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一 乙女トークに黒ナマモノ
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紫にも似た濃霧と瘴気(無害)を放ち空を航行するセレスト。向かう先は今回の依頼人コルワさんの指定したとある島。そこで彼女が会う約束になっている仕立て屋さんがいると言う。
航路を確認して気が付いたのは、この島がまたなんと言うかうまい具合に丁度ガロンゾとそう離れてないと言う事だ。シェロさんがこの依頼を俺達に持ってきた理由がまた一つ分かった気がした。
「んでぇ~、その日ネイルとか服とかチョーこだわったんだけどぉ~。イツメンで遊び行った時誰も気が付かなぃじゃんねぇ~」
「ええ? 誰もってそれ酷いわねえ」
「女子友は気付ぃてくれたけど男は誰一人ってゆーね」
「ハァ~、ヤレヤレダナ。ソノ男共」
「まー気付かなぃってゆーのは百歩譲ってぃぃけどさぁ……けどマジイミフなのは、逆に服の駄目出しし始めるヤツね( `Д´ )!」
「うーわ、それなんか鬱陶しいわねえ」
「ほんとそー! 『俺の趣味じゃないけど、良いと思うよ』とか言われたけど、ぃや知らんしって。ぉ前はクロエのなんなん? ってなる。ぉ前の好みで服選んでねーからってゆーね!o(*≧д≦)o))」
「なんじゃそれ、褒めるなら褒めるだけにすればいいじゃろうに」
「あー……そう言う人偶にいるのよ、ガルーダちゃん」
「じゃあぃっそなんもゆーなってなるじゃん!」
「けどやっぱり一言無しもどーなの? ってなるしねえ、気にされたい時もあるのよね」
「そ────! もぅほんそれなーって!」
「そ、そだね……」
……そして、何時の間にかコルワさんが滅茶苦茶馴染んでいる。
先程発作を起したルドさんをどうにかこうにか大人しくさせ、無駄に疲れて部屋に戻るとこうなってた。
何時からここは女子会の会場になったんだ。幽霊船特有の暗さが吹き飛び、なんかこの部屋が妙に色めいている。
「……君達楽しそうなのね」
「ぁ、だんちょぉかえり~☆」
疲れた事を隠す事も出来ず声をかけるとクロエちゃんがニッコリ笑って返事をくれた。けど君直前までプリプリ怒ってたよね。切り替え凄いのね。ちょっと怖い。
「ル、ルドミリアどうだった……?」
「何とか気絶させた。今フェリちゃんとコーデリアさん達が看てる」
「難儀じゃのう、あの娘も」
うちの団来てから多少我慢できるように成った、とは本人の談である。反面発作を鎮めようとして色々してたらそれに耐性付き出したから結局厄介ではあるのだが。
「それでなんだい、みんなして楽しそうじゃないのさ。俺が大変だった時に……何話してたの」
「アンタの借金が如何に増えたかの話」
「ひでえ!」
あんまりにもあんまりな内容を話されていた事に悲鳴を上げた。
「お前ら俺が居ないのを良い事に何て事話してるんだ」
「ン、スマン」
「驚くほど謝罪が軽い」
さては微塵も悪いと思ってねえなオメー。
「若いのに大変なのね団長さん」
ほら見ろ、コルワさんに同情されてしまったぞ。何たる事だろうか。と言うかそこからどうして、あんな女子トークになるんだよ。
「いやぁ、盛り上がっちまってよう。オイラ達もどうしてあの話題に発展したか覚えてねえや」
「女子トークってそんなもんだって、だんちょっ☆」
「いやB・ビィは女子じゃねえだろ」
その後も色々指摘したかったが、クロエちゃんの「大体そんなもん」で流された。解せぬ。
しかし俺もその後話しに混ざり話し込んでしまった。案外悪くない時間を過し、そんなこんなで俺達は目的の島へとついたのであった。
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ニ きっと平和な依頼なんだろうなぁ!(願望)
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コルワさんの話す目的地の島、そこ各島との交通の便は良く訪れる人は多い。人口もそれなり、自然もあり中々に大きな市街もある。雰囲気としてはポート・ブリーズが最も近いだろう。
この島にコルワさんの知り合いと言う仕立て屋さんがいる。と言っても住んでいるのではない。向こうも今回の事でこの島に来ているのだ。
「一応依頼内容には護衛が含まれているので我々も同行する。とは言え全員では多すぎるので、例によって選抜メンバー発表するからみんな集合」
治安が悪い島でもないのでそこまで過剰な戦力は必要ないだろう。なのでこんな依頼の時どうするかまだ分からないメンバーを選び、今後の仕事の割り振りを見極めてみるとする。
「先ずは前回お留守番だったフェリちゃん」
「つ、ついにか」
「緊張しなくていいよ、お使い的な仕事だから」
「そーそー、気楽にやりなって」
「いや、なんであんたが言うんだ」
ヘラヘラと話すドランクさんだが、この人は団員でもなんでもない人間である。この人はフェリちゃんのなんなんだよ。
「分かった。けど迷惑をかけないように頑張るよ」
フンスッ! と気合を入れているフェリちゃん。可愛さが溢れている。ストレスが大分吹き飛んだ気がした。
「んで、次クロエちゃん」
「早速キタ━o(゚∀゚o)(o゚∀゚o)(o゚∀゚)o━!!」
「はいはい、落ち着いてねー」
クロエちゃんの名を出すと、彼女が超興奮していた。彼女を選んだ理由としてはクロエちゃんはコルワさんと打ち解けてるし、まず戦闘の無い依頼だから選んだ。最初の依頼としてはちょうど良いだろう。
「次にコーデリアさん、フェリちゃん達のフォローお願いします」
「ああ、任された」
安定と安心、信頼のコーデリアさん。セレストに残ってもらうのも考えたが、仲間に成ったばかりのフェリちゃんとクロエちゃんが居るため、今回の依頼では俺以外で仲間に気を配れる人が欲しかった。
「それとオマケでメドゥ子も来なさい」
「オマケって何よっ!?」
オマケはオマケである。それ以上でもそれ以下でもない。
「お前のじゃ子のクッキー食べちゃったでしょ。前お小遣い上げたしそれで依頼終わったら帰りにお前が自分で買いなさい」
「うぬぬぅ~っ!」
言い返したいが本当の事で言い返せない表情だな。後ろでメドゥシアナが呆れた様子で舌をチロチロしてた。
「後は留守番。ただ市街に行きたいなら別に出かけてもいいけど、艇には必ず何人かは残るように。セレストを珍しがって野次馬来るかもしれないけど上手く相手しておいてね」
「承知した。私は艇に残るとしよう」
「自分もそうします。後はお任せであります!」
ゾーイとシャルロッテの返事を聞いてホッとする。他のメンバーが駄目と言う事じゃないが、この二人は特に信頼がおける。きっと問題は無いだろう。
「それと今回もスツルムさん達は自由にどうぞ」
「……それはいいが、お前一応私達が帝国側の人間と覚えてるか?」
「そりゃあ勿論」
「……お前、私達に対してあんまりにも無用心じゃないか?」
そう言われると確かにそうなのだが、しかしそんな事今言われてもあんま気にする事ではないからなあ。
「別にこの状況でお二人に何が出来るって話ですし、まあいいんですよそこらへんは」
「呑気な男だ……」
「まーまーいいじゃないのスツルム殿~。折角だからちょっと街みてこうよぉ~」
「お前も気を緩めすぎるんじゃない」
「いっだあぁぁ!?」
また尻を刺されるドランクさん。この二人はある意味なんの心配も無いな。なんかあってもドランクさんが尻刺されるだけだし。
「それじゃあコルワさんお待たせしました。行きましょうか」
「ええ、そう長くないけど残りもよろしく頼むわね」
先ずは双子の仕立て屋と言う人物に会いに行く。街の中で落ち合う約束なので直ぐに会えるだろう。
それではとっとと会いに行きますかね。
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三 毎度お馴染み
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市街のとある食堂、そこで目的の仕立て屋さんが居ると聞いて俺達は店内へと入る。店内はそれなりに混雑しており、雰囲気から観光客とかではなく島の住民が殆どだろう。普段の店の盛況さがわかる賑やかさだ。
またこんな時に使う店と言うのは、やはりと言うべきかシェロさんのよろず屋系列の店である。シェロさんの運営する店は騎空士の利用者も多く、食事以外では待ち合わせに利用する事で出来る。店の指定もシェロさんによるものらしい。流石ぬかりない。
「凄い賑わってるな……」
「ちょーわかるぅ~!(人*´∀`) こんな賑ゃかなのぅちの村じゃ祭レベルだからね。マジ都会ヤッバァ~ィ!」
「ゴチャゴチャして鬱陶しいだけよ、こんなの」
「んっもぉ~、もっとアゲてこーよメドゥ子っちってばぁ~!」
「んなぁー! 抱きつくな暑苦しいから! てか、メドゥ子っちは止めてよ!?」
フェリちゃんとクロエちゃんは食堂だけでなく街の人の多さに少し興奮気味だった。フェリちゃんはずっとトラモントで一人暮らし、クロエちゃんは小さな村で育ち外を知らなかった。だからその興奮も仕方の無い事だろう。
一方でメドゥ子は騒がしいのが苦手なようだ。本人の方が普段騒がしいくせによく言うものである。お前はそこでクロエちゃんにかまわれてゆけ。
「結構余裕持ってつけたな」
「珍しくトラブルも無かったしな」
「珍しくは余計じゃい」
B・ビィの一言は余計だが、確かに珍しくトラブルも無く来れた。いや、別に普段トラブルばかりと言うわけではないはずだ。そう言われたからそう思っただけで、そんな事は無い筈なのである。
「……まあのんびり待ちますかね」
「そうね。多分二人共まだ来てないと思うし」
そう言って適当な席に着こうとした時、コルワさんの腕をポンポンと後ろから軽く叩く小さな手が見えた。
「こちらですよ、コルワさん」
同時に不意に後ろから声をかけられ、少し驚いた俺達が後ろを向くとそこには小さな二人のハーヴィンが居た。
「あ、あらごめんなさい二人共! 先に着いてたのね……待たせちゃったかしら?」
「いえいえ、私達も今来たんですよ」
「後ろ姿が見えたので声をかけさせていただきました」
見知った様子の三人。コルワさんの様子からこの二人が約束をしていた仕立て屋さんだろう。
「どうも、みなさま。毎度お馴染み仕立て屋のララとロロです」
「今日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくね二人とも」
ララとロロ、そう名乗る二人のハーヴィン。赤と青の帽子に、揃いの大きなボタンを取り付けた双子の仕立て屋さん。
カワ……カワワ……カワカワ……。
「相棒あいぼー、しっかりしろ。焦点ずれてる」
「ハッ!?」
不意打ち気味のダブルハーヴィンに意識が飛びかけた。我ながら情けない動揺をしてしまった。
「それで……そちらの方は【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】の団長さんですね」
青の帽子のロロさんが俺の方を向き態々あのクッソ長たらしいふざけた団名を言い切った。なんか申し訳ねえ。
「ええ、その団長です。それと次からは適当に略していいですよその団名」
「うふふ、じゃあそうしますね」
コロコロと笑うロロさんに一瞬意識がまた飛びかけた気がした。だが今は依頼の途中、仕事を疎かにしてはいけない。頭を振って気持ちを切り替える。
「俺達の事は知ってたんですね」
「シェロカルテさんから聞いていましたから」
「コルワさんを連れてくる騎空団は知り合いだから信用できますと」
あの人はどんな依頼でも可能な限り関係者全体に細かく連絡をとっているが、そんな時間何時あるのだろうか。と言うか何時のまに連絡をしてたんだ。相変わらず色々謎である。
「今回は来て頂いて助かりました。実は私達からも少し頼みたい事があったので」
「頼みたい事? 何か依頼ですか?」
「それは……」
「ララ様、ロロ様」
「うわぁ!? だ、誰よコイツ!?」
ララさんが何かを話そうとすると、不意にヌッと横から二人の名を呼びながらエルーンの男が一人現れた。メドゥ子が驚き声をあげるが、男は俺達にかまわずララさん達に話しかけた。
「そこから先はお屋敷で……」
「そうですね……すみませんみなさん。詳しくは場所を移してから話しますね」
「ちょっと面倒な事なので、落ち着いて話しましょう」
「えっと……それはいいんですが、そちらの方は?」
「私の事は気になさらず。皆様もこちらへ、表に馬車を用意してあります」
「馬車?」
俺とコルワさんは顔を見合し「なんであろうか?」と同じように思ったのか首をかしげた。ララさん達について外に出ると、確かに大きめの馬車が待機していた。それも妙に派手と言うか、格式高そうな車体である。
「……ララさん、今からどこに向かうんですか?」
「行けばわかります。そこで色々とお話しますから」
何より可愛らしい笑みが途端に曇ったララとロロさんの雰囲気から、あまり呑気な頼み事ではないと感じ取れた。
どうも今回も簡単な依頼ではすまなそうな気配を俺は感じていた。
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四 爽やか系男子
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島についてから待ち合わせ場所に移動して、また更に移動。ララさんロロさん達が宿泊している場所へと着いたのであるが、その意外な場所に唖然とした。
「ぇ……なにコレ城?(;´Д`)」
一人クロエちゃんがこの場にいる皆の心中表す言葉を呟いた。
尤も“城”ではないだろう。これは“屋敷”だ。それでもデカい。クロエちゃんが城と思うのもわかる。
「コルワさん、ここは……」
「服を注文したお客様のお屋敷ね」
「……何者です?」
「かなり有力な資産家さんとか」
初耳である。それなりの金持ちとは思っていたが、ここまでとは予想してなかった。
突然のお屋敷訪問に困惑していると、馬車から降りた俺達に気が付いたのか屋敷の中から一人エルーンの青年が駆け寄ってきた。
「やあララさんロロさん、おかえりなさい! 街の方では大丈夫でしたか?」
「ええ、なんの問題も……それより若様自らお迎えなんて、恐れ入ります」
「気にしないでください。それで、そちらの方達が?」
「はい、こちらがコルワさんと騎空団の皆様です」
「ああ、やはり! 初めまして、みなさん! お待ちしていましたよ!」
眩しい笑み。俺達一人一人と握手を交わすそのエルーン青年。彼は「一応」と付け加えてから、自分がこの屋敷の主人である事を告げる。
屋敷の主が今資産家であると聞いたばかりの俺は、もっと歳のいった人物を想像していた。だが出て来たのは爽やかな好青年であり皆意外そうにしていた。
“若様”、あるいは”若旦那”と呼ばれるこの人は、まだ若い身でありながらもこの屋敷の主人としてバリバリ働いているらしい。なんでも屋敷の先代主人であり若様の父が病で倒れ、その後療養のためこことは別の静かな別荘へと移り住んで以来、父の意向でこの屋敷と多くの事業を任されたと言う。そのため実質この人が今の屋敷の主人であるのだが、父が存命であり自分の歳も若く父ほど有能ではないと自ら話す若様は「主」と呼ばれることに抵抗があり、屋敷を継いだ今も多くの使用人に若様と呼ばれていると言う。
とは言え笑顔を絶やさず実に快活であり、同時に雅と言う言葉がよく似合う。本の世界から飛び出したようなその姿は輝いて見え、きっとこの場にルナールさんがいたらその美男子ぶりに取り乱すレベルで興奮したろう。こんど話してあげよう。
「私達は今ここで泊まらせて頂いてるんです」
そうロロさんが話す。最初はそんな予定はなかったようだが、これもこれから話す内容に関係があるのだろう。
若様は自ら案内を申し出て、俺達を屋敷内へと通して先導する。玄関から廊下至る所があまりに豪華絢爛、明らかに高価そうな壺やら絵やらが飾られており俺は戦々恐々であった。
「お前絶対に触るんじゃないぞ」
「なんでアタシだけに言うのよっ!?」
こいつが無邪気にうっかり手でも触れようものならどうなるか……。俺は特にメドゥ子に強く念を押した。メドゥ子は自分だけ厳重注意されたのが納得いかないようだが、どう考えてもこいつだけが心配だ。
「すごいな……見た事もない高価な品ばかりだ」
「ぃゃぃゃ……ヤバイヤバイって……ガチじゃん、ガチ貴族じゃん……クロエぉ屋敷来ちゃったじゃん……(((´゚ω゚`)))」
「そう怯える事はないよクロエ。これも空へ出た経験だ。よく見て記憶に留めておくといい」
フェリちゃんは礼儀正しいので気にはならない。ベッポ達も今は姿を消して大人しくしている。クロエちゃんは今は緊張して大人しいし、コーデリアさんは何の心配もいらない。多分この人は慣れてる側の人だ。
「メドゥシアナも悪いがなるべく身を縮めてくれ……俺の心臓に悪い」
「シャ~」
こっちは素直である。良い子ね。
しかし建物の中だと言うのに目的の部屋まで結構歩く。やはり広い、この屋敷の敷地だけでザンクティンゼルのキハイゼル村より広いんじゃないかここ。
「しかしこれは何が待ってるか……なぁ相棒」
「お前は何時もトラブル起きると楽しそうだなぁ……」
B・ビィの戯言は適当に返事しつつ、てくてく歩いてちょっとすると目的の部屋にたどり着いた。「中にどうぞ」と若様が扉を開き俺達を招き入れると、そこはやはり綺麗に整えられ美しい装飾品が並ぶ個室だった。
だがそんな部屋で一際俺達の目を惹いたのは、部屋の中央にたった一つ置かれた裸のままのマネキンだった。部屋の隅などではなく、一際目立つ部屋の中央にあるそれは間違って置かれた訳ではないだろう。
「……騎空団に頼みたい事があったと聞いていますが」
「ええ……」
いよいよ何か問題が起こったと感じ、若様に問いかけると彼もまた深刻そうに唸り口を開いた。
「……実は、作って貰ったドレスなのですが……それが盗まれたのです」
若様から告げられた内容を聞き、俺達はもとよりコルワさんに至っては驚愕のあまりか、雷に打たれたかのように整ったその顔を崩し口をあんぐりと開けていた。
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五 消えたドレス
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若様から語られたのは、今回の依頼の中心であり、コルワさんとララさんロロさんによる特注ドレスが盗難に遭ったと言う事件。
事は数日前、俺達よりも早くこの島へと着いていたララさんとロロさん。自分達の荷物、そして出来上がったドレスを携え予約をしていた宿へと行った二人は、食事を取りに1時間ほど外出した。当然、荷物は必要な物以外部屋に置いたまま。
その後宿へと戻ると血相を変えた宿の主人が二人の部屋に物取りが入ったと告げた。
当然驚いた二人は慌てて部屋に戻ると、そこには既に呼ばれたこの島に駐在する秩序の騎空団団員数名がおり、中を見せてもらうと案の定部屋の中は荒らされていた。荷物は酷く散らばり状況から物取りである事は間違いなかった。そしてこの時の被害がドレスの一点のみと言う点がわかりララさん達は、これが単なる物取りとは違い自分達とドレスを最初から狙った犯行ではないのかと考え若様へと連絡を取ったのだった。
「それで念のため二人は私の屋敷で急ぎ保護する事にしたんです。犯人に襲われないとも限らないですから」
一通りの事を語り終えた若様は、何も纏わないままのマネキンを見ると深くため息をついた。
「本当ならあそこには……美しいドレスがあるはずだった」
「……プレゼント、ですか?」
「はい、私の愛する人へ」
恥ずかしげも無くこんな台詞を言えるとは凄い人だな。だがこの落ち込みよう、この人もそれだけ気合を入れて今回ドレスを頼んだのだろう。
「もっともまだ恋人ではないんです。相手の気持ちも聞いてはいない……まだ、一方的な思いで……。けど今度屋敷でパーティーを開く事になったから、今日あのドレスを送りそれに誘おうと思っていたんだ。それと……一緒に私の思いも告げようと」
「それは……お気持ちお察しします」
察するに余りある若様の今の気持ち、コーデリアさんが同情の言葉を口にする。
実に腹立たしい事だ。よりにもよってそのような思いを乗せたドレスを盗むとは……果たしてそのような盗みをする輩は何者か。フェリちゃん達も険しい表情を浮かべる。
「酷い話だ……盗みと言うだけでも人の道に外れているのに……」
「っかドレスだけ狙ぅとか、犯人どんななん? 手掛かりなぃ系?」
「ああ、手は尽しているが中々……」
「……ゆるせんっ!!」
「うわぁ!? びっくりしたぁ!?」
突如大声をあげたのはコルワさんだった。その怒気を大いに含んだ声に俺も皆も驚き彼女から思わず一歩距離を取る。
「一世一代の告白なのよ! 勝負時なの! 一大イベントなのよ! 恋が成就するかどうかって時にこの横槍はなにっ!? 物語なら演出で済むでしょうけどこれは現実よ、ノンフィクションよ、ただの犯罪行為よ! いいえ、演出にもなりゃしないダレるだけの手抜き脚本よ! 誰よ考えたやつ!?」
「お、落ち着いてコルワさん! 脚本とか無いから!?」
「第一私とララさん達のドレス盗んで如何する気なのよ……売る気!? 金に変えて好き勝手なんて冗談じゃないわよ! そんな事に使われるためにデザインしたんじゃないんだから! この人の気持ちもどうなるのよ!」
「あの、コルワさん落ちつ……」
「いえ待って……! ドレスだけ狙ったとかそれってもしかして若様の事知ってる? 若様の気持ちも!? 本当に恋の妨害工作!? どっちに、どっちによ!?」
「どーしたのよコイツ……」
「いや、わからん……」
メドゥ子がかなり引いて俺の後ろに隠れている。星晶獣がドン引き、それほどまでに今のコルワさんの様子は凄かった。
「こうしちゃいらんないわ……こうなったら、団長さん!」
「え、はいなんでしょうか!? あ、ちょっと怖い、近いちか……ちょ、コルワさん目つき悪っ!?」
「おっと、ちょっと興奮しちゃったわね。顔筋が力んじゃった」
ちょっと?
「そんなことよりも! 急いでドレスを取り戻すわよ!」
「……え、あっ!? 俺がっすか!?」
「他に誰がいるのよ」
「いや、まあそうですけども」
「安心して、当然私も手伝うわ」
私も手伝うと言われてもなあ、それで一体何を安心しろと言うのか。俺が困惑し続けているとララさんが控えめに「あの~……」と俺に声をかけた。
「あ、なんでしょうララさん」
「実は頼みたい事なんですが……それこそドレスを探して欲しくて」
「Oh……」
どうやら始めからそう言う話だったようだ。
「申し訳ない団長さん、これは私から相談した事なんです」
ララさんに続き若様が申し訳無さそうにして話し出す。
「私も個人で動かせる人員で手掛かりを探っているけれど、中々その行方がつかめない今我々以外の力が必要だと悩んでいたんです……そんな私をみてララさん達に君達の事を聞いたんだ」
「あ、そう言うことですか」
「島について直ぐに申し訳ないのだけれど……どうでしょうか? 勿論騎空団への依頼です。謝礼も十分に……だけれど、それ以上に私だけでなく、あのドレスを作ってくれたララさんやコルワさんのために力を貸してはくれないでしょうか」
「あー……まあいいですよ」
「ほ、本当ですか!?」
俺が了承した事を意外に思ったのか、若様は喜びつつ驚いた様子だった。
「別に断る理由もありませんしね。驚きはしましたが、俺達の元の依頼は“ドレスを届けるコルワさんの護衛”もある。コルワさんがやる気なら、まだ依頼は完了していない。コーデリアさん達もいいですよね?」
「何時も通りさ、団長である君の判断を信じよう」
「しょーがないわねえ……まあアンタがどうしてもって言うなら」
「だそうです。微力ながら力に成りますよ」
「聞きなさいよっ!?」
意味も無い会話はスルーして若様の頼みをうける。
「お、おお……! ありがとう、感謝します!」
よほど嬉しかったのか、若様は俺の手を出会った時の挨拶より力強く握ると、ブンブン上下させて感謝の言葉を述べた。
「ま、まあ落ち着いて。それじゃあもっと詳しい話を──」
「そうと決まれば、行くわよ団長さん!」
「あ゛ぃ゛っ!?」
若様に更に詳しい話を聞こうとしたところ、横からコルワさんに腕をつかまれ引きずられてしまう。
「ま、まってコルワさん、まって!? どこ行くの!?」
「ジッとしてても埒が明かないわ! 手がかりを探すのっ! ララさん達のいた宿を調べに行くわよ!」
「待って、ちょ! 今から移動すんの!? さっきここに来たばっかで! ちょ、うおおおっ!? てか、力つよっ!?」
「ワァ~ォ(゚Д゚;) コルワ姉張り切ってるぅ~☆」
「いや、感心してる場合じゃないだろ! 追うぞ!」
「ちょっと! アタシを置いて行くじゃないわよ……! ねえってば……ま、待ちなさいよぉ────!」
「やれやれ……コルワ殿、中々に曲者か。場所も聞かずに……B・ビィ追いかけて引き止めておいてくれたまえ」
「あいよ」
コルワさんの暴走に唖然としたままの若様達を残し引きずられて行く俺。そしてララさん達は、コルワさんが行こうとしてる宿の場所を話してない事を思い出し、慌てて俺達の後を追ってくるのが見えた。
実にてんやわんやであった。
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六 ドレスを追え!!
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島に着いたと思ったら、若様の屋敷に移動して、屋敷に着いたと思ったら即また市街へと逆戻りである。まったく落ち着きの無い依頼になってしまったなあ。
「さあさあ団長さん! 疲れてる場合じゃないわよ」
「元気だなぁ……」
若様から事件の事を聞いてからコルワさんが妙に張り切っている。そのアグレッシブさには参ってしまうほどだ。
「のんびりなんてしちゃいられないの! このままじゃ若様の恋戦はバッドエンドを迎えてしまうわ……そんなの駄目よ駄目駄目よ!」
「恋戦て……」
「いい? この世にバッドエンドは不要なの! そんな物語お呼びじゃないわ!」
「物語って……人の人生ですが」
「人生だろうと物語だろうと幸せが一番でしょ? ハッピーエンドがこの世の真理よ!」
その気持ちはわからんでも無いがこの人のハッピーエンドへの並々ならぬ思いは何なんだろうか。
「まあまあお二人共、それよりも宿に着きましたよ」
熱く自論を語るコルワさんに絡まれ続ける俺に苦笑しつつ声をかけるロロさん。若様はどうしても外せない仕事の集まりがあると言う事で別行動となり、ララさん達は俺達を追って一緒に来てくれた。
若様は「最後まで協力できなくて申し訳ない」と言っていたが本来の仕事も疎かにできないだろう。不安な事は俺達に任せておいてくれと言っておいた。
こうして二人が本来そのまま宿泊する予定であった宿へ来た俺達は、宿の主人に確認を取り被害に遭った個室へと入る。ただし調査にあたり秩序の騎空団の人間が立ち会う事が条件である。
「すみません、面倒おかけします」
「いやこちらこそすまない。我々が直ぐに犯人を捕えられればこうはならなかったのだが……」
立ち会う秩序の騎空団の団員は一人、ヒューマンの男性であった。
秩序の騎空団は大規模な取り締まり組織だが、自分達以外の人間の力を借りる事は珍しくはない。今回は特にこの島でも有数な資産家である若様からの頼みであるため、尚更すんなりと俺達による調査の許可が下りた。
「部屋は殆ど犯行当時のまま保存してある。許可なく物は触らないように、動かしたりもしないでくれ」
「わかったなメドゥ子」
「だーかーらー! なんでワタシだけに言うの!?」
理由は言うまでもないですよねぇ?
それはさておきこの宿は物静かな街の裏通り側にある。部屋は至って普通の二人部屋、特に人が隠れたり出来るような小部屋も隙間も無く、裏通りに面した窓が一つ。
決定的な物的証拠は無く、しかし犯人と思われる足跡は見つかった。だがそれは島で一般的に流通する男性物の靴と思われ流通量が多く個人の特定は難しい。髪の毛や指紋など犯人個人を追えるようなモノも見当たらなかった。
「足跡の大きさから男と思われる、が唯一の証拠か」
「どうする相棒? 調べるなら徹底的にやるけどよう」
徹底的っても既に秩序の騎空団やらの人達が既に徹底的に調べてるはずだ。俺は探偵ではないのだが……。
「……部屋の鍵はかかってたわけですよね?」
「はい、間違いないです」
外出時、間違いなく鍵はかかっていたと頷くララさん。この宿は外出の際に部屋の鍵を一時フロントに返却するため、戻った時に鍵を改めてフロントで貰っている事から閉め忘れと言う事は無いはずと言う。なお、フロントの帳面にも二人が外出し鍵を一時返却している事は記されていたので間違いないだろう。
部屋の木製扉は壊れており、ドアノブ側が裂けてこじ開けられた事がよくわかる。その事からも鍵は締まっていたのだろう。それなりの破壊音がしたはずだが、犯行当時にこの部屋の周りの部屋の宿泊客も外出しており、不審な音を聞いた別の階で洗濯の為にベッドのシーツ等を回収していた従業員が一人居ただけと言う。
部屋の窓の外は人気の無い裏通りであるため、目撃情報が無い事もありえなくはない。部屋の位置も二階、窓からの逃走も決して不可能ではないだろう。
不審な音、恐らく扉の破壊音を聞いたと言う洗濯物回収の従業員が駆けつけた時には既に犯人はおらず扉では無く窓から逃げたのではないかと秩序の騎空団の人は現在その線で調査中とのこと。目撃情報は無いが、唯一の犯人の痕跡と思われる足跡が窓のサッシ部分にもある事からそう考えたようである。
しかしオーダーメイドの女物のドレスを無理に袋に詰めたとしても、こんな所から逃げれるのだろうか。かなり目立つと思うのだが。
「うーん、わからん……」
「クロエバカだからこーゅーの無理ぃ……(´・ω・`)」
「しかしここ以外を調べると言ってもな……」
フェリちゃんの言う通りここ以外で調べるような人も場所も無い。俺達はこの部屋から何かドレスを追う事が出来るヒントを見つけなければならないのだ。
若様に見栄を切ったのは良いが、さてどうしたものであろうか。
「そう悲観ばかりする事は無い」
だが俺達が困っていると頼もしいイケメンの声がっ!
「コーデリアさん?」
「状況は常に変わる。その変化の中一見失われたように見える手掛かりも、よくよく観察すれば見える事もある」
そう言うやコーデリアさんは、徐に部屋の扉へと移動して破壊されたドアノブ周りをよくよく観察しだす。
「……ふむ、ララ殿」
「はい?」
「くどくなって申し訳ないが、間違いなく鍵は閉めていたのだね?」
「え? はい、それは間違いなく」
「なるほど……そうか」
「何かわかりましたか?」
そう聞くとコーデリアさんは僅かに微笑み俺達に手招きをした。
不思議に思いながら期待感を持った俺達は、コーデリアさんの傍に近寄ると彼女は扉のある場所を指さした。
「この閂を見たまえ」
「かんぬき……? (-ω- ?)」
「鍵を閉めた時に扉をロックする所のこと」
「ぁ、なーる」
鍵を回すと飛び出る板状のパーツ、閂の事を説明しその閂をコーデリアさんが指さしているとクロエちゃんに言うと彼女はしっかり理解したのか深く頷いた。
「そう、団長の言うようにこの扉の鍵のタイプは差し込んだ鍵を回転させ、そうする事で扉側にある閂を壁側に引っ張り出してロックするわけだ」
「それが何かおかしいのか?」
フェリちゃんが指摘するようにその事はなんら不思議な事ではない。当たり前の鍵の施錠機構である。
「私も閂が出ている事は不思議に思わない。だが問題は……この閂がそのまま綺麗に残っていると言う事だ。そこで……一つ聞きたいのだがよろしいかな?」
「うん? 答えられる事なら構わないけれど」
コーデリアさんは秩序の騎空団の団員に何かを聞き始める。
「事件現場に来てからこの鍵の施錠の確認……と言うより、鍵穴を回したりと言う事を秩序の騎空団の人間かこの宿の人間は行ったのだろうか?」
「ふむ……? いや、確かそんな事はしてないはずだね」
「とすればやはりこの閂は事件発生の時に飛び出ていたわけだ」
「だからそれが何が可笑しいって言うのよ?」
もったいぶるようなコーデリアさんの言い方にメドゥ子がプリプリと急かす。
「施錠のための閂とは言え、無理な力が加われば曲がるか折れるかするはずだ。だと言うのにこの閂は綺麗なままだ」
そこまで聞いて俺はハッとして一つの可能性を口にした。
「……侵入時、鍵は開いてた?」
だがそうなるとララさん達と宿側の鍵は締まっていたと言う主張が崩れてしまう。そう言うとコーデリアさんは「少し違う」と言った。
「鍵は締まっていたんだ。確かにね」
「それじゃあ一体……」
「つまり……一度誰かが開錠したんだよ」
「んな……っ!?」
コーデリアさんの発言に秩序の騎空団の人はかなり驚いた様子だった。いや、俺もB・ビィ達も驚いている。
「まだ予想でしかないが……犯人はまず部屋へ来て周りに誰もいない事を確認する。そして何食わぬ顔で部屋の鍵を開けたんだ。そのまま部屋に侵入し急ぎ目当てのドレスを見つけ盗み出す。だが逃げだす際に扉を閉め、工具か何かで扉を壊したんだ。何者かが扉をこじ開け、盗みを働きそのまま窓から逃げたと思わせるために。だが閂が綺麗なままと言う事は、うっかり鍵を閉めずに壊したのだろう。それに気が付いて慌てて鍵を閉めなおしたんじゃないかな? そのままでは一度鍵を開けた事がバレるからね」
え? なにこの人凄い……。
スラスラと推理を語るコーデリアさんに感心すると言うか、唖然とする他ない俺達。扉を見ただけでそんな事までわかるのかこの人。
そう言えばこの人リュミエールの遊撃部で諜報とかもしてるとか話してたな……流石である。
「閂が綺麗な状態である事から、犯人はこう言った盗みに不慣れな素人。だが盗む方法等の知恵を貸す協力者がいた可能性があるな」
「し、しかし……だとして一体誰が何のために……」
「それは直接確かめよう。秩序の騎空団の方から話を持って行った方がスムーズだろう。一つ頼めるだろうか?」
「あ、ああ……かまわないが、何をすればいいんだ? その言い方じゃ誰かに話を聞くようだが」
「それは……真っ先にここに駆け付けたと言う唯一の人間、扉の破壊音を聞いた従業員だよ」
鋭く光るコーデリアさんの瞳。さながら名探偵。そんな彼女を見て俺は思った。
もう全部コーデリアさん一人でいいんじゃないかな?
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七 黒騎士の憂鬱
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一方、団長達がドレスを追ってわちゃわちゃしているその頃──
七曜の騎士、黒騎士は憂鬱だった。かれこれ30分、椅子に座り手を組んで軽く頭を抱えている。
場所はガロンゾ、そこに停泊する帝国戦艦、黒騎士執務室。資料書類が積み重なる中、一向に手は進んでいない。それほどに今黒騎士は憂鬱だった。
(……連絡が無い)
ガロンゾを離れる事が出来ない原因の一端。星晶戦隊(以下略)の団長が星晶獣に攫われ六日目。同行させたスツルムとドランクからの連絡が無かった。
二人が島を発つ際に団長の確保が完了したら連絡を寄こすように言っていたのだが、その連絡が無い。まだ団長が確保出来て無いと言うことなのか、それともそんな余裕も無いと言う事なのか。
二人共腕の立つ傭兵であり、救助部隊中心メンバーである星晶戦隊(以下略)の面々の中には星晶獣も居るために、よほどの事態にならなければ二人の身に危険が迫るという事にはならないはずである。
ならばなぜ連絡は無いのか。二人の心配と言うよりも、単純に状況が知りたい黒騎士にとっては気になる事だった。
だが更に黒騎士の頭を悩ませる事は別にある。
(あいつらの艇も本当に大丈夫なのか……)
ガロンゾ釘付け状態の重要な要因、星晶戦隊(以下略)の騎空艇エンゼラであるが、部下からの報告で改修に向けての解体と必要な資材の調達が終わったとの連絡があった。
そこまで聞いた黒騎士は、思いの外早く進むエンゼラ改修作業にホッとしかけたが、次に部下から聞いた「職人の何人かが巨大なドリルをつけようとして揉めたらしい」だとか「戦艦クラスの機関を詰め込もうとした」とか「何時の間にか船内をダンジョン化させようとする仲間がいた」だとか「材料を生み出してる星晶獣が可愛かったです」などの訳のわからない報告にやはり頭を抱えた。最後の報告に至っては、最早単なる個人の感想である。その部下が怒られたのは言うまでもないだろう。
作業自体は無事(?)開始されたようであるが、しかし不安要素が多いに残る改修を考え胃痛すら感じ出す黒騎士。
団長の幻が現れ自身に「貴方も胃痛仲間だ」と笑顔で手招きをするような気すらしたが、元々その妙に地味な見た目の所為で幻の様な印象しかない事を思い出すと少し笑ってしまう。
「……んっふ、ふふっ……むっ」
幻の団長が「あぁ~~……」と霞の如く消える様を想像して更に失笑してしまう。その声は静かな執務室に広く響き、黒騎士は慌てて周りを見渡した。しかしここは自身の執務室、他に誰かがいるはずもない事を思い出したので平静を取り戻した黒騎士であったが、出入り口の方からカタリと物音が聞こえギョッとしてその方向を向いた。
「あ……」
そこには扉を少し開けその隙間から黒騎士を覗くオルキスの姿があった。
しばし、両者は無言となる。そして先に黒騎士が口を開いた。
「……人形、何時からそこに居た」
「……思い出し笑い?」
「違う、それより何時から」
「……笑って」
「ない」
「わら」
「ない、と言っている。それより何時から……いや待て、貴様どうしてここにいる。部屋の鍵は閉めた筈だ」
「……おさらば」
「おい、おい……おい待て、人形! 待たんか!」
脱兎の如く逃げだしたオルキス、それを追う黒騎士。艦内に発令される「第3次人形捕縛作戦」開始の合図。駆ける帝国兵、怒鳴る黒騎士、追跡を交わすオルキス──ドランクとスツルムを欠いた状態のこの逃走劇は艦内で2時間続いた。
ここ最近の黒騎士の乗る戦艦で見られる日常であった。
ちなみにスツルム達からの連絡が無いのは、単にスツルムに連絡等を任されたドランクが手紙を出し忘れただけである。しめやかにドランクの尻に剣が刺さる事が決定した。
何時も感想・誤字報告ありがとうございます。
コルワのハイテンション時の口調もいざ書こうとすると難しい。
そしてもうGWだよ。そんで『星の獣のレゾナンス』と言うどう考えても神イベ(個人的)が来るのであった。
メデューサに関して幾つか新しい設定が出てきそうなので楽しみ&書いた話修正しなきゃいけない可能性有りで怖いです。ブルってきやがった……。
声はつくと思ってたけど、イベントに出ると思わなかったサテュロスが来たぜ……。
マキュラと言いグリ坊と言いなんだぁ……この星晶獣ラッシュはぁ……。
ゾーイのスキンも来るゾイ ゾイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ゾイ!
(追記)メデューサの姉妹も出るんですってよ奥様
はよ団長君古戦場に連れて行きたい。
四象降臨、と言うかネプチューンとかアグニスの第二形態? があった驚く。アグニスカッコいいじゃんかよ。
ヘイヴーンであるな! ズンダカダカダカ
腕四本ドラムネタはシュヴァリエで出ると思ってたのだけれどそっちでしたか公式。
エンドコンテンツ系は苦手なんだ……
アーカルム? 賢者? 知らない子ですね。
そしてやっとエルモート来た。炎極先生は先に出てたんだけどもね。
出したいキャラばかりが多すぎるけど徐々に消化していきたいよ。