに迫る死期を感じながら、私は目を細める。
我らが狂気を
ここで絶やしてはならない
スカル:目と目が合う~をリアル体験、雲属性、羞恥から来る覚悟()で死ぬ気の炎を灯した、ポルポとフグ男がよく喧嘩するのをのほほんと見ている、フグ男を撫でると指が痺れることに首を傾げているこの頃。
フグ男:セコム2、|毒針魚《ヴェレーノ・ペーシェ・パッラ・イステリチェ》、フグとハリセンボンの雑種、スカルの発音がよく聞き取れず自分の名前をフーゴだと思っている、ポルポにビビっていたが今では良き師匠、勿論有毒なテトロドトキシンを含んでいるので超危険生物。
ポルポ:セコム1、スカルがいきなりつれてきたフグ男に警戒心Maxだったものの一緒に過ごすうちにスカル絶対主義を擦り込むことにした、多分毒性はコイツの方がヤバイ。
白蘭:スカルをロックオン
モブ子:ビックラ〇トを開発した、今後改良の余地あり
カルカッサボス:暗君でもなければ賢君でもない、スカルを日本へと向かわせた
時間軸は、イタリア殲滅戦だっけ…あの少し前だから、丁度主人公勢が未来に飛ばされたころ。
フグ男に関して、悩んだ末リング普及される時代だからやっぱり匣兵器の一つくらい支給されるよなと思って新たなセコムとして登場させました。
毒を持っているので殺傷能力はクソ高いです。
たまたまフグ食べてて思いつきました。
㎰:あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
【挿絵表示】
※リアルが忙しすぎて本分内容を変更するのが遅くなりました。
設定の変更内容:フグ男はハリセンボンとフグの雑種
こっちに詳しい知り合いに聞いてみればフグにもトゲのある種類がいるようなのですが、正直フグとハリセンボンの違いもあまり分かっていない私からしたら特徴的にどっちにも見当するからどっちでもいいやという認識です。
ただどっちもフグ目な上に、名前にフグ男って付けちゃってるんで今後も表記はフグにします。
生物系は本当に一般知識すらないので、今後もこういった投稿後の設定変更はあると思いますが何卒ご了承ください。
知識が偏ってるのも反省してます。
ご指摘ありがとうございます!
軽い事前調査で出た検索結果に対して…………Google先生ェ