[DEAR]~貴女と居た季節~   作:金宮 来人

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急に寒くなったかと思うと熱くなったり、また寒くなったりと嫌な季節です。毎年季節の変わり目には風邪をひくので本当に大変。
今年は凄く酷い事にはなっていませんが、昨年には大熱を出して酷い目に会いました。
愚痴をこぼしてしまいすいません。皆さま、体調にはお気をつけください。

では、本編へどうぞ。


07 異変と変質

体が調子の良い今日は散歩する事にした。

卒業式を無事に終えた俺は進学の用意も就職の用意もせず、ただのんびりとその時を待つ暮らしになった。趣味の料理はしても良いと言う事で今日は何か作ろうかと買い物に出かけたのだ。

そして、街に出るとイベントでISの展示をしていた。ソレは行列になっていて、展示しているISに男性でも触れて良いと言う物だった。昔からロボットとかに少し興味のあった俺は千冬姉がどんな物に乗っていたのか気になって触る事にした。

そして、触った時に頭に声が聞こえた。

 

真っ白な世界の中、頭に声が響く。

『ごめんね。』

何に謝ったのか分からない。それでも、君は悪くない。そう思った。

『間違いだったのに・・あの人だと思って・・』

誰かを待っていたんだね?でもその人じゃなかったようだね。

こっちこそごめんね、期待させて。

『貴方を困らせてごめんね』

いいよ、どうせもう少ない時間は面白い事が有る方がいいから。

『面白い思い出を作って・・』

うん。分かったよありがとう。

そう思ったら視界が戻った。

 

それは一瞬だったようだ。そこにあった触れているISが起動していた。

「男がISを起動させた!?」

その場は騒ぎになって俺は隔離された。

そして、隔離された後で千冬姉から連絡が来た。

『お前はとんでもない男だな・・。』

「迷惑かけてごめん。」

『いや、その方がいいのかもしれん。学園とIS委員会から連絡が来た・・。』

「俺はどうなるの?」

 

『・・・IS学園に入学してもらう事になった。』

 

願ったからか、千冬姉と藤岡さんが居る所に俺もいける事になった。

コレは二人と一緒に居られる幸運か・・死期を速める不運か・・。

ソレは今の俺には分からなかった。

そして、俺は結局緩やかな死を迎える事は出来ないのだと知った。

あの時の謝っていた声はソレを意味していたのかもしれない。

でも、それはそれでいいのかも。

いつでも波乱万丈な俺の人生だから。

 

「織斑一夏君。君はIS学園に入学してもらう事になった。お姉さんから聞いているね?」

「はい。」

「男性がISに乗れるかどうかのデータを取るために君には専用機を渡す事になった。これによって君は専用機持ちとなる。色々な注意事項や専用機持ちに課せられる罰則が有るから、それも後でまとめた書類を渡すので覚えてほしい。」

「わかりました。」

「・・君の病気の事は聞いた。その上でこのような事を課す我々を恨んでもかまわない。」

「いいえ、俺にこんな風に言ってくれる貴方達を恨む気など有りません。寧ろ、中途半端にしか取れない可能性もあります。その時は申し訳ない。」

「・・もっと君は私たちを罵って、怒るべきだと思うが・・。君はこの事によって死期が近づくだろう。体を酷使させる様な物だってある。それでも、私達に怒りを向けないと言うのかい?」

「はい。コレは俺が望んだ事かもしれないのです。千冬姉やその恋人の藤岡さんと一緒に心配されながらも過ごした日々が温かかった。ソレを少しでも感じて居たいと言う欲が有ったからこそ起きた奇跡かもしれないから。」

「・・君はもう覚悟しているのだね。」

「はい。余命を宣告された日に泣いている姉を見て、一度だけ繋がった天才に縋ってみたけど無理と言われた日に・・人として生きて、人として死のうと。」

「・・君はすごいな。達観している。醜く生きる物が多いこの世界でここまできれいに生きれるものか・・私からしてもまぶしすぎるよ。確かに君は誰よりも『今』を生きている。」

「それは千冬姉に自慢できますね。」

そう笑う俺に政府の高官と言っていた男性は頭を撫でてくれた。

「強く生きたまえ。」

 

 

白い制服に袖を通し、千冬姉について廊下を歩く。もう無理だと思っていた学校での授業。嬉しくないと言えばうそになる。面倒でもそれはもう自分には遠いものだと思っていたから。もう無理だと思っていたから。でも、千冬姉と藤岡さんに迷惑をかけるのは少し忍びないと思ってしまう。

千冬姉と藤岡さん・・宏樹さんに用意してもらって専用の部屋も決まった。宏樹さんと一緒の部屋でいつでも処置できるようにその辺の装備も充実させてもらった。

そして、寮の部屋も決まって、からの入学初日。

「初めまして、織斑一夏と言います。クラスの担任の織斑千冬の弟です。ISを動かしてしまったのでデータ取りのために入学が決まりました。慣れないISの事で迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします。」

そう言うと少ないながらも拍手が来た。後は懐疑的とか明らかに女尊男卑で嫌悪とか千冬姉の弟だからという理由でいじめてきた奴らと一緒の眼とかだった。

「さぁ、授業を始めるぞ。織斑は目の前のこの席だ。」

開いている教卓の前の席。休みかと思ったらそこが俺の席らしい。いや、もしかして千冬姉は俺の監視しやすい位置に席にしたとかじゃないよね?だとしたら過保護すぎるよ。

「それと、一応言っておくが私の事は織斑先生と呼ぶように。分かったか?」

「はい、織斑先生。あとは、保険の藤岡先生もですよね?」

「そうだな。授業中はな。放課後などで個人的な様な時とかならば良しとする。」

「はい。分かりました。」

「ならば、テキストの・・織斑はどこまで理解した?」

「えっと、PICのマニュアル操作までですね。データ取りのために必要な部分ですので。」

「そうか・・予習をしているならば問題ないな。ならまだ授業でもそこまで行ってないから安心しろ。前の続きのイコライザについてだ。」

そして、授業を受けて行く。そこは先に読んでいるのでノートにもまとめている。学園に行くまではひたすらにやる事がなくてずっと勉強していたので理解するまで読み続けた。その結果がこれならよかったようだ。授業では分からないとこはないが、テキスト内にあった部分で分からない事があったから放課後に聞きに行こう。

 

「少し、いいか?」

そう声をかけて来たのはポニーテールの長い女子。

「うん?箒か?」

「な!?わ、私を覚えているのか?」

「あぁ、剣道で競った仲だからな。覚えているよ。」

「そ、そうか・・。しかし私よりも強かったお前は、大会とかには出て無かったな。」

「全国大会の事か?アレは無理だ。篠ノ之剣道場が無くなって隣町まで出てたけど、殆ど型ばかりの剣道場で、試合はレベルが低かったからな。昔の篠ノ之道場の通っていた皆も剣道をやめて他のスポーツに走って行ったよ。」

「そうか、それは確かに仕方ないな。」

実際は確かにレベルは低かったが、それでも大会に出ようとはしていた。俺が無理になっただけだ。それでも信じやすいウソをついたのは彼女が憧れていた頃の俺の面影を汚したくなかったから。

「そう言う訳で今は剣道はしてない。中学も剣道はなくて柔道しかなかったんだ。続ける事も出来なくて軽い素振りくらいしかできなかった。」

「それはもったいないな。昔はあんなに強かったのに・・。」

「もう見る影もないよ。あぁ、そろそろ時間だぜ。昔話はまた後な。」

「そうだな。席に戻るとする。」

笑顔で居る彼女に俺は少し胸が痛む。ごめん嘘をついて。ごめん、君の憧れた織斑一夏じゃなくて。ごめん。

 

それからクラス委員はセシリア・オルコットという女子と聞いた。もし何かあるとかでクラス委員に聞かなければならない事が有るとしたら誰か把握しておく必要があるからだ。そしてその相手は、挨拶した時に凄い女尊男卑の目で見ていた金髪ロールの女子だった。コレは仲良くするのは無理と分かる。俺は基本的には千冬姉と宏樹さん、箒を頼りにさせてもらう事にしよう。

そして、一緒に箒と食事を取りつつ昔の話をする。あの思い出の場所は無くなったとか、公園は取りつぶされてしまったとか・・小さな小学校が合併していたとかそんな取りとめない話でも、俺の地元を離れた箒からすると懐かしい話だったようだ。そして、事件は起こる。

「あら、こんなとこに居ましたの?データ取りの日本政府の狗さん?」

「何?喧嘩でも売りに来たの?別にどうでも良いけど。」

「まぁ、躾の成って無いわね。まったくどう言った教育をしたらこんな風に生意気な口を聞けるのかしら?」

「俺の事を言っているなら、千冬姉の悪口になるけどいいの?」

「あら、そうでしたわね。聞きましたわよ?織斑千冬様の足を引きずるでき損ないと。織斑先生の強さの十分の一もたってないとか。同じ家族として恥ずかしくないのです?」

「そこまでにしr」「まあね。俺は弱いよ。千冬姉にたどり着くことなんか絶対にできないのも分かってるよ。それでも、家族として恥ずかしいと思って生きて来た事は一度もない。」

「い、一夏‥。」

怒りに任せて立とうとした箒の先をつぶし、あっさりと告げる。箒はそれに対して驚いているようだ。そうだな、昔の俺なら怒って立ち上がってただろうけど・・もうそんな気もないからな。静かな海に小さな水滴を落としたようなものだ。まるで大海原の凪に落ちたスズメの涙のようだ。まったく波として認識できない。

「まぁ、本当に失礼な男ですこと。保険の男性教師もそうですし、整備の男臭い教師もそう。この学園にはまともな男性はいないのですわね。」

少し波だった。俺の事は良いが宏樹先生の事は許せない。

「ちょっとそ・・「私の恋人がなんだと言うんだ?セシリア・オルコット?」・・織斑先生・・。」

オルコットの背後から頭を掴んで無理やりに向かせた千冬姉の姿が有った。

「な、おぉ・・織斑先生のこ、恋人!?どなたの事です!?」

「貴様の言った保健医の男だ。前に知り合いの事で病院に行った際に出会ってお互いに思いを認めて、今は恋人と宣言できる相手だ。」

「あのような優男が!?」

「ほほう・・どうやらよほど惨たらしく死にたいようだな。」

アイアンクローに力を加えそのまま持ち上げる。

「ぎ、ぎゃあぁぁあああ!?」

叫び声が響く。驚いて全員から見られているが、千冬姉はお構いなしに掴む。

「放課後に進路指導室に来い。私がいやと言うほどにのろけでも聞かせてやろうか?あぁ?」

「織斑先生、彼女失神してますよ?」

「・・さて、皆は食事を続けてくれ。織斑、食事は終わったか?少し用が有る。」

「分かりました。・・ごめんな箒。んじゃ行って来る。」

そう言って俺は食器を片づけて千冬姉について行く。

 




前回のあとがきではカキの話を書きましたが・・ギャグじゃないっすよ?
・・ごほん。我が家では正月にはハマグリの雑煮が定番です。
おいしいコメで作った餅と出汁のきいた雑煮のコラボレーション。
お餅好きの私にはまちどうしい季節です。
H県でお好み焼きを食べる時も【そば肉玉ダブルチーズもちいり】と注文したりしてました。今じゃそんなに食べれませんが。

では、また次回。


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