東京喰種:is   作:瀬本製作所 小説部

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俺のIS


それは他とは違うように感じるんだ






決闘

琲世Side

 

 

セシリアさんが一夏くんに決闘を申し込み、その時が過ぎた。

一夏くん与えられた1週間は、あっという間に早く来てしまったように感じた。

 

(一夏くんの元に行かないと..!)

 

先ほど僕は司令室にいたのだが千冬さんが急に、

『佐々木、織斑と篠ノ之の元に行け』と言ったため、

急いで一夏くんと箒さんがいるピットに向かっている。

そもそも最初に僕が司令室にいたのは千冬さんの指示でいたのだ。

おそらく僕をピットに向かわせたのはおそらく"問題"が発生した時に出動させるからかもしれない。

ピットと司令室までは決して遠くはないものの、妙に長く感じる。

おそらく焦りのせいかもしれない。

 

(あ、あそこだね!!)

 

やっとAピットと書かれた開閉式の自動扉が僕の瞳に写り、そこに向かった。

おそらくその中に一夏くんと箒さんが待機しているに違いない。

そして僕は一夏くんたちがいるピットに入って行った。

 

「ごめん!おくれ」

 

「だから箒、目をそらすな!」

 

「.....ふんっ」

 

扉が開いた瞬間、謝ろうと言った僕は思わず口を止めてしまった。

二人がいるピット内はなぜか険悪な空気が漂っていたからだ。

 

「あ、あの...どうしたの?」

 

「ん?て、あれ?琲世なんでここに?」

 

「織斑先生が『ピットに向かえ』....と言われてね」

 

僕は少し恐れるように織斑くんに理由を伝えた。

一夏くんたちには『琲世は司令室にいる』と千冬さんは一様伝えていたのだが、

急遽僕がピット内にやって来たことに驚いたかもしれない。

僕が恐れるように口を開いたのは、上では織斑先生が僕たちを見下ろす感じに見ていたからだ。

司令室から見えるガラスはピットの様子が見れる。

もし何か変なことしたらあとで千冬さんに怒られ、"あのパンチ"が来るかもしれない...

 

「それで...なんでこんな空気に?」

 

「箒がISのことを一切教えてくれなかったから、こんなになったんだよ」

 

「え?」

 

決戦前というのに、ISに関する特訓はしていないと言ったのだ。

 

(と、とりあえず...箒さんに聞こう)

 

口を塞いだまま反対に向いていた箒さんに聞くことにした。

確かこの1週間、セシリアさんと対抗するため一夏くんと特訓をしたと耳にしたのだが、

果たして一体どんな特訓なのか?

 

「...箒さん?」

 

「なんだ?」

 

「その一夏くんと、どんな練習をしたかな?」

 

一夏くんをクラス代表生にするために箒さんは何か特訓をしているとクラスの人から聞いた。

その練習は僕は知らなかったため今更ながら箒さんに聞いた。

 

「...剣道をしていたな」

 

「...え?」

 

箒さんから出た言葉に耳を疑った。

 

「剣道って....まさかISの練習は」

 

「......」

 

僕の言葉を聞いた箒さんは目をそらした。

つまり、ISに関する練習は一切していない。

というか前の授業でISを作った篠ノ之博士の話題で、箒さんに多くの生徒から注目があったが、

本人はISに関することを姉である篠ノ之束から教わってないと公言した。

それを反してISの特訓となると少し考え難い。

 

(二人がこんな険悪な空気になるのが...なんとなくわかるよ...)

 

でも箒さんと一夏くんはこの学校で初めて出会ったわけじゃない。

確か二人ともはお互い幼馴染だ。

千冬さんから聞いた話だと、一夏くんと箒さんは小学校から知り合っている。

そう考えると他の人の指導よりは緊張はせずいいかもしれない。

 

「あれがセシリアのISか...」

 

するとアリーナの様子を流していた画面が目の前に現れ、一機のISを写していた。

 

(ブルー・ティアーズ...)

 

空中に待機している青い機体。

イギリスの第三世代型ISで、射撃を主力とするISである。

搭載されている"BT兵器"のデータを得る為に開発されたと言ってもいいISだけど、

まだISに不慣れな一夏くんにとっては脅威と言ってもいいだろう。

 

「織斑くん!織斑くん!」

 

すると司令部から山田先生の声が聞こえた。

 

「今、織斑くんの専用機が到着しました」

 

どうやら今、一夏くんが使用するISが来たらしい。

本来なら他のISを使うはずあったらしいが、

今回は時間がないためにあるISが用意された。

 

「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナを使用できる時間は限られている。迅速に動け」

 

千冬さんがそう言うと、硬く閉ざされた扉がゆっくりと開かれた。

その扉の奥には、一機のISが現れた。

 

(これが一夏くんが使うIS..)

 

 

 

 

僕たちが目にしたのは、白いISであった。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

一夏Side

 

 

「これが俺の...」

 

俺はISスーツに着替え、用意されたISの目の前に立った。

このISは"白式"と言われている。

それは今まで目の前で見てきたISより違うように感じる。

 

(.....よっし)

 

俺は気持ちを落ち着かせ、そのISにそっと手を触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのIS触った瞬間、俺は"何か"を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....っ!」

 

「どうした?一夏?」

 

「...感覚が違う」

 

俺は触れた瞬間、驚いた。

そのISは最初に触ったISとは全くと言ってもいいほど感覚が違ったのだ。

 

「織斑、今すぐ装着しろ」

 

「あ、ああ....」

 

俺は背中を預けるように機体に身を預けた。

すると自動的に俺の体に装着していき、

腕、胸、足に装甲が着けられていく。

鋼鉄の冷たさと硬さが身に感じられて、本当に自分はISを装備していると実感できる。

ISを装備して感じる感覚も、早く慣れないといけない。

なにせアリーナに使える時間は少ないのだから。

 

「..........」

 

(...ん?)

 

すると俺は琲世の様子に何か変に感じた。

琲世の目つきが変わっていたのだ。

先ほど穏やかで暖かい目つきが、俺のISをどこか冷たく見ていた。

 

「...琲世?」

 

「ん?」

 

「どうしたんだ?」

 

「え?....あ、ああ....なんか普通の練習機と違ってね...」

 

琲世は慌てた様子でそう言うと、顎をこするように触った。

 

「どうだ?気分は悪くないか?」

 

「問題ないさ」

 

「...そうか」

 

千冬姉はそう言うと、少し微笑んだ。

この学校に来て以来、初めて微笑んだ姿を見た。

 

「琲世、箒」

 

「ん?」

 

「な、なんだ?」

 

俺は一緒に付き添っていた二人に声をかけた。

 

「行ってくる」

 

「あ...ああ、勝ってこい!」

 

「がんばって、一夏くん」

 

俺はISを発射台に配置に着き、姿勢を構えた。

 

(よし....行くぞ!!)

 

そして俺は勢いよくアリーナに発射された。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

箒Side

 

 

始まってしまった、試合。

ピットから見える試合の様子に私と佐々木は見ている。

私は"篠ノ之束の妹”と言う特権と言うものがあったおかげか、他の人が一夏を指導させることなく特訓ができた。

でも姉さんから教えられたことはなく、昔一緒にやっていた剣道で特訓をすることになった。

それが今回の対決で響くのはそらしたくなるが、結局は私が作ってしまったことには変わらない。

一夏がどうか勝ってほしい。

 

 

 

 

 

 

 

でも私は試合だけを見ていたわけじゃないんだ。

 

 

 

 

 

 

(........)

 

 

私はある人に目を向けていた。

 

 

 

 

 

 

それは隣にいる人物、

 

 

 

 

 

佐々木琲世(ささきはいせ)だ。

 

 

 

一夏より身長が少し小さく、下が白で上が黒の変な髪色をした男だ。

制服は他の人と違いシャツとスラックスだけは黒だ。

私が会った時、どこか"嫌気"と言うものが自然と浮かんだ。

琲世の隣にいると、なんだか"誰か"に似ているように感じる。

その"誰か"とは、私が幼き頃に出会った人物であり、

一夏と一度別れるきっかけを作った"男"だ。

 

『君が篠ノ之さんの妹だね』

 

ある時、突然"その人物"がやってきた。

その男は一夏の姉の千冬さん姉さんと交流のあった男だ。

姉である篠ノ之束はISを開発したことで世に名を知られ、

世界がISと言う兵器に注目していた。

しかしある時突然姉さんは行方不明となり、

私も含む家族は政府の重要人物保護プログラムによって各地を転々とした。

 

 

 

 

 

その時家にやって来たのは、その男だった。

あの時に見た顔は、人らしさがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

"人に似たバケモノ"に見えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

その点では佐々木も同じだ。

どこか人らしさが感じられない。

まるで"あの男"に似ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あの箒さん?」

 

「ん?」

 

「どうしましたか?」

 

ふと琲世の言葉にぼーとしていたことに気づき、私は我に帰った。

考えていたせいか周りの音が一瞬にして戻った感覚がした。

佐々木は私に声をかけていた。

 

「あ、い、いや...」

 

私は少し慌ててしまい、目をそらした。

佐々木は私の行動に変に感じたのか、頭を傾けていた。

 

「それで...一夏はどうだ?」

 

「一夏くんは最初セシリアさんの攻撃を避けるだけだったけど、箒さんの特訓の成果が出ていたよ」

 

「成果が...?」

 

私は"過去"を思い出してしまったせいで、一夏の様子を見ていなかった。

 

「一夏くんの武器は雪片弐型(ゆきひらにがた)という近接用武器の刀しか持っていなかったから、

 射撃型のISを使用しているセシリアさんに不利だったのだけど、弾丸をうまく交わしてセシリアさんに接近して攻撃をしたよ」

 

「そ、そうなんだな....」

 

その話を耳にして私は心の中でひっそりと喜んだ。

ISの特訓ができなかったと少々後悔をしていたのだが、

佐々木の話に私がやった剣道の特訓が報われたように思えた。

しかも試合を詳しく見えなかった私にとって、細かく知れてとても助かった。

 

「それで...今はどうだ?」

 

「今は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝者 セシリア・オルコット』

 

 

佐々木の声を打ち消すように結果がアリーナに大きく伝えた。

 

「...え?」

 

「負けた...?」

 

先ほどの佐々木の話とはかけ離れた結果が大きく放送された。

 

(い、一体どうなっている...?)

 

私は中継画面を見たが、その様子ははっきりとした結果ではなかった。

 

「一夏くんは...やられてはないね」

 

どうも判定がおかしく見えた。

 

 

 

 

 

一夏が攻撃を加えようとした目の前で止まっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

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琲世Side

 

 

外はすっかりと星がきらめく夜となっていた。

 

 

僕は一人、ベットの上で本を読んでいた。

部屋に聞こえる音は本を開く音しか聞こえず、

珍しく静かであった。

 

(...なんで喜んだ姿をしたんだろう)

 

試合が終わった時、箒さんはどこか残念そうだったが、

夕方ごとに見た箒さんはなぜか満足した様子であった。

何かいいことがあったのだろう?

 

(そういえば...刀奈さんどうしたんだろう?)

 

刀奈さんは未だに帰っては来てない。

いつもは刀奈さんとの会話か、からかいで部屋は騒がしいのだが、

今はとても静かになってした。

 

(一夏くんが負けてしまった....)

 

僕はふと今日の試合を思い出す。

男として一夏くんを応援をしていたのもあるのだけど、

セシリアさんも心の中でこっそりと応援していた。

一夏くんはあと一歩でセシリアさんに勝てるはずであった。

しかしタイミング白式のシールド・バリアーがゼロになってしまった。

それは白式の零落白夜(れいらくびゃくや)と言う能力が原因だ。

その能力はは相手のエネルギー兵器の攻撃の無効化、

シールドバリアーを斬り裂くことで相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えられる白式の単一仕様能力だ。

それでびゃく式のシールドバリアーがゼロとなり、試合終了したわけだ。

 

(千冬さんが使用した能力とまったく同じだ)

 

直接は見たことはないけど、ISの世界大会モンド・グロッソの試合で千冬さんはその能力を使用した。

さすが僕はそんな千冬さんとは戦おうとは思わない。

"あの人"も同じくそうだけど。

 

(指導してあげたいんだけどな....)

 

あの一戦で僕は色々発見ができた。

まずは一夏くんはISを使ってでの実践練習が必要だ。

剣道だと剣術を学べれるかもしれないけど、

ISだと剣道とは違い地面での戦いではなく、空中での戦いだ。

僕はそんな一夏くんにISを指導をしたい。

でもまず僕が専用機を持っていると口を出してはダメ。

そうしたら"めんどくさいこと"になる。

 

「ん?」

 

ふと気がつくと、ドアのノックする音が聞こえた。

僕はベットから立ち上がり、ドアに向かった。

頭に一瞬刀奈さんのいたずらが浮かんだのだけれど、

さすがにそんなことはないと心を落ち着かせ、僕は息を吸った。

もしかすると刀奈さんじゃないかもしれないとね。

 

(...よしっ)

 

僕は気持ちを整えた後、ドアを開けた。

 

「こんばん....」

 

ドアを開けた瞬間、僕は驚いてしまった。

僕がいる部屋に訪れて来たのは、セシリアさんだった。

 

 

 

 


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