とある提督の追憶   作:Red October

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ここまでのあらすじ…

奇妙な夢を見た新人自衛官:堺修一は、いきなり提督に任命され、艦娘を率いて深海棲艦を破るよう命令される。派遣されたタウイタウイ泊地のド田舎ぶりに絶望しながらも、彼は初めての建造をこなし、吹雪・子日よりなる艦隊を編成して、出撃するのだった。


004 提督と、はじめての提督業務 其の弐

(危ない所だった……)

 

 それが、堺の思ったことだった。

 彼が乗艦(?)している吹雪も、足が震えている。

 子日に至っては、その場にへたりこんでいた。

 

 艦隊の背後には、本拠地たるタウイタウイ泊地。出撃して3分と経っておらず、まだそこまで小さくはなっていない。そして、艦隊の前には、黒煙を吹き上げ、2つに折れて沈んでいく船…ではないナニカがいる。勿論、深海棲艦である。

 なんでこうなったかというと…

 

 ………

 

 吹雪の艦橋(らしい所)に妖精と化した堺が乗り込んだ後、吹雪・子日の2人は、滑り台のようなカタパルトを使い、海上へと飛び出した…と、思ったその直後だった。

 泊地全域に、警報が鳴ったのである。

 

「陸上に設置された哨戒電探に感あり、深海棲艦が接近中!反応は数1、小さい!」

 

「艦隊出撃!迎撃せよ!」

「総員、地下壕へ退避せよ!」

 

 泊地から聞こえてくる放送に注意を取られていた時。吹雪の声がする。

 

「前方、12時方向、敵艦発見!距離約2000!」

「吹雪ちゃん、提督、どうするの?」

 

 子日の声もする。前方を見ると、青い波の中に、黒光りする何かが浮いていた。あれが…深海棲艦…?

 

「数ではこちらが有利だから、このまま突っ込んで左舷戦闘行くぞ!」

「りょーかい!砲雷撃戦、はりきっていきましょう!」

「私がやっつけちゃうんだから!」

 

 堺の周りでは、妖精たちが忙しく動き回っている。妖精の1人が、なんか立派な帽子を被って周囲にやたら指示を出しているのを見ると、こいつが艦長の立場なのだろう。

 

「現在の速度は?」

 

 その妖精が、別の妖精に声をかけた。その妖精は、「機関出力」などといった文字が光る、奇妙な機械を操作している。

 

「12ノットであります!」

 

 どうやら、機関長を務める妖精のようだ。

 

「増速!両舷前進第5戦速!」

「アイアイサー!」

 

 機関長妖精に指示を出した堺は、続いて別の妖精に指示を飛ばす。

 

「右20度転進!」

「了解!面舵20!」

 

 別の妖精が復唱し、操舵輪を右に回した。

 

「全艦、戦闘配置に付け!砲雷撃戦用意!」

「総員、戦闘配置!砲雷撃戦よぉーい!」

 

 次に飛ばされた艦長妖精の指示には、いかにも戦慣れしていそうな雰囲気のいかつい妖精が応じた。彼が戦術長のようだ。

 …あれ?砲雷撃戦なんてワード、海自用語にはなかったような…

 

「主砲旋回!目標地点、10時方向、距離1500!」

「了解!10時方向、仰角15度!」

 

 いかつい妖精に指示を飛ばす艦長、さすが肝っ玉がすわっている。堺なら、こんな真似はできない。 

 

「1番魚雷発射管、転回よし!魚雷装填完了!」

 

 すると今度は、何やら双眼鏡を備えているらしい測距装置を覗きこんでいた妖精が、報告を出した。魚雷の扱いは、彼に一任されているらしい。

 

「砲撃用意!第1主砲、装填よし!」

 

目の前で、次々と指示が飛ぶ。その間にも、艦隊は深海棲艦に接近していく。向こうも、こっちに気付いているようだ。

 

「敵味方、距離1200!」

 

 見張り台から、伝声管を通じて報告が飛び込んできた。

 

「目標視認、艦種識別!駆逐ハ級1隻!…敵艦発砲!」

 

 伝声管からの報告が続く。

 

「怯むな!このまま進めぇ!」

「ヨーソロー!」

 

 艦長の指示に、航海長が叫んだ。

 

「距離1000!反航戦です!」

「敵弾来ます!」

 

「撃ち方始め!いっけぇー!」

 

 と、吹雪の声がどこからか聞こえた。

 

「衝撃に備え!」

「てー!」

 

 艦長の指示。続いて、戦術長が伝声管に叫んだ。

 ドォン!と音がする。吹雪の抱えている12.7㎝連装砲が火を吹いたのだ。高速で射出された砲弾が、空を切って飛んでいく。

 とその時、どこからかヒュルルル…と、敵弾の飛翔音が響いた。

 次の瞬間、ズドォン!と音がして、吹雪の左の海面に、白い水柱が噴き上がる。

 

「敵弾弾着!左舷、遠弾1!口径は恐らく5インチ!」

「下手くそめ、かすってもいないじゃねえか!」

 

 見張り台にいる観測長妖精の報告を聞いて、砲術長を務める妖精が、敵の砲撃が当たらなかったことを罵った。

 

 …だが、堺には、今の砲術長の発言はフラグにしか聞こえなかった。

 

「子日発砲!本艦の弾着…4、3、2、弾着、今!」

 

 観測長の報告の直後、遠方でズシーン!と音がする。

 駆逐ハ級の左側面に水柱が2本立った。

 

「左舷、遠弾2!人のこと言えねぇな!」

「(;ω;)」

 

 観測長からの、若干イヤミの入った報告。

 哀れ砲術長は、見事にフラグを回収してしまったのだ。

 

「さて、俺の出番か(ポキポキ)」

 

 その横で、水雷長が指を鳴らす。

 

「子日、弾着今!」

 

 見張り台からの報告。

 その直後、敵・駆逐ハ級の側面に、ぱっと閃光が走った。少し遅れて、ドカーン!という爆発音が届く。

 

「子日、初弾命中!敵艦炎上!」

「(ToT)」

 

 哀れなり砲術長…

 

「左舷9時方向、魚雷戦用意!」

 

 次は、水雷妖精たちの仕事だ。

 艦橋に詰めている水雷長、各発射管にいる妖精たち、みんな気合い十分である。

 

「2、3番発射管、魚雷装填完了!転回よし!」

「深度010、調整急げ!」

「調整よし!」

 

 調整が終わったところに、

 

「距離500!」

 

 観測長の報告が入る。

 

「てぇー!」

「魚雷発射!」

 

 水雷長の、裂帛の気合い。

 酸素魚雷にこそスペックは劣るものの、それでも十分な威力を持つ魚雷が、命中を期して放たれた。

 

 ………

 

 …で、吹雪と子日の魚雷が命中して、今に至るというわけである。

 

「ふぅー…」

 

 戦闘終了直後の吹雪の艦橋には、弛緩した雰囲気が満ちていた。

 

「ふっふーん♪どうだぁ、参った?」

 

 通信機から、子日の得意そうな声が飛び込んでくる。今回の戦闘のMVPは、子日だった。

 と、その時。

 

「艦長!羅針盤が!」

 

 航海長の妖精が、艦長妖精に叫ぶ。

 みると、羅針盤が黄金色に光っていた。

 

「これは…!司令官殿、回してください」

「えっ!?これ回すの?」

 

 艦長に突然お願いされ、堺はすっとんきょうな声を上げた。

 仕方なく、羅針盤を回してみる。しばらく回った後、針は北東を指した。

 

「取り舵一杯!」

「ヨーソロー!」

 

 だが、このあとは特に会敵もなく、泊地に帰還することとなった。

 

 

 

 吹雪が陸に上がると同時に、堺は吹雪の艦橋から外へ、光に包まれてはじき出される。地面に足が着くと同時に、本日3度めの ンデロリーン♪ が鳴った。

 司令部に戻ると、大淀が迎えてくれる。

 

 

「提督、おめでとうございます!」

「ああ、ありがと…おや?泊地正面海域護衛の任が達成できてない?」

「どうやら、敵の主力艦隊を叩かないと達成にならないみたいです」

「ふむ、そうか…」

「かわりに、次の任務がきましたよ」

 

『駆逐隊を編成せよ!』

 

「これか。まぁ、でもまだムリだな、2隻しかいないし」

「いえ、3隻ですよ提督」

「ん?いつの間に増えたんだ?」

「艦隊が帰投する少し前に、新しい子がきたんですよ」

 

 大淀がそう言った時、ドアがガラッと開き、新たな艦娘が1人入ってきた。

 セーラー服にスカートと、見た格好は吹雪と似ている。ついでに雰囲気も、少し違うが、まあ似ている。

 艤装については、吹雪と同じ…と思ったら、煙突の周りの管の形状が異なっている。

 茶色の髪を、黒のリボンを使って短いポニーテールにまとめていた。

 

「アタシの名は敷波(しきなみ)。以後よろしく。」

 

 かくして、また1人、新たなる仲間ができたのだった。




更新が遅くなり申し訳ありません!

忙しかったのと、思い出すのに手間がかかってしまった…


あと、書いていて思いましたが、戦闘時の艦内の台詞が飛び交うシーン、結構見にくい…それと、知識ガバガバすぎる…


今後ともよろしくお願いします!

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