Fate/Imaginary Boundary【日本史fateホロウ】   作:たたこ

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1日目 予兆
昼① 夏にして花の(高校生)


「……朝か……」

 

 一成が眼を醒ましたのは、当然ながらベッドの上だった。しかし場所は、彼の暮らすワンルームアパートではなかった。賃貸で傷をつけたくない為壁には何も飾っていないはずだが、ここには絵画がかかっている。それに自分の枕はこれほどふかふかではなく、シーツも染み一つない新品でもなかったと思う。

 近くの大窓からは燦燦と日光が差し込んで、再開発真っただ中の春日のビル群が一望できる。ここはまかり間違っても一成の城たるルージュノワール春日のワンルームマンションではない。

 とりあえずベッドから降りようとしたとき、ベッドの中に生温かいものがあるのに気づく――いや、それはモノではなくヒトだった。

 

「……ってキリエエエエッ!!?」

「……何よ、朝から騒がしいわね」

 

 一成の腰元に抱きついていたのは、間違いなくキリエスフィール・フォン・アインツベルン。彼女は胸元に白いリボンのあしらわれたネグリジェを纏い、眠い目をこすっていた。

 

「何でここで寝てんだ!?」

「私ひとりじゃ、このベッドは大きいもの」

 

 一成の使っていたベッドの隣には同じ型のベッドがもうひとつ、使われた形跡もなく鎮座している。キリエの言葉は理由になっているようでなっていない。

 一成はそろそろとキリエを引きはがしてスリッパを履いた。ベッドとベッドの間にある棚に埋め込まれた時計を見れば、時刻は八時半過ぎ。そこまで認識して、やっと一成は昨夜のことを思い出し始めた。

 ここはホテル春日イノセント――再開発中の春日にそびえ立つ、最もグレードの高いホテル。そしてこの部屋は俗に言うスイートルームだ。しかし最上の部屋ではない――確かアレは当初インペリアルスイートに宿泊していたが、一人ではあまりにも広すぎるということでこのアンバサダースイートに格を落としたのだとか。

 インペリアルとアンバサダーの違いを弁えない一成としては、どっちもスイートである。

 

 キリエはまだ眠り足りないのか、一成に引きはがされるままにベッドに横になっている。「カズナリ、お出かけはブッソーだから気をつけなさい……」とむにゃむにゃ言っている。彼女にタオルケットをかけてやり、彼は寝室を出た。

 扉の先はリビングで、左手に二人掛けのソファとテーブル、一人掛けのチェア。

 右手に一人用のソファが二つ――そして顔を上げた先に日光を取り込む嵌め殺しの窓近く、四人掛けのテーブルに優雅に腰かけ新聞を読む、三十代前半の男がいた。

 

「……アーチャー……」

「おや起きたのか。そなた、明日は九時には学校に行くとかなんとか言っておらなんだか?」

「別に、授業ってわけじゃねえから遅れても平気だ」

 

 一成はテーブルに近付き、しげしげとアーチャーの姿を眺めた。元は平安人のくせに、アイロンがびしっとかかったワイシャツとパリッとしたスーツの上下が実によく似合う。一成は暫し黙っていたが、意を決して口を開いた。

 

「あのよ……なんでここにいるのかはわかってんだけど、俺なんか変な事してたか?」

「安心せよ一成」

 

 アーチャーは穏やかな笑みを浮かべ、親愛の籠った眼差しで一成を見た。「録画済みじゃ」

「何をだよ!?」

 

 昨日、絶賛夏休み中の土御門一成は、夜に明の歓迎会相談のために碓氷邸を訪れた。その際碓氷邸にいたキリエが「今日はアーチャーのホテルにしようかしら」と言いだし、送りついでに一成もホテルまで来ていたのだ。聖杯戦争終了後、アインツベルンの城に帰らなかったキリエは碓氷邸、もしくはアーチャーのホテルの二か所で寝泊まりしている。

 

 だからキリエがホテルに来るのはよくあることなのだが、一成はこれが初めてである。

 正直なところ一成も最高級スイートに一度くらい宿泊してみたかったのだが、真っ正直にアーチャーにお願いするのはなけなしのプライドが許さなかった……というわけでキリエに便乗しつつ初お泊りとなったわけである。

 しかしこの部屋でアーチャー用に給仕された飲み物を口にしてから記憶がない。妙な味がするぶどうジュースだと思いながらぐびぐび飲んでしまったあれは、もしやワインではなかったか。

 

「そういきりたつでない。決して外に裸で躍り出たり、アインツベルンの姫に無体を働いたり、碓氷の姫や騎士王に卑猥な電話を掛けたりはしておらぬ。安心せよ」

「してたまるか! あーもういい、着替えて飯食って学校行ってくる!」

「アインツベルンの姫は連れて行かぬのか?寂しがるであろう」

「学校に連れて行けるか!! ……とにかく、俺はいくからな。あと飯や宿泊代ありがとう!」

 

 生活に必要な分の金額しか送られない一成に、高級ホテルに泊まる金があるはずもない。もちろん費用はすべてアーチャー持ちである。

 ちなみに聖杯戦争終了後、アーチャーは一成の部屋に住んでいたことは一度もない。「ワンルームなど人間が住む部屋とは思えぬ」と、一般市民を敵に回す発言を吐いて、以来ずっとこのホテルで暮らしている。

 費用は幸運A+か黄金律Bの賜物か、全く不自由する様子を見せない。

 

「何、気にするでない。私はそなたのサーヴァントゆえな」

 

 空々しい衷心の言葉を聞き流して、一成は二人掛けソファの上に畳まれている半袖のワイシャツとズボンに着替えた。

 それから広い部屋をうろつきまわって見つけた洗面所で顔を洗い、鞄を手にとってスイートルームを後にした。

 

 ホテルでとった朝食は、豪華だった。トリュフの乗ったイタリアンエッグベネディクト、ナチュラルヨーグルト、しぼりたてのフルーツジュース、フィナンシェをピアノの生演奏をBGMにしつつ味わうものだった。

 一成は育ち上、和風の高級さには免疫があるのだが洋風にはてんで慣れていない分興味があり、うっかり洋食にしたのだ。しかし味がいいことに疑いはない……とは思うが、高級でも食べなれていないもののため今一つ満足しきれぬまま彼はホテルを出た。

 

 ホテルを出た途端、一瞬にして暑さに辟易した。時節としてはすでに残暑のはずだが、現代日本の八月下旬は残暑には程遠い。

 朝の九時過ぎにもかかわらず、すでに容赦なく太陽は照りつけていた。

 

 ホテルから徒歩十五分程度で、一成が通う私立埋火(うずみび)高校に到着する。陸上部とサッカー部が部活に勤しむ様子を尻目に、一成は二階の自分のクラス、三年B組に到着した。まだ夏休みであるにも拘らず、三年の他クラスにも多数の生徒が見受けられるのは――文化祭が新学期始まってすぐに開催されるからである。

 

 

 この学校の慣行で、文化祭はどの学年も結構な力を入れて出し物を行っている。進学校でもあるが、勉強だけではなくイベントごとにも力を入れる「文武両道」がモットーであるからかもしれない。

 

 入場も関係者のみのチケット制ではなく、自由に出入りができるために学校見学に来る中学生も多い。文化祭は金土の二日間で開催され、金曜は学生間のみの解放で、土曜日に一般開放される。また、金曜日の夜には生徒だけの中夜祭も開催される。

 そして来場者にアンケートをとり、最も人気のあったクラスは表彰されるとともに金一封が出る(大体打ち上げで消える)――という、埋火高校内では年間で最も気合の入ったイベントなのだ。

 ちなみに一番気合が入っているのは三年で、多くは劇をする。文化祭の終了を以て、三年は本格的に受験モードに入ることが埋火高校の通例である。

 

 一成は元来、こういうイベントごとは嫌いではないものの中心になって音頭をとるタイプではない。ゆえにクラスの文化祭実行委員長になってはいない。しかし友人の桜田が副委員長を引き受けたせいで、付き合いで中心的な立ち位置になってしまっていた。

 

 そうして夏休み終盤の今日も、学校に来られる者は来て作業をすることになっているのだが――一成はガラガラと戸を引いた。

 

「おせーぞ土御門!」

「お前実行委員会だろ!」

「……相変わらず、バイオハザードって感じだな……あと俺は実行委員じゃねえ」

 

 一成の眼の前に広がっていたのはゾンビだち……否、女装をした男子クラスメイトたちだった。チアガール姿、ホステスママ風、女子高生風と様々だったが、化粧を施しているせいなのかカツラがチープなせいなのか、端的に言って不気味な集団だった。そのうちの一人であるチアガール氷空満は一成に襲いかかってきた。

 

「お前もゾンビになるんだよォォ!!」

「俺たちが目指してるのはゾンビ喫茶じゃねーだろ! 正気に戻れ!」

 

 氷空は足元にあった板につっかかり転げそうになり襲撃どころではなくなった。それを呑気に眺めていた3年B組文化祭実行副委員長桜田は、金槌をもてあそびながら唸った。

 

「そうなんだよな。3-B男女交換喫茶のコンせプトはバケモノ喫茶じゃない。男でミスコンできるレベルを目標にしてきたんだ」

「ジャスティスが言いだしたんだろそれ」

「ジャスティス言うな」

 

 そう、一成のクラスの出し物は『男女交換喫茶』。つまり男子生徒は女装、女子生徒は男装をしてジュースやお菓子などをだし、一時間に一回程度男装女装の生徒でダンスなどショーをする喫茶店だ。

 過去に女装喫茶をしたクラスがあり、そのときは「笑いを取る女装」という感じだったらしい。しかしこのクラスは「本当に美人の女装」「本当にカッコイイ男装」をコンセプトにした。

 というか、してしまった。

 

 しかし3年B組のクラスメイトは男装、女装に対し深い造詣のある人間がいなかった。もしかしたらクラスメイトには最近流行るアニメのコスプレなどを趣味としている者がいるのかもしれないが、あまりそういう趣味を表だって言うクラスメイトはいないだろう。

 またネットを駆使して女装・男装を調べてみたが今一つうまくいかない。女子の男装まだ見られるクオリティであるが、女装は見ての通りTウィルス蔓延状態のヒャッハー世紀末である。

 

 大道具担当の看板・内装作りは順調に進んでいる。また、ショー用のダンスも女子男装陣と共に行ってクオリティを上げる予定だ。問題は男装の改善改良である。

 

 女装陣は頭を抱えていたが、一成にはある案があった。

 あまり気が進まない為に今まで言わずにきたのだが、クラスメイトが真面目に文化祭に取り組んでいるのに黙っているのは良心がとがめる。

 

「なあ……やっぱり、つきつめるんならプロというか、詳しい人に教えてもらうのがいいだろ?」

「そりゃあそうだろうが、プロに教えてもらうのは金がかかるだろう」

 

 当然すぎる氷空の発言である。クラスメイトから金を集めるにしても限度があり、そこまでしたくないという意見も出るに違いない。

 

「……実は俺、女装とか得意そうな知り合いがいる。そいつに頼めばメシおごるくらいでできるかも」

「「……もっと早く言えよ!!」」

 

 ゾンビ、もといクラスメイトたちも声がハモった。まあそういうツッコミになるよな、と一成は思ったが、気軽に頼める相手かといえば微妙なラインであり来てくれるとも限らない。

 相手に暇があってもけんもほろろに断られる可能性もかなりある。

 

「頼んでみるけどあんまり期待すんなよな、断られるかもしれないし」

「……時々思うけど、謎の知り合い多くね?お前、ここの出身でもないのに碓氷さんとも知り合いっぽいし」

 

 桜田のまっとうなツッコミに、一成は曖昧な笑いを返した。既にキリエスフィールはこの学校に突撃した前科があり、明はここ一帯の地主であり学校に挨拶に来ることもあるため、一成とも鉢合わせたことがある。春日における学校外の謎の知り合いは概ね聖杯戦争関連の名残である。

 と、その時勢いよく教室の扉が開かれた。

 

「女装組! ダンスの練習始めるから体育館に来なさい!」

 

 一成は「あ」という言葉を半ば口からだしつつも呑み込み、そっと近くの桜田の影に隠れた。大股で教室内に入ってきたのは、このクラスの文化祭実行委員長である榊原理子だった。

 全く染めていない長い黒髪を両肩で二つに結っており、頭には臙脂のカチューシャが乗っている。校則を正しく守った長くもなく短くもない膝までの紺色のスカート。栄養状態の良さを感じさせる健康的な身体つき。

 もう少し性格にマイルドさがあればクラス一の美少女といえなくもないかもしれないとうわさの、ややつり気味の眼。

 

 声は鋭いが決して怒っているわけではなく、これが彼女のデフォルトなのだ。そしてトレードマークは、首から下げられた一眼レフのデジタルカメラ。文化祭の写真係まで兼任するとは、どこまでやる気に満ち溢れているのか。

 

 桜田は慣れた様子で、面々に声をかけてぞろぞろと教室から移動しはじめた。一成は桜田の陰に隠れたまま静かに移動したかったが、そうは問屋が卸さない。

 教室の出入り口で仁王像のごとく立つ榊原理子に、Yシャツの端を捕まれた。

 

「ちょっとあんた」

「んだよ」

「今日は陰陽師の衣装着ないの?」

「今クリーニング中だ。汗だくの狩衣とか匂いやばいだろ」

「それもそうね、ほら早く行くわよ」

「お前が引き留めたんだろーが」

「あんたは目を離すと何するかわからないじゃない」

 

 当然のごとく言い放たれた言葉に、一成は大きくため息をつこうとしてやめた。ついたら「何よそのため息は!」とつっかかられることがわかりきっているからだ。

 一体この同級生の元生徒会長様は自分をなんだと思っているのか。

 

 埋火高校の生徒会は、二学期から次の一学期までが任期である。つまり今の三年生はもう生徒会を満期任了して、前年度生徒会となっている。

 その元生徒会長こそ3年B組文化祭実行委員長、榊原理子(さかきばらりこ)である。

 

 一成と理子のクラスが一緒になったのは三年の今だけであるが、振り返れば一年の一学期からの縁である。当時、北陸の田舎からこの都会(※一成の実家から見ればだいたい都会)に出てきた一成は、そのおのぼりさんかつ本来の性質ゆえに、不良ではないにしろ問題児、トラブルメーカーの気があった。その彼を追い回してしつこく注意してまわっていたのが、絵にかいたような――多少気が強すぎる嫌いはあるが――優等生の榊原理子だった。

 一成も脛に傷がないともいいきれないため、あまり強硬に彼女に文句を言うことはめったにないのだが、正直面倒くさいものは面倒くさい。それももう三年目という腐れ縁だ。

 

 ゆえに対応に慣れてきたのもお互い様で、一成はもういちいち彼女の小言に反論しない。まあ、なんやかんやで彼女のいうことは正しいのだ。

 それがはじけんばかりのエネルギーを持っている花の男子高校生にはちょっと鬱陶しいだけで。

 

「ほらさっさと歩いて! もう男装組は体育館で待ってるんだから!」

 

 前方の桜田たちを注意しながら、理子はすぐ後ろの一成に振り返った。「そういえばあんた、ちゃんと進路希望表書いたの? 藤岡先生が心配してたんだけど」

「ぐっ」

 

 地味に痛いところを突かれた。一成もそれについては頭を悩ませていて、二学期頭に出すということで、仮で担任に提出していた。というかこの元生徒会長、なんでそんなことまで知ってんだ。一成よりはるかに教師受けがよく信頼もある彼女だから、簡単に知れることではあるが。

 

 ――一成はすでに土御門家の跡継ぎではない。それでも千年を超える家の一員であり、魔術に携わる道はある。だが、彼は一般人となる事も許されている状態でもある。しかし――

 

(俺は、まだ魔術の世界に未練がある)

 

 聖杯戦争は終わったが、春日聖杯の解体をすると碓氷明に約束したこともある。ただそれ以外にも、離れがたいものが魔術の世界にはある。

 聖杯戦争を経て、もう魔道が明るく日の当たる世界でないことは身をもって知っている。

 それでもあの戦いで、己にできることはあった。

 

 魔術使いになるのもいい。だが問題は、魔術使いになって何をするのか、である。人を救うために魔術を使うのか。でも人助けなら、魔術の世界に固執する必要はない。

 

 両親や祖父に相談しても、どんな返答があるかは想像がついてしまう。キリエは俗世に疎くて相談には不向きだ。そこで彼は碓氷明のことを思い出した――次期春日管理者の魔術師である彼女こそ、相談相手にうってつけではなかろうか。

 ただしこれにも問題があり、彼女は絶賛イギリス時計塔に短期留学中なのだ。

 留学、というよりは春日聖杯戦争の顛末・後処理のために行かざるを得なかったという感じだが。

 

 しかし幸いにも、明日碓氷明は帰国する――それを夏休み前にセイバーコンビから聞いていた一成は、彼女と相談の結果を受けてから決めようと思ったのだ。

 

 一成は理子に向き直って答えた。「まだ書いてねえけど、ちゃんと書くぞ」

「……あのさ、あんたさえよければ相談に乗るけど?」

 

 彼女の声が妙に小声だったためか、一成は聞き間違えたのかと思い振り返った。

 

「は?」

「……ッ! だから! そんなに困ってるなら相談に乗るって言ってんの! 私は生徒会長だから、あんたみたいなのを放っておくと先生からどうせ頼まれるのよ!」

「元生徒会長だろ」

「土御門の癖に細かいことつっこむな!」

 

 普段は鬱陶しくも厳しくも、正しく親切な元生徒会長様であるのにたまに意味不明にキレだすのは何事だろうかとよく思う。ヒステリーか。口に出したら殴られそうだ。

 しかし気持ちはありがたいが、これは一般人である彼女には相談できない。

 

「いや~いいわ。心配すんな」

「そういって心配しない事態があった? 屋上からプールへダイブしたり体育館に穴開けたり、夜中の校舎に忍び込んで偶然痴漢を捕まえたり!!」

 

 ちなみにこの男子高校生に、無断で夜中の博物館に侵入して警備員を昏倒させた前科が追加されていることを彼女は知らない。

 一成は視線を宙にさまよわせた後、まじまじと理子を見た。

 

「……俺よく生きてるな?」

「自分で言うなーーーー!!」

 

 耳元で叫ぶのはやめてほしいところである。一成とて彼女が悪い人間ではないことくらい承知だが、知り合ってからずっとこの調子なのでいかんせん面倒くさい。

 流石に年単位の付き合いで慣れたが、面倒くさい。

 

「とにかく気にすんなって。お前こそどうせ受験して大学行くんだろ、俺にかまってると落ちるぞ」

「? 私は神社の後を継ぐから、神職を養成する大学にいくって言わなかった? 実家と氏子会の推薦もある「おいお前ら、さっさとこーい」

 

 廊下を曲がった先から顔を出したのは、女装の桜田だった。またか、という顔付きをして呆れ気味に二人を呼んだ。一成は軽く返事を返して、いいチャンスと話を打ち切って走り出した。

 

(……そうか、榊原は神社の跡継ぎだったな)

 


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