俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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正月ネタ、3月投稿お許しください

モルフェ&ヴェトル合流後ドコかの時間軸のアナザーストーリーです。本編に繋がらない部分もあります。


少し違う空編 Ⅳ
アナザーストーリー 騎空団 for the New Year


 

 ■

 

 一 いくつも寝たよお正月

 

 ■

 

 刻まれる時は止まることはなく、今年も今年で年が明けた。それでもまだまだ暗闇の時間、松明や灯篭で照らされた道を行く俺達星晶戦隊(以下略)は、今年の干支を司る神宮へと足を運んでいる最中である。

 新年故の初詣、赴く理由はそれで充分であるが、なによりも昨年の年末例によってジータから手紙が届いた。内容も例によって初詣の誘いである。

 

『今年の干支の神社があるの“この島”なんだって!! 今年もみんなで初詣だよ!!』

 

 地図同封の手紙で気合の入った筆跡からジータが初詣をとても楽しみにしているのがわかる一方「絶対に来なさい」と言う念を感じ、なんならジータの幻影すら浮かび上がりそうなそれは、もはや特殊アイテム(大事なもの)かなんかにさえ思えてきた。

 そんなわけでまだ日も昇らぬ内に目的の島へとたどり着いた俺達は、他の参拝客に混ざって毎度同じくゾロゾロ神宮を目指した──のは、少し前の事。

 

「──……ミンッ!! ミンッ!! ミンッ!! ミミミミンッ!! ミミミミーンッ!!」

「……ぅむ」

 

 頭の上で声を上げるミスラの一定のリズムで発せられる声で目を覚ました俺は、もそもそベッドから身を起こす。

 

「はぁ……ありがとうミスラ、ちゃんと起きれたよ」

「ミミンッ!!」

 

 しばしぼぉ~っとしてからベッドの上で身体を伸ばす。筋肉の伸びがちょっと心地よく感じ少しずつ頭が冴えてきた。

 

(昨日は大変だった……)

 

 閉じていたカーテンを開けながら前日、と言うか数時間前までの事を思い出した。

 めでたく明けた新年、今年の干支の神宮前へ続く参道に並ぶ屋台の数々に目移りしてしまいながらも俺達は、約束通りジータ達と神宮で集まる事が出来た。

 例年現地で集まった際俺はジータから強襲されているので用心していた。初詣に来て用心せにゃならんと言うのがまったく変な話だが、とにかく急な突撃を避けるため気配を探り周辺に目を配った。特に背後に用心したのだが──。

 

「──おにいぃちゃあぁんっ!!!!」

「来たなじゃじゃ馬っ!! だが今度は避け……」

「ア、アカン団長っ!? 避けたらアカンっ!!」

「何を言っ……な、なにぃっ!?」

 

 俺を呼ぶ声と共に駆け出したジータに気が付いた俺は、すぐさま回避の体勢に入ったがカルテイラさんから避けるなと言われハッと背後を見る。するとそこには、俺達が参りに来た社と参拝客達の姿が!! 

 迂闊だった、突撃しに来るであろうジータの事しか考えていなかった。ここで俺が避ければ、突撃の勢いのままにジータは社に突撃する事になる。それも恐らく無意識に奴は“俺なら耐えれるであろう勢い”で突っ込んでくるはずだ。それが社と参拝客(一般人)に突っ込んでは……最早これまで、選択肢は一つ──俺が受け止めるしかない!! 

 

「あけましてええぇぇ……!!」

「こ……来いやぁ!!」

「おめで……ットォオオウッ!!」

「ぐああぁぁっ!?」

「だ、団長殿おぉ──っ!?」

「兄貴いいぃぃ──っ!?」

 

 ──と、ユーリ君とビィが叫び俺は倒れ、なんとか立ち上がりジータを説教すると言う割と新年見慣れ始めて来た光景があった。

 確実にパワーが増したジータのタックルとそれを受けながら思いの外回復が早かった我が身。その事から今年もジータは、大いに元気に過ごすであろう事を確信しつつ自身の成長を感じたが、こんな事で彼女と俺のコンディションを確認したくないと思う。

 その後カタリナさん達とも新年の挨拶をして無事(?)参拝を済まし初日の出を拝んだ。ありがたい新年の朝日は、まるで今年も頑張れと俺を励ましてるようだった。頑張りやす。

 その後エンゼラに集まり新年最初の朝食、用意しておいたおせちを食う流れになるのだが、そうなれば呑兵衛達が大人しくしてるわけもなく……。

 

「酒っ!! 飲まずにはいられにゃ~いっ!!」

「今日ノタメニ色ンナ酒集メテオイタカラナッ!!」

「おうよ!! こっちも良いの揃えといたぜ!!」

 

 呑兵衛にして団員(笑)筆頭ラムレッダ、そして同じく星晶獣(笑)筆頭ティアマトやグラサイ側からオイゲンさんら大人達が集まり騒ぐのは、まあわかり切ってはいた。新年だものね、そうだろうね。

 大人数の宴会になったが、コロッサスやイオちゃん達も手伝ってくれたし、予めおせちは量作っとけばとりあえず出して見た目も量も満足できるものになる。特につまみになる料理も多めに入れれば呑兵衛達は満足する事を俺は学んでいるのだ。

 そして深夜から年明けの瞬間まで年始の準備したりジータのタックル受けたりした俺は、流石に疲れたのでコロッサス達にその場を任せ少し寝かせてもらい──今に至る。

 

「寝てる間特に問題なかった?」

「ミンッ!」

「ならよかった」

 

 カーテンから少し覗き見た日の高さからまだ午前中であるとわかるが、ぼちぼち正午と言う所だろう。夜まで寝る気など無かったので、正午まで一時間程前に起こしてくれとミスラに頼んでおいたがキッチリその通りだ。流石契約を司る星晶獣……の省エネ分身体。省エネ過ぎて本体の契約の力は使えずとも、きっちり時間通り起こしてくれるので普段も大変助かる。

 さてさて、しこたま用意したおせちとは言え昼餉はまた別のが良い、艇で食うにしろ外で食うにしろ準備はいる。それに昼が近いならぼちぼちと──。

 

「お兄ちゃんお昼だよっ!! お出かけっ!!」

「……はいはい」

 

 エンゼラにまだ居るだろうジータが、ノック無しで俺の部屋に来るのはわかり切っていた。

 新年一日目はまだまだ始まったばかりだった。

 

 ■

 

 二 お出かけだよ正月

 

 ■

 

 目を覚ましエンゼラ宴会場と化した食堂へ向かうと、オイゲンさん達はもうグランサイファーに戻っているようだったが、そこには数時間の間で酔いつぶれた者達の姿があった。

 床で酒瓶を抱えて眠るラムレッダ、机の上で泥酔しニル達に介抱されてるティアマト、打ち上げられた巨大魚みたいになってるリヴァイアサン……殆どうちの団員だった。そして殆ど星晶獣だった。星晶獣の姿か……これが……。

 酔いつぶれるのはかまわんが、みんなの食堂で場所をとるのは許さん。起きろ起きろと小突き起こした。寝るなら部屋で寝ろ。だが酔いの残っているラムレッダらはそのまま飯を所望、俺は君達のお母さんではないのだぞ。だが昼飯はもとより作るつもりで起きたのでまあいいだろう。散乱した酒瓶と食器を片付けたあと、酔っ払いにも食いやすく温め直せる汁物とか雑炊を作り昼は簡単に済ませた。

 さて、新年早々ずっと酔っ払いの面倒を見る気はない。なにも俺は、これだけのためにミスラに起こしてもらったのではないのだ。

 

「遅いっ!!」

 

 エンゼラの外、舷梯(タラップ)から降りる俺とB・ビィを見て叫ぶのはメドゥ子だった。

 

「悪い悪い、ちょいと準備手間取った」

「んもうっ!!」

「あんま怒ってやんな。ラムレッダがリバースしかけて相棒も大変だったんだ」

「あの酔っ払い……」

「朝から相当飲んだからのう」

「あはは!! ラムレッダさんらしいね」

 

 プリプリ起こるメドゥ子の他にジータとのじゃ子、そして──。

 

「ごめんヴェトルちゃん待たせた」

「う、ううん……! 大丈夫、ぜんぜん待ってないよ」

「ジータさん達と今日の事話し合ってました」

 

 ヴェトルちゃんとモルフェ君がいた。

 数日前、俺はモルフェ君に新年にヴェトルちゃんを遊びに誘ってくれないかと頼まれていた。

 彼等姉弟が星晶戦隊(以下略)の仲間となって最初の正月、人間の生活に元々関心が薄かったヴェトルちゃんに、人にとって大切な“1年の区切り”とそこで見れる人々の営みを直に感じてもらおうと言うモルフェ君の提案であった。そしてなによりも騎空団の仲間との交流も考えての事、無論断る理由などない。俺は喜んで出かける約束を受けついでに同じ星晶獣で見た目年齢が近いメドゥ子達も誘った。

 最初メドゥ子は「どうしようかしらね~」とか言ってたが、今見ると普段の鎧とタイツ姿と違いバッチリ寒さ対策したお出かけコーデになっている。さては楽しみにしていたなこ奴め。

 

「ところでメドゥシアナは?」

「留守番するって残ったわ」

「おやそうなん?」

「アタシ達以外も出かけたりしてるでしょ、エンゼラに残ってるの殆ど酔っ払いだから自分が残るって言ってくれたのよ」

「良い子過ぎる……」

「当たり前でしょっ!! 自慢のメドゥシアナなのよっ!!」

 

 お土産沢山買って帰ろう……。

 

「あのね、初詣の時より色んなお店が今日から出てるんだって……! お正月で食べれる料理を売ってるお店とか、お菓子とかね……あ、あと旅芸人の人とかも来ててね……!!」

「ちょっとヴェトルあんまはしゃがないの、子供じゃないんだから」

 

 普段は眠そうなヴェトルちゃんが、見た目相応の子供らしく興奮気味に話す。すると呆れた様子でメドゥ子がヴェトルちゃんを落ち着かせた。なんと彼女もお姉さんの様な事が出来たのだなぁと思ったが……。

 

「……全部メドゥ子ちゃんから聞いたのに」

「うぐっ!?」

 

 拗ねたヴェトルちゃんに一番はしゃいでいたのは誰かバラされた。

 

「ちが……この二人はまだ人間達の事わかんないだろうから……アタシが気を利かせて色々調べておいてあげたんでしょっ!? 別に楽しみだったとかじゃないですけど!?」

「団長が来るまでずっと“屋台はあれを買う、この島じゃあの店が有名だ、これ名物だ、この店は混むから時間ずらそう”って延々喋り続けておったわ。楽しみでもう待ちきれんかったようじゃのう」

「だだだだ誰がよっ!?」

「お主じゃお主」

 

 どうやら全部メドゥ子情報だったらしい。随分と調べたんだなメドゥ子よ。のじゃ子にまでチクられ慌てているメドゥ子だが、それだけ楽しみだったと思えばなんだか微笑ましく思える。

 

「私は楽しみですが!!」

「わかっとる」

 

 で、ジータ。俺がヴェトルちゃん達と出かけると言うとついてくと言い出した。若干不安があったが、折角だし誘った。ヴェトルちゃんも愉快なのがいれば楽しいだろう。

 

「じゃあメドゥ子? なんか色々調べてくれたらしいしオススメの場所教えてくれや、ついて行くから」

「いいけど……べ、別に楽しみだったとかじゃないからね!?」

「はいはい」

「わかってるのかしら……まあいいわ!! アンタ達アタシに続きなさい!!」

 

 自分が先頭を歩くと思うとやる気になったのか、メドゥ子が途端にリーダーシップ(笑)を発揮し始めた。髪の毛も蛇に変わって元気そうだ。こういう時彼女は煽てておくのが吉である。ヴェトルちゃん達もその後に続いていく。

 

「みんな楽しそうじゃねえか相棒?」

「うむ……お出かけ、正解だったな」

「ええ、姉さんが楽しそうで良かった」

 

 俺達男面子は、楽しそうに歩みだしたヴェトルちゃん達を見て安心した。だがしかし、このお出かけはヴェトルちゃんだけのためではない。

 

「さて……モルフェ君」

「はい?」

「俺達も楽しまないとな!!」

「……はい!! ありがとうございます!!」

 

 離れたところからメドゥ子から早くついてこいと呼ばれる。ヴェトルちゃんもモルフェ君を早く早くと呼んでいた。モルフェ君と互いに顔を見合わせ笑い、駆け足で彼女達の元に急いだ。

 

 ■

 

 三 屋台楽しむ正月

 

 ■

 

 干支を司る島での正月は、大層な賑やかさを見せる。年に最初でお祭と言ってもいいだろう。参道の屋台は数日その場から消える事は無く、それを目当てに来る人々も多い事だろう。

 

「わあ……!!」

「色々あるねえ」

 

 そう、今の俺達のように。

 

「あ、あれはなに団長さん……!!」

「ありゃじゃがバターだね」

「あっちのは!!」

「蒸し饅頭だね」

「あのりんごみたいのは!!」

「ありゃりんご飴だね。りんご丸ごと飴で包んだやつ」

「オイラ買ってくるわ」

「ん」

 

 初詣の時より明らかに多い屋台の数にヴェトルちゃんが目を輝かせ興奮しっぱなしだった。そしてりんご飴買いに行ったB・ビィのように、他のメンバーもまた……。

 

「かわゆいのうかわゆいのうっ!! 干支の姿の人形焼きとはめでたくかわゆく良いモノじゃのう!!」

「大事なのは味でしょ、せっかく焼きたて買ったんだから冷めない内に食べなさいよ」

「のじゃ子達ちゃん何味買ったの?」

「妾のは粒あん」

「アタシはこしあん」

「私のカスタードと幾つか交換しない?」

「うむ、良いぞ!!」

「しかたないわねぇ……」

 

 いつの間にやら人形焼きを買って食べてるメドゥ子達。手に収まる小さなカステラ菓子は、今年の干支の姿をしていた。

 

「ほれお主達も食べるがよいぞ、店主がオマケして沢山くれたんでな」

「お、サンキュー」

「はい、ヴェトルちゃんとモルフェ君にも!!」

「あ、ありがとう」

「ありがとうございますジータさん!!」

「アタシが買ったんだから感謝して食べなさいっ!!」

 

 ほくほく顔で気前よく俺達に人形焼きを配るのじゃ子。焼きたての人形焼きは、まだ湯気を出し香ばしい生地の香りが食欲をそそる。

 

「おお、餡子まだあったか美味い!!」

「……おいしい」

「カスタードも美味しいです!!」

 

 まだまだ温かい人形焼きは、寒い中で食べると妙に上手く感じる。温かな餡子を食べていくと、口から出て行く湯気の白さが増した気がした。

 

「これ美味いな……袋でも売ってるしお土産で買うか」

「結構有名らしいわよ。なんか他の島に本店あるんですって」

「流石調べてるねえメドゥ子さん」

「た、たまたま聞いたの!! それより買うなら多めに買いなさい。留守番のメドゥシアナにも食べさせてあげたいから」

「へいへい」

 

 餡子系はミリンちゃんとかも好きそうだ。前買った緑茶にも合うだろうし、うちの人数考えれば多めに買っても余裕で食い切ってしまうだろう。

 

「……ああそうだヴェトルちゃんモルフェ君」

「なんですか?」

「はいこれ」

 

 財布に手を伸ばしたところで「そういえば」とある事を思い出した俺は、ヴェトルちゃん達二人を呼び寄せ小振りのきんちゃく袋を手渡す。中からは“チャリンッ!”と(ルピ)がこすれる音がした。

 

「え……団長さんこれは……?」

「お小遣い、好きに使いな」

「えっ!?」

 

 もらった巾着の中身がお金と知って二人は驚き俺を見る。

 

「いや、いやいや悪いですよ!! 結構入ってますよねこれ!?」

「そうだよ……私なんかに! 団長さんいつもお金の悪夢見てるのに……」

 

 別にいつもそんな悪夢見てるわけじゃないと思うが、ヴェトルちゃんに言われると否定しきれない。だがそれは今は、別に関係ない。

 

「悪夢見てるかはともかく、気にせず受け取りなさい。正月だからね、“お年玉”ってことで」

「で、でも……」

「ま、ここは団長にかっこつけさせてくれや」

 

 ヴェトルちゃんとモルフェ君は、何度もお互い顔を見合わせ「それじゃあ……」と巾着を受け取った。

 

「わ、私B・ビィが買いに行ったりんご飴気になってたの……モルフェ、一緒に買おう?」

「勿論良いよ!! りんご以外にも種類あるみたいだし、お互い食べ比べしようよ」

「うんっ!!」

 

 二人が楽しそうにB・ビィがいるりんご飴の屋台に走って行く。その姿は間違いなく仲睦まじい姉弟そのものだった。

 

「……変ねぇ~~? アタシの記憶が間違ってるのかしらねぇ? 前の正月の時“この騎空団にお年玉システムは無い”って聞いた覚えがあるんだけど?」

 

 が、二人の姿に満足してたらメドゥ子から面倒な事を言われてしまった。確かにそう言われるとそんな事言った記憶がある。

 

「……いや、それはだね」

「確かに妾も聞いたのォ~?」

「私も聞いたし、その時くれなかった」

 

 メドゥ子達が示し合せたかのように、スッと俺を取り囲む。ああ、とても面倒な流れになった。

 

「いや……ほら、あの子達まだ依頼でお金稼いだとかそんなしてないしさ、な?」

「アタシ“星晶獣が貰うもんじゃない”って言われたけど……あの二人にはあげちゃうんだアンタ」

「待てそれは……ちが」

「なぁ~にが違うのかのぉ~?」

「その……こんなめでたい時にさ? 自分で好きなもの一つも買えないとかつまらないじゃん……ねぇ?」

「ふぅん?」

「ほぉ~ん?」

「へぇ~?」

「……うぅ」

 

 ジトォ~っとした三人の視線が俺の心に突き刺さる。そんな俺の様子を見た三人娘は、ニヤリと笑ったのだった。

 

 ■

 

 四 お餅舞う正月

 

 ■

 

「余裕のある買い物が出来るのはいい気分ねぇ~」

「のじゃのじゃ!」

「ほんとほんと!!」

 

 ホクホク顔で歩くメドゥ子達、その後ろを俺はトボトボ歩く。懐が温かくなった彼女達に対し俺は寒くなった。

 

「お前ら他の奴に言うなよ。絶対面倒になるから」

「わかってるわかってる」

「言わん言わん」

「うんうん!!」

 

 浮かれた返事に心配になる。ほんとに大丈夫だろうな、この口軽そうな迂闊三人娘共め。万が一にも他の面々にもお年玉やる事になったら大変なんだからな。

 

「別に全員に出すわけじゃねえなら団の資金でもいいだろお年玉ぐれぇ。ボーナスみてぇなもんだし、大した額でもねえだろうし」

 

 ハードコーディングタイプのりんご飴をバリバリ齧りながらB・ビィが俺の思考に返事をして来た。こいつには三人にお年玉渡したのを見られていない筈……。

 

「……B・ビィ、何故俺がお年玉の事を考えていると」

「金の事考えてる顔になってる」

 

 俺の表情筋は今年も大変素直だなちくしょう。

 いやだが、しかし……。

 

「りんご飴、美味しいねモルフェ……」

「このいちご飴も美味しいよ姉さん!」

「……お団子みたいでカワイイ」

「でしょっ!!」

 

 表情筋の緩みは、この微笑ましい姉弟の姿を見ての緩みだろうか。お互いに買ったりんご飴を食べ比べしたりする二人の姿は、悪夢の世界で争ったなどと思えぬほどに仲睦まじい。

 

「……お年玉は賞与(ボーナス)ではないのだ。お年玉である以上俺のポケットマネーから出さざるを得ない」

「ようはカッコつけたいんだな」

「ほっとけぃ」

 

 笑わば笑え、下らぬ男児の意地だろうとかまわんのだ。俺の懐が寒くなっても、あの笑顔が護れるならば安い……安いのだ……。

 とかなんとか、己のプライドを保つよう意志を強く持ち、のんびり色んな屋台を楽しんでいると不意にヴェトルちゃんが足を止めた。

 

「おや、どしたん?」

「……向こうの方で何かやってる?」

 

 立ち並ぶ屋台のエリアからは少し離れた場所、社がある方角を指さすヴェトルちゃん。そう言われると確かにその方向からは、屋台の賑わいとは別の歓声が聞こえてくる。

 

「何かイベントかもしれんな」

「……あ、そうよ思い出した!!」

 

 何をやってるのかと思ったらメドゥ子がハッと声を上げた。

 

「今日社の方で“餅まき”やるんですって」

「餅……?」

「まき……?」

 

 メドゥ子がイベントの名前を口にすると、ヴェトルちゃんら姉弟は揃って首をかしげる。

 だがなるほど、餅まきであったか。

 

「大工とかが造った家の足場とか高い場所から餅巻くんだよ。それを下でキャッチするわけ。ここなら櫓とか山車組んでるのかな……まあ細かい説明は省くけどめでたい時にするイベントだね」

「そう言う事!! 忘れる所だったわ……まだ開始前のはず、始まる前に行くわよっ!!」

 

 一人参加する気満々のメドゥ子が早く来いと急かす。

 

「そうだよっ!! 出遅れると御餅なくなるよ!!」

 

 いや、もう一人やる気満々のジータがいたか。

 

「わかってるよ。せっかくだしな」

 

 めでたい日にめでたい行事に参加しない理由はない。駆け出す二人を追って俺達も餅まきの場所へ向かう。

 

「あけましておめでとうございます!! もう暫しお待ちくださいませ!! 皆様新年おめでとうございますっ!!」

 

 人々の賑わいに誘われるように辿り着いた場所では、3メートル程の櫓──いや、車輪があるので山車だろう。それに乗った中高年のヒューマンとエルーンの男達が、集まった人々に祝いの挨拶を行っている最中であった。

 

「すげぇ賑わいだ。流石十二神将の島の餅まき」

「こりゃ前の方はもう無理だぜ」

 

 今か今かと餅まきを待つ人々の様子を少し浮いて眺めると、もうこれ以上前には進めないようだった。

 そして集まった人々をみるとある事に気が付く。

 

「……騎空士が多いな」

 

 参拝客の一般人よりも、明らかに騎空士らしい者達の姿が目立っていた。俺も騎空士なわけなので別にここに居るのは不思議な事じゃないが、それにしたって多い。

 

「なんぞ騎空士関係でご利益あるってことかね?」

「ふふ……よくぞ聞いたわね?」

 

 騎空士の多さの理由を考えていると、何故かメドゥ子が不敵に笑うとドヤ顔浮かべて俺を見る。

 

「別にお前に聞いてないんだが……」

「ここの餅まきは、騎空士にとって見逃せない行事なのよっ!! 何故か聞きたいでしょ? しかたないわねぇ~っ!!」

「まだ何も言って……」

「特別に! アタシが説明してあげるわっ!!」

 

 強引に説明を始めたメドゥ子曰く──覇空戦争の後、十二神将の世代も変わったあたりの頃、当時何かしらの理由で年始に社を修理した大工達が景気づけにと集まった参拝客へ餅をまき始めたらしい。それは普通の餅まきそのままの事だが、その時にまかれた餅を多くとった騎空士が大いに大成したらしい。いつしか初め社からまかれた餅は、遠くへもまくため高い山車に変わり今の姿へと変わる。そして大成した過去の騎空士にあやかろうと空中の騎空士が年始の餅を取りに集まるようになった──とかなんとか。

 そんな逸話が時代の移り変わりの中生まれ、新年恒例の行事として各歳神のいる島にも伝わり今なお行われているそうだ。

 

「──と、言うわけでアンタみたいな騎空士にとっては見逃せない行事なのよっ!!」

 

 “ドヤドヤ!! フフーンッ!! ”と効果音が付きそうなほどドヤ顔して胸を張るメドゥ子。彼女の説明に普通に感心して「へぇ~」と俺達は頷いていた。

 

「わかったら全員餅をとるっ!! ここにも餅は届くだろうし頑張るわよっ!!」

「やる気満々~」

 

 既に両手を広げ餅を受け止める気満々のメドゥ子であった。しかし由来を聞いたら確かに俺もやる気が湧いてきた。

 

「皆様めでたき新年、御怪我無きようお楽しみくださいませッ!!」

 

 丁度餅まきも始まるようだ。餅、取ってやろうではないか。

 

「よしやるか皆の衆」

「よっしゃーっ!!」

「アンタ達、じゃんじゃん取りなさいよ!!」

 

 やる気十分ジータとメドゥ子。本人達より周りが怪我しないか心配だが、流石に大丈夫と信じよう。

 

「B・ビィ、のじゃ子。わかっとると思うが……」

「わかってる。飛ぶのはズルいからしねえよ」

「しかし “マチョビィ”はズルじゃないのかのう……」

「人型だし妙な星晶パワー使わなきゃOKだろ」

 

 反則ギリギリな気がするマチョビィに変身してたB・ビィの姿を見てやっぱり心配になるが、大丈夫だとこれも信じるとする。

 

「ヴェトルちゃん達は怪我に気を付けてね。キツかったら抜け出していいから」

「ううん、私も頑張るっ!! 沢山お餅とって……団長さんを昔の騎空士より大成させてあげるの!!」

「僕だって頑張ります!!」

「う゛っ!!」

 

 フンスと気合を込める二人の姿、なんたる眩しさと愛らしさか。

 

「俺゛も゛頑゛張゛る゛……っ!!」

「ああ、相棒が二人の献身に発作を……」

「感動のあまり涙声じゃ」

阿保(あほう)ねぇ」

「お兄ちゃん相変わらずだなぁ」

 

 好き放題言われてるがかまうものか、二人が頑張ると言うなら俺だって応えねばならんのだ。

 

 ■

 

 五 つかみ取ろうよお正月

 

 ■

 

 宙を無数の紅白の餅が舞っている。近くから遠くまで届くようにと山車の上の男達が「そうれっ!! そうれっ!!」と笑顔で沢山の餅を投げる。途端に歓声があがり、人々が両手を広げ自分の方へ飛んでくる餅目掛けて飛び上がった。

 

「来たわっ!!」

「イヤァ──っ! キャッチッ!!」

 

 メドゥ子とジータもその場で跳び上がり頭上の餅をつかみ取る。

 

「お、ナイスキャッチ!」

「ふふん! まだまだこれからよ!! アンタも早く取りなさい、団員分ぐらいは取らないとなんだからねっ!!」

「私もルリア達の分取るよ!! そぉいっ!!」

 

 ジータがまた餅めがけとびあがる。他の騎空士達も負けていないが、ジータの跳躍力は凄まじい。垂直跳びで軽く3mは跳んでるぞコイツ、周りの歓声もなんかジータに対しての様な気がする。

 

「あの……ジータさん、なんか跳び過ぎじゃないですか……?」

「あいつ昔から身体のバネが異次元なんだよ。子供の時から当たり前のようにジャンプで木の実採ってたからな。多分本気出すとノーモーションでも垂直跳び6mは超える」

「異次元ってレベルじゃないんじゃ……」

「超次元かもしれんな」

 

 限界を置き去りにしたジータの肉体にモルフェ君は唖然とするばかりだった。

 だがジータの活躍ばかりに目をむけるわけにいかない。俺達も餅めがけ跳びあがらねばならん。

 

「俺達も負けてられんぞモルフェ君!!」

「は、はいっ!!」

 

 宙を舞う餅は、途切れる事は無い。とにかく闇雲だろうと両腕を伸ばし両手を広げれば、一つ二つはつかみ取れる。ヴェトルちゃんもモルフェ君も勢い良くジャンプしているのだが如何せん位置が悪い。

 

「あう……っ! と、届かない」

「うぅ~ん……僕の方にも来ないなあ」

 

 餅は届くが小柄なヴェトルちゃん達では頭上の餅がキャッチできず、そのまま後ろに飛び越え他の騎空士に取られたり、落ちて来たのも取るのが間に合わず先を越されたりしてしまっている。

 

「ああもうっ!! またっ!!」

「むむぅ~!! 飛ばずにジャンプは慣れんのじゃ……!!」

 

 同じく小柄のメドゥ子達も幾つか採れたが苦戦気味のようだ。

 

「や、やっぱり私なんかじゃ……団長さんの役に立てないんだ……」

「お餅取るのに気負い過ぎだよ姉さんっ!? もっと楽しんだ方が良いよ!?」

 

 いかんな、ヴェトルちゃんの顔が曇り出してきている。よろしくない、見過ごせんな。

 

「よぅし……ヴェトルちゃん!!」

「うぅ……だ、団長さん?」

「もっと餅ゲットだ!! 手伝ってくれ!!」

「え、手伝うって……」

 

 俺はその場でしゃがみ込み、“パンッ!!”と自身の肩を叩いた。

 

「乗りたまえっ!! 肩車だっ!!」

「肩車……っ!?」

「うむ、身長を稼ぐぞ!!」

「え、あ……うんっ!! そ、そっかっ!!」

 

 ヴェトルちゃんは困惑してたが勢いで納得してもらい、そのまま肩にライドオン。

 

「来たぞ餅だ!! ヴェトルちゃんキャッチッ!!」

「うんっ!!」

 

 こちらへととんでくる餅、そしてこちらは一般ドラフの身長を超えるに至ったヴェトルちゃんwith俺っ!! これならば子供の小さな手でも広げて伸ばせば──。

 

「えいっ!! ……あ、と……取れたッ!!」

 

 キャッチは容易なのだ。

 

「ナイスキャッチだヴェトルちゃん!! お手柄だぞ!!」

「うん……ありがと団長さんっ!!」

 

 卑怯な気もするがそもそも俺達よりも前には、壁の如き何人ものドラフの男達がいるのでこれでお相子と思いたい。ジータのジャンプ力? 奴は素であれだから卑怯じゃないんだ、多分。

 

「まあ危ないし必要な分取ったらやめるがな!! よし、このまま餅ゲットだヴェトルちゃん!!」

「うんっ!! 頑張る!!」

 

 大事そうに取った餅をカバンにしまい込むヴェトルちゃん。表情が笑顔に戻ってくれている。肩車作戦成功だな。

 

「お餅肩車作戦……楽しそうっ!! モルフェ君、私達もやろう!!」

「えっ!? ぼ、僕がジータさんにですか!?」

「よいしょお──っ!!」

「ちょっ!? 僕まだやるとは……うわあぁ軽々持ち上げられてるぅっ!?」

「……のじゃ子、アンタにアタシを背負う権利を上げるわ」

「なんでじゃっ!? いらんそんな権利、普通に嫌じゃ!! メドゥ子が妾を背負えばよいじゃろうっ!!」

「しゃあねえな……オイラの肩乗れ二人とも」

 

 俺がヴェトルちゃんを肩車すると、今度はジータがモルフェ君を背負い、更にB・ビィがわちゃわちゃ喧嘩してたメドゥのじゃ二名を両肩に乗せた。

 

「ぬわああっ!? め、目立つ……っ!! お前ら同時にやるなよっ!?」

「だって楽しそうだったので!! いくよモルフェ君っ!!」

「いくよってなんですかっ!? もしかしてジャンプする気で……あ、ジータさんしゃがまないで!? ジャンプしないで下さいねっ!? 十分高いです、このままで十分お餅取れ──」

「シュワッ!!」

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛──っ!?」

「モルフェくぅ──んっ!?」

「のじゃ子もうちょい羽しまいなさいよっ!? こっちまで来るんだけど!!」

「メドゥ子も髪しばるなりせんかっ!! モコモコして羽に絡まるっ!!」

「おい~オイラの頭挟んで喧嘩すんなよぉ」

 

 掛け声と共に4~5メートル跳躍するジータと、その肩の上で悲鳴を上げるモルフェ君、肩の上で喧嘩するメドゥのじゃコンビ。俺が安易に肩車など始めた事により、なんもう無茶苦茶になっている。

 

「ふ、ふふ……!! あははっ!!」

 

 ──だが、俺の上からは楽しそうに笑う明るい声が聞こえていた。

 

 ■

 

 六 一息ついた正月

 

 ■

 

 あれから餅まきも大いに楽しみ更に屋台や店を巡った俺達は、大量の餅を手に入れ一度グランサイファーに戻ると言うジータと別れエンゼラへと戻った。

 談話室に入ると、俺達と同じように出かけてた面々も艇に戻っているようだった。

 

「戻ったわよメドゥシアナー!」

 

 他の団員と一緒に談話室の暖炉にあたっていた寒さの苦手なメドゥシアナは、駆け込んできたメドゥ子の声に応え顔を上げた。

 

「美味しいもの沢山買ってきてあげたからね!! 一緒に食べましょ!!」

「シャァ~ッ!」

 

 メドゥ子は机に買って来た荷物を置くと、あの人形焼きの他にも綿菓子やら焼きもろこしやらなんやら取り出してゆく。そんな様子と食べ物の臭いにつられ談話室にいた他の面々も寄って来た。

 

「なになに、随分買ったのねメドゥ子ちゃん」

「ああ、これ?」

 

 マリーちゃんが思ったより買って来た荷物を見て目を丸くすると、メドゥ子は「むふふ」とニヤニヤ笑った。

 

「ちょぉ~っと“臨時収入”が入ったからね。にひひ……!」

 

 チラっと俺を見たメドゥ子。満足してくれたようで何よりだこん畜生めこの野郎……。

 

「団長も団長で荷物多いわね。なにそれ?」

「餅」

「餅?」

「そ、餅」

 

 俺が机に置いたズッシリとした買い物袋の口を広げその中身の大量の餅をマリーちゃんに見せた。

 

「餅まきしてたんで参加してきてね。ヴェトルちゃん達が頑張ったんだ。な、二人共?」

「うん!! 私ね、沢山お餅取れたの……!!」

「そ、そうですね……確かに頑張りました……」

 

 楽しかった餅まきを思い出し餅キャッチの動きをするヴェトルちゃんに対し、ジータの超跳躍を味わったのを思い出し青ざめるモルフェ君と言う対照的な反応である。

 

「お正月の空は、寒かったです……」

「ああ……俺も前に経験したよ」

「餅まきよね? 参加したのって餅まきなのよね?」

 

 まあ概ね楽しかったのでいいとしよう。

 

「ところでコロッサスって今艇いる?」

「ヨンダー?  (´・ω・`)」

「おお、丁度いいとこに」

 

 コロッサスを呼ぼう思ったら丁度扉を潜りながら現れた。どうやら出かけず艇に残っていたらしい。

 

「実は見ての通り餅が沢山手に入ってね。晩まで時間はあるけど、せっかくだから食べたい。手伝ってくれい」

「イイネ! (゚∀゚) テツダウヨッ!!」

「じゃあキッチンいくか」

「……あ、あの団長さん?」

 

 コロッサスと共に餅を抱えて食堂へと移動しようとすると、不安気な声でヴェトルちゃんが声をかけて来た。

 

「ん、どした?」

「あのね……わ、私もお料理お手伝いとか…………あ、ううんごめんなさい。なんでもないの」

「……」

 

 期待と不安が入り交じり、そして不安が勝り尻すぼみになる言い方。俺は直ぐにモルフェ君を見ると、彼も俺を見て深く頷く。そして部屋にいるマリーちゃん達にも視線をあわせ頷いた。

 

「団長さん、僕もお手伝いします!」

「……え、モルフェ?」

「そうねえ、正月ぐらいみんなで料理もいいかもね」

「しかたないわねぇ~……アタシも手伝ってあげるわっ!!」

「え、あ……マリーさん? メドゥ子ちゃん?」

「姉さんも一緒にやろうよ、ね?」

 

 突然自分以外の面々が料理を手伝うと言い出し狼狽えるヴェトルちゃん。そしてモルフェ君が彼女を料理に誘う。オロオロとする彼女は、またあの不安げな視線で俺をみた。

 

「お手伝い、頼んで良いかな?」

「イッショニオリョウリ ヾ(=´∀`=)ノ タノシイヨ!!」

「……う、うんっ!! 私頑張る!!」

 

 餅取りも料理もやりたいと思った事は、大いにやるべきだ。足取り軽く俺達はキッチンへと向かい、正月に相応しい明るい雰囲気の中、ヴェトルちゃんは不慣れながらも楽しそうに料理に励んだ。

 そんな雰囲気に誘われるように、他の出かけていた者やエンゼラで休んでた酔っ払い共が徐々に食堂へと集まりだす。

 

「実市場で故郷の食材をみつけまして、せっかくなので拙者の故郷の味付けで作ってもよろしいですか?」

「辛い味付けはおしゃけに合うにゃぁ~」

「餡子はあるかい? 甘い御餅もやっぱり良いよ」

 

 ミリンちゃんは、故郷の味付けの雑炊を教えてくれ、更には味醂を煮詰めた“味醂蜜”をかけた餅を作る。ラムレッダは酒に合うからと、辛く味付けした大根おろしと七味のトッピングを所望。甘いもの好きフィラソピラさんは、餡子やきな粉を用意し出す。

 

「お兄ちゃん遊び来たー……あ、お餅焼いてる!! そして美味しそうだっ!!」

「はわわ……良い臭いがしますぅ~!!」

 

 途中からはグランサイファーから再びジータ達も合流。出来上がる餅料理を見た彼女達は、自然とそのまま調理に参加し始める。結局集まった者による「このトッピングが最高」大会みたいになり、どんどん色んな味付けの餅やらトッピングが作られていった。

 

「量あるからもう好きにおかわりしてくれ。トッピング自由だから」

「タクサンアルカラネェ~ (´ω`)」

 

 晩飯のつなぎのオヤツ程度のつもりが、すっかり本格的な食事になっている。人数集まるといつも宴会みたいになるな俺達って。

 

「今帰ったでぇ~……って、なんやえらい賑やかやんか」

 

 すると今日ずっと出かけていたカルテイラさんが帰ってきた。

 

「お帰りなさい……身軽なところを見るに、上々だったようで?」

「せやっ!! 上々も上々、気分上々やっ!!」

 

 上機嫌なカルテイラさんは、年明け後の宴会に少し参加した後に市場の新春セールへと出かけた。無論本業(あきんど)としてだ。これまでの旅で仕入れた商品は、結構な数であったが全部売り切ったようだ。

 

「こっちの地方じゃあんま手に入らんもん仕入れといたで島の人らによう売れてん! 嬉しい悲鳴やで~! にししし~っ!!」

「そりゃなによりで。どうです、カルテイラさんもお餅。雑煮まだ暖かいですよ」

「ええなぁ~寒い外から帰って(あった)かい雑煮!! ありがたくいただくわ」

 

 雑煮をついで湯気が昇るお椀を受け取るカルテイラさん。具材の紅白の餅を見て「ああやっぱり」と呟いた。

 

「無事餅まき参加できたんやな」

「あれ、餅まきの事しってました?」

「……ッ!?」

 

 カルテイラさんが餅について話し出すと、離れたところいたメドゥ子がギョッと俺達の方を見た。

 

「メドゥ子に餅まき案内されたんとちゃうんか?」

「確かにそうですけ」

「なんやメドゥ子、あんた説明せんかったの?」

「わーっ!! わーわアァ──ッ!?」

 

 慌ててメドゥ子がカルテイラさんと俺の間に割って入り、叫びながら両腕を振って会話を遮った。

 

「ななななーに言ってんのかしらねっ!! あははっ!! 説明とか意味わかんないわねぇーっ!! ほほほっ!!」

「だってあんた、大分前からウチに正月で騎空士に縁起の()え催しないかって聞いたやん」

「聞いてないけどもっ!? アタシが独自に調べたんだけどっ!!」

「団長はんに箔つけたろうって張り切ってたやん」

「張り切ってないけどっ!!」

「「アタシがいる騎空団の団長に相応しいやつにしてあげるわ(声真似)」って言ってたやろ」

「言ってないぃ~~っ!! その声真似やめ……うわああぁぁ!! アンタ達その微笑ましい表情やーめーてえぇ──っ!?」

 

 食事で身体だけでなく心まで温かくなりやがる。妙にメドゥ子が餅まき張り切ってた真相を知り、食ってた餅が更に美味く感じ、あげたお年玉が安い気さえしてきた。

 

「メドゥ子……お、俺は……良い団員に恵まれて……ウ゛ゥ゛ッ!!」

「んがぁ~っ!! アンタは泣くなっ!? 餅詰まらせても知らないわよっ!? あーもーこうなりそうだから黙ってたのにぃ!! カルテイラも笑ってないでコイツなんとかしてよもおおぉぉ────ッ!!」

 

 雑煮の湯気が目に染みるぜ……。

 

 ■

 

 七 幸せ感じてお正月

 

 ■

 

 笑い声絶えずワチャワチャする団長とメドゥ子達の様子をヴェトルとモルフェは、自分達で作った雑煮や焼き餅を食べて眺めていた。彼等の様子を見るだけで、自分達も笑みが浮かんでいるのが分かる。

 空の民と星晶獣がこの場で揃いながら、嘗てのような争いではなく机を囲み食事を楽しんでいる。果たしてこんな光景をかつて想像出来ただろうか? そんな中に自分がいると予想出来ただろうか? 

 出来る筈はない、出来るわけがない。ヴェトルにあったのは、星の民への憎しみだけだった。空の民にもなんの感情を持とうものか。

 だが今は違う、彼女は変わり居場所を得た。人形ではない真の家族を得た。胸の奥から湧き出る感情は、もう憎しみではない。

 

「嬉しいなぁ……幸せだなぁ……」

 

 意識せずヴェトルは、自分の感情が言葉となって出た。それを聞いたモルフェは、優しい微笑みを浮かべた。

 

「僕も嬉しい……凄い幸せだよ、姉さん」

「ずっと、続くといいな……」

「続くよ、きっと続く。ずっと続くんだ。これからもずっと」

 

 まるで夢の様な時間。悪夢を脱した星晶獣が感じる幸せは、夢ではなく本物だ。

 今日もきっとみんな夢を見る。この日見る初夢は、幸せな夢に違いない。夢を操る星晶獣としてでなく、騎空団の仲間としてそうあれかしとヴェトルは笑みと共に願った。

 

 





あけましておめでとうございます三月ッ!!!! 今更の正月ネタすみません。

年末年始と空の世界は大変でしたね。ティラノサウルス、お前プレイアブルなるんか……? 来いよティラちゃん、SSRになってかかってこい!!

シェロカルテメインイベント、マスコット制作!! ……約4年前、団長君はガルーダに攫われトラモント島へ。そして自分はシェロカルテにトラモント島をテーマパークにさせてしまっている……は、早まった!!!!
シェロカルテでテーマパークと言うと「ヴィラ・デ・シェロカルテ」だけど、アレ自分は遊べてないんですよね。復刻するような奴でもないし、なんで「トラモント・シェロカルテランド」なんてネタを書いたわけです。しかもリッチまで仲間にこそしなかったけど、普通に団長の知り合いにさせてしまった……だってリッチが召喚石でなくプレイアブルでSSRで人型女性キャラになるなんて想像できなかったんだ……っ!!

で、サンドリオン。ふーんおもしれー女(CV:大空直美)……いやおもろすぎるわい!! やったね団長!! (借金)仲間が増えるよ!!

「でぇ丈夫だ。借金は(シェロカルテさんの無茶ぶりに応えれば)なんとかなる」
「お前の言う事はあてにならないヨッ!?」

イベントじゃララ&ロロがけっこーガッツリ出て嬉しい。カルテイラもメインキャラ。これは新レアリティで来るかぁ~……と思ったけど、カルテイラこなかった残念。
それはそれとしてサンドリオン、元のマスコット姿のスキンとかあると嬉しいな!! ……まあまだ手に入ってないけども。くそうくそう。

『…and you.』。まだまだ後半戦(2023 3/7現在)。演算世界、見てるだけで心がブレイク!! 頑張れロジャー、お前も仲間だ(and you)!!

「あ、どもども少年っ!! ああ僕? 僕はアレがソレな楔のサムシング……って、わっかんないよねぇ!! オケオケ取り敢えず旅の者ってことでヨロヨロ~!! それでなんだけ実は僕ジータって子に会いに来て……あれれぇ~~おかしぃぞぉ~~? ごめんちょと待ってなんかおかしいぞこれ、なにこの演算世界っ!? 介入したらなんか即変に……アレまってまってここ演算世界じゃなくなくなくないっ!? 現実!? リアルッ!? じゃあキミだれっ!? どこここおぉっ!?」
「……いや、アンタがだれじゃい」

ここのジータは、幼馴染の兄が居て寂しさが和らいでも父に会いに行く気やる気元気勇気殺気満々のリーサルウェポンなので多分大丈夫。「騎空艇への砲撃? (剣で)弾き返せばいいじゃん?」。
「and you」って見ると、プレイヤー名を安藤にしたくなってきた。PSO2とかとコラボしないかな。

9周年を迎えようとして、のんびりペースの自分はぼちぼち十賢者がやっと半分。愉快な奴等だぜ(目逸らし)。アナザーストーリー的にはその内出したいかもです。団長の胃がしぬぅ!!

そう言えばエイプリルフールも近い。リボン、シナモン、プリン……いったい何リオなんだ? 期待と言う名の不安だが、ここ数年の4月イベント見てると、実質グラブルとボボボーボ・ボーボボとのトリプルコラボになりそうで怖い。けどボーボボの最終とかマジで来ないかな。

今年はどんなキャラがくるのやら。ルドミリアとかSSR昇格来ないかな。ハロウィンエピソードの時の素ドミリアは、結局本当の素の状態って事で良いんだろうか。とんでもねえコラボイベもあるかも。
それでは今年ものんびり投稿になると思いますが、よろしくお願いいたします。

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