東京喰種:is   作:瀬本製作所 小説部

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一夏Side

 

 

それは突然のことだった。

ラウラと箒のペアとの対戦中に突如異変が起きた。

 

「な、なんだよ...これ...?」

 

その経緯について説明しよう。

まず俺とシャルルはラウラと箒のペアと戦っていた。しかも他の人よりも一番最初である一回戦で。

それでシャルは先に箒をダウンさせ、その後に俺とシャルはラウラと戦った。

ラウラは予測通り、箒とは協力をせず一人で挑んできた。

一年生野中では一番強いと言われるラウラだが(琲世はラウラとは同格?)、二体一での戦いでは力が発揮されなかった。

その後にシャルがラウラをアリーナの壁まで叩きつけ、このままラウラはダウンするかと思われた。

 

だが、予想とは反した異変が起きたのだ。

 

「なに...あれ...?]

 

突如ラウラのISから電撃が現れ、ラウラを攻撃していたシャルは吹き飛ばされ、アリーナを騒然とさせた。そしてラウラのISが光が反射しない黒い液体へと変化し、ラウラを包み込み、黒い液体はある形へと変化していく。

 

「っ!」

 

俺は変わってしまったラウラを見てあることに気がついてしまった。

その変わってしまった形は昔から見てきた"ある人の姿"。

俺はそれを見た時、怒りを感じた。

 

「シャル、下がってろ...」

 

「...え?」

 

俺はシャルにそう言うと持っていたブレード形の雪片(ユキヒラ)を構え、

 

「この野郎っ!!」

 

そして俺は黒いISに迷いもなく突っ込んだ。

 

 

「っ!!」

 

しかし黒いISは俺の攻撃を即座に防ぎ、そして俺が気がついた時、ヤツの攻撃を受ける数秒前だった。

 

「ぐはっ!!」

 

ヤツの攻撃を左腕に受けた俺は遠くに吹き飛ばされ、そしてあっという間に俺のISが解除された。ISが解除されるということはエネルギーが全て消え去ったこと。俺はあの一振りで一気に体力を消されたのだ。

 

(あの動き...間違いなく千冬姉だ...!!)

 

あの攻撃は明らかにラウラのISの動きでなく、千冬姉の動きだ。

長く見てきたからこそわかる、この感覚。

それが今、あの黒いISがやっている。

そんなの許せない。

俺はヤツに怒りを抱いていた。

そんなことを考えていた俺にまたもや何かが起きた。

 

「っ!!」

 

それは黒いISにまっすぐと突っ込み、そして刀同士をぶつけた音をアリーナに響かせた。

異変を感じた俺は前に振り向くと、シャルルと箒が使用したISとは全く違うISがヤツに攻撃をしていた。

そのISの操縦者は俺と同じくISを使える男 琲世だった。

 

「琲世!!」

 

「....」

 

琲世は俺の声を聞こえていたみたいだったが、返事はなかった。

なぜ琲世が返事をしなかったのか、琲世の様子を見ればわかる。

 

「っ!」

 

琲世は鍔迫り合いの状態から脱すると、即座に別の箇所に刀を向け、黒いISから攻撃を防ぐ。

 

(あいつ...攻めに入れていない...!)

 

琲世はヤツの攻撃には避けたり、武器で防御することはできているが、攻撃をすることができなかった。

それにヤツの攻撃を防いだ時は、琲世が歯を食いしばるほど押されていた。

 

「ハイセ、大丈夫!?」

 

先ほど俺の声が聞こえなかったと知ったシャルは琲世に通信を入れた。

 

「...大丈夫なんかじゃない。これはかなり厄介だよ」

 

「厄介...?」

 

ヤツの攻撃をなんとかして防いでいる琲世だからわかる説得力。琲世が言うには間違いなかった。

 

「最初これを見た時はなんなのかはわからなかったけど、後々にわかったよ。あれはラウラさんのISに入っていたVTシステムだよ」

 

「VTシステム...それはなんだ...?」

 

「簡単にいえば、モンド・グロッソの優勝者のデータを再現するためのシステム。つまり目の前にいるのは、織斑先生の強さを再現しているのに等しいよ相手だよ...!」

 

琲世はそう言うと、間一髪でまたヤツから攻撃を防いだ。今度は琲世の顔が当たる数センチ前。俺だったら間違いなく攻撃を受けていた。

 

『佐々木、今すぐ武器をしまえ』

 

「えっ?」

 

すると黒いISと戦っていた琲世に千冬姉の通信が入った。

 

『あいつは武器か攻撃で反応するプログラムを保有している。お前が攻撃、もしくは武器を保有し続ける限り、奴は襲いかかる。ひとまず体勢を整えろ』

 

「...わかりました」

 

琲世はそう言うと手にあった刀を光の粒子で消し、素早く黒いISから離れ、俺の横についた。

千冬姉の言う通り、黒いISはそのまま琲世を攻撃しなくなり、動きが止まった。

 

「一夏くん、腕に血が流れているけど腕は大丈夫?」

 

「ああ、大丈夫だけど...痛みがあるな..」

 

ヤツの攻撃で俺は左腕に血が流れていた。怪我は骨まできておらず、手で抑えればなんとかなるぐらいだ。

 

「...わかった。じゃあ、一夏くんは下がって」

 

「っ!」

 

俺は琲世の言葉にハッと目を見開いた。

 

「悪いけど、この相手は一夏くんたちには勝てないし、僕でも対抗できるか怪しいぐらいだよ」

 

「....」

 

俺は琲世の言葉にはまったく耳が入らなかった。いや、まったく聞く気にならなかったと言えばいいだろう。この時の俺は琲世に苛立ちと言うものが生まれていたのだ。 

 

「だから一夏くんたちは後ろで待ーーー」

 

「待てよ!!」

 

苛立ちを抑えきれなかった俺は琲世の返事を遮り、琲世に近づいた。

 

「俺は戦えない...?なんだよ!俺は邪魔と言うのか?」

 

「い、いや...そんなことは...」

 

怒りを露わにした俺を見た琲世は驚き、戸惑ってしまった。

この時の俺は感情を表に出てしまい、琲世に根拠のない言い掛かりをぶつけてしまった。

 

「おい、一夏!落ち着け!」

 

すると先ほどの試合でダウンをした箒が俺を止めにきた。

 

「一夏、お前はこれ以上戦えないだろ?あとは教員部隊と琲世に任せーーー」

 

「俺はやらなきゃいけないんじゃない。俺はやりかいたいからやるんだ。あれは千冬姉だ。千冬姉しか持っていないものをあいつが使っている!だから俺はーーー」

 

とにかく形にならない怒りをぶつけた、俺。

だが琲世も黙ってはいられなかった。

 

「そんな私情で立ち向かうな!!!」

 

「っ!!」

 

突如琲世から出た怒号に俺は口を閉めてしまった

それは頬を打たれるよりも、心に伝わる怒りだった。

 

「何がぶっ飛ばしたいんだ!何が自分でやらなきゃいけなんだ!あれは前に戦った無人機とは大きく違う!あれはヤツではなく、ラウラさんだよ!!」

 

琲世は俺の目をまっすぐと見て、変わってしまったラウラに指をさす。

 

前にも琲世が怒りを出した姿を見たことがあるが、今俺が受けている怒りは前とは違う。

それは真正面にぶつける怒りであり、人間らしさのある怒りだ。

こんな琲世の怒りを見るのは初めてだった。

 

「今、彼女はあの中にいるんだよ?一刻も彼女を助けないといけないのに、そんな私意的な考えを持って挑むなんて一夏くんも危ないし、ラウラさんも危ないよ!」

 

「....っ」

 

俺だけではなく、周りも琲世の怒りを初めて見たのか騒然となった。

 

「僕は彼女を今すぐ助けないといけない。彼女は一夏くんたちには悪いことをしたかもしれないけど、僕は全く違う。僕は彼女とはどうにかして彼女を助けたい」

 

だが、俺もこのまま黙ってはいられなかった。

 

「悪いが琲世。俺はどうしてもあいつと戦わなけれならない。あいつは千冬姉の偽者だ。俺がこの手でやたらないと気がすまない」

 

「じゃあ、どうするの?すでにエネルギーを使い果たした白式をどうやって作動ーーー」

 

「それなら、僕のを使ったらどう?」

 

すると俺と琲世が言い合っている空気の中、シャルがすっと空気の中に入るように。

 

「シャ、シャルルくんのって...?」

 

「あれだよ。コア・バイパスで僕のリヴァヴのエネルギーを一夏の白式に移すんだよ」

 

シャルはそう言うと自分のISからケーブルを取り出し、俺の右腕にある籠手(ガントレット)に接続をした。

 

「多分、ISを完全に作動することはできないけど、武器を出すことはできるよね?」

 

接続するとシャルのISが光の粒子となって消え、そして俺の右手にあった籠手(ガントレット)に光の粒子が現れ、再び白式が起動をした。

白式を再び動かすことができたが、シャルの言う通り、腕と白式の武器である雪片しか現れなかった。

だが俺はそれでも十分に戦える。

 

それでシャルは自分のISが光の粒子で消え、地面に降りた後「ねぇ、ハイセ」と琲世に優しく声をかけた。

 

「ハイセの意見も一理あるかもしれないけど、一夏の意見も間違ってはいないよ。だから一夏のことを信じたら?」

 

「....」

 

シャルの言葉に琲世は熱が冷めたのか、無言で頷いた。俺も十分に熱は冷めたけど。

そして琲世は誰かに通信を入れた。

 

「あの、織斑ーーー」

 

『佐々木の判断に任せる』

 

「....」

 

琲世が千冬姉に応答をした瞬間、千冬姉は即座に返事が返した。

どうやら千冬姉も俺の意見に賛成をしているらしい。多分だけど、

 

「...わかったよ。ただし、僕は一夏くんのサポートで一緒に戦うよ」

 

「琲世のサポートなしで挑んでやる」

 

「まったく、それじゃあラウラさんと同じ道をたどるよ」

 

「...ああ、そうだな」

 

琲世はそう言うと光の粒子で消した刀を再び呼び戻し、刀を握った。

今思えば、琲世とは初のタッグだ。IS学園に来てからだいぶ時間が経っており、かなり新鮮に感じる。

 

「僕は彼女の攻撃から防ぐよ。ある程度なら攻撃手順は把握しているし」

 

「わかったよ。それで俺はあいつに一撃を加えればいいんだな?」

 

「うん、そうだね。僕の武器じゃ仮に攻撃できたとしても、効果は薄い。でも一夏くんの零落白夜(れいらくびゃくや)なら威力としては十分だよ」

 

琲世の刀はどんなものなのかは詳しくは知らないが、おそらく俺の雪片とは違いサブ武器であって、メイン武器はあの触手みたいなヤツだろう。

 

「だが、もし零落白夜(れいらくびゃくや)の攻撃がラウラに当ててしまったらーーー」

 

「刀の振り方は一夏くんの方がよくわかるはずだよ。織斑先生の一閃(いつせん)二断の構えでいけばいい」

 

「っ!」

 

俺は琲世の言葉にふと気づいてしまった。

なぜ琲世は千冬姉のことをよく知っているんだ?

俺が千冬姉の弟という事実は誰もが知っていることだが、琲世は千冬姉のことをよく知っているように見える。

その一つが先ほどの千冬姉の動きをコピーした黒いISの攻撃を予測していたかもように防いでいたこと。

そう思った俺はまたもや琲世の新しい視点を見つけてしまった。

琲世は一体なんだろうか?と。

そう考えていると、「い、一夏っ!!」と箒が近づいた。

 

「一夏、絶対に死ぬな」

 

「ああ、大丈夫だ。もしなんかあったら、琲世のせいにしてくれ」

 

「僕のせいって...まったく...」

 

琲世は俺の冗談にため息をすると、「じゃあいくよ、一夏くん」と刀を構えた。

琲世が武器を構える、ずっと止まっていた黒いISは再び動き出した。

 

「先に僕がいくから、一夏くんは零落白夜(れいらくびゃくや)を起動して、攻撃を」

 

「ああ、わかったぜ」

 

俺が琲世にそう言うと、琲世は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使用し、先に黒いISに飛び込んだ。

 

「っ!!」

 

さっきよりも黒いISに攻めに入る、琲世。ヤツにぶつかった後、すぐさま刀を振るい、耳が痛くなるほどの金属音を鳴らしながらぶつかり合う。その同時に攻撃に耐える琲世の歯軋り音が聞こえた。

 

「....零落白夜(れいらくびゃくや)、発動」

 

琲世が黒いISと戦っている間、俺は雪片を構え、目を閉じて集中した。

持っていた雪片にエネルギーが集中しているのがわかる。

俺の集中が頂点に達した時、雪片も最大限にエネルギーが溜まってきた。

あとは黒いISに攻撃するタイミングを掴むだけ。

俺は雪片を真っ直ぐと構え、 タイミングを見計らう。

琲世と黒いISとの戦いで出る音は全く消え、アリーナに吹く風の音が聞こえなくなる。

 

 

 

 

見えたーーー

 

 

 

 

「一夏くんっ!!!」

 

「っ!」

 

タイミングをつかんだとの同時に琲世の声を聞いた俺はハッと目を開き、黒いISの前に向かった。

黒いISは琲世と激しく戦っているにもかかわらず、俺は黒いISのすぐ目の前に入り込めた。

 

「くらえっ!!!偽者っ!!!」

 

黒いISの目の前に入り込めた俺は何迷いもなく縦に切り裂いた。

 

『っ!!!!』

 

刀傷が大きく刻み込まれた黒いISは動きが急に止まり、そして刀傷を中心に形が崩れていく。

刀傷の中心から、黒いISに飲み込まれていたラウラが姿を現した。

ラウラは意識が朦朧とした様子で左目につけていた眼帯が取れ、黒いISから離れていく。

 

「ラウラっ!」

 

俺は落ちていくラウラをすぐに抱き上げた。ラウラが黒いISから離れていくと、完全に形が崩壊し、ラウラのISであるシュヴァルツェア・レーゲンのパーツがアリーナに転がり落ちていった。

 

「ラウラさんっ!!」

 

俺がラウラを抱き上げた瞬間、琲世は自分のISを解除するなり、ラウラを抱き上げた俺の元にすぐにやってきた。

 

「だいぶ弱っているけど...大丈夫だね。ちゃんと息している。ああ...よかった」

先程の黒いISで激しく戦ったはずの琲世はラウラの首元に手をおき、ラウラが無事だとわかった瞬間、疲れなどなかったかのように安堵のため息をした。

 

「...琲世、ラウラのことをだいぶ心配しているな」

 

「当たり前だよ。だって、助かっただけでも十分に嬉しいから」

 

琲世がどれほど心配していたのかは琲世の顔を見ればわかるほどだった。

 

こうしてアリーナの騒動は俺と琲世の手で終わらせることができた。

前に琲世が無人機を倒した時とは違い、今回は俺と琲世で仕留めたのは一番大きかった。

なぜなら前の俺は琲世に任せっきりで何もできなったが、今回は自分で動くことができた。

 

 

 

 


 

 

ラウラSide

 

私が再び目覚めて約2時間が経った。

私は医務室に運ばれ、ずっと医務室のベットで過ごしていた。

その後に織斑教官から私が医務室に運ばれた経緯について聞き、今に至っている。

 

(さてと...食事を取らなければならないのだが...)

 

私が目覚めた時は夕日が沈む頃であったが、今はすでに夕日など消えてしまった夜であり、食事の時間だった。

織斑教官曰く、『食事は運びに来るから、そのまま安静しろ』と誰かが食事を運びに来るらしい。だが、一向に来る気配はない。

まさか忘れられているのでは?思った矢先、入り口が開く音がした。

 

「こんばんわ、ラウラさん」

 

「っ!」

 

私は入り口に目を向けていなかったのだが、誰がやってきたのかすぐにわかった。

 

「...佐々木琲世か」

 

私の元に現れたのは教官でもなく織斑一夏ではない

 

 

 

佐々木琲世だった。

 

 

 

 




次回、二人に進展か?もしくは...

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