Fate/Imaginary Boundary【日本史fateホロウ】   作:たたこ

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夜② 偽り踊る教会

 キャスターとハルカは夜の街へと足を踏み出した。教会はそう遠い距離ではないため、歩いて向かう。

 ストールを置いてきたキャスターは完全に現代人に溶け込んでおり、むしろ外国人のハルカのほうが目立つ。

 とりあえず警戒はしていたが、サーヴァントや魔術師の気配はない。

 

「ンフッ、これはお散歩デートというやつですね」と、何故か浮かれているキャスターを例の如く放置して、ハルカは黙々と歩みを進めた。地図を見なくとも教会の場所は覚えていたはずだ。

 

 ハルカの記憶通りに、歩いて十五分程度で教会に到着した。門から延びる石畳の両サイドには花が咲き乱れているが、夜のため精彩を欠いている。石畳の果てに佇む教会の窓からは明かりが漏れており、人の気配を感じさせた。

 

 聖杯戦争中は日課のミサも取りやめているそうなので、中にいるのは神父とシスターだけに違いない。ハルカは足早に扉へと向かい、一気に開いた。

 

 

「おや――、ハルカか」

 

 入り口のハルカから最も遠い、祭壇の前に黒いカソックの姿。

 春日聖杯戦争の監督役、神内御雄が泰然と振り返った。

 

 ハルカと御雄は春日聖杯戦争で知り合ったのではない。元々影景とハルカは知り合いであり、十年以上前だが聖杯戦争とは無関係に碓氷邸を尋ねたこともある。その際に影景から紹介されたのが、この神内御雄という神父だった。

 春日聖杯戦争と聞いた時、てっきり影景がマスターとして戦うのかと思っていたのだが、娘が戦うと知り拍子抜けしたことを憶えている。

 数日前にもこの教会で召喚の為の聖遺物を受け取り、召喚したはずだ――その記憶はいまだない。

 

 ハルカは少しだけ影景はどうしているのかと気になったが、今はそれよりも聞きたいことがある。

 

「お久しぶりです、オユウ――ッ!!」

 

 気が許せるか、と聞かれたら微妙であるがそれでも見知った顔に、ハルカは笑ったが――その瞬間、背筋が凍った。

 

 神父の右、ハルカから見て左の柱の傍に、一人の女が立っていた。ウェーブのついた美しい金糸の長い髪、碧眼の瞳が細められている。薄手の白ブラウスに、紺色のロングスカート。

 目鼻立ちの整った美女がただそこに立っていただけ。

 

 にもかかわらず、ハルカは構えずにはいられなかった。女は魔術師ではあるが魔術を使っている気配もなく、敵意も殺意もない。

 理性でそれを理解しながらも、体の奥深くが恐れている。

 それでもハルカは平静を装い、視線は女に向けたまま神父に尋ねた。

 

「……そちらの女性は?」

「シグマ・アスガード。事情があり、しばしばこちらに顔を出している魔術師だ」

「……聖杯戦争の関係者ですか」

「心配するな。教会で保護するマスターは、すでに棄権しサーヴァントを失った者のみ。彼女にはそもそも令呪もない。ただ居合わせた魔術師だ」

 

 この時期に、普段はいないはずの魔術師がいるとなればどうしても勘ぐってしまう。ハルカの内心を知ってか知らずか、美貌の女は微笑んで手を振った。

 

「こんにちはハルカ・エーデルフェルト。私のことは気にしなくても平気よ」

「……」

 

 どうも調子がおかしい。シグマの名、どこかで聞いたことがある気もするものの思い出せないが、彼女はかなりの魔術師であるように感じる。そういう手合いを目の前にした時、普段は高揚するほうなのだが――今は悪寒が止まらない。

 

 とにかく、一刻も早く、この女の前から立ち去りたい。

 

 その時、ぴったりとハルカの後ろにくっついていたが押し黙っていたキャスターが、初めて口を挿んだ。

 

「シグマさん、関係者でないのであれば、今は席を外してくださいませんか」

 

 二人の女魔術師の視線が、初めて交差した。キャスターは決して強い口調ではなかったが、決して譲らないという意思を滲ませていた。

 シグマは挑発的に笑うと、凄然と並んだ長椅子の間をすり抜けてハルカ――ではなくキャスターに近付いた。背はシグマの方が十センチ以上高いが、キャスターは鋭い目で彼女を見上げていた。

 

「私とマスターの結婚式についての打ち合わせなので聞かれるのはちょっぴり恥ずかしいんですッ!! ――フギャー!!」

 

 恐ろしくヨタな発言の後に、踏みつぶされた猫のような叫び声を上げたキャスター。叫びの方は然もあらん、シグマは顔色一つ変えずにキャスターのささやかな胸部を掴んで揉んでいた。

 

「もうちょっと太った方がかわいいわよ、あなた」

「えっマジですか……って違う!! 女同士でもセクハラになるんですからね!! 訴えますよ! でもどこに!?」

 

 エキサイトするキャスターをよそに、シグマは揉むだけ揉んだ割に微妙な顔つきで手を放すと、何事もなかったかのようにそのまま扉へと向かった。そして礼拝堂を出る前に振り返り、艶のある唇を吊り上げて笑った。

 

「じゃあ私は御邪魔みたいだし、用も済んだし――悟の家に帰るわ。ごゆるりとどうぞ――ハルカ・エーデルフェルト」

 

 ヒールの音も遠く、礼拝堂に静寂が下りた。ハルカは誰にも感付かれないように長く静かに息を吐いた。……神父は自分のことを「ハルカ」と呼んだが、彼女はファミリーネームをどこで聞いたのか。

 とにかく重い荷を下ろしたような解放感を味わい、まだ胸をガードしたままのキャスターに礼を言った。

 

「助かりました、キャスター」

「……あんな巫女がこの現代にいるなんて私の立場マジでなし……はい?」

「助かりました、キャスター」

「……ホワッツ?」

「何人ですか貴方は。ありがとうございます、と礼を言ったのです」

「……え、えへへ! お礼を言われるまでもありません! 私はハルカ様のサーヴァントなのですから!」

 

 キャスターは何故礼を言われたのかわからないだろうな、とハルカは思った。自分にさえ何故己がここまであの女に恐れを抱いているのかわからないのだから。

 と、そこへ半笑いの声と顔の神父が割って入った。

 

「サーヴァントとの関係が良好なのはよいことだ。しかし、教会に何の御用かな?」

「これは失礼しました。聖杯戦争中にうかつに教会に訪れることにはためらいがあったのですが、少々困った事態になったのです」

「マスターって真顔で恥ずかしいこと言うの得意そうですよね」

 

 ハルカとしては助かったから助かったと言っただけだった。何故か急にふてくされたキャスターを放置して、ハルカは本件を切り出した。

 ヨタ話をするために教会に来たのではない。

 

 彼は神父に、手短にここ数日の出来事を話した。日本に来る前に教会・碓氷と手を組んで戦う約束をしていたことは覚えているが、春日にやってきてから拠点で眼を醒ますまでの記憶がないこと。

 ゆえに本当に教会に訪れていたかも記憶にないこと。そして英霊召喚時に事故があったかもわからないこと。キャスターの記憶までも完全に戻っていない状態であること。

 話を聞き終えた神父は、大して難しい顔をしないまま頷いた。

 

「……原因は私にもわからない。だが、ここに来てから拠点に行くまでのお前については覚えているからそれを話そう」

 

 神父曰く、春日教会に到着した時のハルカは至って普通だったという。そして英霊召喚についてだが――結果として春日教会は触媒を用意できず、ハルカは触媒なしでの召喚を実行した。

 結果召喚自体は成功したが、当然そのときもキャスターの記憶は曖昧模糊としていて真名はわからなかったそうだ。

 

「サーヴァントへの魔力供給が開始されたことに体が慣れておらず、次の日に疲労が残ることはままある。だが記憶の欠損は聞いたことがない」

「……そうですか」

 

 ハルカとて事態が劇的に改善するとは思っていなかったが、収穫はなく落胆した。さらにそこへ神父が追い打ちとまではいかないが、不可解な知らせを告げた。

 

「……その様子だとおそらく忘れているようだから伝えておくが、当初碓氷・協会・お前でしばらく戦って予定は崩れた。碓氷は単独で戦うそうだ」

「そうですか。影景の娘、名前は明といいましたか。何を考えているのか……」

 

 どうせこの共闘も、互いの利益を優先した結果である。途中までは協力したほうが効率的であるが、最期は碓氷とハルカで雌雄を決しなければならない。それに碓氷はホームで戦っているのだから、ハルカの助けがなくとも元々有利なのだ。

 

 影景の娘でもあるし、何かより良い勝算を持っているのかもしれない。それならそれで構わないと、ハルカは思った。

 

「……すみません、あと確認したいことが一つ」

「何かね」

「……いや、何でもありません」

 

 昨日遭遇したセイバーの言葉。「聖杯戦争は終わった」――その確認を神父に取ろうとしたが、やめた。これまでの神父の口ぶりと態度は、まさに今聖杯戦争をしていると語っていた。その彼に、聖杯戦争が終わっているなどという話をしても失笑を買うだけだ。

 御雄神父とは知り合いであっても、胸襟を開く仲ではない。そも、聖職者と魔術師は近しくあっても敵同士である。

 

「では、良き聖杯戦争を――」

 

 閉じ行く扉の中へと最後に見えたのは、恭しく頭を下げる神父の姿。今宵も魔術師とサーヴァントは戦いへと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

「――何故ハルカ・エーデルフェルトと話を合わせた? 御雄よ」

 

 ぶらんと、教会の入り口で逆さにぶら下がっているライダーが薄笑いで問うた。ドアの上部の枠に足先をひっかけ、そこに全体重をかけてまっさかさまにぶら下がっている。白い甚平の上下に裸足という、また奇態な格好をしている。

 

「ライダーか。お前は一体何をしている?」

「案外足が痛い。やめた」

 

 地面に手をつき、足を降ろしたライダーは何事もなかったかのように教会内に入り適当な椅子に腰かけた。「再開はしていても、聖杯戦争は終わっている。何故お前はあれに真実を告げないのか」

 

 神内御雄とて、昨日一昨日と、聖杯戦争の再開について一成や影景と話した身だ。当然聖杯戦争が終わっていることを知らぬはずがない。

 

「――私は聖杯戦争を求めた身だ。いまだ聖杯戦争をするといって戦う者に戦争が終わったなどと、私は言えぬよ」

 

 聖杯戦争を見ることを求め、三十年以上の長きにわたり聖杯戦争の再開を企てた男だ。たとえ聖杯戦争が終わっていても、まだ戦うという者を諦めさせることをするわけがない。

 根本的に神内御雄という男は、聖杯戦争そのものではなく聖杯戦争が巻き起こす闘争そのものを見たがっていたのだから。ライダーは一気に破顔し、腹を抱えた。

 

「ははあ、砂被り席でハルカ・エーデルフェルトの戦いをを見る気か。既に使い魔を飛ばして監視させているか。いやはや公としたことが愚問であった。というかお前――」

 

 夏に、冷え切った教会。講堂につられた電灯が風もなく揺れる。雷の神霊の別人格(アルターエゴ)が笑う。

 

 

「もう自分が死んでいると、気付いているな?」

 

 教会(境界)には、神父と騎乗兵(ライダー)のみ。烏も、鳥船も、断絶剣も今はいない。あくまで世間話の如く、神父は続ける。

 

「死んでいようといまいと、私のすることは変わらない。お前こそ最も状況を把握してしまっているだろうに、何を思って遊んでいる」

「阿呆め。公は本線の春日聖杯戦争で日本武尊に敗れ消滅している。それはどうでもいいのだが、お前の召喚が遅かったゆえに遊び足りんのだ」

「おや、私はそんなことを?」

「全く白々しい。自身の死に気づいているのならさっさと全部思い出せ――わかりやすい矛盾はそこらじゅうに転がっているというに」

 

 春日聖杯戦争において、最も歪みない――いかなる状態に置かれても動じないライダー陣営は互いに笑みを交わした。

 たとえここがいかな場所であれ、己は己であると、そう思うことさえ不要なほどに変わらなかった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 夜も深まりつつある夜十時。例によって人も少ない春日駅南口――やはり目立つ礼装は装備せずキュロット・パーカー・スニーカーの理子は腕を組み、どこか居づらそうにしていた。

 

「……」

 

 一成も何と話そうか言葉に詰まった。だが、二人の微妙な空気の原因を知らないもう一人の男はからからと笑った。

 

「おう、陰陽師。彼女が戦闘の共連れか? それより榊原殿は魔術師だったのか」

 

 白いTシャツ、ジーンズにスニーカーというおおよそ一成と同じ格好だが、Tシャツはサイズが小さいのかパツパツで、肉体の逞しさが段違いの益荒男が能天気に話しかけた。

 

「お、おう。榊原、昼間見てもう察してたと思うけど……ランサーだ」

「今更自己紹介も少々面映ゆいな。ランサー・本多忠勝だ」

「さ、榊原理子です」

 

 理子がおずおずと差し出した手を、ランサーは強く握り返して振った。本多忠勝――徳川家康の忠臣にして、武功も並々ならず徳川四天王の一に数えられる益荒男。

 生涯駆け抜けた戦場は五十を超えて、なお無傷。愛槍蜻蛉切と共に、その勇名は現代にまで語り継がれている。

 

 昼間の文化祭準備の時点で薄々察していたが理子も恐縮しながら興奮を抑えられない。ただ何故ここにいるのがランサーなのかは疑問だ。

 

「……あんたのサーヴァントってアーチャーじゃなかった?」

 

 理子の疑問も然り。だがアーチャーは不在である。一成が碓氷邸を出た後、ホテルに寄った時にはアーチャーは部屋にいたのだが「今夜は先約があるのじゃ。しかし呼べば行く」と思わせぶりな事を言って、巡回についてくる気は皆無だったのである。

 

 さて、そうすると巡回について来てくれるサーヴァントがいない。ホテルに寄る途中に会ったキャスターとキリエに何も言わなかったことが悔やまれる。

 それはともかく、他について来てくれそうなサーヴァントを考えた結果、真凍咲のランサーが候補に挙がった。明はセイバーズを巡回と家の警護に使っており、バーサーカーは扱いにくい、アサシンは住居不定でどこにいるかわからない。

 

 そこで真凍宅に足を運んでランサーを貸してくれないかと尋ねたところ、咲は簡単に許可を出してくれた。ランサー自身は再開された聖杯戦争自体に興味はないが、元々戦い自体を求めて現界したサーヴァントだ。

 ちなみに咲はランサーを貸す代わりに、何かわかったら教えて欲しいと――要するに明と似たようなことを言っていた。碓氷に貸すなら貸し一つだが、一成なら情報と等価交換ということにしてくれた。咲も咲で、碓氷に任せると言いながら一参加者として、顛末が気になっているらしい。

 

「アルトリアが言っていたのか、知らないマスターとサーヴァントがいるというのは」

「そうだ。その人たちが一体何を考えて聖杯戦争を続けているのかわからねーけど、春日の異常にも関係しているかもしれない。話を聞きたいと思ってる」

「応わかった。さて、どこから巡回するか」

「うーん……セイバーたちも霊地は巡回するだろうしな。春日の北――美玖川からだんだん南に下っていく、って感じで行くか」

 

 特に案もなかったのか、理子とランサーも頷いた。美玖川は駅から歩いて十五分程度か――三人はいざ、春日の異変解明へと乗り出した。

 

 成人のランサーがいることで、この時間でも高校生の一成と理子が歩いていても補導される危険は格段に落ちた。一成は住宅街の中を歩きつつ、二週間ほど前に美玖川で打ち上げ花火があったことを思い出した。丁度その時間は昼寝、というより夕寝していて見過ごしていたが。

 三人で会話が盛り上がってはいないが、いつまでも気を使うのが面倒臭くなった一成は、完全に開き直って理子に話しかけた。

 

 

「なあお前、電話でも聞いたけど今日の昼どうしたんだ? 腹でも壊したか?」

「……あれは私の勝手な都合だった。碓氷には迷惑をかけたと思うから、あんたから謝って。あんたにも迷惑かけたわね」

 

 理子は大きなため息をついた。それは他の誰かに対してではなく、自分に向かって呆れているようだった。

 

「俺はいいけど、謝るなら自分で謝れよ。つか別に碓氷怒ってなかったけど」

「……あんたに正しい事言われると残念な気持ちになるわね……」

「何だそれ!?」

「何だ? お前たち仲がいいな」

 

 先頭を歩き、Tシャツ姿で蜻蛉切を肩に担いで闊歩するランサーが振り返った。うっかり人様に見つかったら、補導ではなく銃刀法違反で捕まりそうである。ふい、と前を向いた理子はランサーに声をかけた。

 

「あの、ランサーさん? はいつも何をしてるんですか?」

「ランサーでよい。それにそこの陰陽師と同じように、敬語はいらん。 ……普段何をしている、か。ううむ」

 

 静かな住宅街では、ランサーの低い声も良く響く。「家事はバーサーカーがしているからなあ。儂は咲の中学校で体育のアシスタントをしたり、文化会館のカルチャースクールで護身術の講師をしているくらいか。悠々自適に楽しんでいる」

 

 ランサーに限らず、サーヴァントたちは各々自由に現世を謳歌している。ちょっとハジけすぎなサーヴァントもいるほどで、その中でもランサーはまだおとなしい方である。

 

 歩き続けて住宅街を抜けると、目の前に河川敷が広がっていた。すぐ近くに電車の通る橋がかかっており、丁度人少なな電車が春日駅から隣駅へと走り抜けていった。

 区画上、春日市の北端はこの美玖川を境にしている。向こう岸は隣の市だ。三人はそのまま河川敷へと降り、静かな水面を眺めながら周囲をうかがった。

 観察を続けて、しばらく。

 

「……何もないわね」

「……何もないな」

「……うむ」

 

 聖杯戦争最終決戦時、セイバーとライダーはここで戦っていたらしい(そのときは宝具を放った後のようで、周囲一帯が水浸しになっていたそうだ)。そのため確認しても損はないと思ったが、特に何もなかった。

 

「まあ、何もないならないでいいか。でも、やっぱ昨日と同じで……」

 

 一成が肩をすくめて何とはなしに対岸を見た時、何か気にかかった。

 当然隣の市にも住宅街があり、家家の明かりがあるはずなのだが、どうにも静かすぎるような……いや、特に不審な個所はないのだが。

 

「……天眼通が使えればなあ……でもあれは……」

「……何か言った?」

「あ、いやなんでもねえよ」

 

 一人言を理子に聞かれ、一成は慌てて首を振った。千里天眼通はもう使うなとキリエと明に言われているのに、一度使ってしまいうまくいった実績があるから、ふと頼りたくなってしまう。使用による反動が凄まじいのは承知だが、うまくいってしまったのだから――一成は慌てて頭を振った。

 

「ここは何もなさそうだけど、美玖川自体はそこそこ長いわよ。もう少し川に沿って歩いてみましょう」

 

 一同は川沿い、東に向けて歩き始め――真っ先に、ランサーが足を止めた。


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