俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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シャルロッテやユーリに関しての過去や設定には、私の妄想も入っているのでご注意ください。


カルナ砦最後の日

 

一 憧れた姿

 

 シャルロッテ・フェニヤは、雪降り積もるとある島で生まれ育った。雪が降り積もる事以外は、至って平凡な島であった。

一年を通して雪で覆われる村では、外出する機会はそう多くない。仕事で家を出る男衆を除いて殆どの女性は、縫い仕事等の家事を行っていた。そんな島で生まれ育ったシャルロッテも他のハーヴィン同様に細かい作業が得意な少女だった。剣など握った事も無かったのだ。そんな彼女がハーヴィン族初のリュミエール聖騎士団の騎士団長と成れたのは、そんな幼い頃の経験が切欠であった。

 村に多くの魔物が出没するようになり多くの住民が怪我をした。だがハーヴィンしかいない村では、まともな魔物の撃退を出来るような大人は居なかったのだ。このままでは、死人も出てしまうだろう。皆が魔物に怯えるしかない時に現れたのは、魔物に怯える住民の事を聞いたリュミエール聖騎士団の騎士達であった。

 彼等は住民達を助けるために雪深き島へと訪れた。現れた騎士達の冴えわたる剣技は、瞬く間に魔物の群れを倒していった。その事に住民皆が感謝した事は、言うまでもない。何かお礼を、そう言う住民の申し出も断った彼らは、「ただ正義を為しただけ故」と言って去って行った。

 その姿に幼きシャルロッテは、憧れを抱いた。初めて島を出てみたいと思った。彼らのような騎士になりたいと本気で思った。勉強で使った筆を捨て剣を握った。

 リュミエール聖騎士団へ入った時、ハーヴィン族である事で笑われる事もあった。商売の勉強だけをしていればいいと言われる事もあった。だが彼女は、決して諦めはしなかった。どんな事を言われようとかまわなかった。本当に嫌なのは、諦めてしまう事。

彼女をそこまで動かしたのは、リュミエール聖騎士団への憧れだけか。否、それはあの時の騎士達の姿。騎士達の生き様がそうさせた。「正義を為す」と言う言葉が彼女に強い影響を与えたのだ。

 だからこそリュミエール聖騎士団のモットー「清く、正しく、高潔に」、その言葉通りにある事が彼女にとっての正義。

 故に成ったのだ。誰よりもそのモットーを実践してきたからこそ彼女は、リュミエール聖騎士団、歴代最強にして史上初のハーヴィンの騎士団長に成ったのである。

 

 

 

ニ 正義の歩み

 

 

 【星晶戦隊マグナシックスとB・ビィくんマン&均衡少女ZOY】と【ジータと愉快な仲間たち団】が共同で団長&荷物の奪還のために動き出した時、コーデリア達リュミエール聖騎士団の者達は、自らの立場故に懊悩していた。

 団長が囚われたのは、帝国軍の部隊である。そこからの奪還となると帝国との衝突は、避けられない。ジータに至っては、端から帝国を潰す気でいる。完全に戦闘態勢だった。

 だがシャルロッテ達リュミエール聖騎士団は、エルステ帝国との関係上今奪還作戦への参加が非常に難しかった。友好関係であるエルステ帝国とリュミエール聖騎士団、しかもその代表たる騎士団長が帝国の軍事基地へ乗り込んだとあっては、大きな問題になる事は明白であった。

 更にティアマトに言われた「来ル必要ハ無イ」と言う言葉。悪気があっての言葉ではない。ティアマト達星晶獣五体(捕まったコロッサス、ゾーイ、B・ビィも含め八体)とその仲間、そしてジータ達。果たしてこれ以上の戦力が必要であろうか?誰もが思う事である。何よりリュミエール聖国の事を考えての発言であった。

 確かにその通りである。星晶戦隊(以下略)の仲間として行動を共にしたコーデリアとブリジールは、嫌と言うほどその事がわかる。仮に自分達が団長奪還に参加しなくともティアマト達は、見事団長を取り戻すだろう。それは間違いないと自信を持って言える。

 そして、シャルロッテと出会ってから団長が考えていたと言うコーデリア達の今後について。コーデリアの目的である【正義審問】は、未だ完了していないが既にその殆どの目的を果たしたコーデリアとブリジール。団を抜け元の騎士団の一員としての生活に戻るのは、至極当然の事と言えた。それを思えば尚更奪還作戦に参加する意味は無いだろう。

 しかし、それでいいのであろうか?

 前へも後ろへも進む事の出来ないもどかしさをコーデリアは感じた。ブリジールも同様の気持ちである。

 とるべき行動、言うべき言葉のどちらも見つからない状態が更に続こうとした時彼女達の下へと現れる者達がいた。

 

「バ、バウタオーダ隊長っ!!」

 

 バウタオーダの名を叫びながらコーデリア達がいるエンゼラの食堂に駆け込んで来たのは、バウタオーダの部下達であった。

 

「何事でありますか?」

「シャルロッテ団長も……これは、丁度いい所へ!エルステ帝国に関して報告がっ!」

「掴めましたか……続けなさい」

「はっ!先程ルネーレ村付近での帝国軍が活動を開始ッ!その後星晶獣と思しきものを捕獲した事が確認されましたっ!現在は撤収作業中、恐らくは拠点へと戻ると思われますっ!」

「星晶獣ですか……これは、少々状況が厄介になりますね」

 

 部下達の報告を聞いてバウタオーダは、帝国の行動の速さとその目的であった星晶獣の存在に危機感を覚える。一方でいつの間にか調査されていた帝国軍の動きに関してシャルロッテは、驚いた様子であった。

 

「バウタオーダ殿、彼らに帝国を調査させたのでありますか?」

「昨夜シャルロッテ団長達と出会った後、帝国軍の事を聞いて私も気になる所がありまして……少し探りを入れておりました。結果は聞いての通りです」

 

 星晶獣。あまりに世俗に染まった星晶獣(笑)達に慣れつつあったコーデリア達であるが、そもそも星晶獣と言う存在とは人知の及ばぬ領域の存在である。間違っても浪費癖の所為で団長に常に怒られる風の化身でも、ドMを拗らせすきあらばケツを蹴ってもらおうとする光の聖騎士であったり、謎の空飛ぶニ回変身を残した黒いトカゲの様な存在ではない。それは、正に神であり島一つ容易く落とせるような存在なのだ。本当である。

 その一つが、帝国の手に落ちた。

 

「さてこれは……どうしたものか」

「バウタオーダ隊長、帝国が星晶獣を保持しているのは、ほぼ間違いありません。今我々の戦力では、手の出しようも……」

「いえ、そもそもこれ以上関わってしまえば帝国とリュミエール聖国との関係をこじれさせる事になります。これ以上の介入は、危険と思われます……」

 

 二人の騎士団員が遠慮がちに話す。彼らの心配は、何も間違ってはいない。軍事大国として急成長したエルステ帝国と事を構えるのは、リュミエール聖国に限らず殆どの国が「如何にも不味い」と断ずる行いである。

 

「何を迷う必要がありますか?」

 

 だが彼らの言葉に異を唱えたのは、シャルロッテだった。

 

「シャ、シャルロッテ団長?」

「今ジミー殿は、帝国に囚われ助けを待っているであります。罪無き者が囚われ、それを捕らえた者達は、星晶獣と言う存在まで手に入れ尚も不穏な行動を続けている。放っておくべき事では無いであります」

「し、しかしご存知の通りリュミエール聖国は、帝国とは友好関係にあります。よりにもよってシャルロッテ団長が出られては、どんな混乱が起きるか……」

「ならば自分は、リュミエール聖騎士団を辞めるだけであります」

 

 彼女の言葉に誰もが息を呑んだ。

 

「な、なにを言うのですかシャルロッテ団長っ!?」

「自分がリュミエール聖騎士団を辞めてしまえば、自分はただのシャルロッテ・フェニヤであります」

「お待ちくださいシャルロッテ団長っ!!」

 

 突然のシャルロッテの言葉に狼狽える団員達。コーデリアは、今にも飛び出して行きそうなシャルロッテを止める。

 

「それはあまりにも軽率っ!誉れあるリュミエール聖騎士団の団長ともあろう方が安易に騎士団を辞めるなどっ!!」

「しかしジミー殿が囚われたのは、他ならぬ自分と行動し弱みを握られたため。あの件が無ければジミ―殿は、問題なく逃げれたはずであります。囚われた原因を作っておきながら「彼は、団長は、強いから心配ない」など言ってのうのうとしている事が出来ましょうか?」

「そ、それは……」

「とは言え……ティアマト殿が言った事も然り。それにこれは、自分のわがまま。皆は船で待っているように。行くのは自分一人で結構であります」

「そう言う事ではありません!」

「コーデリア殿、リュミエール聖騎士団団長の名……それを捨てる事が簡単ではない事は、無論自分もわかっているであります」

 

 しかし、とシャルロッテは続ける。

 

「その名が為すべき正義を阻むのならば……自分は、その名も、リュミエール聖騎士団としての地位も、全て捨てましょう」

 

 正に“まさか”、であった。

 この場にいるリュミエール聖騎士団の者達全ては、シャルロッテの事をリュミエール聖騎士団の団長としてこれ以上無い人物と思っている。尊敬している。憧れていると言っても過言では無いだろう。

 ブリジールがそうだ。かつてのシャルロッテが聖騎士の姿に憧れたようにシャルロッテも彼女の憧れとなっている。

 そのシャルロッテが“まさか”行き成り騎士団長としての立場を全て捨てるなどと言うとは、誰もが予想しなかった。

 

「そう言うのではないかと思っていました」

 

 ただ一人、バウタオーダを除いて。

 

「バウタオーダ殿……」

「貴女は、誰よりもリュミエール聖騎士団の正義を信じ実践してみせて来た。だからこそ私は、貴女が騎士団長に相応しいと思った。そして今でも思っているのです」

 

 バウタオーダは、リュミエール聖騎士団の中でシャルロッテの右腕とも言っていい存在であった。少なくともこの場にいる誰よりもシャルロッテの事を知っている。それは、間違いない。

 

「私も同じ立場、状況でもそうするでしょう」

「バ、バウタオーダ隊長、貴方までそんな……」

「貴方達、何を迷う必要がありますか」

 

 団員達を見るバウタオーダの瞳には、一切の迷いが無かった。疑念も躊躇も無い真直ぐな意思が篭っていた。

 

「我々は、正義を信じ実践する者。そうであるべき者。我ら誉れ高きリュミエール聖騎士団」

「……清く」

 

 バウタオーダの言葉にコーデリアが続けた。

それは、自然と出て来た言葉だった。そしてその言葉には、まだ続くべき言葉がある。

 

「た、正しくっ!」

 

 ブリジールが気づき続けた。

 もう皆がわかった。思い出したと言うべきか。最後の言葉は、自分達も言うべき言葉だと。胸を張って言うべき言葉なのだと。

 

「高潔にっ!」

 

 誰もが声をそろえて叫んだ。リュミエール聖騎士団のモットー「清く、正しく、高潔に」――誰がその言葉を掲げたのか、誰がそうであろうとしたのか、かつてリュミエール聖国を興し正義の騎士団を立ち上げた者達の意志、それがリュミエール聖騎士団にとっての支え。

 

「たとえ望んで掴んだ地位を辞す事になろうと、最後までそうある事出来ずして、リュミエール聖騎士団の名は語れないであります」

 

シャルロッテの表情は、誰よりも誇り高き騎士のものであった。

 

 

三 来ちゃった(テヘペロコツン)

 

 

「まあ、そんなわけで自分もジミー殿救出へと同行したわけであります」

「そんなわけでってあーた……」

 

 まるで説明になって……ない事はないが、待ってくれ。

 マジか、この人俺とコロッサス達助けるために帝国に喧嘩売りに来たのかよ。正気?いや嬉しいよ?けど自力で牢屋から出てしまった手前その……申し訳ねえって言うかさ……よしんば俺がもうちょっと牢屋に居たら颯爽と現れるシャルロッテさんって構図が……駄目だあんな状態のティアマトが居るからどの道空気が緩みそうだ。

 あ、ダメ……ほんと申し訳ない。

 

「ほんと……申し訳ない……ごめんなさい」

「そ、そんな床に沈みそうな程謝らないで下さい。自分は何も後悔していないであります」

「コーデリアさんにブリジールさんも……なんかすんません」

「気にしないでくれたまえ、シャルロッテ団長の言葉で私も決心がついた。そもそも来る事を悩んだ自分が恥ずかしいよ。君への恩義は、計り知れないと言うのに……私はここへ来る事を躊躇ってしまった」

「自分もです……団長さんには、ゴブリンの巣で助けてもらったです。なのに自分は、団長さんを助ける事を悩んでしまいましたです……面目無いです……」

 

 いやいや躊躇っていいと思うよ。悩んで当然と思うよ。皆めっちゃ努力して入った騎士団じゃんそりゃ悩むよ。

 

「馬鹿。ソウイウ時ハ、謝罪ヨリ言ウベキ言葉ガアルダロ、馬鹿」

 

 な、なんだよティアマトの奴らしくもない正論を……あと馬鹿って二回言ったね。二回も言うなよ、馬鹿って言う方が馬鹿なんだからな馬鹿野郎、この野郎。

 

「助けに来てくれて、ありがとうございます」

 

 実際マジ感謝である。こんな道を歩けば棒に当たってその棒が倒れてトラブルになって、そこから更にドミノ倒しの如く始まるトラブルばかりに遭う俺のために来てくれるなんて……。

 

「今も言ったように気にしないでくれたまえ。私は……私達は、君の騎空団の仲間なのだから」

「です!」

 

 ほんっ、ほんと……ああ、本当にこの二人仲間になってくれてよかった。こっちが感謝しても足りないぐらいだ。最早ユグドラシル達だけでは、癒しパワーが不足気味だった中での加入。この二人居なかったら俺の胃は崩壊の一途を辿ったかもしれない。

 

「お前らもサンキューな」

「オマエ……」

「団長きゅん」

「団長……」

 

 ヘヘ……なんだかんだで皆来てくれたんだからな。やっぱなんて言うのか仲間って大切じゃん?

 

「ソレヨリモ私達ノ荷物ハ何処ダッ!?」

「あたしのお酒はっ!?」

「私の本っ!!」

「感動を返せ」

 

 それよりって何だそれよりって! 俺の純粋な気持ちを弄んだなっ!?

 

「ちったーお前ら俺の心配しろよっ!?」

「オ前ガソウ簡単ニ死ヌタマカ」

「信頼の証にゃ」

「で、本はっ!?」

「俺はそろそろ誰か強い奴と語り合いたいぜっ!!」

 

 こ、こいつら……。駄目だ。今の状態のこいつらに期待するだけ無駄だったんだ。

 

「ティ、ティアマト達は……ああだけど、ちゃんと……し、心配は、した……よ?」

「――――!」

 

 一方これですよ。この天使達。天司で無く天使。ユグドラシルなんか頭撫でてくれた。死にそう(歓喜)。

 

「うひいっ!あははっ!も、もちろん私もし、いひっ!しん、心配は、し、した……したよ、うはははっ!!」

「ケケケッ!怪我無くて良かったなぁ~団長ぉ~っ!!」

 

 こっちは……真面目なのにキャラが濃すぎる例である。けど感謝。

 

「団長……」

「ああ、フィラソピラさん。助け呼んでくれてありがとうございます」

「ううん……一人だけ逃げちゃって、ごめんね団長」

「いいっすよ。助けに来てくれたんだから」

「……あは。無事って信じてたよ」

「どもっす」

 

 実際彼女が居てくれたおかげで、あの時ユーリ君達と無用な戦いを避ける判断を取れた。助けを呼んでくれると俺も信じてたし。何よりも身に覚えはあるが全くの誤解の噂を広められずに済んだのだ。

 後でお菓子買ってあげます。

 

「で、そろそろ俺達も話に入っていいかい、坊主?」

 

 ここで会話のインターセプト、俺達のやり取りを見守り待っていてもらったオイゲンさんとロゼッタさん。

 

「すみません、オイゲンさん達もありがとうございます」

「なぁに気にすんな。うちの団長の兄貴を助けねえ訳にはいかねえさ」

「それに帝国も放置できないからね」

「まあ、確かに……ジータ達とは、別行動なんですね」

「嬢ちゃん達には、陽動を頼んだのさ。俺とロゼッタは、別働隊の先導みたいなもんだ。俺ぁアウギュステの人間だからな。戦争中もこの砦は、帝国の拠点ってんである程度知ってたんでな」

「成るほど。てか、ジータに陽動ねえ」

「これ以上無い役割だろ?」

 

 間違いねえわ。あんなん来たら誰だってそっち注目するからな。案の定殆どの兵がそちらに向かったわけだが。あれの場合陽動&主力&最終兵器と言う最早訳の分からない存在であるがまあいいだろう。

 

「そう言えばバウタオーダさん達は?」

「バウタオーダ殿には、別の任務を与えたであります。星晶獣が絡んでいる故どの様な被害が出るのかわからない以上は、この砦周辺に島の住民が近づくのを止めるのと安全の確保を頼んだであります」

「あーやっぱ星晶獣来たかぁ……」

「今ジータ団長が足止めしてくれているよ」

 

 成るほどね。依然続くこの轟音は、ジータ大暴れの証拠か……よーし、そのまま倒していいぞジータ。俺には一切の面倒を残さないでくれ。後腐れなくどうぞ。

 

「それで坊主達の無事は確認できたわけだが……直ぐにジータと合流するかい?」

「俺が決めていいんすか?」

「かまわないわよ。一番どうすべきか判断できるのは、きっと貴方でしょうから」

 

 そりゃ過大評価ってもんだぜロゼッタさん。だが決めて良いと言うならそうさせてもらうとしようかな。

 

「とにかく荷物確保しないとなあ、あいつらが荒れるんでそっち優先します」

「そんな気がしたわ」

 

 本当ならジータの方へ加勢しに行くと言うのが普通と言うか、王道と言うか、なんと言うか……まあ俺以上に「大丈夫だろ」とか言われるような奴だ。むしろ星晶獣の方が哀れだ。ジータ相手って時点でお察し下さいだからな。実はあいつが星晶獣なんじゃないかって思うぞ俺は。

 

「さてと……そうなると荷物をどこに保管したかだが」

「おーい相棒、こっち来てみろ!」

 

 どうやって俺達の荷物を探そうか考えてたらB・ビィに呼ばれた。いつの間にかティアマトが吹っ飛ばした瓦礫の傍にいる。

 

「どした?」

「荷物探すには、丁度良い奴がいるぜ!」

 

 そう言うB・ビィの足元には、他の隊員達とは離れた場所で気絶しているユーリ君がいたのであった。

 

 

四 若き義勇の夢

 

 

 ユーリと言う少年は、熱く真面目で真直ぐな男であった。その気質は、今は亡き彼の父から受け継いだものだった。

 彼の父は、帝国の軍人であった。男は、真直ぐで正義感に溢れていた。仲間からも「お前は、まったく暑苦しい男だ」と言われながらも上司も部下も関係なく男は慕われていた。男の持つ人柄とかつて小国であったとある国エルステを現在の“エルステ帝国”へと伸し上げた軍への熱い思いがそうさせたのだ。

 ユーリは、そんな父が誇らしかった。幼心で既にこの父の様になろうと決めていた。誰にでも誇れる帝国軍人、それが小さきユーリの夢だった。

 稚児が逞しい少年へと成った時彼は、迷う事無く帝国軍の門を叩いた。そこで待っていたのは、厳しい訓練の連続であった。何度挫けそうになったか分からない。だがその訓練を耐え抜き見事彼は、帝国軍人へと成ったのである。

 その事を我が事のように喜んだのは、他ならぬ彼の父であった。

 軍への入隊が叶った事を知らせに来たユーリを強く抱き「よくやった」と労った。ただ一言であったがその言葉を聞いたユーリは、初めて夢を叶えた実感を得た。

 そして父は、ユーリへと一振りの剣を渡した。入隊祝いのため父が密かに用意されていたものだった。

剣を扱う帝国兵の殆どが持つそれは、派手さも無く名工による作でも無い平凡な幅広の剣。だがそれは、多くの兵にとって始まりの剣でもある。扱いやすく最も信頼され激しい戦場を共にする事が出来る剣だ。父もまたこの剣を手にして帝国兵となったのだ。

 重い。手に持ったその剣その物ではない、父より渡されたその想いが剣を通してユーリへと伝わった。それは、あまりにも重かった。

 だが父は、ユーリの震える手を握り共に剣を握った。

 

「まだお前は、始まったばかりだ」

 

 帝国軍人となる事がユーリの夢だった。だが帝国軍へ入隊した今その夢は、どうなったのか?父に言われてユーリは、気がついた。まだ終わっていないのだ。

 

「夢など一つの通過点でしかない。どんな夢も追い求めれば何時しか叶う。そして人は、また新たな夢を追う。ユーリ、お前の新しい夢はなんだ?」

 

 ユーリは、父の真直ぐな瞳に負け無い様な真直ぐの瞳を向け返した。

 

「親父、俺は――」

 

 若きユーリは、父になんと答えたのであろうか。だがこの時の答えを“夢を見る”ユーリが思い出す事は無かった。

 

「ユーリ、起きるっすっ!!」

「起きろユーリ君っ!!ユーリ君、ユーリくうぅんっ!!」

「ドケ、手ッ取リ早ク済マセル」

「あ、ティアマト待っ!!」

「オラァッ!!」

「ぐおおほおおっ!?」

「ユーリイィィッ!?」

「ティアマト馬鹿野郎ッ!!」

「グボッ!?」

 

 唐突に襲って来た腹部への衝撃によって、彼は懐かしき夢の続きをこの時見ることは無かったのであった。

 

 

五 カルナ砦「早く荷物を探せぇーっ!もう、何時崩れるかわからん、間に合わなくなってもしらんぞぉーっ!!」

 

 

「それで悪いんだけどさ、俺達の荷物の場所教えてくれないかな」

「唐突過ぎるぞお前達っ!?」

 

 ティアマトの攻撃で吹き飛ばされ気絶し、ティアマトの攻撃で無理やり起こされたユーリ君。俺も同じ様に起こされた事があっだが、彼は普通の人間である。自分で言うのもあれだが、気絶した人間を起こすのに一々腹を殴るな星晶獣(笑)。

 

「いや本当唐突なの重々承知で頼むよ」

「そんな突然言われて良いと言えるかっ!それと隊長達はどうしたっ!?」

「あー……あっち?」

 

 俺が指差す方向には、壁ぶち抜いて瓦礫の山になった部屋が続き更にその奥には、ぶっ倒れているユーリ君の仲間達の姿があった。

 

「た、隊長っ!?」

「気絶はしてるけど、大した怪我は無かったよ……。一応回復魔法もかけておいたからね」

 

 流石に瓦礫に埋もれたままは、いくらなんでも可哀想なので掘り起こしておいた。それでも怪我が無いのは、流石に鍛えている証だな。ユーリ君もほっとしたようだ。

 

「まあそう時間経たんでも気がつくでしょ。じゃあ俺達の荷物なんだけど場所教えてもらっていいかな?はよしないと何時この砦壊れるかわかったもんじゃないし」

「な、何を言ってるんだお前、そう簡単にこの砦が……」

「星晶獣、見たんでしょ?」

 

 俺が星晶獣と言うフレーズを出すとユーリ君が言葉に詰まった。

 

「よくまあ使おうと思ったなぁ、こんな砦内で……星晶獣からしたら砂の城だよ?」

「それは……」

「まあ俺達も早く荷物回収してそっち解決しちゃいたいんだよね」

「ユーリ、私からもお願いするっす」

 

 かつて同僚でもあったファラちゃんにも説得に加わってもらう。

 

「ファラお前まで……」

「お兄さん達も荷物を持って帰らないといけないようだし……本当に星晶獣が出てるなら何とかしないといけないっすよ。あと……」

「あと?」

「正直このままじゃ後ろの人達が、何しでかすかわからないっす……」

 

 そう言うファラちゃんの後ろには、今にもユーリ君から無理やり荷物の場所を聞きだそうとする星晶獣(笑)達の姿がっ!!

 

「オウオウ、マタ痛イ目ミタクナカッタラ荷物ノ場所吐イテモラオウカッ!」

「あたしのお酒が一本でも割れてたらただじゃおかにゃい……!」

「私の本をこんな海の傍に置いとけないのよ……湿気っちゃうでしょっ!」

「お前中々鍛えてるな……一段落したら語り合わないか!」

「うひひ、ひひっ!!相手が悪かったね……うふっ!しゃ、喋っておいた方が、みの、あははっ!!みのためだとおひひひっ!!」

「おい、ルドミリア。笑うなら銃下ろせ、銃口ブレッブレのまま構えんの止めろ。オイラまた撃たれるかと冷や冷やするぜ」

「ケヒヒッ!!壊天刃の錆びになりてぇ~のかぁ~んっ!」

「どうどう皆、落ち着いて」

 

 B・ビィとゾーイが抑えてくれてるが何だこいつ等落ち着き無さ過ぎ案件ですよ。特にティアマト、酔いどれ、耽美の三人に至っては、これ以上怒らせるとどうなるか想像も付かない。最悪嵐が起こりゲロが舞い上がり耽美絵師の叫びが響き渡るだろう。地獄かな。

 

「ちなみに後ろに居る奴らの内八体は、かなりやばい星晶獣だ。恐ろしいだろう?俺も恐ろしい」

「な、なんなんだよお前らは……」

「そう聞かれると見たとおりの騎空団としか」

「情報量が多すぎるんだよっ!騎空団を名乗るなら少しは纏まりを持てよっ!?」

 

 ぐうの音もでねえや。

 

「くそっ……仕方ない……俺は、場所を言うだけだぞ」

「それで十分!」

 

 とにかく今は後ろのあいつ等を大人しくさせたい。その為にはまず荷物だ。なんだか我ながら情けない仲間達だ。

 

「じゃあ行くぞユーリ君!」

「……はっ?俺も行くのかっ!?」

「君いないと砦内の部屋わからねえもん」

「ああ、それもそうか……ああ、もうわかったよっ!!案内だけだからなっ!!」

 

 嫌々ながら協力してくれる事になったユーリ君。良かったこれで荷物を早く回収できる。

 

「それじゃあ荷物を回収した後は、速やかにコロッサス達で荷物の運搬を開始。俺とB・ビィ、それと戦力が欲しいからゾーイに……後は、戦いたい奴ついて来い。それでジータの方行って星晶獣ボコるぞ」

「星晶獣に対してボコるって言い方初めて聞いたぜ……」

「けど既にジータがそうしてるわよね」

「そういやそうだったな……」

 

 オイゲンさんの気持ちもわかるが出来てしまうのだからしょうがない。まあジータがボコボコにして終わってるならそれでいいや、俺が楽になるだけだからね。そしてなるべくそうなっていて欲しいと願う。

楽がしたいのだ、俺は。

 

 

六 ジータ「レギンレイヴ!」 ポセイドン「ぬおおおおっ!?」 カルナ砦「ぐわああああっ!!」

 

 

 一瞬可哀想な星晶獣の叫びが聞こえた気がしたが気のせいだろう。そして砦がドンドン崩れ出してるんですが……。

 

「オイゲンさん……ジータって俺達がここに居るってわかってるんですかね……」

「どうなんだろうなぁ……」

 

 あいつこのまま砦壊して俺達生き埋めにするつもりか?それでもジータは、ピンピンしてそうだが……。

 

「これが“帝国絶対殺すウーマン”……”ザンクティンゼルの悪魔”の力なのか……」

 

 ユーリ君がえらい物騒な名称呟いた。え、何あいつそんな風に呼ばれてんの?おいおい……凄い納得だわ。

 

「どんだけジータが帝国から恐れられてるかわかるなあ」

「悉く帝国ボコボコにしてるからな嬢ちゃんは」

「帝国スレイヤーと呼ばれるのも遠くなさそうねえ」

「お前ら俺が居るんだから、そう言う話しないで欲しいんだがっ!?」

 

 おっと、そう言えばユーリ君は帝国兵だった。ごめんごめん。

 

「まったく……ほら、着いたぞ。この部屋の中だ」

 

 そしてそうこうしてる間に目当ての部屋へとたどり着く。途中他の帝国兵に出会う事も無く無事たどり着く事が出来た。その点は、ユーリ君が「こんな所下手に誰かに見られては、俺まで脱走兵かと疑われてしまうからな……」と念を入れたようだ。

 

「おめえさん……もしかしてここは、会議室か何かじゃねえのか?」

 

 たどり着いた扉の前で意外そうにオイゲンさんが話す。確かに倉庫とかそんな感じじゃなかった。

 

「確かにここは、会議に使われる部屋だ。本来押収した品は、厳重に保管されるがあの星晶戦隊(以下略)の荷物と言う事で皆で確認する事になってだな」

「まさか荷物の中見たんじゃないでしょうねっ!?」

 

 ユーリ君の話した事にぐっと食いついたのは、ルナール先生である。どんな本買ったんだか……まあ、“あんな”本だろうけども。

 

「い、いや結局作戦が開始されて、確認作業は行われなかったらしい。だから部屋にそのまま置いてある」

「そう……ならいいのよ」

「誰もあたしのお酒飲んで無いよね?」

「誰が飲むか勤務中にっ!!」

 

 おうもっと言ってやれユーリ君。そいつ普通に戦闘中にも飲むアル中なんだよ。言ったれ言ったれ。

 

「ほんと、なん何だよこいつ等は……あ、待てよ……しまった」

「どしたの?」

「そう言えば鍵が閉められてた……」

 

 そりゃそうか。会議室と言うなら大事な書類とかあるだろうしな。

 

「鍵か……誰が持ってるの?」

「隊長や大尉達だが今からでは

「鍵ナンカイラン」

「は?お前ちょっと待」

「フンッ!!」

「ああっ!?」

 

 ユーリ君が鍵を使って開けようとしてくれたのだがその前にティアマトが力尽くで開けてしまった。無残、扉はそのまま千切れるように外れてしまった。やはり星晶獣、人間と違い華奢な見た目でも力がダンチだ。

 

「お、お前なんて事するんだっ!?」

「安心シロ、ドウセ砦ゴト崩レテ無クナル」

「何にも安心できないぞっ!?」

 

 ごめん、本当ごめんユーリ君。後でなんか奢るから。

 

「む、アレじゃないか主殿」

 

 シュヴァリエの指差す先には、机と床に詰まれた見覚えのある荷物。

 

「私ノ服ゥーッ!」

「お酒ーッ!」

「本ーッ!!」

「……まああの三人は、放って置くとして……うん、特に荒らされた感じもないな。うっし、それなら予定通り運び出す。コロッサス、大きい荷物は頼んだ」

「(*`・ω・)ゞ カシコマッ!!」

 

 一刻も早くこの場を立ち去らねばならない。さっきから砦の揺れが収まる気配が無いのだ。あのジータと星晶獣が戦ってまだ崩れてないだけでも奇跡的とも言える。

 

「に、荷物ははははっ!可能なら一まと、まとめにひひっ!!まと、まとめたほうがあはははっ!!」

「はいはい、一つに纏めた方がいいって言いたいのね?」

「そ、そうそうふふっ!!ふっぶぅーっ!!」

 

 ルドさん今日も絶好調だなぁ……。

 

「――――」

「ユグドラシル?」

「ユグドラシルが荷物をまとめるって言ってるわ。蔦で絡ませてまとめるようね」

「――!」

「そりゃいいや。頼むよ」

「――――!」

 

 ぴしっと軽い敬礼をするユグドラシル。可愛すぎか。

 

「ジミー殿、これをっ!」

 

 急にシャルロッテさんに呼ばれる。なにやらコーデリアさんと共に机の上の書類を調べていたらしい。彼女の手には、数枚の書類がある。

 

「あ、お前達何勝手に書類をっ!?」

「黙ってろ小僧」

「んがっ!?」

 

 当然ユーリ君が怒ってしまう。だがそれをシュヴァリエが、四本の手でガッツリホールドして止めた。

 

「団長、少し不味いかもしれない」

「何がありましたか?」

「ともかくこれを見て欲しいであります」

「うーん?」

「こ、こらっ!!見るんじゃない、そこまで許したつもりは無いんだぞ!!」

 

 ユーリ君には悪いのだが取りあえず見させてもらう。シャルロッテさん達の焦った様子からそれなり以上の内容だろう。

 

「『星晶獣ポセイドン捕縛作戦書』ね……」

 

 ……うん、まあそうだろうとは思ったけどさあ。

 

「ユーリ君さ……君これ読んだ事あるの?」

「そ、それは本来大尉クラスのみが閲覧できる資料だ。会議で使われたのがそのままだったが、そもそも俺の様な兵には配られない重要書類なんだよ」

「じゃあ読んでみ」

「な、何で今……」

「いいか、ほら」

 

 シュヴァリエに押さえられたユーリ君に手に持っていた書類を渡す。開放された彼は、訝しげなままにその書類を受け取り書類を読み始めた。そしてその表情は、見る見るうちに青ざめた。

 

「坊主どうかしたのかい?」

「今回帝国がどう言う目的だったかわかりましたよ。それとやっぱりヤバイ作戦だったって言うのがね」

「ヤバイ、ねえ……何が書いてあったんだ?」

「今ジータが戦ってる星晶獣、ポセイドンって言うらしいっすけどね……水を司る星晶獣で戦艦の給水器官に使うつもりだったみたいですね」

「あらまあ……星晶獣をなんだと思ってるのかしらね」

 

 言葉に力こもってますねえロゼッタさん。

 

「そんでそのポセイドンってのが、捕まえるのはともかく……かなぁ~りそいつプライドが高いってんで怒らせると最悪島が沈むんで、そん時は放置してさっさと逃げろって算段みたいですね」

「なるほどな……帝国らしいと言えばらしい作戦だぜ。自分達以外の犠牲を考えちゃいねえ」

「嘘だ……」

 

 オイゲンさんが納得した所でユーリ君が書類を手から落とし呟いた。

 

「これじゃあ始めから島を犠牲にするような作戦じゃないか……」

「そう言うつもりだったんじゃない?」

「違う、そんな馬鹿な事……」

「なあ坊主……ユーリっつったか?おめえさん、えらく帝国を信奉してるようだがよ……これが帝国のやり方だよ。前の時もそうさ、リヴァイアサンを暴走させて島の海を腐らせやがった。うちの団長達が来たお陰で被害は、食い止められたがよ……来なきゃもっと酷い事になったさ。それこそ島が沈んだろうよ……」

 

 オイゲンさんの話に言葉を失うユーリ君。以前あったと言うアウギュステと帝国の戦争の話は彼も知っていたようだが、そこまでとは思わなかったらしい。

 

「それじゃあ……俺は、何のために……親父や俺が信じた帝国は……帝国の正義はっ!?」

「親父さん?」

「ユーリの親父さんも帝国軍人なんすよ」

「あ、なーる」

 

 ファラちゃんが知っていたらしく教えてくれた。だがユーリ君は、暗い表情のままだった。

 

「……親父は、死んだよ。この前事故でな」

「え?」

「俺も任務中で……突然聞かされたんだ……」

「そ、そうだったんすか……惜しい人を亡くしたっすね……」

「いや、お互い軍人である以上覚悟はしていたさ……その時俺は、親父の分も帝国軍として立派に生きて行くって決めたんだ……だがこれが帝国のやり方なのかっ!?親父は、最後まで帝国の正義を信じていたはずだ……それがこんな、ちくしょうっ!!ちくしょうっ!!」

 

 怒りの行き場を求めてユーリ君が机の上の物や床においてある家具を滅茶苦茶に殴りけり飛ばした。彼はかなり帝国を信じていた様子だった。この怒りも尤もだろう。俺も他の皆も止めはしなかった。

 

「はいユーリ君、その辺でストップね」

「う、ううっ!!」

「さて星晶獣の方は、ジータが倒しちまってくれるといいんだけど……オイゲンさん、ジータって今まで星晶獣相手だと苦戦ってありました?」

「そうだな……苦戦らしい苦戦はねえが、逃げの一手を取られるとちと苦手な節はあったな」

「最終的には追い詰めて倒すけどね」

 

 まあそんな所か……ポセイドンって奴の強さに関しては、気配から大体察するにガチ本気のやる気MAXマグナ程では無いようだが、中々の強さであるのは間違いない。

 

「……状況次第では、まだまだ終わりそうも無いな」

「バウタオーダ殿達を住民がいる場所へ待機させて正解でした……。これは、予断を許さない状況であります」

「……ゆるせねえっ!!」

 

 バンッと机を叩く音。まだユーリ君の怒りは収まらないようだ。

 

「エルステは、腐ってやがる……無関係な人間を巻き込んで、何が正義だっ!!」

「まあ責任者居るわけだから細部は、直接聞いとくのもいいかもな……」

「責任者……そうだ大尉、いやポンメルンッ!!確かめないと……ポンメルン、あの野郎っ!どう言う心算でこの作戦を……許せねえっ!!」

「あわわ、ユーリがプッツンしたっす……」

 

 怒れる男ユーリ君。彼の怒りは留まる事を知らず今にも飛び出しそうだ。だがどうせ目的は一緒になったのだから共に行こうじゃないか。

 

「そのポンメ?だかって大尉は、今ジータが戦ってるようだしユーリ君一緒に来るかい?」

「ああ……あの野郎!どんな理由があろうと、一度ぶんなぐらねえと俺の気がすまねえっ!!」

「団長、荷物何時でも運び出せるよ」

 

 フィラソピラさんに言われて荷物回収班を見ると、もうバラバラだった荷物が綺麗に一括りに縛られていた。成るほどこれならば、省エネから通常形態に戻ったコロッサス一人で一気に運び出せる。

 

「ユグドラシルが……蔦で縛ってくれたから……か、かなり頑丈になったよ」

「グッジョブ、ユグドラシルッ!」

「――――!」

「よーし、コロッサス達荷物班は、至急砦から脱出して荷物を安全な場所へ置いてからまた合流してくれ。俺とB・ビィ、ゾーイに後戦いたい奴らは、全員着いて来い!!」

「よっしゃあっ!!拳が唸るぜぇ!!」

「我々も行くでありますっ!」

「よし、行くぞ皆っ!!」

 

 気合十分にティアマトが壊した扉から出ようとする。

 が、ここで俺は、異常な既視感を感じる。いや、既視感と言うか確実にこの展開ついさっきやってる。気合十分に扉を出るって言う展開……あ、やばいって思った時点でもう遅いのが俺の人生。

 

「レギンレイヴッ!!」

「ぐぬおおおっ!?」

「のぎゃああああっ!?」

「ジミー殿おぉぉーーーーっ!?」

「ジータ、今誰か巻き込んだぞっ!?」

「え、嘘っ!?」

「やべえ、坊主が海に落ちたぞっ!!」

「ああ、ポセイドンが逃げてきますぅ!?」

 

 突如響いたジータの叫びと同時に壁突き破って俺に突撃してきた褐色の巨体。そのまま巨体とそれを押し出す閃光は、俺を巻き込みそのまま俺ごと砦を崩しながら巨体と俺を海へと吹き飛ばして言った。

 俺は海のしょっぱさを初めて知った。

 

 




少しでもシリアス挟むとテンポ悪くなってしまいましたが、ポセイドン関係は次で終わらせて、その次当たりでアウギュステ編終わらせたい予定。

次回イベントで案の定(?)サンダルフォンが加入しますね。やったぜ。ただちょっと考えてたここでの加入法を変える必要がありそう。まあ、勢いの作品なんでそのまま考えてたやるかも知れないけど。

ところでメドゥーサちゃんの姿がアギエルバに見えるのは、私だけでしょうか(白目)いやいや、メドゥーサちゃんの声は、CV水橋だもんな……CVオーキド博士なわけないから……俺が疲れてるだけですね。夜が明ければ、CV水橋の星晶獣が俺の騎空団にいるんだ。

追記 2018/02/28

 大変だ ティアマトが プレイアブル

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