女の子に提督やら司令やら呼ばれる、という夢を見た堺修一は、日本国海上護衛軍・艦娘部隊の一員となり、タウイタウイ泊地に送られる。四苦八苦しながらも、彼は深海棲艦を撃退したり、対外演習を経験したりするのだった。
18年1月9日に、本文中の「大本営」表記を「総司令部」表記に改めました。
コンコン!とタウイタウイ艦隊司令部・提督室の扉がノックされた。
「はい、どうぞ」
提督である堺が声を出す。
横開きの扉がガラガラと開き、入ってきたのは大淀だった。
「提督、駆逐艦寮の建設ですが、視察したところ工程は順調に進んでいます。4割ほどできた、とのことです」
「4割か…ううむ、資源を結構持っていかれるなぁ…」
「そこは提督のお仕事ですよ。資源を遠征で獲得しないと」
「やってはいるんだけど、どうも収入より支出が多くて…」
当然だが、お金が入ってこなくて出ていくばかりでは、財布はいつか空になる。
「それについてなんですが、遠征をより遠くに出してみてはどうでしょうか」
「え?今のところ遠征は泊地周辺海域しか出せないけど、もっと遠くへも出せるようになるのか?」
「はい。実はそれに関しまして、総司令部から先ほど、このような通信が届きました」
「ん、総司令部から?どれどれ…」
〈作戦指令書〉
作戦名:ハ号作戦
南西諸島方面ニテ、深海棲艦ノ活動盛ンニナリツツアリ。南西諸島ノ各泊地及びビ基地ハ、連合シテ此ヲ撃砕スベシ
「南西諸島、ね…ここも入るのか?」
「はい。南西諸島にある泊地というのは、ブルネイ基地、リンガ泊地、パラオ泊地、そしてここ、タウイタウイ泊地です」
「大本営が言ってるこのこと…深海棲艦の活動が活発になってるってことだけど、もし本当なら、あれも説明つきそうだな」
「先日の空襲のことですね」
「うん」
先日の空襲であるが、あの時は、敵の航空機が来たといっても、その数は多くはなかった。また、堺は赤城や瑞鳳の航空隊の実戦や演習の風景を見てきている。今だからこそそう思えるのだが、あの時の敵は練度もそんなに高くなかったように感じられる。
しかし、このまま深海棲艦の活動がより活発になれば、どうなるか。
聞くところによれば、この辺りの海には、通常の個体とは異なる、赤や黄色のオーラを纏ったものーーそれぞれ、赤が「elite」、黄色が「flagship」と呼称されるーーが出現すると言われる。
堺はまだ見たことはないが、それらは全て、今堺が相手している深海棲艦の、スペックアップ型だと聞いている。
もしそんなものがぽんぽん現れて、暴れまわったらどうなるか。
タウイタウイ泊地は少しずつ発展しつつあり、九六式25㎜対空機銃や八九式12.7㎝高角砲の配備も進みつつあるが、やはりまだまだである。そんなものが現れては、すぐに蹂躙されることは火を見るより明らか。今のうちになんとかしなくてはならないだろう。
(それに、もしこの戦いで活躍すれば、また予算とか資源とか回されるだろう。それに、いろいろとやりたいこともあるしな)
と考えた堺は…
「この作戦、報酬については何か聞いてるかい?」
「はい、作戦成功の暁には、南西諸島一帯での遠征艦隊の活動が可能となり、より多くの資源を集められることにつながるだろう、と言っています」
「たしかに、敵がうろうろしてたんじゃ、軽装備の遠征艦隊では対処は難しいな。かといって、護衛に主力艦を出していたのでは、コストパフォーマンスが悪化する…か。わかった、作戦命令の受諾を総司令部に打っておいてくれ」
「かしこまりました」
正式に、八号作戦の受諾を決定した。
読んでいた資料「航空戦艦と瑞雲」を押しのけ、艦娘たちの予定表を取り寄せつつ、堺は心の中でつぶやく。
(さて、他のとこの提督たちや総司令部とも打ち合わせしなきゃならんだろうし…忙しくなるぞ、こりゃ)
提督室の窓の外には、駆逐艦寮の建設の音が、響きわたっていた。
…この作戦のさなか、堺はある艦と運命的(?)な邂逅を果たすのだが、それはまた、別の話である。
今回は短めになりました…
まあ、次の導入みたいな部分なので、これはこれでいいのかな…?
この後、堺の艦隊は南西諸島方面での活動を開始していくわけですが、どうなっていくのか…お楽しみに!