とある提督の追憶   作:Red October

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今回は、現代の場面に戻って、その様子を描写することにしました。なにせタイトルに「追憶」って書いてるので、タイトル詐欺をやるわけにいきませんからね(笑)

いつもより文字数少なめですが、たまにはこういう回があってもいいよね。
以後、10話ごとにこんな回を挟んでいきたいなと思います。



010.5 閑話休題1

「あの時は、大変だったな、ホントに…」

 

 日本国の某港街。その市井の一角、堺の家。

 居間の、テーブルに面した椅子の上で、堺はため息をついた。

 

「教育隊卒業したての、右も左もわからん新米に、いきなり提督やれって、そりゃ無茶ってもんだよ…」

「まあ、あの時は深海棲艦領への大攻勢作戦にしくじって、人員多数戦死で人材不足も甚だしかったからな。それに、前任が逃げちまった?だか何だかで消えたんだろ?んなら、仕方なかったんじゃねえかな」

 

 彼にそう返すのは藤原海斗。こちらはソファーに腰かけている。なんだかんだで教育隊以来の腐れ縁である。

 彼は今日は、妻を連れて、堺家を訪れていた。

 

「しかしよ堺、相手が艦娘とはいえおめぇが結婚するとはな。教育隊の時は真面目なヤツだったから、女はできんもんかと思ってたよ」

「そういうお前は女ったらしだったよな。挙げ句に駆逐艦なんぞと結婚しやがってこのロリコン」

「おいおい、ロリコンはねえだろう。この通りちゃんとデカくなったんだしさ」

「はわわわ、堺さんは相変わらず手厳しいのです…」

 

 藤原の結婚した相手というのは、口癖から察しがついたと思うが、(元)駆逐艦電である。もっとも今の電の姿は、提督諸氏が連想する、あの小さい子どもではない。

毎朝の牛乳のおかげか、背も伸びて大人の女性になった電である。年齢はざっと30代半ばくらい、というところか。口調と気弱なところはあまり変わってないが。

 

 電や堺の妻に限らず、艦娘は、艤装に付いている妖精との契約により、肉体年齢が固定されている。艦娘として艤装を付けている間は、年は取っていくが、見た目や体力は一向に変化しない。

 つまり分かりやすく言うと、某ちょび髭の男の言う、オッパイタランカッターな子は、艦娘である間はいつまでたってもオッパイタランカッターなままなのだ。

 しかし、艤装を改修素材にするなり解体するなりして、艦娘であることをやめ、艤装妖精との契約が切れると、容姿に変化が出ることがある。というか、駆逐艦の場合ほぼ必ず出る。

 さっきの例で言えば、オッパイタランカッターな子が、オッパイプルーンプルンな子になるかもしれないのである。

 

「と言ったって、お前は艦娘だった時からケッコンしてたじゃねぇか。だからロリコンつったんだよ」

「だーかーら、俺はロリコンじゃねぇっての。ただ小さい子が好きなだけじゃねえか」

「それをロリコンっつう」

 

『それ以上はやめるのです。でないと二人の口に酸素魚雷を突っ込んでやるのです』

 

「………」

「………」

 

 口論になりかけた所に、電の声が割り込む。が、その声はふだんの気弱なものなどではない。黒いものがふんだんにこもった、冷たい怒りをはらんだ声である。

 その声に、堺と藤原は双方ともに黙りこむことを余儀なくされる。

 

「貴方、紅茶が入りましたよ」

 

 (元)電のせいでできあがった奇妙な、しかし重苦しい沈黙を破ったのは、堺の妻だった。

 手に持った盆には、湯気のたつ紅茶のカップが4つ。その他角砂糖やレモン、ミルク、クッキーもある。

 

「お二人も、どうぞ召し上がっていってくださいな」

「はわわ、ありがとうなのです!」

 

 寒々しさすら感じられるような室内が、一気に暖かくなった。重く寒い沈黙から解放された堺と藤原が思ったことは、ただ1つ。

 

(俺(堺)の嫁グッジョブ!!)

 

 

 

 しばし堺の妻の淹れた紅茶で午後のティータイムを楽しんだ後で。

 

「貴方、何の話をしてたんです?」

「ああ、俺の提督として着任したばっかの頃の思い出話をな…」

「ちょうどよかった、私も聞いていいですか?私は、わりと遅くに着任したので、最初期の頃の様子は知らなくて…

「そういや、着任遅かったな。いいよ、大して面白い話でもないけど、聞きたいなら、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 堺の妻も交えて4人。午後のお茶を楽しみつつ、堺の話は続いていく…。

 

 

 …というわけで、これまでここに載せてきたのは堺の回想だったのである。

 そして、まだまだ続いていく…




電…やりたかったので、途中でぷらずま成分を入れてみました。
あと、閣下ネタを出しておりますが、快く思わなかった方、申し訳ありません。
うp主の愚考では、あれ以上に適切な例えを考え付かなくて…

「こんな作品のネタ入れて欲しい」等ありましたら、感想か、活動報告の「提督質問箱」までよろしくお願いします。
藤原の過去編については…現在書くかどうか迷っております。希望ありましたら、ご一報くださいませ。
この作品が終わるメドがたったら、書いていくかもです。

次回からまたしばらく、堺の過去の回想に戻ります。


17.11.08 追記。現時点で以下の作品の要素が入っております。

・宇宙戦艦ヤマト(主に艦橋内での戦闘描写)
・銀河英雄伝説(この戦争が1世紀半続いている、ってあたり。あと今回本格的に出した、堺の妻の紅茶と、藤原の女たらし設定)
・総統閣下シリーズ(随所にダイレクトに入ってます)

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