俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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キャラ崩壊と二次創作独自の設定や解釈があるのでご注意ください。
またゲーム本編のイベント【リペイント・ザ・メモリー】のネタバレ、登場人物のキャラ崩壊等があります。ご注意ください。


転寝

 ■

 

 一 半醒半睡

 

 ■

 

 何ですかシェロさん、急に呼び出したりして……。

 

「……態々すみません、団長さん」

 

 ええ、やだなぁ。なんだか表情が普段より硬いですよ? ……いや、ほんとに硬い、ってか怖い。え、え? なにか問題でも……? 

 

「そうですねぇ……確かに問題です。ええ、とても問題ですねぇ……」

 

 あ、あのいつものように笑顔を……。そ、そんなシリアスフェイスシェロさんには似合わないですよ。ほら何時もみたいにつまらな──面白いダジャレ言いながら会話を始めましょ? 

 

「そう出来たら良かったんですがぁ……まずこちらを」

 

 わーなんだろう? 突然差し出された一枚の紙。それを受け取る俺。

 嫌な予感がするけどついついそれを見てしまう。──違う、おかしい何かがおかしい。

 いや、だが……俺はこの紙を見る。──何故だろう、シェロさん以外がぼやけて見える。

 

「大変申し訳ないのですが……少し私も余裕がなくなってきましてぇ……」

 

 シェロさんの声が妙に響いて聞こえる。そして手元の紙を見る。

 そこには俺の大嫌いな数字が並ぶ。特に大嫌いな“0”の数字が多いようだ。

 一、十、百、千、万……ああ、まだ増える……なぜだ。まだ、まだまだ増え──ダメだおかしい。やめてくれ。

 

「直ぐにとは言いません……ですが、これの8割は返してほしいんですぅ……」

 

 またシェロさんの声が響く。俺の覚えのある数字よりまだまだ多くなる。四千万……六千万、八千万……ああ、そんな一億……! やめてくれ。頼む。なぜ俺がこんな目に──気付け、違う、現実じゃない。こんなのあってたまるか。

 

「一先ず来月までには──だんち──お金を──かえ────」

 

 シェロさんの声が響きながら遠ざかる。その代わり俺の周りに借金の額を示した紙が何枚も積み重なり、俺よりも高く柱となって集まり山積みになっていた。

 怖い、どんな星晶獣よりも恐ろしい。無理だ。絶対に無理だ……。返済できない……! 

 助けてくれ。誰か俺を……。

 

「──っと? ちょ──馬鹿にん──!」

 

 ──声、声が聞こえる。やめてくれ。もう俺に返せるお金は無いんだ。借りたお金も、もうないんだよ。これ以上は無理なんだ。助けてシェロさん、頼みますから……。

 

「──おき──! 団長起き──!!」

 

 みんなは関係ないんだ。俺の借金だ。俺が借りた借金なんだ。他を巻き込まないでくれ……。頼む、頼むよ……。

 俺にとって最大の恐怖……その書類の柱がバランスを崩した。それに伴い他の柱も崩れる。俺に向かってくる……途方もない数字が書かれた紙が雪崩となり俺に押し寄せる。俺を飲み込む。借金が俺を……俺を食い殺────。

 

 ■

 

 二 悪寒

 

 ■

 

「──起きろぉっ!」

「いでぇあぁっ!?」

 

 突然の頭部の激痛。あまりの痛みに俺は、伏せていた身体を跳ね起こした。

 

「な、なにすんじゃいメドゥ子ぉ!?」

 

 犯人はやはりメドゥ子。髪の毛を蛇に変えて俺の頭をカミカミしていた。超いてぇ。

 

「なにすんだじゃないわよ!」

「……へ?」

「こんなとこで寝て風邪ひいてもアタシ知らないわよ」

 

 メドゥ子の喝の一声を受け自分の意識がハッキリして来るのがわかる。

 俺がいるのは、食堂の何時もの特等席。そばには座る俺を見下ろすメドゥ子とコーデリアさんの二人がいた。

 

「……俺寝てた?」

「ああ、だが酷くうなされていたよ。思わず声をかけてしまった」

「あ、ああ……そう、そうか夢……転寝か、俺としたことが……」

 

 時間はお昼過ぎ。机にあるのは、俺が持ち込んで整理していた書類の山。それが傾き机に伏せていた俺に圧し掛かっていたようだ。そしてそこには、現在借金返済に充てている金銭について書かれていた。

 窓からの柔らかな日差しにつられウトウトとしてしまい寝てしまったのか。だがなるほど合点がいった。そりゃあんな夢見るわけだ。

 

「酷い夢だった……」

「顔も酷かったわよ。顔中しわくちゃで酷いアホ面……ぷぷ!」

「うるせ、笑うな」

「で、どんな夢見たのよ?」

「思い出したくねえ」

「何よ、つまらないわね」

「人の夢は無理に聞くものじゃないさ」

 

 ああ流石コーデリアさんだ。メドゥ子とは違う、人が出来てる。

 

「少し気晴らしをした方が良い。汗も酷いようだからね」

「そのようです……冷や汗かな、ああやだやだ。……水でいいや、ちょっと風呂行ってきます」

 

 まだ昼を過ぎて少しなので湯は張ってないがこの際水浴びでもいい。この酷い気分を洗い流すならむしろ水が良いぐらいだ。

 

「書類は後で片付けます……すんませんけど、そのままにしといてください」

「ああ、そのようにしておくよ。それに水浴びでは、身体が冷えるだろう。温かい飲み物の準備でもしておこう」

「やあ……それは、どうもすみません」

「気にしないでくれたまえ……誰かのために飲み物を淹れるのはいいものさ」

「ありがてぇ……」

「ほら、デレデレしてんじゃないわよ。そのだらしない顔早くシャキっとして来なさいっ!」

 

 メドゥ子が髪の毛を逆立て俺をやたら急かす。

 

「言われんでも行くわい」

「ふんっ!」

 

 俺はあの悪夢を忘れ、汗で気分の悪い体をスッキリさせるため、いそいそと風呂へと向かった。

 ──だがこの時はまだ、まさか次に立ち寄る島であんな事になるなんて思いもしなかった。

 騒動とは、何時も突然であり、しかしこの悪夢はある意味でそれを予感させる出来事でもあったのだ。

 事の始まりは、島に到着して一日経った時の事である。 

 

 ■

 

 三 呼び声

 

 ■

 

 休暇と補給を兼ね俺達は、とある交易盛んな島へと立ち寄った。

 補給も大事だが、なにせ休暇にしようと思った日にこっちは“木人ばあさんエディション”の暴走の対処に追われたのだ。別の日に休まないとやってられんのである。

 滞在は五日程の予定。休暇と補給なら十分だろう。

 エンゼラから街に移動した俺は、早いとこ休んでしまいたいので直ぐ商人相手に物資補給の手続きやらを行った。

 そして生活物資購入の手続きなら俺だけでもいいのだが、今回は更に別でカリオストロとルナールさんも付いて来た。なんでもそれぞれ実験材料と筆記用具が欲しいとの事。

 団員の私物は基本的に自費購入なのだが、彼女達の場合殆どが薬品やインク等の消耗品であり補給の際にまとめて買ったほうが単価が安くなる場合がある。この場合は、私物でも一緒に買ってしまう事も少なくない。

 更にはその後まとめ買いのできない、あるいはまとめて買うまでもないような日用品を買いに幾つかの店へと移動した。

 しかし交易盛んな島の大きな街。少し歩くだけで珍しい商品を置く店などがありついつい寄り道しがちになってしまう。特にカリオストロとルナールさんは、それぞれ興味を引いた品のある店に行くなどしてその買い物にも引き続き付き合わされた。

 

「やれやれ……疲れたねっと」

 

 結局補給の手続きだけじゃなく他の買い物にも付き合ったので思ったより疲れてしまった。特にカリオストロの荷物が多く大変だ。

 

「なんかお爺さんみたいよ団長」

「荷物重いんっすよ」

「んもう! 団長さんってば、情けな~いぞっ☆」

 

 俺の寂れた姿を揶揄うルナールさんとカリオストロ。と言うか俺が持ってる荷物はカリオストロのだ。俺の両手にある品は、錬金術とは関係のない衣服の入った袋。

 

「自分の荷物くらい持ってくださいよ」

「持ってるだろ、ほら」

 

 途端に表情を素に戻してカリオストロが見せた荷物は、荷物の中で最も軽いアクセサリーだけ入った小袋であった。

 

「重いもん殆ど俺とB・ビィじゃん!」

「んもぉ~! 団長さんは、か弱い女の子に重い荷物持たせるの?」

「か弱い……? 女の子……?」

「おい全部疑問で返すな!!」

 

 か弱い女の子はそんな風に叫ばん。

 

「ま、相棒は何かと疲れてるしな。エンゼラ戻った後はもう好きに休もうぜ」

「ミンミィ-ン!」

 

 俺を励ましてくれているのか、ミスラが俺の周りをくるくる回っている。まったく愛いやつめ。あとB・ビィ、俺が日頃疲れる理由に割とお前が含まれているのを忘れるな。わからんかこの俺達に向かう奇異の視線を。荷物を持ってくれるのは良いが、お前がマチョビィで荷物運ぶもんだから道行く人間が全てギョッとしているんだぞ。

 そしてそんな視線にちょっと慣れてる自分が怖い。

 

「けどありがとね団長。おかげで私も色々買えたわ」

「原稿進むといいですね」

「う゛ぅん゛っ!? そ、そうね……」

 

 途端に冷や汗をかき始めるルナールさん。こりゃ“進捗ダメです”って感じだな。買った文具が無駄にならない事を祈るのみだ。

 そうこう言いながら歩いていても商業エリアを抜けないのは、流石交易盛んな島と言うべきだろう。だがあまり長居をすると更に寄り道をしてしまう。早いところエンゼラに帰ろうと思って速足気味になった時──俺の視界は同じくエンゼラへ帰ろうとしている一人のドラフの姿をとらえた。

 一瞬「このまま無視しちゃいたいなぁ……」と思ったのだが、同時に目に入ってきた酒瓶の数を見ては、そうもいかぬと諦める。

 B・ビィ達にもついてくるように言い俺は、ほくほく顔で歩く“彼女”にそっと忍び寄ってその肩を叩く。

 

「ちょいちょい」

「はえ?」

「やあやあ、ラムレッダ」

「……にゃぁっ!? だ、だだだ団長きゅんっ!?」

 

 両手に抱えた酒瓶を落としそうな勢いで俺に驚いたのは、ラムレッダであった。

 

「買い物は楽しいかな……?」

「え、えへ……にゃはは……」

 

 彼女の持っている酒瓶を見ながら話すと彼女はダラダラと冷や汗を流していく。

 

「また随分と買ったみてぇだな」

「コイツにとっちゃ数日分か?」

「ホント、よく飲むわねこんなに……」

「ミミーン?」

 

 B・ビィ達も彼女の酒の量を見て呆れるばかりだ。

 

「ち、違うにゃ……っ!? これは、ティアマトの分もあるわけでしてぇ!」

「だとしても多いわバカチン」

「バカチンッ!?」

「お前さん昨日同じぐらい酒飲んでたでしょーに? んで、昨日飲んだのと同じ量次の日に買足すかい?」

「それはぁ~……色んなおしゃけが“買って買って”と手招きをぉ……」

「ほぉん?」

「あ、ごめんにゃさいっ!? 嘘、うそです! 単に私が誘惑に負けてしまいましたぁ!」

 

 まあそんなこったろうと思ったさ。それこそ“ちょっと”買うつもりで来たら我慢できなくなったんだろう。

 

「……はぁ。買ったならしゃーない、返せとは言わんよ自分の金だろうし」

「あじゃます……っ!」

「ただ一気に飲まない事! 何度も言っとるが、一晩でいくつも空き瓶増やす事は止めなさい」

「肝に銘じます……っ!」

 

 正にその“肝”が酒でどうにかなってないか不安になる。元来酒に強いドラフとは言え程度と言うものがあるはずだ。休肝日ってもんがあるんだろうかこの飲兵衛は。

 結局図らずもラムレッダと合流し帰ることとなった。俺は「一度団員の健康診断でもしたほうがいいかもしれんなぁ」等と思いつつ歩いていると、市場の喧騒の中でありながら少年の声がハッキリと聞こえてきた。

 

「夢占い、夢占いはいかがですかぁー! よく当たりますよぉ~!」

 

 声のほうに視線を向けると市場に似合わぬ水色のパジャマ姿の少年がいた。

 

「へえ、夢占いだってよ相棒」

「しかも子供ね」

 

 B・ビィとルナールさんが興味を惹かれたようで反応を見せる。確かに “占い”の呼び込みをパジャマ姿の少年が行っているのは、人の多い市場でも中々に目を引かれる光景だ。

 しかし夢占い、夢と言うと最近見たあの借金の悪夢を思い出してしまう。

 

「なんだ団長、興味でも沸いたか?」

 

 俺を見てニヤニヤ笑いながらカリオストロが言う。この人は俺の見た悪夢の事を知っていた。と言うか、その日の内に結局夢の内容がメドゥ子にバレてしまい「アイツ借金の夢でうなされてたわ、プークスクスッ!」と団員に言いふらされた。おのれメドゥ子。

 

「そりゃまあ……ちょっとは」

「占ってもらったらどうだ?」

「占いか……けどもう寄り道はなぁ」

「いいじゃない、興味があるならやってみれば」

 

 今度はルナールさんも占いを勧めてくる。もっともこちらは、からかいの意志はなさそうだ。

 

「私達の買い物に付き合ってくれたし団長も興味ある事したら? 私もちょっと興味あるし付き合うわよ」

「ルナールの言う通りにゃよ団長きゅん。それに今なら直ぐ占ってくれそうにゃ」

 

 確かに少年の周りには、足を止める者がいても占い目的の客はいなそうだった。

 

「ふーむ……興味はあるが、夢の内容が内容だからな。ちょっと怖い気もする」

「占いの結果を真に受けろってんじゃねえさ、もし良い結果なら気休め程度にはなるだろ」

「気休めね……悪い結果だったら?」

「戒めにしな」

 

 素のカリオストロらしい実にドライな言葉だ。これが見た目は美少女の口から出るのだからな。

 

「誰が見た目“は”美少女だっ! 全部美少女だろうがっ!?」

「何も言ってな……いってぇっ!?」

「顔が言ってんだよっ!」

 

 なんちゃって美少女の小さい脚が、俺の膝小僧を襲った。またも心の声を出していたらしい。どんだけわかりやすいんだ俺は。

 しかしカリオストロの言う通り夢占いに興味を惹かれたのは事実。良くて気休め悪くて戒め、そんなのも悪くはないだろう。

 

「そんじゃま、せっかくだし一つ頼もうかね」

 

 一度決めれば行動は早く俺達は少年へと近づき声をかける。

 

「ちょっと君、占いについていいかな?」

「あ、はい! 夢占いに興味がおありで……うわぁ!?」

 

 彼は声をかけた俺の方へ振り返り、そして俺の傍にいたB・ビィ(マッチョ)を見て叫んだ。

 

「ヘイヘイ、人を見て叫ぶたぁ失礼だぜ?」

「うん、人ではないね? 少なくとも姿は」

「す、すみません……! ちょっとびっくりして」

「ちょっとではなかったわね」

「普通に魂消てたな」

「度肝抜かれてたにゃ」

「ミンミン」

「えっと……ごめんなさい」

 

 少年は胡麻化してくれているが、あんな叫び方して“ちょっと”と言うのは無理がある。だが誰が彼を責められようか。振り向いて直ぐに筋肉モリモリマッチョマンのB・ビィがいたら普通の人なら悲鳴を上げる。むしろ良く逃げなかったと思う。

 

「いいよ、気にしないで。普通ビビるよこんなナマモノいたら」

「こんなとはヒデェな相棒」

「他にどう言えと言うのか……」

「あは、ははは……あれ?」

 

 俺とB・ビィのやり取りを見て困った様子で笑う少年であったが、ふと俺とB・ビィを交互に見て、そしてミスラやカリオストロ達を見る。すると途端に合点がいったと言う様子で「あっ!」と叫んだ。

 

「も、もしかして【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】の団長さんですか?」

「それ判断材料聞いていい?」

「あ、それは……」

 

 一体何を見て俺を星晶戦隊(以下略)の団長であると言う考えに至ったのか。俺とB・ビィだけならまだしも、カリオストロとルナールさんあたりを見て特に深く納得していたのが納得できん。

 

「え~っと……そ、そう! 姉さん、僕の姉さんが一度星晶戦隊(以下略)に会ってみたいと前から聞いてて! そ、それでピンと来たんです!」

「お姉さんが?」

「はい! 以前から星晶戦隊(以下略)の噂を聞いて興味があると」

「それは……それでなんかやだなぁ」

「ええ!?」

 

 俺の答えに少年は驚いているが、俺の“あんな噂”を聞いて俺に会いたいって言う人がいるのも驚きだ。興味がわいたと言うが、どんな興味だというのか。思わず身構えつしまう。

 

「君も知ってるようだけど“あんな噂”だよ? よく会おうとか思うね」

「いや、その……そ、そう! どちらかと言うと“色んな団員が居る”と言う噂のほうに興味を持ったらしくって……!」

「まあ確かに興味は沸くだろうな。オレ様だって沸いた」

「実際色々居るしにゃ~」

「ミンッ!」

「年間空域クセの強い騎空団ランキング堂々一位よね」

「相棒のクセがスゴイ」

「そんなランクはねえし、クセがつよいんはお前らじゃぁ!」

「ほ、本当に“色んな”団員がいる……!」

 

 阿呆な会話のせいで少年が更に納得してしまっている。こうやって誤解が広まるんだ。ちくしょうめ。

 

「あの……もしよければ姉さんに会っていただけませんか?」

「会う? ……今からかい?」

「はい。実は占いをするのは、姉さんなんです」

「……今聞いたお姉さん?」

「ええ、今はそこの占いのために間借りしてるお店、そこに居ます」

 

 少年が指さす方向にある店を見る。どうやら普通の飲食店のようであるが、当たり前だが外からはその“姉”の姿は見えない。

 さてどうするか、と悩む。と言うか、“俺に興味がある”と言う時点で割と引き返したい。

 

「会ってやりゃいいじゃんか相棒」

「B・ビィ、お前って簡単に言うよね」

「ってもよう、占いに興味あって声かけたのはこっちだぜ。別にそっちの興味が失せたわけじゃねえだろ?」

「そだけどさ」

 

 今までの旅の中で俺に興味があると言う奴って大概星晶獣だよ。そうでなくてもなんか厄介な事抱えた人だよ。巻き込まれるよ……何かしらに。

 だが、チラっと少年の方を見ると不安げに期待を込めた瞳で俺を見ている。ああ、そう言う視線に俺は弱い。若く純粋で無垢な視線が俺に刺さる……いや、俺も若いが。

 

「……じゃ、じゃあ取り敢えず占いはお願いしよっかなぁ~……って」

「あ、ありがとうございます!」

「折れたな」

「折れたにゃ」

「団長、少年にもちょれ~……」

「ミーン」

 

 うるさいよ君達。別に折れたわけじゃない、占いへの興味が勝っただけですが? あとちょろくも無い。

 

「それでは、こちらへどうぞ!」

 

 一方俺の答えに安堵したのか少年は、嬉しそうに姉がいると言う店へと俺達を連れて行く。

 しかし俺に興味があると言う占い師の姉とは、本当にどんな人なのだろう? そんな事を考えながら、呑気に俺とB・ビィ達は彼の後をついていった。

 

 ■

 

 四 忍び寄る

 

 ■

 

 団長達を引き連れた少年は、占いのために間借りしている店へ入った。その店の隅には、店の喧騒も気にならぬ様子で椅子に座ったまま眠る一人の少女がいる。少年はその少女のそばへと向かった。

 

「姉さん、ヴェトル姉さん! お客さんが来てくれたよ!」

 

 彼が声をかけると、座って眠る少女は薄く目を開き声をかけた少年を見た。

 

「ふぁ……モルフェ……?」

「ほら、姉さんしっかり! お客さんだよ」

 

 軽く肩を少年に揺らされ少女は更に目を開く。それでもまだまだ寝ぼけ眼のそこには、団長はじめB・ビィ等の面々を映し出した。

 

「いらっしゃぁ~い……ふぁ」

 

 客を前にしても欠伸をするのを躊躇わない少女。その姿を見て団長達は、少し肩透かしを食らったような気分になっていた。

 

「君の姉とは聞いたから、若いだろうとは思ったけどね」

「思ったより若かったな」

「と言うか子供にゃ」

「あはは……よく言われます。けど占いの方は、間違いないですよ!」

 

 少年が姉のフォローに回るが当の姉本人は、どこ吹く風といった様子で団長達を見つめていた。

 

「んふふ……しわくちゃのおばーさんの方が良かった……?」

「いんや、ばあさん相手だと身構えちゃうからこの方が良いよ」

「おばーさんは、お嫌い……?」

「嫌いじゃないよ。ただね、苦手なのさ」

 

 老婆と言う存在に若干トラウマを抱える団長は、如何にもな怪しい雰囲気の占い老婆より目の前の少女の方がよっぽど取っ付きやすく助かっていた。

 

「んふふ、変なおにーさん……」

「失礼だよ姉さん!? 折角会いに来てくれたのに!」

「ん~? 会いにぃ~……?」

「そうだよ。この人が星晶戦隊(以下略)の団長さんだよ!」

「星晶せんたぃ~……? ふぁ~……」

 

 星晶戦隊(以下略)、その名を出されても少女は変わらず欠伸をしながらうつらうつらと揺れている。

 

「……本当に俺に興味あったの?」

「ほ、本当ですよ!? ちょっと姉さん、星晶戦隊(以下略)だってば!? 会ってみたいって言ってたでしょ!?」

 

 団長の視線が疑いのものへと変わり少年は慌てて姉の肩をつかんで揺らした。

 

「うぅ~~ん……! モルフェ、らんぼうしないでぇ~……」

「なら寝ないでよぉ!? 大切なお客さんなんだからぁ!」

「はぁ~い……ふぁあ~……!」

 

 少女はまた何度目かの欠伸をするとほんの少しであったが、意識がハッキリした様子だった。

 

「はぁ~い……ヴェトルとモルフェの夢うらな~い……私がヴェトル~、そっちがモルフェ~……ようこそぉ~……」

「随分気の抜けた挨拶ねぇ……」

「す、すみません……け、けど本当に占いは当たるんですよ!」

 

 占い師の少女、ヴェトル。そしてルナールの感想に対しまたも姉のフォローをするのは、その弟であるモルフェ。

 素直で人当たりの良いモルフェに対し、全てが欠伸に聞こえてくる様なゆったりとした言葉使いで喋り掴み所の無いヴェトルは、占い師としては十分すぎるほど不思議で奇妙な雰囲気であった。

 

「んふふ……星晶戦隊(以下略)団長さん……お空で噂のお兄さん……」

「その噂信じちゃだめだよ?」

「噂は眉唾、ウソ? ホント? あんな噂やこんな噂……ちょっとホントで、ちょっとウソ?」

「ウソウソ全部ウソだよ、ウソだよぜんぶー」

 

 団長は首を振って必死に噂を訂正しようとした。彼の頭の中では、あれやこれやと何処で尾鰭がついたかわからない噂がゾロゾロ百鬼夜行の如く並んで歩いていた。

 

「それじゃあ……星晶獣は? 仲間に居ないの?」

 

 ヴェトルは団長の横に立ち、そして頭上にもいるB・ビィとミスラ見た。

 

「それはホントだぜ嬢ちゃん。オイラはB・ビィ、こっちはミスラってんだ。よろしくな!」

「ミーンッ!」

「……星晶獣ってこんな気軽に名乗るものだったかしら?」

「違う、断じて違う」

 

 ルナールの呟きに団長は、唸るように答えた。恐らく全空広しと言えど、こんな挨拶をする星晶獣は、この騎空団ぐらいにしかいない。

 

「そんでオイラは、騎空団のマスコットさ」

「図々しい事言うな。騎空団マスコットはユグドラシルやミスラだ」

「ミンッ!」

 

 マチョビィ状態でマスコットを自負するのは、かなりの無理があるがB・ビィの自信は本気のものであった。当然すぐに団長に否定され、別に団長にマスコット認定されたミスラが誇らしげに回転していた。

 

「艇に戻ればもっと他の奴にも会えるぜ。みんな気の良い星晶獣ばっかだぜ!」

「ミンッ!」

「星晶獣って、こんな“会いに行ける”系の存在だったかしら……?」

「違う、断じて違う……っ!」

 

 またもルナールの呟きに対して、唸るように答えた団長。やはり全空広しと言えど、こんな“会いに行ける星晶獣”が居るのは、この騎空団ぐらいなものである。なにせ星晶戦隊(以下略)に何かしらの依頼を出せば会えるのである。星晶獣も安くなったものだと団長達は思わずにいられない。

 星晶獣の本来あるべき姿や、そのありかたとは云々──ブツブツと団長は項垂れ呟いた。

 

「ふぅん……」

 

 そんな団長やB・ビィ達のやりとりをヴェトルが一瞬冷めた表情で見ていた事に、この時団長達は気が付くことはなかった。

 

 ■

 

 五 夢占い

 

 ■

 

「ふぁ~……それで、占って欲しいのは……お兄さん?」

 

 俺とB・ビィ達のやりとりを見て一瞬黙っていたヴェトルちゃん。欠伸までされてしまった。

 

「ごめんごめん、つまらん物を見せちゃって」

「んふふ……別に気にしな~い」

「悪いね。それで占ってもらうのは……」

「あ、ついでに私達も占って欲しいにゃ~」

 

 ここでラムレッダが自分とルナールさん達を指差しながら手を挙げた。

 

「そうね、話のネタとしても興味があるし」

「おい、オレ様はやるとは言ってねえぞ」

「まあまあ、せっかくだしやろうにゃ。団長きゅん誘ったのもカリオストロにゃよ」

「む、むう……」

 

 荷物も置いて完全に占いに参加する気満々のラムレッダ達に挟まれ、さしものカリオストロも押され気味のようだ。

 結局俺達は、「最近夢は見てない」と言うB・ビィとミスラを除くメンバーで占ってもらう事になった。

 

「そもそも星晶獣って夢みんの?」

「見てんじゃねーの? 他は知らねえけど、少なくともウチのとこは全員見てるぜ」

 

 ちょっと疑問だったのでB・ビィに聞いてみたところ、コロッサスやミスラのように、非生物型星晶獣でも夢は見るとのこと。ウチと言うのは、やはり星晶戦隊(以下略)のことであろう。あまりウチのメンバーを星晶獣のスタンダードにしてはいけないと思うので、この答えは話半分で聞いておく。

 さて肝心の占いであるが、俺から順にヴェトルちゃんに夢の事を話していく。当然俺の夢は、あの借金の悪夢である。思い出すのも嫌だがあれ以外を占う意味もあまりない。俺はあの悪夢を見たままに伝えた。

 ルナールさん達もここ最近見たと言う適当な夢を伝える。俺と違って誰もが当り障りない、けどちょっと不思議な夢らしい内容であった。

 それらを聞いたヴェトルちゃんは、しばし沈黙した。

 

「…………」

「これ寝てないよね?」

「寝てない、寝てないです! 集中してるだけです!」

「おい、首が船漕いでるぞ」

「ね、姉さん流の集中ですっ! すごい集中力なんですよ!? ええ、はい!」

 

 なんなら「スヤァ……」とまで言い出しそうな雰囲気のヴェトルちゃんに不安を覚えるが、モルフェ君が言うには集中してるだけとの事。それを信じてもう少し待っていると、ヴェトルちゃんが再び眠気眼を開いた。

 

「ふぁ~……結果はっぴょぉ~……」

「寝てたんじゃないわよね?」

「大丈夫、大丈夫です……っ!」

「ふぁ~……よく寝た……」

「この子、今“よく寝た”って」

「集中、集中したんだよね姉さんっ!?」

「むぅ~……どうしたの、モルフェ~?」

 

 当然の疑問を指摘するルナールさん、それに対してのモルフェ君の必死なフォロー。だがどこ吹く風のヴェトルちゃん。これで案外バランス取れてそうな二人に見える一方、モルフェ君の姿に自分が重なりだしてきた。

 

「……身近にマイペースな人いると大変だよね」

「え……えっ? 何がでしょうか?」

「みなまで言うな、頑張ってモルフェ君」

「あ、はい……? ありがとうござい、ます?」

 

 とりあえず彼の未来を憂いつつ応援しておいた。

 

「それより占いの結果よ。どうだったの?」

 

 ヴェトルちゃんのペースに焦らされたのか、占いの結果が気になるらしくルナールさんが急かすとヴェトルちゃんは、そっと俺を指さし結果を語りだした。

 

「あなたは、険しい道を行こうとしている……長くて遠い、険しい道……。行く手を阻むは、幾多の困難……星の獣が、呻いて騒ぐ……」

「星晶獣関連のトラブルは避けられんらしいな相棒」

「お黙りよB・ビィ」

 

 B・ビィに茶化されるがヴェトルちゃんの言う事は、まあ当たっている。ヴェトルちゃんは、そのまま結果を続けて語る。

 

「旅の中で、襲い掛かるのは過去……あなたが過去に失ったもの。例えあなたが忘れても……過去はあなたをわすれない……」

 

 極めて、実に意味深な事を告げるとヴェトルちゃんは黙った。俺の瞳を彼女は、ジッと睨むように見つめている。

 

「……努々気を付けるとするよ」

「それがおすすめ……んふふ……」

 

 眠気眼に見えた薄い瞼が、今は鋭い刃に思えた。

 その後、彼女はラムレッダ達の占い結果を語った。

 

「筆を走らすあなた……己の愛する世界を描くあなた。妄想空想……夢の世界は、現にあらず。忘れてはだめ……あなたは、現に生きる者……」

「ななな、なんのことかしらぁ~っ! ははぁ~ん!」

「妄想浸りすぎって事じゃないっすか?」

「はぐぅっ!?」

 

 ルナールさんが痛い所を突かれたのか、胸を押さえて呻いていた。

 

「時の流れは、何時だって残酷……初めから守れないなら、辞める事も大事」

「締め切りかな?」

「うごご……!」

 

 最近も自分で決めた期間内で原稿を描けなかったのか、ルナールさんは頭を抱えた。

 

「そしてあなた、美酒に酔うあなた……。律する心を忘れるなかれ……酒は飲んでも飲まれるな……」

「はうわっ!?」

 

 大いに思い当たることがあるのか、ラムレッダも胸を押さえて呻きだした。

 

「過去の後悔と過ちは、繰り返すべきじゃない……懺悔の時は、近づいている……」

「酒の失敗多いもんな」

「しゅ、しゅみません……っ!」

 

 最近も“木人騒動”での失敗がある。そうでなくても身に覚えの多いラムレッダは、縮こまる様に頭を下げた。

 

「最後にあなた、可愛いあなた……」

「えへ☆ 可愛いだなんて、カリオストロ照れちゃう☆!」

「偽りは、所詮偽り……真理とは程遠いもの。いくら愛らしい姿で隠しても……あなたの心は隠せない……」

「ああんっ!?」

「そーゆーとこ、そーゆーとこだよおっさん」

 

 心と言うか本性だだもれカリオストロ。少女の姿のギャップを良くついた言葉だ。

 

「きっと思い出す……あなたの心、真理の原点を……」

「てめぇ……」

 

 全てを見透かしたようなヴェトルちゃんの言葉。カリオストロも思わず唸り、彼女を睨んだ。

 

「んん~~……っ! 以上、占いでした~……」

 

 寝起きの背伸びの様な仕草をしつつ、ゆったりとした調子を崩す事無くヴェトルちゃんは、俺達に占いの終わりを告げた。

 決して良いとは言えない結果に俺だけでなくルナールさん達は、すっきりとしない顔をしている。

 しかし悪いだけとも言えない。ヴェトルちゃんの言った内容は、悪意ある“予言”でなくあくまでも“占い”でしかない。カリオストロの言っていた通り、戒め程度に受け取るのが良いのだろう。

 

「ありがとう、面白い占いだったよ。それじゃこれ、占いの御代」

「はぁ~い……ん」

「お?」

 

 彼女は御代を受け取ると思ったら、突然俺の手を掴んだ。すると彼女は、俺の目をじっと見て囁くように話しだす。

 

「夢を否定してはダメ……。夢は鏡、心の鏡。映るがまま、見えるがままを受け入れて……鏡に映るのは、あなた自身だから……」

 

 これも占いの結果であろうか。今回の占いでも特に意味深な言葉は、忠告のようにも聞こえた。

 

「……忘れずにおくよ」

「んふふ……良い夢を……ふふふ……」

 

 ヴェトルちゃんは、今度こそ御代を受け取った。

 

「ま、聞くこた聞いた。帰るとしようぜ」

「あ、ちょっと待って下さい! これ、サービスです!」

 

 カリオストロが帰ろうとするとモルフェ君が慌てて声をかけた。彼は何時の間にか手に紙袋を持っており俺達にそれを差し出す。

 封はされていたが袋からは、僅かに心地よい香りが漂った。

 気になったのかB・ビィがスンスンと臭いを嗅いだ。

 

「お、良い香りじゃねえか。ハーブか?」

「はい、僕が調合したハーブティーです! 寝る前に飲めばリラックスできますよ!」

「そりゃ良いね。ありがたくいただくよ」

 

 モルフェ君から袋を受け取ると俺も軽く臭いを嗅いだ。バランスの取れたカモミール系の香りが心地よい。

 

「それじゃこれで。占いありがとうね」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました!」

「毎度、ありがとうございましたぁ~……。ふぁ~……」

 

 今度こそ別れを告げて店を後にする。きっちり見送るモルフェ君に欠伸をしながら手を振るヴェトルちゃん。最後まで差の激しい姉弟である。

 

「不思議な占いだったなあ、相棒」

「確かにな。まあ俺は、きちんと占い受けたのは初めてだがね」

 

 帰ったらエゼクレインさんにでも結果について聞いてみるのもいい気もする。あの人だって占い師だ。また別に視点からの占い結果を教えてくれるかもしれない。

 ふと受け取ったハーブティーの香りをもう一度嗅いだ。やはり心地よい香りだ。この香りだけでも今日の眠りが楽しみになった。

 




読者の皆様、何時も感想、誤字報告等ありがとうございます。大変励みになっております。
今回からイベント【リペイント・ザ・メモリー】編へと移ります。やりたかったイベントです。

ショウタイムだ!
ぶっちぎり青春イベント、今回もマナリアを彼らは爆走ぶっちぎりでしたね。バクシンバクシーンッ!!

六竜が召喚石になりましたね。頼もしい奴等です(持ってないけど)。何時か団長君に絡ませたいね。六竜戦隊アンセスターズだよ団長君。コルワさんガレオン君と友達になってるし、へーきへーき。

アテナが最終上限解放のようですね。メドゥーサ出してるしやっぱり絡ませたいとは思ってます。どうなるかな。
あと17歳の先生もプレイアブル! オイオイ!> グラブル17歳教の広まりが……。

最後に小ネタ。セリフ考えるのが難しい、最早古い古代のネタでまた次回。




グランブルーファンタジー 蒼穹黄金鉄塊



 ファータ・グランデ空域、ザンクティンゼル。その島は、小さな村があるだけのこれまた小さな島。
 自然の中で暮らす穏やかな島には、一人の少女と子ドラゴンがいた。

「行くよビィ! 早く!」
「待てってジータ!」

 小さな頃から共に過ごした二人は、村のそばにある森の中を駆けた。何時もの様に鍛錬に励んでいた彼女は見たのだ。森の中に落ちていく“なにか”を。
 好奇心を抑えきれない彼女は、ただ一匹ビィだけを伴い森を走る。
 そしてあの“なにか”が落ちた場所へたどり着き目当てのものを探した。遠目では人間のようにも見えたそれは、果たしてどこに――。

「おいジータ、あれ」
「え?」

 ビィが指差し叫ぶ。ジータも同じ方向を見た。そこには、大樹に背を預け気を失っている一人の男がいた。
 咄嗟にジータは駆け寄り声をかけた。息はあった。見たところ怪我もない。
 褐色の肌の男は、白銀の髪を静かに揺らし眠るように目を閉じていた。来ている白の鎧から、騎士の様に見える。
 ――だとして、何故そんな男がここ?
 ジータが疑問を感じていると突然男の目が開いた。

「うう・・・?」
「あ、意識が……大丈夫ですか?」
「・・・な」
「な?」
「・・・何いきなり話かけて来てるわけ?」
「へ?」

 それがジータとビィの、そして空から墜ちた“黄金の鉄の塊でできたナイト”――ブロントさんとの出会いであった。
 この出会いから始まる長い長い大冒険――蒼穹の特異点ジータ、黄金の鉄の塊でできたナイトブロントさん。二人の行く先には、常に大騒動が巻き起こる。
 ブロントさんとの出会いから少し経ち、蒼の少女ルリアとカタリナとの出会い――。

「そこの小娘といい邪魔ばかり! いい加減大人しくその少女をこちらに渡してほしいものですネェ!」
「その提案はどちらかというと大反対だな」
「なぁにい~っ!?」
「お前ら勝手に平気に兵器あつかいされる奴の気持ち考えたことありますか? マジでぶん殴りたくなるほどむかつくんで止めてもらえませんかねえ・・?」
「こ、このとんがり耳が……我らエルステ帝国に逆らうとでも!?」
「第三者の中立的立場から客観的な意見を言ってるだけなんだが・・・?」
「君よすんだ!? それ以上ポンメルン大尉を挑発しては……っ!」
「大丈夫! ブロントさんは強いんだよ!」
「なんてたってオイラ達のメイン盾だからな!」
「メ、メイン……盾?」

 時にエルステ帝国の兵達をジータと共に返り討ちにし――。

「ポート・ブリーズはお終いさ! ティアマトは暴走し住民ごと島は沈む!!」
「てめえ……なんてことをっ!?」
「あははっ! 残念だったねぇ~! 脱出艇もなくなって君たちはゲームオーバーってわけ――」
「メガトンパンチ!!」
「ぶえっ!?」
「ブ、ブロントさん!?」
「普段は確かに心優しく言葉使いも良いナイトでもおまえらのあまりのごく悪鰤に完全な怒りとなった・・・仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」
「ブロント、お前……」
「さんをつけろよでこすけ野郎!」
「えっ!? わ、わりぃ……!」

 ポート・ブリーズで帝国の悪事を砕き、ジータにでこすけ呼ばわりされたラカムを仲間に――。
 その後もイオ、オイゲン、ロゼッタと頼もしい仲間達を得たジータとブロントさん一行。険しい旅も仲間と共に乗り越えて行く。
 そしてその仲間に危機が迫れば躊躇う事無く助けにいく。だからこそナイト。

「ジータ、ルリア……それにヴィーラのために私は……」
「お前それで良いのか?」
「だが!」
「俺の程でないがカタりナもそれなりなナイトと思っていたんだが? その浅はかさは愚かしい。自己満の塊な今のお前はナイトじゃにい。守るべきもの守ってこそがナイト」
「ブロントさん……」
「・・・ルリアが待ってるんだが?」

 その心こそが、黄金の鉄の塊。

「いい加減にあきらめなさいっ!! お姉さまは誰にも渡さないっ!!」
「おいィ? お前らは今の言葉聞こえたか?」
「いいえ、聞こえませんっ!」
「なにか言ったの?」
「オイラのログにはなにもないな」
「ほらみろこれが現実。ナイト以前に人としてお前のやり方は大失敗だったんだが?」
「なにをっ!?」
「お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」
「お前……っ!? お前がお姉さまをたぶらかさなければ……お前があぁ!!」

 幾多の苦難を乗り越えて、ブロントさんは旅を続ける。ジータ達を星の島へ導き、いつかは元の世界に戻るため。
 その時が来るまで、彼は空の世界で有頂天になる。仲間達を守るため――。

「おれの怒りが有頂天になった」

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