ストライクウィッチーズ ~音速のウィッチ~   作:破壊神クルル

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1話

散り行く桜は二度と元に戻ることは無い…

 

そうだ、それは決して無いのだ…

 

特別攻撃ストライカーユニット『桜花』 11型…パートナーのウィッチ、または航続距離の長い一式陸上攻撃機にて目標に接近、切り離される人間爆弾だ…

 

ロケット推進により得られる高速推進を利して敵の防衛網を突破、必死の体当たり攻撃を敢行する目的でソレは生まれた…

 

そして‥装備し、出撃したウィッチは二度と生きて戻る事は無い…

 

散る桜が還らない様に…

 

それはネウロイによって追い詰められた人類が生んだ、死の桜だった…

 

 

大西洋 ブリタニア連邦 アイルランド 沖合

 

「敵が見えた!!」

 

「ありがとうシャルロット!!もう平気だ!!ありがとう!!」

 

「ラウラ、後は任せたよ!!ラウラ!!」

 

「ああ!!」

 

「ラウラさん!!」

 

(シャルロット…すまない…そして、宮藤…お前との約束を果たせなかった私を許してくれ…)

 

眼前に迫る空母の形をした水上型のネウロイ。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

眩い閃光に私‥‥ラウラ・ボーデヴィッヒは思わず目を閉じた。

次に目を開けた時は‥‥ヴァルハラで戦死した皆と会えることを願って‥‥

 

 

 

 

西暦 1944年 ブリタニア連邦 第501統合戦闘航空団 基地 滑走路

 

 

「こら!!宮藤!!リーネ!!何をちんたら走っておるか!!もっと気合いを入れて走れ!!周回遅れだぞ!!」

 

「「は、は~い」」

 

健全な精神は健在な肉体に宿る。

ネウロイと戦うウィッチもそれは例外ではない。

今日も今日とて此処、第501統合戦闘航空団の滑走路ではウィッチ達が体力強化のため、坂本少佐のしごきを受けながら基地の滑走路でランニングをしていた。

その中で最近、第501統合戦闘航空団に入った宮藤とリーネの二人は他のウィッチ達と比べて体力が無いのか周回遅れとなっていた。

だが、宮藤の場合はつい最近まで、軍人とは無関係の普通の女子中学生だったのだから、無理もない。

リーネの場合はその走るたびに揺れる大きな胸が彼女の重りになっているせいか、余計に体力を消耗させるのだろう。

同じ胸が大きいシャーリーは軍に入る前から音速に挑戦するバイク乗りとして体力には自信があったし、体力作りはしていたので、軍に入ってからもこうしたランニングとかでへばったりはしなかった。

既に宮藤とリーネ以外のウィッチはランニングを終えており、滑走路で走っているのは宮藤とリーネの二人だけである。

 

「「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」」

 

宮藤とリーネは汗だくになりながら、滑走路を走っていたのだが、

 

「ん?あれ?」

 

突然、宮藤が海岸線で何かを見つけて立ち止まる。

 

「あれ?どうしたの?芳佳ちゃん」

 

ランニングをしていたリーネも突然走るのを止めて海岸を見つめている宮藤に気づき、足を止める。

 

「こら!!宮藤!!リーネ!!誰が休んでいいと言った!」

 

当然、二人の行動は坂本少佐も気づいており、許可もなく突然ランニングを止めた二人を叱咤する。

 

「す、すみません」

 

リーネは何故、宮藤が走るのを止めたのか理由が分からなかったので、坂本少佐に怒られ恐縮し謝る。

しかし、宮藤は海岸線をジッと見ており、坂本少佐が近づくのを確認して、

 

「坂本さん!!大変です!!あそこに誰かが倒れています!!」

 

「なに?」

 

「えっ?うそ!!」

 

宮藤が指を差した浜辺では人らしきモノが打ち上げられているのが確認できた。

リーネも宮藤に言われて初めて浜辺に打ち上げられている人らしきモノを確認できた。

一応、この基地にはウィッチの他にもストライカーユニットを整備・調整をする整備員やら電探・通信員、事務員やら他にも大勢の人間がいるのだが、浜辺で倒れている人間はこの基地の人間には見えない。

 

「ミーナ、浜辺に漂流者を見つけた。医務室の用意と手空きの者を集めて来てくれ」

 

坂本少佐は内線電話でこの基地の責任者であるミーナ中佐に報告し、宮藤とリーネを連れて先に漂流者が打ち上げられた浜辺に急行する。

 

「コイツは‥‥ウィッチなのか?」

 

「えっ?でもこのウィッチ、何で男性の飛行服を着ているんでしょう?」

 

「そんな事よりも早く医務室へ運ばないと!!」

 

浜辺に打ち上げられていたのは足にストライカーユニットらしきものをウィッチと思しき少女なのだが、その少女が着ていたのは、自分達が着ている女物の軍服ではなく、男の飛行機乗りが着ているツナギの様な飛行服だった。

坂本少佐とリーネが打ち上げられたウィッチらしき少女に疑問を感じている中、宮藤は息がるのかを確認し、まだ生きている事から早く医務室へ連れて行こうと言い、抱き上げようとするが、

 

「お、重い‥‥」

 

少女の身体は重く宮藤一人では持ち上がらなかった。

 

「手伝うよ、芳佳ちゃん」

 

そこで、リーネも宮藤を手伝うが、

 

「「うーん‥‥」」

 

二人がかりでも持ち上がらない。

 

「全く、だらしがないぞ、二人とも」

 

見かねた坂本少佐も手を貸すが、

 

「むっ?」

 

三人がかりでも重く、何とか波打ち際から上げる事が出来たぐらいで、此処から基地の中の医務室まではまだまだ距離がある。

早く医務室へ運ばなければならないのにこんなに重くては手遅れになる可能性もある。

 

「やむを得ん。装備品を外して、少し軽くするぞ」

 

「「は、はい」」

 

そこで、少女が身に着けていた装備品を外して軽くすることにした。

坂本少佐が救命胴衣の様なベストを外した時、

 

「こ、これは!?」

 

坂本少佐が思わず声を上げる。

 

「どうしたんですか?」

 

「なにかあったんですか!?」

 

「く、来るな!!」

 

「「えっ?」」

 

「宮藤、リーネ!急いでシャーリーを連れて来い!!」

 

「えっ?シャーリーさんを‥‥ですか?」

 

「でもどうして?」

 

坂本少佐は何故かシャーリーを呼んでくるように伝える。

 

「ああ、それと爆弾処理用の道具と防護服も一緒に持って来い!!」

 

「爆弾処理って‥‥」

 

「もしかして‥‥」

 

「ああ、そうだ。このベストの内側には大量の爆薬が仕掛けられている」

 

「「‥‥」」

 

坂本少佐の言葉に二人は絶句し思わず唖然とするが、

 

「何をしておるか!!早く行け!!」

 

「「は、はい!!」」

 

坂本少佐の大声でハッと我に返り、基地へと走っていく。

先程までランニングをしてバテていたのにあのダッシュ力‥‥これが火事場の馬鹿力と言うヤツなのだろうか?

やがて、宮藤がシャーリーを連れて、リーネが爆弾処理に必要な道具と防具服を持って戻ってきた。

その他にルッキーニの姿も見える。

 

「なんだ?なんだ?突然、宮藤から爆弾処理をしてくれって頼まれて来たんだけど‥‥」

 

シャーリーは機械いじりが得意なので、こうした爆弾処理も出来ると思い坂本少佐は彼女を呼んだのだ。

呼ばれた本人も嫌がったり、怖がる様子もなく、まるで日曜大工をするかのようにやって来た。

 

「爆弾?あのドカーンってヤツ?どこ?どこにあるの?」

 

爆弾と聞いてルッキーニは爆弾を探すかのようにキョロキョロと辺りを見回す。

 

「それで少佐、爆弾は何処?」

 

シャーリーが防護服を着ながら処理する爆弾の在処を尋ねる。

 

「このベストの中にある。それとベルトの中にも仕込まれていた」

 

坂本少佐は少し離れた場所に隔離したベストとベルトを指さす。

 

「あれが爆弾なの?」

 

ルッキーニはスキップしながら爆弾に近づく。

 

「そうみたいだな。ルッキーニ、危ないから触るなよ」

 

シャーリーが一応、ルッキーニに警告するが、

 

「ツンツン」

 

ルッキーニは何と木の枝で爆弾入りのベストを突っつき始めた。

 

「こら、何をしている!?ルッキーニ!!」

 

坂本少佐が慌ててルッキーニの行為を止める。

 

「えぇ~だってぇ~」

 

ルッキーニは不満そうだが、一応、ルッキーニが突っついていたのはただのベストではなく、紛れもなく爆弾である。

炸裂すればこの距離でもシールドを張る間もなく致命傷を負う。

 

「ホラ、ルッキーニ。危ないから下がっていろ」

 

防護服を着終えたシャーリーが解体用の道具片手に爆弾処理を始める。

その間に宮藤達は少女からストライカーユニットを脱がして医務室へと運ぶ。

装備とストライカーユニットを外すと少女は軽かった。

 

「ストライカーユニットは後で整備班を回して回収してもらおう」

 

シャーリーは爆弾処理を行い、宮藤達は少女を医務室へ運んだ。

 

医務室にて宮藤が治癒魔法をかけるが、少女がその日に目覚める事はなかった。

その間にシャーリーが解体した爆弾と整備班が回収した少女が使用していたストライカーユニットの調査が行われていた。

調査結果はミーナ中佐の下に寄せられたが、どれもこれも驚くばかりの内容だった。

少女の武装は身に着けていた爆弾が仕込まれていたベストとベルトのみ。

使用していたストライカーユニットはカールスラントでつい最近になって製作が決まったジェットストライカーらしき魔導機関を使用していたと言う。

また、持ち物からカールスラント軍人に授与される騎士十字も見つかっており、少女がカールスラントのウィッチである事が確認できた。

 

「桜のマーク‥‥扶桑のモノに似ているが、カールスラントでもこんなマークをつける部隊やウィッチがいるのか?」

 

坂本少佐は少女が身に着けていた桜のマークが描かれた鉢巻を見ながらミーナ中佐に訊ねる。

 

「いえ、カールスラントでは植物よりもどちらかと言うと動物の方が多いかしら?」

 

「あのウィッチ‥戦闘で落とされたのだろうか?」

 

「でも、この近くでネウロイとウィッチが交戦したなんて記録はないし、第一この周辺は私達の管轄の筈よ」

 

「確かに‥‥」

 

もし、この近くでネウロイが出現し、戦闘があったのだとすると、501にも当然報告が入り、出撃命令が出る筈である。

しかし、今日一日、そんな命令は出ていないし、ネウロイの出現報告もない。

では、あのウィッチは何処から来たのだろうか?

未だに製作が出来ていないジェットストライカーを身に着けていた事など、実際に彼女に聞かなければならない事があった。

 

それから三日間、少女は眠り続けた。

宮藤やリーネが心配で時々、医務室を覗いていたが、時折彼女は魘されている様だった。

そして‥‥

 

「うっ、うぅ‥‥」

 

少女がゆっくりと目を開けた。

 

「此処は‥‥何処だ‥‥?」

 

少女が目を開けると石と木で出来た天井が目に入る。

 

「ヴァルハラでは‥‥ない‥‥私は‥‥私はまた、生き残ったと言うのか‥‥」

 

出撃前夜、死にたくないと言う思いがありつつも、いざ出撃の時間を迎えた時、もう完全に生への執着は吹っ切れたと思っていたのに、自分はまたもや生き残ってしまった。

 

「くっ‥‥」

 

両手で顔を抑える少女。

それは悔しさからなのか、それとも再び生き恥を晒してしまった事による羞恥なのか本人しか分からない。

 

「あっ!目が覚めました?」

 

「大丈夫ですか?」

 

そこへ宮藤とリーネが彼女の様子を見に来た。

二人の声を聞いて、少女は手を退けて、二人の姿を見る。

 

「宮藤‥‥」

 

「えっ?」

 

少女は宮藤の顔を見て、彼女の苗字を口にする。

 

「芳佳ちゃん?知り合いなの?」

 

「う、ううん‥‥」

 

リーネから知り合いなのかを訊ねられると宮藤は自信なさげに首を振る。

 

「な、なにを言っている!?私だ!!ラウラ・ボーデヴィッヒだ!!お前と私、シャルロットで何度も会い、出撃の前の夜にハーモニカを預けただろう!?」

 

ラウラと名乗る少女は自分と顔見知りの様な事を言うが、宮藤本人は初対面であるし、彼女の言うシャルロットと言う人とも会ったこともなく、彼女からハーモニカなど預かってはいない。

 

「えっと‥‥一先ず落ち着いてください」

 

宮藤はラウラと名乗る少女を落ち着かせる。

 

「私、ミーナ中佐と坂本少佐を呼んで来るね」

 

リーネがミーナ中佐と坂本少佐に少女が目を覚ましたことを伝えに行く。

 

「今、この基地の責任者の人が来ますので、話はその後で‥‥」

 

「あ、ああ‥分かった」

 

自分の事を知らない様子の宮藤に困惑しつつもこの基地の責任者‥‥ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐が来るのを少女は待つことにした。

やはて、坂本少佐を連れてミーナ中佐がやって来た。

 

「はじめまして、漂流者さん。私は第501統合戦闘航空団司令官、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ」

 

「同じく、第501統合戦闘航空団所属、坂本美緒だ」

 

「わ、私は第501統合戦闘航空団所属 宮藤芳佳です」

 

「第501統合戦闘航空団所属、リネット・ビショップです」

 

ミーナ中佐、坂本少佐、宮藤、リーネが自己紹介をし、

 

「七二一航空隊 神雷部隊所属、ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

ラウラも四人に自己紹介をした。

もっともラウラにとって宮藤に自己紹介をするのはこれで二回目であった。

しかし、四人はラウラの自己紹介を聞いて首を傾げたり、懐疑的な視線を送る。

自分の事知らない様子の宮藤‥‥

ラウラの明日はどうなるのだろうか?

 




続編があるかは読者の反応で決めるので、読者の反応が良ければ続けます。


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