とある提督の追憶   作:Red October

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Red Octoberと申します。
今作が艦これの初の作品です…が、処女作というわけではありません。

亀更新になる可能性大ですし、文章がわかりにくかったり、設定がgbgbだったりすると思いますが、よろしくお願いいたします!


プロローグ

 …目の前には、明るい白い色が一面に広がっている…

 

 …遠くの方から、静かな重低音が規則的に響いてくる…

 

 …そして、自分の体は、かすかに上下している…

 

「………な…、……た…」

 

 どこからか、何かが聞こえる…どこか音楽的で、美しい声が…声?

 

「…た、貴方、起きてくださいよ!」

 

 声と同時に体を揺すられ、彼ーー堺 修一(サカイ シュウイチ)は目を開けた。ついうたた寝をしてしまっていたのである。

 未だ寝ボケている頭を振って、眠気を振り払う。そこでようやく、さっきまで見えていた白い色は乗っている船の天井であること、規則的な重低音は波音と船のエンジンの音が混ざった音であること、自分の体が上下していたのは波のせいだったことを理解した。

 自分の右には、1人の女性。色白の肌に、腰まで届く茶色の髪をポニーテールに纏めた女。率直に言って、かなりの美人。そして彼女は、彼の妻なのである。

 

「もう着きますよ。降りる準備をしてください」

 

 そう言われてハッと気付く。一昨日日本を発ったと思ったのに、もう着いたのか。そういえば日差しもキツくなってきている。

 

 窓から外を見やる。雲1つない空から降り注ぐ、熱帯特有の突き刺すような日差し。どこまでも続く蒼い空と、同じくらい青い海に挟まれるようにして、緑の島・ミンダナオ島が浮かんでいる。船内放送が聞こえてきた。

 

「この度はご乗船いただきまして、誠にありがとうございました。間もなく、本船は最終目的地、フィリピン・ダバオに到着いたします。どなた様も、お忘れ物なきようご注意下さいませ…」

 

 放送を聞きながら、キャリーバッグを手元に引き寄せる。持ってきた物はもう纏めてあるから、今から慌ててバッグに詰め込む、なんてことにはならない。

 

 ダバオで船を降り、そこから半日くらいかけてサンボアンガまで移動。そこで1泊した後、また船に乗った。

目的の地は、もうすぐである。

 

 1日程かかって到着した場所。そこは、スル諸島の南西に位置する、けっこうな大きさの島だった。

その名を、タウイタウイという。

 

 

 

「…懐かしいな」

「ええ、懐かしい場所です」

 

 堺達2人が来ていたのは、そのタウイタウイ島のほぼ中央の南岸。そこには、奇妙な光景があった。

 

 どこまでも広がる、熱帯の自然。それに埋もれるようにして、明らかな人工物が点在していた。

 

 ひび割れたコンクリートの、建物の土台部分。建物は焼け落ちて、なくなってしまっている。

 もう何年もの間、一隻の船の寄港もなかったというのがはっきりわかる、寂れた埠頭。

 倒壊し、半ば海中に没している、錆び付いたガントリークレーン。

 

 どう見ても廃墟でしかなく、訪れる人などいないのだが、しかし。

 この場所こそ、2人にとっては最大の思い出の場所だった。

 

「…あのクレーン、まだ残っていたんだ。物資の揚陸や兵装の転換なんかに使った…」

「この辺は、甘味処があった辺りですね。あの日の声、まだ覚えています…」

「今更だが、あの戦乱がなければ、俺は君と会うこともなかったのだな」

「はい…」

 

 あの戦乱…かれこれ1世紀半もの間続いた、深海棲艦と呼ばれた異形の存在との戦いの時代のことである。

 今となっては5年くらい昔のことだが。

 

 しばらく佇み、思い出に浸った後、彼 ーかつて深海棲艦との戦いに身を置いた男ー と、彼の妻 ーかつて彼の指揮を受け、深海棲艦と直接砲火を交えた、世界でも最大級の戦艦だった女ー は、廃虚 ーかつて「タウイタウイ泊地」と呼ばれた、対深海棲艦攻撃拠点の司令部の1つー から立ち去っていった。




堺の妻というのが誰なのか、分かったという聡明な方もいらっしゃるかも…が、箝口令を敷いています。ネタバレ禁止!

主人公となる提督ですが、モデルはうp主となっています。ただし一部うp主のプレイと異なっています。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします!

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