とあるAside
「行ってくる」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい!パパ!」
今日もまた仕事に出かける俺は妻と子供に声を掛けて家を出た。
俺の名前はアラン、地元の警察官だ。
ベテラン、とまではいかずともそれなりに経験を積んでいる方だと思う。
今度の昇格試験で上手くいけば警部になれる。
妻と子にも恵まれて
そんな日々は、あの一通の通報で消え去ることになろうとは、この時の俺は思いもしなかった。
晴れた日の夕方頃、同僚の一人の下に通報が入った。
同僚が何も言葉を発しない電話の向こう側を怪しく思い、眉を顰めている様子を俺は視界に入れる。
「もしもし?」
『人が…死ぬ』
偶然そいつの近くにいた俺はその声を耳にした。
無機質で簡素な一言。
❝人が死ぬ❞
殺人予告とも取れるその言葉に、俺も電話に出ていた同僚も顔を強張らせる。
ただ、爆発物などを見つけてしまった一般人であるという可能性もあったので、慎重に対応する必要があった。
同僚も直ぐに冷静に対処し始めようとしていたが、電話の向こうの人物は同僚の質疑を無視し言葉を被せてきたのだ。
「詳細を送る」
『え、名前を——』
「健闘を祈る」
それだけで通話は切れ、同僚も俺も、緊張を露わにした。
❝詳細❞ということは、少なくともこれから起こるかもしれない殺人に関与している人物であるということ。
そして何よりも最後の言葉で声の主が警察を試しているのは明らかだった。
つまり、犯罪予告だ。
だが未だいたずらの線が消えない以上、上司への報告は戸惑われる。
俺はすぐさま同僚に声を掛け、メールボックスやFAXなど伝達手段を調べ始めた。
すると、警察署の問い合わせの方で新着が一件のみ来ていた。
そのメールを開いてみると、送られてきたのは数秒前、送信者は不明だった。
内容をざっと確認する。
そこには、十数名の人物の名前と顔が載っているリストだ。
一体これが何のかが分からぬまま読み進めていると最後の一文で固まる。
『目障りであれば殺してもらっても構わない』
これだ。
この一文から見るに、リストに載っている人物たちは殺害のターゲットというわけではなさそうだ。
目障りであれば、ということは恐らく使い捨ての仲間か駒だろう。
仲間割れか?
殺してもらっても構わない、とあるからに警察側が発砲するであろう事態になりかねないということか?
となるとリストの人物達が銃を所持している可能性が高い。
そして何よりも俺を焦らせたのは時間だ。
メールに記載している予告時間まで既に二時間を切っている。
ただ事ではないと判断した俺は同僚と共に上司の下へ報告しに行く。
この事態に上司もすぐさま動き出す。
俺は同僚たちと共に武装しながらリストの者達を探し始めた。
町中を無線機片手に車で周っていると、頬に冷や汗が伝っていることに気付く。
それもそうだ、なんせ時間がない。
❝健闘を祈る❞
ふと電話の向こう側のあの声が脳裏を反芻する。
自身に襲い来る焦燥と緊張で、その声が警察の反応を楽しんでいるかのように思えた。
まさに愉快犯のようで…いや実際電話の人物は愉快犯ではないのだろうか。
仲間と思われる人物を駒としか思っていないような内容、あくまで傍観しているような態度を思わせる言動…
非情な犯罪者めと、俺は歯を食いしばりながら無線機に耳を傾ける。
いたずらであって欲しいと願う反面、心のどこかであれは本気の声だったと思った。
結果、警察の努力は虚しく、各地で数名が同じ銃で殺害された。
どれも裕福な家の者で、家主が殺されているところもあれば付き添いが庇って射殺されたところもある。
これであの電話がいたずらではないことが証明された。
警察は集団での殺人とみなし、広範囲を捜索し出す。
容疑者ではないけれど最重要参考人として、リストの人物らの捜索から始めることとなった。
それから2日経つが、リストの人物達を見つけることは出来ず捜査は難航した。
俺は今回の殺人が
すぐさま報告し追跡を開始した。
その人物がホテルに入っていくのを視界に捉え、俺もそれに続く。
距離を縮めれば気付かれる恐れもあり、適度な距離を空けバレぬように後ろをついていくと、目標がエレベーターに乗り、俺はエレベーターがどの階で止まったのかを確認する。
最上階に近い場所で止まったエレベーターを確認し、隣のエレベーターでその階まで登る。
目的の階まで登ると俺は隣のエレベーターの位置を確認する。
エレベーターの階数は変わっておらず、目標がこの階から降りていないことを表していた。
であればこの階のどこかに目標がいるハズだ。
増援もくる、後は待機するだけだ。
とはいえ肩の息を抜くにはまだ早いと適度な緊張の中その階の廊下を注視していると、ふと耳に奇妙な音が入って来た。
まるで空洞を何かが物凄い勢いで這ってくるような……背筋に悪感が襲う音は次第に大きくなっていく。
俺は直ぐに銃を構え辺りを見渡す。
音源は未だ俺のいる階で止まるエレベーターだった。
眉間には冷や汗が伝い、拳銃を握る手は震えだす中、音は段々と大きくなっていく。
エレベーターの中で反響していた音が急に止む。
俺は深く息を吸い、一歩踏み出そうとしたその時だった。
いきなり足が強い力で引き摺られる。
「うわあ!?」
急な状況について行けず、驚愕と恐怖で心臓が震えあがる感覚の中俺はそのまま壁に背中から投げ飛ばされた。
大きな衝撃に息が上手くできず意識が朦朧とするもなんとか
そこには大きな、大きな、目が二つ。
死を悟った。
強大な脅威の前に、怯えることも出来ず、泣くことも出来ず、震えることも出来ない。
粘液を纏う触手が俺の首元へとへばり付くが、体は硬直し動くことはない。
ゆるりと首を巻いている触手に力が入り、緩やかに迫る死に目を閉じることしか出来なかった。
最後に思い浮かべるは妻と子の姿。
俺の記憶はここで途切れた。
「――ン!――ラン!しっかりしろ、アラン!」
誰かが、俺を、呼ぶ声が…
「アラン!起きろ、大丈夫か!?アラン!」
俺の名前……ああ、眩しい
うっすらと開いた瞼に最初に入って来たのは光だった。
咄嗟に目を閉じ、眉を顰めた。
「アラン!やっと気が付いたか…」
「………―――――?」
「ああ、そうだともお前の親友の—————だ!」
「俺は……死ななかったのか…?」
「何を言ってやがるまだ幽霊になるのは早いぞ!」
数分後、意識がはっきりとし自身の現状を理解した。
どうやら俺は生き延びたらしい。
あの、強大で、狂おしいほどの死を目の前にして、何故俺は生き延びたのだろうか。
分からない、分からないけれど…俺は生きているのか。
まるで現実味のない感覚に未だ頭が働いていないのか?と思いさえする。
少しして俺は倒れた場所とは離れたところに寝かされていたことに気付き、隣にいた親友に事の経緯を聞いてみた。
目標は逃してしまっただろうか。
それが気になって仕方なかった。
「…目標はいた」
「そうか、逃げられたかと思った」
「いや…いたにはいたが…その」
「?」
「殺されていた」
俺は親友の言葉が理解出来ず思考が空ぶる。
「エレベーター内でリストに載っていた中の12名がすし詰め状態の惨い殺され方だった…直ぐ外にお前が倒れていたから肝が冷えたぜ」
「え…」
エレベーターの中……俺のいた目の前の…………
俺はどこか呆然としながら鈍い思考回路を必死に
瞬間、あの二つの眼が脳裏を過ぎる。
瞬く間に体の芯から冷え切り、まるで死がすぐそこまできているかのようで、俺の身体は恐怖で震えだす。
「お、おい!大丈夫か!?くそ、もう少しで救急車が来るハズだ、頑張れよ!」
頭部を強打したような形跡があったから何かしら異常をきたしているのだろうと推測していた親友を他所に、俺は恐怖で震える身体を必死に押さえつけていた。
あの時麻痺していた防衛本能が今になってぶり返し、身体と思考がズレていたのだ。
制御出来ない身体に反して思考は冴え渡っていた。
きっとエレベーターの12名を殺したのはあのバケモノだ。
あの力ならば…常人では目で追えないあのスピードならば、さして難しくもないだろう。
じゃあ何故俺は殺されなかったんだ?
あのリストに載っていなかったから?
『目障りであれば殺してもらっても構わない』
犯人のあの一文は一体どういう意図があったんだ。
元々殺すつもりだったのか?
あまりにも俺達警察がリストの人物らを見つけ出さないことに痺れを切らし行動を起こしたのか。
分からない、分からないけれど…まだ、事件は終わらない気がする。
その後俺は救急車で病院に運び込まれ精密検査を受けたが特に異常はなかった。
強いて言うなら背中と頭部を強打しているから一日は様子見をするようにと言われる。
俺は疲れた身体を引き摺って一旦警察署に戻り着替えを済ませようとした。
着替える際にふと気付いたことがあった。
財布に入れている家族写真が半分飛び出していたのだ。
「………まさか…な」
俺はあのバケモノに飛ばされた時に財布から半分出てしまったのだと思っていた。
そういえば明日は報告書の提出があるハズだけどあのバケモノのことを書くべきだろうか。
誰も信じなさそうだし、正直俺も幻覚とかだと思ってる節がある。
でもあの恐怖は本物で、突きつけられた死を今でも覚えている。
「…あー…どうすればいいんだか…」
一人で頭を掻きながら警察署の玄関に向かう途中に、携帯が鳴った。
妻からだろうかと思い携帯を開けば新着メールが一件あり、見知らぬアドレスに首を傾げながらそれを開く。
開けばそこにはシモンファミリーという組織のアジト、そしてその場所の近辺の人避け、その指定時刻が示されていた。
シモンファミリー…聞いたことはないが、ファミリーという表記はマフィア特有であったような…
メールの内容に警戒し始めた俺はそのまま読み進めていると、またあの言葉が入っていた。
『目障りであれば殺してもらっても構わない』
これもまた、奴の狙いなのだろうか。
いやそれよりもどうやって俺のメールアドレスを……?
文の内容からして殺して欲しい、いや、殺させようとしているのか。
このシモンファミリーという組織がこれから何かを起こすのか、それとも今回の射殺事件の関連組織なのか。
指定時刻まで一時間もないこともあり、直ぐにこのメールを上司に報告しようとした俺は、次の文章で凍り付くことになった。
『綺麗な奥さんと可愛いお子さんがいるようですね(^ω^)』
こいつ……俺の家族をっ
そうか、先ほどの財布から飛び出していた写真は、俺の家族の顔を確認したのか!
俺の財布を確認出来るであろう機会は今日俺が気絶していたあのホテルでのみ。
じゃああのエレベーター大量殺人事件はバケモノではなくコイツの仕業…?
俺はすぐさま妻に電話を掛けるがいくら待てど繋がらない。
脳裏に過ぎるのは愛しい妻と子の笑顔。
くそ、どうすれば……どうすればいいんだよ!
悩む時間などない俺は焦りながらメールをもう一度読み返す。
他の文章から何か手がかりになるものは………まず(^ω^)はどういう意味だ。
確かωは……ギリシャ文字の一番最後だから24番目……24行目ということか!?
24行目を数えた俺の頬には汗が伝う。
『目障りであれば殺してもらっても構わない』
この文字を強調する暗号、これではまるで俺に人を殺せと、そう指示しているようにしか思えなかった。
俺に………人の命を守るべき、俺に……殺せと、言うのか…?
早まるな!
俺の深読みのし過ぎかもしれないじゃないか!
とにかくこのメールのことは誰にも言えない。
妻と子の命がかかっている。
俺一人でなんとかしなければいけないんだ。
俺は深呼吸をして、誰にも気付かれず拳銃を懐に入れて、帰宅すると言い警察署を出た。
目的地は指定の場所である。
このメールからして、要は指定された場所に人を近づけさせなければいいだけの話だ。
だが目障りであれば殺せということは、この場に近付く者は武装している可能性が高いということ。
何人相手取るのか分からない今、緊張と恐怖でどうにかなってしまいそうだった。
職を失うかもしれないけれど、何よりも家族の方が大切なんだと自分に言い聞かせ、時間が過ぎるのをただただ待っていた。
指定場所へ行き建物に身を隠す。
指定時刻が来る前に一人の男性が指定場所の建物へと入っていくのが見えた。
あれが……俺にあのメールを送った犯人なのか?
すると数秒後、建物内から断末魔が聞こえた。
「!?」
悲鳴の中には男性、女性…あまつさえ子供の声も混ざっていて俺は思考が停止しそうになった。
直ぐに駆け付けたい衝動に駆られるが、理性がそれを
妻子と…他人を天秤に乗せてどちらに傾くかなんて容易に分かるはずで、俺はあらんばかりの力で歯を食いしばる。
唇が切れ血が
拳銃を片手に構えた二人の男が視界に入り、俺は侵入を許してはダメだと瞬時に判断する。
二人の男たちが建物のドアノブに触れるというところで俺は銃の標準を彼らに合わせていた。
『殺してもらっても構わない』
この時既に俺の中で葛藤などなかった
ただ、脳内を占めるのは恐怖のみ
家族を失う恐怖、死への恐怖
瞬きと共に俺は引き金を引いた。
立て続けにもう一発撃ち込み、夜の街に銃声が響き渡る。
頭部を貫通し、即死だった。
二つの死体が倒れ伏していて、俺は止めていた息をゆっくり吐く。
瞳からは止めどなく涙が溢れ、震える指が引き金から離れない。
漸く自身が人を殺めたという自覚が追いついてきた途端心臓が鷲掴みされたかのように軋んだ。
俺はその場を逃げた。
無我夢中に走っている中、ふと気付いたことがあった。
何故、周りの住人はこの断末魔に気付いて出てこないのかったのか。
よく周りに目を凝らせば、どの部屋も明かりが付いていない。
辺りには誰もいないのだ。
元々人避けはしていた………?
なら何故俺を脅迫してまで…
❝まさに愉快犯のようで❞
俺は足を止める。
そのまま壁に肩から
俺は目を見開いたまま手の中にある拳銃を見つめた。
「は……はは……ははははははは」
何故か心底おかしく思えた。
腹の底から笑いが止まらず、涙が零れるのも構わずただ笑い続ける。
「あはははははは、はははははははっ」
人を殺めたにも関わらず俺は可笑しくて堪らなかった。
誰かが俺の姿を見れば全員が揃ってこう言うだろう。
狂っている、と。
そうだ、俺の人生は狂わされた。
これが笑わずにいられるか。
「はははは、あはははは……は、は…はは」
笑いが収まり次に沸々と怒りと憎しみが腹の底から湧き上がって来た。
笑みを浮かべたまま俺は携帯を取り出す。
画面にあるのは、あの一件のメール。
先ほど建物に入っていった男が本人かは分からないが、少なくともこのメールの送り主と関りがあるだろう。
「殺す…」
俺の人生を狂わせたコイツを。
俺が人殺しであるという事実を唯一知っているコイツを。
「地獄の果てまで追いかけてでも、殺してやる…」
自首する気はなかった。
俺には守るものがあるんだと、家族を免罪符にして自分に言い聞かせた。
銃を仕舞い込み、帰路に着いた俺は脳裏で先ほど建物に入っていった人物を思い出していた。
金髪で……黒いスーツ、がっしりとした体型、年齢は30前後ってところか。
あの男を見つけ出すことからか………
家に着いた俺を笑顔で出迎えてくれた妻と子供の無事な姿を見て、俺はより一層自身に誓った。
一刻も早く殺そう
翌日、殺された家族の名前がニュースに挙げられる中、俺が目を付けたのは生き残った一人の少年だった。
少年は妹が目の前で殺されて精神的に参っていたが、日に日に膨れ上がる犯人への憎悪を募らせている様子に、俺はこの少年を利用しようと考えた。
少年が退院したと聞き、俺は事情聴取と偽り少年の下へ
「やぁ、君が古里炎真君…だね?」
「おじさん……警察の人、ですか……」
「まぁ警察ではあるけれど、今日は君に話があって来たんだ……少し話を聞いてはくれないかい?」
はやく……早く殺さなければ———…
俺は狂気に囚われた。
D・スペードside
一年前、ボンゴレ内で九代目の息子であるザンザスがクーデターを起こした。
だが九代目はザンザスを殺さずに、凍らせた彼を別塔の地下へと幽閉する。
この時、私の中では九代目の甘さに嫌気が差していた。
何よりも九代目が目を掛けている、CEDEFに属する沢田家光の息子沢田綱吉の容姿が気に食わなかった。
あの子供にはあの男の面影があった。
ああ、腹立たしい…
その子供が野心を持ち冷徹非道であったならばボンゴレ十代目の座に据えることも
自身よりも小柄な犬にさえ怯える者がボンゴレを継げるはずがないと一蹴し、私は遂に計画を進める。
腐ったボンゴレを正す為に
さらなる高みへとボンゴレを強くする為に
そして 忌まわしいあの男の子孫を葬り去る為に
「ああ、彼にも一働きしてもいましょうか…ヌフフ」
私は口元に弧を描き、狂気へと触れた。
私はまずシモンファミリーの
襲撃当日、幻覚で作った他人の姿で目的地へと足を運ぶ。
各ファミリーのボスを奇襲するのは容易く、数人を射殺し終えると姿を眩ませた。
その後、予想通りCEDEFが動き出したが、あの狂人はどう動くのやら。
そんな私の思考を嘲笑うかのように、予想外の勢力が介入してきた。
警察だ。
国家の名のもとに動く彼らは、表の人間に分類される者らだ。
裏の世界であるマフィア間の事件に警察が関わることは珍しい。
否、ボンゴレでと限定したならば初めてじゃないだろうか。
だが私はすぐさまこの警察の介入の元凶に気付いた。
あの男だ。
あの男が警察の介入を許した。
一体何故?なんて疑問は野暮というものだ。
あの男の考えは誰にも分からず、誰にも理解されない。
それはただ単にあの男が狂っているから、の一言で済ませられる程異色を放っているのも事実。
まぁ大方一般人を巻き込んでド派手に殺すつもりだろう。
その狂った思考回路は理解できかねないが、見る分にはとても愉快だ。
無駄な犠牲もまたあの男の好むものだろうと思いながら、警察の介入で思い通りに動けないCEDEFの様子を見ながら私はほくそ笑んでいた。
そのままCEDEFの数名を殺して古里真へ注意を集めてさっさと殺そうとしたがただ何もしないままだと、狂った彼もまたつまらないと感じ興味を失うだろう……そう考えた私は彼にショーを見せてあげることにした。
彼も、ただ私の依頼を受けているわけがなく私の行動を監視しているに違いない。
その日とあるホテルで、私は集まっていたCEDEFを計12名殺し、エレベーターに詰め込んだ。
原型を留めない肉片もある中、エレベーターのボタンを押し扉を閉め私はその場を去る。
少しは面白いと感じてくれればボンゴレへ引き込むことが楽になるんだが…
裏の世界に表の勢力を介入させたことで起こる混乱をどこかで眺めて笑っているであろう男を思い浮かべては、私は夜を待った。
月が現れ、静寂が訪れた時刻。
あの男が敢えて人避けをしそうにないと思った私は、あらかじめ野次馬を避ける為辺り一帯に幻術を掛け、自身の姿を沢田家光に模し、計画を実行した。
響き渡る悲鳴、もがき苦しむ断末魔、飛び散る鮮血、そして絶望に染まったその顔。
無情にも手を休めることはなく、ただ惨たらしく命を奪い取る。
コザァートの面影のある子供、古里炎真に妹の亡骸を見せつけながら嬲り、肉片と化した人間であったものに背中を向け建物を出た。
勿論、沢田家光の後ろ姿を古里炎真にわざと見せつけるようにゆっくりとだ。
玄関を開けた私の目の前にはシモンファミリーの一員が鮮血と脳漿を垂らしながら倒れていて、私は不覚にも目を見開き納得する。
古里一家を殺している間、銃声が二発聞こえたがこれだったか…
周りを見渡したが誰も見当たらず、至近距離で撃ったものではないと判断する。
気配もない…既に引き上げたか。
ヌフフ、少し呆気ない殺し方ではあるものの、彼の狙撃の腕前が知れたので良しとしますか。
それから数日後、生き残った古里炎真は絶望のどん底に落とされながら、沸々と禍々しい感情を煮えたぎらせていた。
まだだ……もっと、憎め、恨め……
「ヌフフ……全ては、ボンゴレの為に」
復讐の歯車が動き出した。
その腐ったボンゴレを一掃するのもそう遠くはない
「待っていておくれ…エレナ……」
裏切りは復讐を生み出した。
アラン:SAN値直葬、オリキャラ、善良な警察官、人生狂わされた被害者、家光になりすましたDを古里炎真を利用して探そうとしている、(^ω^)を変な方向へと解釈してしまったアホ。
D閣下:血の洪水事件の主犯、スカルをどうやってボンゴレに引き入れようか思案中
古里炎真:今話最大の被害者、ハートフルボッコだどん!
あまりにも長くなってしまい二話に分けてしまいました。
アランは今後…というかシモン編で再登場…の予定。
そろそろ原作開始させたい。
っていうか、虹の代理戦争が書きたい。