東京喰種:is   作:瀬本製作所 小説部

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彼女の思い




それはまっすぐで、正直な心




僕はそんな彼女の思いに、どこか感動をしたんだ








明らかに

琲世Side

 

 

「こ....こんばんは...セシリアさん」

 

「ごきげんよう...佐々木さん」

 

僕の部屋に訪れたのはしばらく帰ってこなかった刀奈さんではなく、

今日クラス代表になったセシリアさんだった。

もう就寝時間が近いせいか、寝間着姿でやってきたのだ。

 

「ど、どうかしました...?」

 

僕は彼女の口を恐れた。

その理由には以前セシリアさんが僕に言った話が脳裏にあった。

以前セシリアさんが時間があれば決闘を申し込むと言っていた。

もしかするとそれを伝えにきたのではないかと感じたのだ。

 

「ちょっとご相談がありまして...今お時間は空いていますよね?」

 

「お時間ですか...?」

 

「ええ、それで少しの間だけでいいですからできますでしょうか?」

 

「.......大丈夫です」

 

少し間を開け、僕は彼女の言葉を受け入れた。

相談と言うなら別に問題ないはず....

僕はセシリアさんを部屋に入れた。

 

「...佐々木さんは一夏さんと一緒じゃないのですね」

 

「え?あ、は、はい...他の人になっちゃってまして...」

 

どうやら僕が一夏くんとは一緒の部屋ではないと気づいたらしい。

僕がいる部屋は散らかっているものはなく、一通り女子が使っているものは見当たらない。

いわゆる女の勘というものだろうか?

そう考えるとセシリアさんは僕のデスクにあった椅子に座った。

 

「あの、紅茶でも飲みますか?」

 

「あ、い、いえ、すぐに出ますので...」

 

僕は「あ、そうなんだ...」と言い、刀奈さんのデスクにあった椅子に座った。

僕も緊張をしていたが、向かい側にいたセシリアさんもどこか緊張を持っていた。

なんだかいつもの学校で見る姿とは違うせいか、緊張が不意にしてしまう。

気楽に話したいのだけど...

 

(とりあえず、相談を聞こう...!)

 

このまま沈黙が漂っていたらまずいので、僕は口を開くことにした。

 

「それで...相談って?」

 

「...私はクラス代表を辞退しようと考えてます」

 

「...えっ?」

 

僕はそのセシリアさんの言葉に驚いてしまった。

クラス代表は一夏くんではなく自分にふさわしいと言っていたセシリアさんが、

まさかの辞退を口にしたのだ。

決戦前に僕に声をかけたセシリアさんとは正反対であった。

 

「クラス代表をやめるって...なんで?」

 

「私は一夏さんの戦いにて感じたのです」

 

「一夏くんの戦いで?」

 

「ええ、その......」

 

するとセシリアさんはだんだんと声が小さくなり、口を噤んでしまった。

少し顔が赤くなり、手を胸に置いて握る。

 

「...私、一夏さんに....その.......惚れたのです」

 

「....え、惚れた?」

 

それを耳にした僕は、思わず驚いてしまった。

一夏くんとは本気で嫌っていたセシリアさんが、まさかの一夏くんを好きになっていたのだ。

 

「私は彼の思いに惹かれ、まさに私が考えた"理想の男"にふさわしい人なのです」

 

僕はセシリアさんの思いにまだクラス代表の辞退の驚きもあるが、一夏くんの思いを聞いた驚きもあった。

セシリアさんの目はまっすぐと僕の目を見ていた。

彼女の瞳は嘘はついていなかった。

決して迷いもないっと言っているように見えたんだ。

そう言えば、戦う前では一夏くんを"織斑さん"と言ったのだけど、今では"一夏さん"と下の名前を呼んでいた。

 

 

 

 

 

彼女は変化をしたんだ。

 

 

 

 

 

「......そうなんだね」

 

「それで....私は本当にやめてもよろしいでしょうか」

 

「..え?」

 

するとセシリアさんは僕の目をそらした。

 

「私は一夏さんに高圧な態度をとってしまい、もし私がクラス代表を辞退と伝えたら...」

 

セシリアさんはどこか恐れていた。

確かに一夏くんに上から見るような感じに見ていて、結構仲が悪かった。

もし一夏くんに辞退すると考えると恐ろしくなるのはわからなくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、一夏くんは違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかしたら一夏さんは...」

 

「大丈夫ですよ」

 

僕は迷うセシリアさんにはっきりを答えた。

下を向いていた彼女は顔を上げた。

 

「一夏くんは決して人をバカにするような人じゃないですよ。あまり話さない僕でも他の人でもみんなに優しくしますから...」

 

「そうなんですか....と言うか佐々木さんはその割には結構話しますね」

 

「そうかな...僕はあまり話さない方だと思いますが...」

 

僕はそう言うと頭に右手にそっと置いた。

不安そうな顔だったセシリアさんに笑顔が戻った。

 

「いえいえ、私とは相談やお話を乗ってくだいますよ」

 

「まぁ、まぁ....今更だけどそうだよね...」

 

僕が温厚な性格なのかそれともセシリアさんが他の人とは違うせいか、

意外と結構話し合っている。

そんな時、セシリアさんの口からある話が上がった。

 

「そういえば一夏さんはもう専用機を持ってますが、佐々木さんの専用機は?」

 

「専用機?ええ、僕はまだもらっていませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすでに僕は持っている。

 

でもそれを証明するにはISを展開しないといけない。

 

もし許可なしにISを展開すれば処罰がくる。

 

なぜ展開しないと証明ができないかと言うと、

 

一夏くんの専用機"白式"の待機状態は右腕に籠手がつけられているような状態けれど、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕のISの待機状態は、"普通"には見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうなんですか....」

 

「僕は別に専用機はすぐには欲しいと考えてないので...」

 

「まぁでも、佐々木さんに専用機は来ると思いますよ」

 

「どうでしょうかね...」

 

僕は苦笑いをした。

演じるように笑った。

 

「あ、こうこんな時間ですか。でも私は部屋に戻りますわ」

 

「え?もう....結構時間過ぎましたね」

 

ふとセシリアさんの一声に時計を見た僕は驚いてしまった。

あっという間に時間が過ぎてしまった。

 

「お話できてよかったです」

 

「うん、僕も同じくだよ」

 

そう言うと僕たちは扉の前に移動し、僕はドアを開けた。

 

「でもおやすみなさい、セシリアさん」

 

「Good night 琲世さん」

 

セシリアさんはそう言うと部屋から出て、扉を閉めた。

 

(...なんで僕の名前を言ったんだろ?)

 

僕は少し気になった。

先ほどセシリアさんは僕を"琲世さん”と言ったのだ。

あまりにも一瞬だったため、気がつくのが遅かった。

そう思うとなんだか嬉しかった。

他の人からこんな嬉しいことを味わうのは、めずらしかったからだ。

 

(...やっぱり本場の英語はすごい)

 

今更だけど、セシリアさんが英語を喋る姿は今のが初めのような気がする。

しかも日本に短く滞在しているのに、結構日本語はうまい。

 

(まぁ...イギリスで学んだのかな?)

 

世界的には英語が必修言語で学内では英語が当たり前のはずだけど、

海外からきた生徒や先生もバリバリ日本語で話している。

 

 

 

その時であった。

 

 

 

(...ん?)

 

セシリアさんが去った後、またドアからノックの音が聞こえた。

しかもドアが閉まって数十秒ぐらいで。

 

(...戻ってきたのかな?)

 

おそらくセシリアさんは何か言い忘れたことがあるのではないかと思い、

僕は躊躇なくドアを開いた。

そこに立っていたのはセシリアさんだと考えていた、僕。

立っていたのは"違う人"であった。

 

「どうかしま」

 

「やっほ〜♪」

 

「.......」

 

僕は思わず口をすぐに閉じてしまった。

油断をしてしまった。

と言うか”忘れてはならない人”がいたことに僕は忘れていた。

 

「.....楯無さんですか」

 

同じルームメイトの刀奈さんだ。

刀奈さんがやっと戻ってきたのだ。

 

「なんでそんな落ち込んだ感じなの?」

 

「え、い、いや....帰って来るの遅いなって」

 

「それは仕方ないじゃない。ていうかさっきセシリアちゃんと何してたの〜?」

 

「もしかして....セシリアさんが部屋から出るまでずっとドアに待機してたんですか」

 

「正解っ!!鋭いわね〜佐々木くんっ!」

 

刀奈さんはそう言うと正解と書かれた扇子を広げた。

セシリアさんと話している時に帰ってきてもおかしくなかったのだけど、

僕はふと妙に感じていた。

刀奈さんなら相談中に部屋にくるようなことをせず、ドアでこっそりと耳にしている姿が自然と頭に浮かんだ。

なにせ"国家代表"であるから、状況を深く理解できるはずだ。

でも結局僕はセシリアさんの相談になんだか恥ずかしく感じてしまう。

 

「...まぁ、帰ってきてよかったですよ」

 

「そう?もしかして、心配してくれたの?」

 

「それも一理ありますけど、今何時だと思いますか?」

 

時計の針はもう12時であった。

 

「もしかして"裏方の仕事"で時間がかかったのですか?」

 

「それもあるかもしれないけど...ってそれは言わないの」

 

刀奈さんはそう言うと僕の口に人差し指を置いた。

 

「そういえば、さっきのセシリアちゃんの会話を聞いて気づいたのだけど」

 

「まだそれを言うのですか?」

 

「佐々木くんは一夏くんと比べると....どこか大人っぽいよね?」

 

「そうですか?」

 

「うんうん、なんだろうね...どうも"15歳の男の子"じゃなくて、"本当の大人"に見える」

 

「なんですか...それ..」

 

僕は刀奈さんのよくわからない理由に、少し呆れた。

僕があの部隊"に所属していたせいかもしれない。

部隊のほとんどが僕より年上だから、大人のようにな雰囲気になったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"本当の理由"は僕は知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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