安心院なじみの新たなる暇つぶし
「やあ、球磨川君。僕だよ。みんな大好きな美少女にして平等な人外安心院なじみさ。突然で悪いんだけどちょっとお願いがあるんだ。まあ当然のごとく拒否権はないよ。さすがに言彦にやられたのは堪えてね。今さっき復活したばかりなんだが、その足で親愛なる球磨川君に会いに来たわけなのさ。そんな健気な美少女のお願いは断らないだろ。そういえばちょっと見ない間に大嘘憑きが成長したようでうれしいよ。それでお願いだ。というのも今さっき異世界をぶらりと回ってきたんだがね。世界には主人公と呼ばれるような人が二、三人位いるのさ。ああ拗ねるなよ、君に会いに来たのは本当に復活してすぐさ。僕にとっちゃ君と話しながら異世界を巡るなんて容易いことだしね。そうそう話を戻そう。復活したばかりで調子が掴めないな。球磨川君には主人公になって欲しいのさ。その為に先輩たる現主人公に会って欲しいんだよ。君をマイナスとはいえ少しはマシにしためだかちゃんの様な主人公にね。もしかしたら君をプラスにしてくれるかもしれないしね。やる前から諦めるなよ。確率は相当低いだろうけどないわけじゃあない。できないものなんてないってことは僕が散々証明したんだからね。そうそう主人公には会えば分るさ。球磨川君の嫌いなエリートだから。才能に愛されたオーラがあるからね。そろそろ行ってもらおうか。前置きが長すぎるとテンポが狂うからね。あぁ言い忘れるところだった。その主人公ちゃんは今小三でね、球磨川君にはもう一度小学校生活を楽しんでもらう。逆行程度でやり直せる人生だとは思わないけれどね。安心しなよ。今更君のスキルを返せとは言わないさ。これ以上の質問は君が死んだ時に頼むよ。君の成功と勝利を僕は心より祈っているよ」
そういって生まれ変わるスキル『
「さあ球磨川君。君が主人公に引き上げられるか引き下げるのか楽しみに見させてもらうよ」
『まったく安心院さんはいつも突然だぜ。それでその主人公ちゃんはどこにいるのかなぁ。安心院さんは会えばわかるって言ってたけどなぁ』
そう言って少年がベンチから身を起こすと、ポケットに紙片が入っているのに気づく。そこには私立聖祥大附属小学校の三年生であることと、明日から登校する事。
そして自宅の場所が書いてあった。
『おぉ本当に小学校からやり直すことになるなんて』
不思議な心地で自分の姿を確認するが、それは紛れもなく九歳の時の球磨川禊その人であった。
爽やかさなんて欠片も無い笑顔と混沌を煮詰めたかのような瞳。
それだけが依然変わりなく存在している。
『
スキルの効果は問題ないとは言えないがおおむね好調だった。
『まっ適当にやってみるか』
そうして球磨川禊は公園を後にした。