俺は、スーパーザンクティンゼル人だぜ?   作:Par

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ハリセンの人回。ネットで関西の言葉調べながらやったんで、おかしい点あったら申し訳ございません。

何時も感想、誤字報告ありがとうございます。


ドツキの相方来る

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 一 パンケーキを食おう

 

 ■

 

 今日も今日とて、エンゼラを飛ばし、空を移動する。

 さて、次の目的地は、アウギュステとした。途中幾つかの島での依頼を消化しながらの移動となる。アウギュステは、一度行けたのだが依頼の関係で直ぐに発たねばならずリヴァイアサンも、あっちの自分に挨拶が出来なかったと不満そうだったので、改めて向かう事にしたが、どうも星晶戦隊の里帰りの旅になりつつある気がする。まあ、ルート的にも問題ないからいいけどさ。

 俺としては、道中の依頼で今回の出費を無くして少しでも借金を無くしたい。現在あの忌まわしき【宴会予約事件】の事もあわせて借金が300万を越えている。これはいかん。シェロさんに更に頭が上がらなくなる。コーデリアさん達を迎えた日の去り際、「ところで、パンデモニウムと言う遺跡があってですねえ~」と不穏な事を言われた。借金返済の助けになると言う事だが、俺は何をやらされるのだろうか……。

 いや、気に病んでも仕方ない。そうだ、シェロさんは、返済はいつでも良いと言ってるじゃないか。実に優しい。天使かな?

 

(まあ、前笑顔で“今のところは”って言ってたけど……)

 

 け、けどいきなり何かを差押えられるとかがあるわけじゃない。精々無茶な依頼をやらされる程度だ。未だ死を覚悟するような依頼とかあるけど、その程度で……。

 

「……ダメじゃん」

「どうした団長?」

 

 あんまりな結論を出してしまい、通路で落ち込んでいたらフェザー君に心配されてしまった。

 

「ちょっと、嫌な事考えちゃって……」

「そうか……なら拳で語り合おう!!スッキリするぜ!!」

 

 君のそう言うところ羨ましいよ、俺。

 

「今そう言う気分じゃ無いなあ」

「そうか……じゃあまたB・ビィでも誘うとするかな」

「良いけど甲板壊すなよ?前床壊したろ」

「ああ、今度は気をつけるよ!!」

 

 そして去り行くフェザー君。元気だねえ。

 今の俺は、どちらかと言うと美味しい物を食べたい。金が無いから贅沢な物は買えない、ならば格安の材料を買って作ればいいのだ。

 俺の口は、今甘味を求めている。確かパンケーキが作れるはずだ。ジャムも残ってるし、それでいこう。

 

「な、無いっ!?ないない無いッ!?」

 

 だが、何と言う事だ。緊急事態である。

 

「おや~どうしたんだい、団長?そんな困った顔をして」

 

 俺の困った顔に釣られて来たのか、フィラソピラがひょっこり表れる。

 

「と、とんでもねえ事に気がついた」

「ほお?」

「こ、小麦粉がねえ……」

「おやまあ」

 

 俺とした事が、まさか補給物資のリストに小麦粉を入れるのを忘れていたとは……。食堂はもちろん、倉庫にも小麦粉一袋どころか一匙すらない。普通に旅の中で困るし、パンケーキ一枚も焼けやしないよこれじゃ。

 

「ベーキングパウダーと砂糖と水……やろうと思えば、飴菓子は作れるが……」

「作るのかい?」

「……いや、俺はパンケーキが食いたいッ!!」

 

 あったかで、ふわっふわで、スフレみたいで、バターとジャムを乗せたパンケーキが食いたいのだっ!

 ここで材料の無駄遣いは、しない事にする。仕方ないので次の島で小麦粉を買おう。ついでに依頼をこなして、ホイップクリームを買えたらいいな。

 

「甘い物なら、私も楽しみだね~」

 

 俺は、紅茶を淹れて、それにジャム入れちゃうもんね。

 

 

 ―――――――――

 

 ■

 

 一 フェイトエピソード 風読み

 

 ■

 

 【風読みの相場師】と呼ばれる者が居る。

 その耳は、あらゆる噂を聞き漏らす事は無く、些細な世間話から物価の変動を読み取る。

 その口は、あらゆる情報を纏め上げ、その者にとって最も有益になる事を告げる。

 その目は、あらゆる価値を見極め、自身と周りにとって最も良き物を選ぶ。

 

「取引で困ったら、風読みに聞け」

 

 各国の大商人達は、口を揃えてそう言った。

 風読みに読めぬ事は無い。生活に必要な物資を安全に購入するため、かの帝国関係者であろうと風読みに世話になった事は、少なくない。

 風読みは、風を読む。

 風の声に耳を澄まし、あらゆる場所へと赴いて、その慧眼を発揮するのだ。

 

「人多っ!?小麦粉クソ高あぁっ!?」

 

 そして、風読みは、少年と出会う。

 

 ■

 

 二 お値段異常

 

 ■

 

 待って待って?何これ、どういう事なのん?

 

「お、俺の目がおかしいのかな……小麦粉1kg2000ルピって見えるんだけど」

「残念だね団長、私にもそう見えているよ」

「私もだよ……これは、どうした事だろうね」

「しかもその1kg2000ルピの小麦に、奥様方が群がってるんだけど……」

「それも現実だよ、団長」

 

 パンケーキを作りたいので、調度寄る予定であった島に立ち寄りついでに小麦粉を買おうと思ったのだが、異常事態がおこる。

 小麦粉が高い。高すぎる。

 1kg2000ルピは、異常だ。幾らなんでもおかしい。1kgなら230か高くて6~700ルピだ。それが四桁?しかももっと異常なのは、そのクソ高小麦粉に、数え切れないほどの主婦が群がり我先にと小麦を買っているのだ。買い物に同行したフィラソピラにコーデリアさんも困惑している。ど、どどどうなってんの?

 

「なんや、あんたら小麦粉買いに来たんか?」

 

 唖然としていると、後ろから声をかけられる。振り向けば、そこには頭から猫っぽい耳を生やして、ゴチャゴチャと色々背負った女性が居た。エルーンの人か、他の島でも見かけたが直接話すのは、初めてだな。

 

「あんたは?」

「うち?うちは、カルテイラや。なんや、あんた等がエライ困っとるように思えて声をかけたんや」

「まあ困ってますが……」

「うんうん、どうせ小麦のことやろ」

 

 初対面だがグイグイ来るなこの人。だが何か事情を知っているようだ。やはりこの価格には、わけがあるようだ。

 

「あんたらが驚くんのも無理ないで。運があらへんかったなあ……小麦粉やけど、ごらんの有様や。今からじゃ多分買えへんわ」

「ふむ、しかしこの価格は、あまりにもおかしい。それでいて、この小麦粉を買う者達がいるとは、一体何があったのかな?」

「それがな?この空域でも特に有名な穀倉地帯、しっとるやろ?」

「ああ、あそこか。ファータ・グランデ空域だけでなく、全ての空域でも屈指の穀倉地帯だが」

 

 さすがコーデリアさん、良くご存知。

 

「リュミエール聖国でも、そこの小麦などを多く買うからね。しかし、そこで何かあったのかい?」

「私も知っているよ~。あそこの小麦は質も量もいいからね、お菓子を作るのに欠かせないのさ」

「せや、せやけどその農場で魔物が増えすぎた所為で収穫も出荷も出きんくなって……普通やったら増えすぎる前に雇った傭兵か騎空団なりに退治してもらうんやろうけど……今年は、魔物の数がえらい増えてしもてな、追っ払うにも退治するにもち~~っとも追いつかんのやって」

 

 更に話を聞くとそこの小麦は、ファータ・グランデ空域の人間が消費する小麦の殆どを占めている。たった一つの島とは言え、そこかから出荷が減っただけでかなりの打撃であった。

 そこで誰かが、まことしやかに言ったと言う、「小麦粉が無くなるかも」と。些細な冗談であったかもしれないが、結局みんなして、小麦粉始め小麦製品が無くなる前にわれ先に小麦製品買い占めてしまい、結果この有様。そりゃ小麦産業への打撃は、確かに大きいがここまでの値段高騰は、そうそうするものではない。だが有名穀倉地帯での問題が深刻である事は、紛れも無い事実であったために民衆は、その流言に踊らされる結果になった。

 カルテイラさんは、その事情をかなり知っているようで、他の店をめぐりながら今回の騒動について教えてもらう。

 

「特にこの島は、その噂の影響が大きくてなあ……見てみ、なんぼ値段上げても売れるよって、何処もかしこもけったいな値段であるだけ小麦粉売っとるわ。便乗値上げなんてツマラン事するやっちゃ」

 

 めぐる店では、小麦粉だけでなく小麦製品、ケーキやクッキーにその他諸々の品までもが高騰していた。これじゃパンケーキを作らず、買って食う事もできないなあ。

 

「だが小麦粉の生産自体は、極端に下がっては無いのだろう?」

「せやねん、実際島の責任者は、その事ちゃんと説明しとる。せやけどみーんな噂の方が怖いみたいやね。誰もそんなお上の言葉に耳かさんわ」

「それは困ったなあ……」

 

 この様子では、他の島に行っても似た事がおきていそうだ。

 

「そう、うちもこまっとる。このままじゃ小麦が適正の価値で売られへん。こんなのゆるせへんわ……」

「貴君も商いを?」

「まあな、聞いた事無い?風読みの相場師とはうちのことや!」

「風読み……なんと、貴君がそうであったか!!」

 

 カルテイラさんの肩書きを聞いて、コーデリアさんが驚いている。風読み、なんかかっこいいぞ。

 

「フィラソピラ知ってる?」

「う~ん、それこそ風の噂で……かなりの慧眼を持つ相場師と聞いたことがあるね」

「その通りだ。どこの国であろうと、あらゆる分野で先を読む力とは、重宝されるものだ。特に金銭のからむ市場や取引においては、その力は重要だ。リュミエール聖国でも、彼女の力を借りた事は、少なくないだろう」

 

 そ、そんなに凄い人だったのか……不思議な方言の、ただのエルーンじゃなかったのか。

 

「ああ、なーんか見た事ある甲冑や思ったら、あんたリュミエール聖国の騎士様かいな。今でもたま“お抱えになりませんか~”って誘いがうっとうしうてかなわんわ、兄ちゃんやめさせーな」

「リュミエール聖国からの誘いを“うっとうしい”で済ますのは、貴君ぐらいだろう。それと、私はこう見えて女性でね」

「なんやそやったんか?そらすまんかったなあ」

「慣れているからね。かまわないよ」

「う~ん?そういや、リュミエール聖騎士団の騎士が仲間になった騎空団言うたら……ああっ!?」

 

 突然俺とコーデリアさん達をじっと見て何か思い至ったのか、カルテイラさんが声を上げだした。

 

「もしかしてあんた、あの星晶戦隊マグロチップスなんたらとか言う、頭おかしい名前の騎空団の団長さんやろっ!!」

「マグナシックスです」

 

 頭おかしい名前なのは、否定しませんが。

 

「そーそー、マイタソックス」

「マグナシックスです」

「まあまあ、細かい事気にしたらあかん」

 

 ソックスを巻いてどうする。

 

「けど、やっぱりあんたらやったんか!あんたらの事は、よーシェロはんから聞いとるでっ!」

「うん?シェロさんと知り合いなんすか?」

「知り合いも何も、うちら古い付き合いやで。今でも商売仲間であり商売敵!しっかしあのシェロはんが「あの人はですね~地味な印象です~」「地味な顔ですね~」しか言わんから、ほんまか思うたけど、ほんま地味やなー自分」

「やかましいわっ!!」

 

 物まねも似てねえし、それ本当に言ってたのかシェロさん!?

 

「まあそのおかげであの騎空団って今わかったわけやけどな」

 

 地味な顔で判断しないで。

 

「落ち込む事は無い我らの団長よ。貴君の魅力が解る者は、必ずいるのだから」

 

 ほんと、コーデリアさんは、すぐそう言うこと言えちゃうんだからな~。イケメンと言う概念が凝縮して物理的な形を得たのがこの人なんじゃないだろうか。

 

「けど君の困った顔も可愛くて私は好きだよ?」

 

 それはコメントし辛いよ、フィラソピラ。

 

「なな、ところであんたら小麦粉欲しいんやろ」

「まあ、そりゃねえ……」

「ならちょっと、うちの頼み聞いてえな」

「……それって依頼って事でいいっすか?」

「せや、シェロはんの言うとおりの騎空団ならきっとこの事態何とかできるやろ」

「つまり、依頼をやれば、小麦粉買えるって事ですか?」

「結果的にそうなる事は間違いなしや!」

 

 うーむ、面倒事はイヤだが依頼とあれば受けぬわけにはいかん。それに小麦粉は、今後のためにも、価格を適正に戻さねば困る。

 

「かまわないですかね?」

「無論だとも、我々の手で人々が助かると言うのなら、断る理由はない、もとより私は、ここではただの一団員、団長の意志に従うよ」

「私もかまわないよ。君のパンケーキも食べたいしね」

 

 他の奴らも態々戻ってまで聞く事も無いか。基本的に暴れられればいい奴や、物でつれるような奴らだし。

 

「了解っす。カルテイラさんの依頼、受けましょう」

「ほんまっ!?いやーおおきに!!」

「それで、俺達は何をすればいいんですか?」

「うんうん、ようはこの事態は、あの農場からの出荷が無いから起きた騒動やから、原因を断てばおのずと価格も戻って騒動も治まるわけや」

「それはつまり……」

「魔物退治や!まず農場へ行くで!うちも同行するさかい、あんたらの船で連れてってっ!」

 

 本当に押しが強いな。

 しかし確かに原因を治める。これが手っ取り早いな。魔物が増えているという事だから、やる事は単純、まさに異常な戦力を保有する我が騎空団向きの依頼だな。

 そうして、俺達はカルテイラさんを一時的に向かえて、一路例の農場へと向かいエンゼラを飛ばしたのであった。

 

 ■

 

 三 麦畑戦線異常事態

 

 ■

 

「でっけええーーーっ!?」

 

 エンゼラから見えた黄金色の小麦畑。なんヘクタールあるのか想像も付かないほどの広さがあり、上空からでさえその全貌が見えない。

 

「どや?ここから空域で使われる殆どの穀物が出荷されるっちゅーのも納得やろ?」

「ほんとだわ、こりゃ凄いわ」

「ああ、すごいな団長、人はここまでも畑を広げられるのだな」

「麦といえばビールだにゃあ」

 

 純粋な感嘆とストレートな欲望が出てきたりと、甲板から畑を眺める団員からの感想は様々だ。しかし……。

 

「けど一部畑が荒れてるです……」

 

 ブリジールさんが指差す方向、そこの畑は他に比べると明らかに荒れている。遠目からでも分るほどに、麦が飛び散り地面の色が見えるが、収穫した跡と言う訳ではないのは、明白である。

 

「あっちゃ~……やっぱ被害で始めよった。こら、そうとう増えとるな魔物。呑気しとる時間も多くないで」

 

 やはり魔物であった。ゆるせぬ、俺のパンケーキへの欲求は既に限界を向かえそうだ。

 

「団長、船停めるね……」

「頼むセレスト。シュヴァリエ、島入ったら俺とコーデリアさんとカルテイラさんで責任者の人に会いに行くから、しばらくここを頼むわ」

「承った。ところで」

「この程度の働きでケツは蹴らん」

「そんなっ!!」

 

 ご褒美がケツを蹴ると言う事に俺は、常々辟易しているのだがこれをしないとこいつ言う事聞かない時あるからなあ。しかも、手加減せず蔑んだ目線を加える必要がある。ほんと、どうしてこうなった。一度理由聞いたら「シュヴァリエ本体の方の主が、少し歪んだ愛情を持っていた影響だと思う」、だとさ。“なんじゃそりゃ”、だ。

 この広大な畑は、驚くべき事に一つの村で管理している。村そのものは、普通の村と変わらぬ規模だが、古くから農業が盛んであったためにこの規模の畑を維持し続ける事が出来ている。それでも魔物も出てくるので、村人だけでなく、村で雇った騎空団や傭兵達の力を借りて例年魔物による被害を防いでいた。

 

「それが全く、今年は魔物の規模が違いすぎるのです……」

 

 と、俺の前で困り果てているのが村の村長、同時に農場の責任者である。

 

「何よりも困ったのが、虫の魔物です……」

「虫、ですか?」

「はい……今年がそう言う時期なのかわかりませんが、虫の魔物が多い、特に芋虫型が多く食害が酷いのです」

「じゃあ、空から見た荒れた畑は」

「正しくそいつらの仕業です」

 

 虫型の魔物は、結構な種類がいるが芋虫と言うと「クロウラー」と言う緑の魔物を思い出す。だがあいつらは、動きが遅いので対処できそうと思ったのだが……。

 

「情けない話ですが、畑が広すぎて……自分達ですら対処が追い付かないのです……」

 

 村長は、恥じるように話すが、仕方ない事だ。今までは、少数の魔物が稀に来る程度だったから手が回ったが、今回は別であった。完全に広大な畑が裏目で出た。

 畑を護るための増援を依頼しようとした時、丁度村でもひいきにしている商人カルテイラから「ええ騎空団みっけたで!」と知らせを受けたのである。つまり俺たちだ。

 

「と言うわけで!今回の仕事は、麦畑防衛と同時に虫型魔物の退治である!!」

「気合入ってるなあ団長!」

「パンケーキ食いたいんだよ!!」

 

 高級なケーキと同じ値段する小麦粉買ってまで作る気は無い。さっさと適正価格に戻させてもらう。

 

「まず今日は、魔物からの畑防衛だ」

 〈一気に殲滅しないのか?〉

「そうしたいけどね。まずは防衛、ここ最近は、この時間あたりに麦やら農作物を食い荒しに現れるとさ」

 

 麦畑防衛組には、星晶戦隊を要所へと配置。一体のマグナに既にこの村で雇われ畑を護っていた騎空団や傭兵を編成した混合部隊を配置する。

 

「防衛終わったら、明日朝一で魔物の巣を探して退治する感じ」

「私の方から補足させてもらうが、畑が無事である事が第一になる。特に星晶獣の皆は、うかつに広範囲攻撃を行わないようにしてほしい。特にコロッサスは、前の様にうっかりプロミネンス・リアクターを放つと言うのは、絶対に無いようにしてほしい」

「(*`・ω・)ゞ リョウカイ」

 

 ああ、コーデリアさんいると指示出し楽だなあ……。

 

「ちなみにうちは、戦力として期待せんといてな」

「あー……それは、なんとなくわかってたんでいいです」

「話が早くて助かるわ。弱い魔物程度ならシバけるけど、あんだけの数やと、うち足手まといやさかい。それじゃ、キバってやー!」

 

 曰く、武器はハリセン。思い出すのは、ばあさんのくれた武器。ああ、あんただったんか、あの武器の縁って……。

 とりあえず、とてもカルテイラさんを今回の戦いに参加はさせられない。そもそも依頼主の一人なので、当然である。ともかく、今日は防衛戦。他の騎空団との連携と言うのも初めてだし、気合入れて行こうね。

 

「キモイ、キモイキモイイィィーーーッ!!?」

 

 とか気合入れたとたんこれだよ。

 やばい、想定以上だ。とんでもねえぞこれ。地面が魔物で見えねえ。魔物が七分に、地面が三分、しかも全部虫型でキモ過ぎる!いくら鈍足の魔物でも、うっかりしてると直ぐに抜かれるような数だ。

 

「こ、これが他の方向からも来てんのかよっ!?」

「兄ちゃん、こんなんで参ってられないぜ?これがしばらく続くからよ、最初っからとばし過ぎるなよ!」

 

 既にここで長い事防衛についていた騎空士の一人が教えてくれるが、この人達も大概凄いな。よくこんな数の魔物相手で畑をほんの一部食われた程度で済ませたものだ。

 

「Mogaaaa!!」

「ぎゃああっ!!キンモオオオッ!?」

 

 呑気してる場合でもなく、俺は無数の魔物の群れを相手せざるを得ないのであった。

 

 ■

 

 五 虫退治

 

 ■

 

「可及的速やかに全部潰すぞ」

 

 精神的にも参った俺の言葉に団員の誰もが頷いた。

 

「もう迫り来る虫の相手は嫌だにゃあ……」

「うぅ……返り血、と言うか体液でベタベタです、気持ち悪いです……」

 

 

 主に女性陣の精神ダメージが大きい。あんな芋虫の群れ誰だって嫌だ。

 

「ユグドラシルの張った壁で一時的に侵入を防げたが、これが続くようでは何時破られるかわからんぞ主殿。あいつら壁も登れるし」

「―――……」

 

 ユグドラシルが申し訳なさそうにしているが、彼女は悪くない。あんまり派手に地面掘り起こしたりしたら、畑にまで影響が出てしまう。畑を護れる壁を生み出せただけ手柄だ。

 

「今日は諦めて森に戻った魔物は、フェザー君が斥候してくれて位置を把握出来た。休んだら予定したより早く攻める」

 

 畑が無ければ遠慮もいらぬ。とにかく巣なり見つけ出して奴らをぶっ潰す。

 数時間の仮眠の後。俺達は、まだ日が昇らぬうちにフェザー君の見つけ出した魔物の集団生息地へと向かった。島の森にあるある場所で、やつらはいた。

 

「やっぱキモすぎる」

 

 凄まじい数の芋虫型の魔物が身を寄せ合って眠りについている。それでも稀に体を動かすので、ボコボコした魔物が集まり出来上がった魔物絨毯が波打つ様はかなり気持ち悪い。

 

「ユグドラシルが地面押し上げて、全部押しつぶしてもらうって言うのは……」

「~~~……!」

「だよね」

 

 ちらりとユグドラシル見たら、イヤイヤと顔を振る。カワイイ。まあ、無理に頼み込めばやってくれそうだが、人間の感覚的には、50匹近くの芋虫を一気に両手で潰せって感じだろう。彼女、ある程度大地と感覚は、共有してるし。そら嫌だわ。

 

「と言って、ちまちまやる数でもないからな。仕方ない、シュヴァリエ。畑程遠慮する必要ないからあそこ全部に光の剣掃射」

「私もいやなんだがなあ……」

「つべこべ言わねえで、はよやれや雌豚」

「アヒィン……ッ!くっ!この様な安い言葉攻めで……やるに決まってるだろっ!!」

 

 どっちや。

 ドM気質のシュヴァリエを見て、コーデリアさんとブリジールさんは、すごく複雑な顔してる。同じ騎士として、思う所あるのだろうか。大丈夫です。こんなやつは、こいつだけだとわかってますから。

 

「しかし、あれが彼の求める騎士像だと言うのなら……私は……っ!!」

「早まらないでコーデリアちゃんっ!?団長さんも嫌そうにしてたですっ!!」

 

 なんか二人が喋ってるけど、よく聞こえない。

 とにかくはよ解決しよう。

 

「あ、まて団長」

「どしたのゾーイ」

「あれを見てくれ」

 

 ゾーイが指さす方向、目を凝らして見てみると、一匹芋虫型ではない虫の魔物がいた。蛾の姿だろうか、その魔物が他の魔物と違って今もなお眠らずに何かしている。双眼鏡を取り出しよく観察すると、なんとその魔物は、モリモリ元気に黙々と木々に卵を植え付けていた。

 

「もしかせんでもあれ元凶?」

「そのようだよ。私の均衡センサーにすごく反応する」

「え、何そのセンサー?」

「世のバランスが崩れそうになる原因に反応するセンサーだ。あれは結構強い反応がするぞ」

 

 ゾーイの頭をみると、鳥の尾羽みたいなアホ毛がピコンと動いている。それセンサーだったんだね。聞かれなかったから言ってない?そう……じゃあ、仕方ないね。けどかわいいから今度じっくり見せて。

 しかしあの蛾型は、どうも怪しいのでまとめて消し炭にせず生体を手に入れた方がよさそうだ。

 

「生け捕るのかにゃ?」

「いや、無理っす」

 

 ただし見たところ、一般的な蛾型の魔物より二倍は大きい。その点も怪しいなあ。魔物も多すぎて生け捕る余裕がないので、倒して回収するしかない。あいつだけ避けて範囲攻撃しても、その隙に逃げられるだろうし。

 

「麻酔でもあれば別だけどね」

「麻酔?麻酔弾ならあるで?」

「マジか、用意いいじゃんうわああっ!?」

「ドアホッ!?声大きいっ!」

 

 いやいやいや、なんでいるのカルテイラさんっ!

 

「普通について来たで?」

「そういやいたな、自然過ぎてオイラ達も気が付かなかったぜ」

「なーんかありそうな気がしてな、虫の知らせっちゅうやつ?まあ正解やったな。丁度麻酔弾あるで」

「また都合のいい……なんであるんすか」

「商人ってのは、都合がいいようにするのが仕事や。魔物用の麻酔買う客もおるんやって。あのタイプの魔物にも効く麻酔やで。そんで、つかう?」

「あー……銃が無いんだけど」

「銃かーそっちは流石にないなー」

 

 麻酔弾あるのもおかしい気がするけどね。

 

「銃でいいなら用意できるぜ相棒?」

 

 今度は、B・ビィがなんか言い出してすごい嫌な予感がする。

 

「……一応聞くけど、どうやって?」

「そりゃおめえ、こうやってウオオオオオッ!!」

「ぎゃああっ!?」

 

 突如B・ビィが体をくねらせたかと思うと、その姿をまったく別の物へと変貌させた。デジャヴュ!

 

「B・ビィトランスフォームッ!B・ビィムガン!」

 

 何をどうしたのか、骨格とかそう言うのを全て無視した変形なのか変身なのか、ともかくB・ビィが自らの顔を発射口にして体を拳銃へと変えた。見た感じ、ただB・ビィが気をつけして、腰曲げただけなのに銃に見えてくるもんだから、余計にわけがわからん。コーデリアさん達比較的最近のメンバーは、マジで驚いてる。

 

「さあ、オイラをつかえ!」

 

 そんな無駄に澄んだ眼差しを向けられても。

 

「……銃弾込めれるの?」

「口にくわえればOKだぜ!」

「狙撃に向いてない形状なんだけど……」

「ライフルモード!」

「ほげええっ!!?」

 

 今度は首が伸びて形状”だけ”はスナイパーライフルっぽくなった。ほんとなんなんだ、こいつ。

 

「さあ、麻酔弾をよこしな!」

「団長、B・ビィの熱い魂に応えてやってくれ!」

 

 フェザー君、よく組手してるからか君ってB・ビィと仲いいよね。

 

「えっと、どうするん?」

「……やります。弾くだしゃい」

「お、おう」

 

 あまりにも汎用性の高いかつ気持ち悪い変身に度肝を抜かれつつ、疲れた表情の俺にどこか同情を含んだ視線を向けるカルテイラさん。同情はいらぬ、だがやさしくしてー。

 

「ぱくっ!」

 

 B・ビィの口、もとい銃口に麻酔弾を装填する。そのままB・ビィムガンを構える。銃の心得は、既にばあさんから叩き込まれたため、使用する銃によるが遮蔽物が無く目標が見えるなら基本島の端から端でもいける。やった事無いしそんな状況ありえないが。

 

「早く終わらせるか……」

 

 B・ビィムガンをかまえる。生暖かいのに、しっかり感触は銃だ。なにこれ?スコープ無いのに、なんで見えるの?トリガー無いけど、大丈夫?え、星晶パワーで全部OK?便利だねその言葉。

 ツッコムとキリがないので、無駄に軽く使いやすいB・ビィムガンの引き金をさっさと引く。

 

「狙い撃つぜ!」

 

 オメーじゃねーよ、俺がだよ。

 

 ■

 

 六 商人魂

 

 ■

 

 総括。虫は無視したい。なんて、言いたくなるような依頼であった。

 あの後、問題なく放たれた麻酔弾によって無力化した魔物。その後は、俺達に気がついた他の魔物が迫り来る前に、手はず通りにシュヴァリエの光の剣で全て消し炭にした。撃ち漏らしもいたが、たいした数じゃないので俺達で殲滅。眠っている魔物も回収した。

 

「うちの知り合いの客で、こう言うの好きな研究者おるから、そこに魔物もってってもらうわ」

 

 と、捕獲した異常に成長した魔物は、カルテイラさんの勧めで彼女の知り合いの研究所に引き渡された。ただし俺達で調べた所、やはり自然に起きた変異ではないと、非自然な事に敏感な星晶戦隊達によって結論付けられる。

 

「明らかに自然の摂理から逸脱している。繁殖期でも無いのに、卵を産んだりと、仮に繁殖期だとしても、この産卵ペースはおかしい。これじゃ、均衡が崩れる」

「―――……」

 

 ゾーイの見解、さらにユグドラシルが言うには、魔物の行動には「繁殖」と言う思考が消えていた。ただ只管に増えると言う事のみを考えており、自らの体がおかしくなるような勢いで魔物を増やし続け、同時に生まれた子供も異常な成長スピードであった。繁殖と言うよりも、量産である。明らかに人の手が加えられている。

 まあ、あとは案の定と言うか、魔物が寝床にしてた森のある場所から、帝国の物と思われる機材が残っていた。その事について村長に聞くと、「そういえば、たまに帝国の船が来ていた」「人数もそんなにいなかったから、普通に客だと思った」との事。多分人数分けて、森に勝手に入ったんだろうなあ。

 

「また帝国か」

 

 何度目だろ、この台詞。

 目的もなんとなく察する事は出来る。どうせ、大量に増やした魔物を軍事利用とかでしょうよ。んもー、しょーも無い事をするやつらめ。俺も星晶戦隊も、激おこですよ。もし帝国兵に会ったら、ちょっとお話しようか?大丈夫、俺と星晶戦隊で取り囲んでお話しするだけ、乱暴シナイ。団長、ウソツカナイ。

 

「なんにしても、念願の小麦粉を手に入れたぞ!!」

 

 何かと疲れる依頼であったが、俺としては、カルテイラさんからの報酬に、村からの報酬としてルピと多量の小麦粉をいただけたので気持ちは潤っている。

 さあ、やっとパンケーキが作れる。しかし焦ってはいけない、一度また別の島によって物資補給と、ホイップクリームの材料を買う。報酬がちょっと多いので、少し贅沢するぞ。けど、アンゼリカ(フキの蜜煮)やチェリーのシロップ漬けは、贅沢すぎるな。駄目です、駄目駄目。

 

「せやったら、うちから買うてってや。良いの揃えるで?」

「まだ居たんすか、カルテイラさん」

 

 シェロさんといい、商人って神出鬼没なの?

 

「そう冷たい事言わんと。ところで、うち次の予定でアウギュステ行く予定やねん」

「はあ、そうですか」

「けど今回の騒動の所為で、しばらく島からの定期便出られへんのや。まずは、滞った小麦とかの出荷に船集中して使うってな」

「ほーん」

「いやー親切な騎空団でも居て、ついでに乗せてってくれんかなー?偶然アウギュステにも寄る騎空団とかおらんかなー?こーんなかわいいお嬢さんが困ってるんやけどなー?」

 

 露骨ぅ!!

 かわいいけどさ、かわいいけどさ!耳とかモフらせて欲しいけどさ!

 

「……わー偶然だなー俺達、アウギュステに行くけどカルテイラさん乗ってくー?」

「えー、ほんま?ええのん?」

「あ、別に無理にとは」

「そいじゃあアウギュステまで世話になるで!!」

 

 露骨うぅっ!!

 あんた絶対知ってただろ、俺達がアウギュステ行く事!!

 

「まあまあ、今回の事でうちもほんま感謝しとる。今度の騒動で、混乱に乗っかって阿漕な商売したやから見たやろ?」

 

 ああ、いたね法外な値段つけて売ってた連中。

 

「ああ言うの、うちほんま許せんわ!商人なら、たとえ儲け第一でも護るべきもんあるっちゅうねん!客の足元見るような商売なんて、邪道や邪道!」

 

 えらい熱の入りようである。思う所あるのだろうか。しかしあまり突っ込んで聞く事も出来ないなあ。

 

「だからありがとうな。この島から、小麦の出荷された事が広まれば、直ぐに今回の騒動も治まる。正しい値段で、正しい売り買いを商人と客が出来る。「嫌なら買うな」、そんな商人優位の商いやと、何時か客に愛想つかされるだけや。そうなったら、商人自体が必要とされんくなってまう。互いに平等、そこから商人と客との値段の競り合いがあって本当の商売っちゅうもんや」

 

 ふ、深い。唐突に説かれるカルテイラ商売訓とでも言うのか、彼女の商人としての心意気が俺にまで伝わるようだ。

 

「せやから、欲しいもんあったら言うてや!なんでも揃えたるで!シェロはんのとこよりまけたるから!」

 

 ……けど実際は、ただ商魂逞しいだけなんじゃないだろうか?いや、それもあると言う事か。思わずそう思ったのであった。

 

 ■

 

 七 焼けっぱちパンケーキ

 

 ■

 

 結局アウギュステまで同行を決めたカルテイラさん。途中他の島にも寄る事も了承済みである。まあ色々な商売についての話を聞く事も出来るので、結構楽しい旅になる。

 それよりも俺としては、ついにパンケーキを作るための材料を完璧にそろえた。カルテイラさんによってお手ごろ価格で、トッピングも買い揃えれた。いざパンケーキ!!

 

「ふわっふわ、じゃーーーいっ!!」

 

 可能な限りふわふわに仕上げたパンケーキは、俺が待ち望んでいたものだった。まるで重力を感じさせず、皿に乗せるとふわりとはねて、分厚い生地でも絹のように滑らかに噛み切れるこの出来栄え。我ながら上出来である。

 

「貴君には、この様な特技まであったのか……」

「凄いなれた手つきだったです」

 

 コーデリアさん達が驚いているが、そんなに意外だろうか?レパートリー多いよ俺?

 

「あたし達も最初団長きゅんが料理するってきいて、ちょっと信じられなかったにゃあ。精々男の料理とかそんなのかと思ったにゃ」

「普段料理作るのコロッサス達だしな」

 

 フェザー君達も団員になって暫くしてから、俺の手料理を見たがやっぱり意外そうだったな。

 

「ダンチョウニ (・ω・) オシエテモラッタンダヨ」

「わ、私達で料理できるようになったら……あんまり、作らなくなったからね……」

 

 他人の料理が食いたいんだよ。今日は俺も作りたかったから作ったけど。コロッサス達は、まだ上手くパンケーキ生地ふわふわにできないし。

 

「一人暮らしだったのと、面倒見てた幼馴染に飯食わせなきゃならなかったから、基本俺が作ってやってたらこうなってた」

「それってあの【ジータ団】のジータ?」

 

 そんな略し方あんのか。悪の組織みたいだ。

 

「そう、そいつ」

 

 あいつは、飯作れるようになっても俺の飯が良いとか言って、自炊全くせんかったからなあ。普通に料理上手いのに。嬉しいといえば嬉しいが、それでもたまには、他人の作った飯が食いたいと思うのは、しょうがない。

 思えばあいつが旅立つ時、「お兄ちゃんのクッキー食べたい」とか言うから、大急ぎで焼いたなあ。旅に持っていったが、上手く焼けていたろうか。

 

「フワッフワ、ジャーーイ!!」

「はむっふふぁっふふぁ、ふぁーい」

「ゾーイ、飲み込んでから喋りなさい」

「はむん」

 

 ただ食うだけなら元気なティアマト。リスの頬袋みたいな頬っぺたのゾーイ。どっちがかわいい?言うまでもないね。

 

「やーわるいなあ、うちもご馳走になってしもて」

 

 あと、すっかり我々の仲間の様な様子でパンケーキを頬張るカルテイラさん。

 

「今回色々お世話になったので、そのお礼と言う感じで」

「そかそか、いやしかしあんた滅法強いし、そのうえ料理もできるなんて、結構な優良物件やな。さぞかしモテるんとちがう?」

「え、そそそう思いますか?」

 

 ベッタベタな感じで焦ってしまった。

 

「キモイゾ」

「うるせい」

 

 パンケーキ没収すっぞこら。

 

「あ、いやけど顔が地味やからな~面食いには、うけ悪いな」

「やかましいわっ!」

 

 結局それかい!わかってたよ、どうせそんなオチだって、この野郎!!

 

「ままそう怒らんと。地味やけど愛嬌はあると思うで?」

「慰めにもならねえ」

「それにこうやって、ぱぱっと反応するのもええところやなあ。打てば響くって感じがええ。シェロはんが気に入るわけや」

 

 そんな部分を気に入られたのか俺は。もっとこう、他にさ、あるじゃん……じゃん。

 

「シェロはんが贔屓にする騎空団は、他に無いわけやないけど、あんただけやで?シェロはんが、滅多にやらん借金作らせてまで首にわっかを……あ」

「へい、今最後なんか凄い不穏な」

「い、今の聞かんかった事にしてー!」

「あ、またんかこのっ!?」

 

 俺の借金ってそんな理由なの!!待てこらこの野郎!!

 

「か、堪忍してえーーっ!!」

 

 俺の台詞だよ畜生めっ!!借金なんて嫌いだいっ!!

 

 

 






 一 オマケ 前回のちょいその後



 エンゼラの甲板に、正座をして頭を垂れる星晶獣がいる。そしてその前に立つ俺がいる。以前の【宴会予約事件】で反省させたティアマトをマストからおろし、最後の反省をさせる。

「”もう勝手に、高額な物を買わない、宴会の予約で相談無しに高額なオプションを付けません”……はい、復唱!」
「モウ勝手ニ、高額ナ物ヲ買ワナイ、宴会ノ予約デ相談無シニ高額ナオプションヲ付ケマセン……」
「もっと大きくっ!!」
「モウ勝手ニ、高額ナ物ヲ買ワナイ、宴会ノ予約デ相談無シニ高額ナオプションヲ付ケマ
センッ!!」
「行ってよしっ!!」
「ヤット終ワッタ……ウガッ!?」

 そう言うと、ティアマトは正座の態勢から急ぎ立ち上がろうとしたが、俺の説教が長かったので、足がしびれたようだ。

「オ、オイ……タ、立テナイ……手伝ッテ……」
「それも今回の罰だ馬鹿者め」
「ソ、ソンナ殺生ナ……」
「ガー?」
「キー」
「ンギャアッ!?ア、アア!ニル、ゼア何ヲッ!?」

 立ち上がらないティアマトを不思議に思った省エネモードのニルとゼアが、彼女の震える脚に興味を持ったようで、口先で彼女の脚をつつく。

「ヒィー!?エ、エア二人ヲ止メロォッ!!」
「プヒィー……」
「アァ、寝テルッ!!ギャアッ!ヤメナイカ、ヤメッ!?ワ、ワアアァーーーッ!?」

 愉快な声を聴きながら俺はその場を後にした。ティアマトへの罰は、今回はあれでいいとする。ティアマトめ、俺の優しさに感謝するがいい。



 二 オマケ 星晶戦隊マグナシックス



 星晶獣……それは、それは空の平和を守る為に戦う神秘の召喚獣達の事である!!

【星晶戦隊マグナシックス!!】

 ドラフ族の思いを受け継ぐ鎧。炎の戦士。

「マグナ (@・`ω・)v レッドッ!!」

 騎空士達の感謝を受ける風の加護。風の戦士。

「マグナグリーンッ!!」

 絶え間なき母なる大海。水の戦士。

〈マグナブルーッ!!〉

 優しき心を持つ、豊穣の大地。土の戦士。

「――――(マグナオレンジ)!!」

 高貴なる騎士の魂。光の戦士。

「マグナイエロー!!」

 黒雲に秘めた優しさ。闇の戦士。

「マグナブラックッ!!」

 星晶戦隊、それは勇気ある者のみに許された名誉ある星晶戦士の称号である! デデッデッデッデ!
 

 ――後に来るようになる、星晶戦隊の公演依頼であった。一部の島でカルト的人気を得たそうです。


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