未来からの手紙   作:スターゲイザー

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ドラゴンボール超一時間SP見ました。身勝手な極意がカッコよかったですね。俄然楽しくなってきましたよ。


今話は、映画『危険なふたり!超戦士はねむれない』を見ていなければ理解できないかもしれません。
後、時系列が変わっています。
本来ならば悟空が生き返っていない以上、映画『危険なふたり!超戦士はねむれない』は天下一武道会前なんですが、本作では天下一武道会後になっています。

あしからず。


破壊王ブロリー編
第九話 逆襲のブロリー


 どうしてこうなったのか、と孫悟飯は空に浮かぶ男を睨み付けながら思った。

 トランクスがドラゴンボールに興味を持って飛び出した悟天と付き添ったビーデルの三人を連れ戻すだけの簡単な仕事であったはずだった。

 

「………………」

 

 悟飯の周りはスプーンで掬い取ったかのように彼が立つ場所を中心として大きく地が抉り取られている。それを為した空に浮かぶ男の気弾によって三人は遠くに弾き飛ばされた。

 気が動いていないことから意識を失っているのだろう。

 

「ククク、ハハハハハハハハ!」

 

 悟飯ではなく未だ幼い弟とその親友、そして彼ら基準では弱いビーデルを狙った男は自らの為した結果を喜ぶように地に降り立って哂う。

 お前は守れなかったのだと、その顔が見物だと、悟飯を嘲笑っている。

 

「ブロリー……」

 

 笑うブロリーを見上げた悟飯の直ぐ近くで、割れた地面からマグマが噴き出す。

 

「よくも三人を…………許さないぞ!!」

 

 わざと三人を狙い、その結果を明らかに嘲笑っているブロリーを見る悟飯の中で灼熱が迸った。

 怒りを導火線として、悟飯の全身をマグマに負けず劣らずのオーラが迸り、スパークが全身に走る。

 

「ハハハ…………ヌゥウウハァアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 悟飯の超サイヤ人2に笑いを収めたブロリーがその真価を発揮する。

 気合を込めるとブロリーの気が爆発しとしか思えないほどの衝撃波が周辺に放たれ、その全身の筋肉が肥大して体積が二倍に膨れ上がる。形態としてはトランクスが成った超サイヤ人の第3段階に似ている。その形態はパワーに重きを置き過ぎてスピードを低下させてしまう欠点をセルが指摘している。

 だが、ブロリーは七年前の戦いでは外見に見合ったタフネスを持ちながらスピードの低下や急激なエネルギー消費などの負担が一切ないただ一人の例外。

 その恐ろしさを骨の髄まで良く知っている悟飯はゴクリと生唾を呑み込み、足場を崩しながらブロリーに向かって行く。

 

「だりゃあっ!」

「ふんっ!」

 

 ブロリーも足場を壊して向かって来るが想定の範囲内。先手は譲らないと悟飯の拳がブロリーの顔面を直撃する。が、ブロリーは全く気にした風もなく顔に拳を受けながらやり返す。

 

「がっ」

 

 結果としてお互いに一撃ずつ入れながらも弾き飛ばされたのは悟飯だけだった。

 弾き飛ばされた悟飯を追ったブロリーが顔面を掴んで、手近にあった岩に叩きつける。

 

「……っ!?」

 

 更には顔を掴まれたまま岩を削り取るように動かされるが、口元も塞がれているので苦鳴の声さえ漏れない。

 蹴りを放って顔面の拘束を離させるが距離を取ることも出来ずに再度の攻撃も簡単に受けられ、腕を後ろ向きに掴まれた。反対の腕も掴まれて背中に膝を押し付けられ、胸が避けそうな痛みを覚える。

 

「ぐ、がっ……」

「ほら、どうした。この程度か?」

 

 膝を押し込まれて腕が千切れそうな、胸が避けそうな痛みに悶えているとブロリーが嗜虐満載に聞いてくる。

 悟飯だって七年前のセル戦後から劇的なパワーアップはしていないにしても、超サイヤ人2になっている以上はブロリーとの差は詰められているはずなのに手も足も出ない。

 

「お前に用はない。さっさとカカロットを出せ」

「お、前なんか、ぼ、僕だけでじゅ、十分だ……!」

「腕が千切れてもそんな戯言を言えるか、楽しみだ」

 

 悟飯の虚栄も見抜かれている。とはいえ、抗ってくれた方が面白いと考えているのか、力の差は明白なのにブロリーは直ぐに行動に移そうとしない。

 

(お父さんは界王様の所に修行に行っていて、何時戻るか分からない。それまでは僕が)

 

 だが、現実として勝機はない。挫けそうな悟飯の目に地から噴き出したマグマが映った。

 

「ぉおおっ!」

 

 一瞬に全ての力を爆発させて拘束を緩め、サッカーでいうオーバーヘッドのように足を振り上げてブロリーの顔面を蹴って腕の拘束から抜け出す。

 そして一目散に地割れに身を躍らせる。

 

「逃げる気か」

 

 悟空が来るまでの時間潰しと考えていた悟飯が逃げるので、戯れに相手をしていたブロリーも後を追って地割れに入る。

 ブロリーが後を追って来るのを確認した悟飯は、逃げるように低空でマグマ上を飛ぶ。

 後ろでブロリーが同一線上に並んだのを確認した悟飯が前方に手を向ける。

 

「はっ」

 

 やや下を向いた手から放たれた大した威力もない気弾がマグマを割り、そこへ悟飯は飛び込んでいく。

 追って来るブロリーを振り返ることも出来ぬまま、生まれた狭間を通ってタイミングを見て自分だけ離脱する。

 

「ぬ」

 

 戻る狭間に間一髪間に合わなかったブロリーがマグマに沈んでいくのを見た悟飯は安心したのか、体から力が抜けてしまう。

 

「や、やった……」

 

 緊張の糸が切れて直ぐ近くの岩場に降り立った悟飯の意識はブレーカーが落ちたように途切れた。

 マグマは徐々に地上に向かって吹き出し続け、悟飯がいた岩場も呑み込まんとしている。

 ゆっくりと足下にまで迫っているマグマ。ブロリーとの戦いで負ったダメージが大きすぎて悟飯の意識はまだ戻らない。

 

「ちっ」

 

 そこへ舌打ちをした誰かが上空より現れて悟飯を抱えると、また上への方へと戻って行く。

 

「お、お父さん……」

「誰がお前の父だ」

 

 抱えられた温かさに悟空を想起した悟飯はそう呼びかけたが呼ばれた当人はそれがお気に召さず、地面に放り投げられた。

 

「痛っ! ってベジータさん?!」

 

 ただでさえあちこち痛むのに地面に放り投げられた悟飯は一言文句を言おうとしたが、自分を助けてくれたのがまさかの人物であったので打った頭の痛みも一瞬だけ忘れた。

 

「ふん、ブルマにトランクスを探して来いと追い出されて、死んだはずのブロリーの気がするから急いで来てみれば、何を勝手に一人で死にかけているんだ」

 

 悟飯を放り投げたベジータは腕を組んで尊大に見下ろす。

 

「そのブロリーと闘ったんですよ」

「何?」

「どうやってあの星の爆発から生き残ったのかは分かりませんけど、悟天とトランクスと戦ってたので僕がなんとかなんとかあのマグマに落としたところです」

 

 ブロリーがいることか、ブロリーと戦ったことか、どちらに対しての疑問であっても答えられるように言うと、また鼻を鳴らされた。

 

「ブロリーか。アイツには借りがあるんだ。勝手に倒してるんじゃない」

「無茶なこと言わないで下さいよ。こっちは死ぬ思いをしたのに」

 

 トランクスの気がする方を見ながら文句たらたらのベジータに、死に物狂いでマグマに落とした悟飯としては堪ったものではない。

 ベジータらしいと言えばらしい言い方ではあるので内心で苦笑していると、直ぐ近くの地割れから一際大きなマグマが吹き上がった。

 

「え」

 

 マグマが吹き上がる程度で今更驚きはしない。悟飯が絶句したのは、吹き上がるマグマが重力に負けて落ちていく中で光るオーラを見たからである。

 

「あのマグマの海に沈んで生きているなんて……」

 

 マグマが全部滴り落ちたバリアーを解いたブロリーに負傷の後は見受けられない。気のバリアーだけで耐えきったのだと悟飯は震撼する。

 

「ベジータか。はっ、また雑魚が現れたか」

 

 悟飯必勝の策を事も無げに切り抜けたブロリーが宙に浮かびながら、地にいる二人の中で特にベジータを見て言った。

 

「ブロリー」

 

 その姿を見上げるベジータの手が僅かに震えているのを見て、実際に戦った悟飯もその気持ちが良く分かった。

 

「俺は怯えてなどいない。俺は、サイヤ人の王子だっ!!」

 

 嘗て自らを襲った感情を一蹴し、超サイヤ人2になったベジータが空に浮かぶブロリーに向かって突貫する。

 

「お前に用はない」

 

 七年前の自分を乗り越えようとしているベジータに一欠けらの興味もないブロリーは、簡単に拳を避けてすれ違いざまに無防備な腹に気弾を叩き込む。

 

「ぐはっ」

「ベジータさん」

 

 腹で爆発する気弾によって振り子のように舞い戻るベジータの名を呼んだ悟飯がせめて受け止めようとして、溜まっていたダメージで果たせずに膝をつく。

 

「おっと」

 

 そこへ瞬間移動してきた悟空が弾き飛ばされたベジータを偶々受け止める。

 

「くっ、カカロット……」

 

 奇しくも受け止められた格好のベジータが手出し無用と文句を言いかけて、当の悟空の目は別の人物に向けられていた。

 

「げっ、ブロリーじゃねぇか」

 

 界王様の星にまで届いたブロリーの気を感じ取り、界王様に状況を確認してもらって慌てて瞬間移動でやってきた悟空は、本当にいたブロリーに顔を引き攣らせていたのだからベジータは文句を言うよりも勝手に自分で降りる。

 

「カカロット、悟飯、貴様らは手出し無用。奴はこの俺が倒す」

「…………オラとしてはちょっとその方が良いかなって気がしてきた」

「お父さん!」

 

 今、やられた分をやり返さなければ気がすまないベジータ。

 七年前の対峙だけで胸いっぱいの悟空はベジータに全部任せてしまおうかとらしくもなく逃避しているが、ブロリーと闘った悟飯は一人で戦っては勝ち目はないと分かっているので一言口に出さずにはいられない。

 

「僕達がパワーアップしているように、ブロリーも格段に強くなっています。ベジータさん一人じゃ勝てませんよ」

「おい、俺は一人で」

「ベジータさんもさっきのでブロリーの力はよく分かったでしょ。サイヤ人のプライドに拘って負けたら意味がないってことを分かって下さい!」

 

 ベジータを正論で封じ込めると、次は悟空を見る。

 

「ビーデルさんやトランクス、悟天もアイツに酷くやられたんです。ここで斃すしかないですよ」

「ああ、そうだな」

 

 一瞬の現実逃避なので悟飯に説得される前に超サイヤ人2になった悟空。

 悟飯を中心にして左にベジータが、右に悟空が立って三人の超サイヤ人2が並び立つ。

 

「カカロット……」

 

 その三人の超サイヤ人2をなんら脅威に思うことなく、ブロリーが見ていたのは悟空ただ一人。

 悟空が現れた時からブロリーを襲うフラッシュバック。

 ブロリーの耳を、ただ保育器で隣り合っていただけの悟空の泣き声が想起する。生まれたばかりで他を圧倒する戦闘力を有し、今に至るまで苦戦らしい苦戦すらしていなかったブロリーを脅かしたただ一人の男。

 

「カカロット」

 

 七年も氷河に閉じ込められていたブロリーを目覚めさせたのも似た泣き声だった。

 根幹に刻み込まれたトラウマが悟空を間に当たりにしたことで感情を爆発させる。

 

「カカロット!!」

 

 感情の爆発によってブロリーの気が更なる増大を見せる。

 ただでさえ、尋常ではなかった気が天井知らずに高まり、迸るオーラがその勢いを増してスパークする。

 

「す、超サイヤ人2だと……!?」

「やっぱ帰ろうかな、オラ」

「ぼ、僕もそうしようかなと考えていたところです」

 

 純粋に驚きを露わにするベジータと違って、現実逃避を始めた悟空と先程の言葉を翻そうとする悟飯。そこにブロリーが襲い掛かる。

 

「うわっ」

 

 慌てたのは悟飯だけで、悟空とベジータは素早く避ける。

 悟飯も辛うじて軌道上から退くが、最初からブロリーの標的は別の人物である。

 

「カカロット!」

「やっぱオラを狙ってくんのか!」

 

 切り返したブロリーの俊敏な動きに半ば予測していても避けれなかった悟空が弾き飛ばされる。

 

「はぁっ!」

「せいやっ!」

「温いっ!」

 

 悟空を弾き飛ばした隙に悟飯とベジータが揃って多方向から攻撃を放つが、躱し受け止めたブロリーが気合を込めるだけで吹っ飛ばされる。

 

「かめはめ波っ!」

 

 そこへ弾き飛ばされた悟空が着地と同時に全力のかめはめ波を放つ。

 二人を吹っ飛ばすために気合を込めていたブロリーは避けることも出来ず、巨大なかめはめ波に呑み込まれる。

 

「どうだ!」

「…………なにか、したか?」

 

 かめはめ波を放った態勢のまま悟空の視線の先で全く効いた様子のないブロリーが立っていた。

 

「相変わらずの化け物め」

 

 今のかめはめ波を受ければ自分は勿論、悟飯であってもただではすまないはずなのに効いた様子の無いブロリーに七年前をまざまざと思い出したベジータが吐き出す。

 

「違うな、俺は悪魔だ」

 

 そう言って哂うブロリーの姿は悪魔的である。

 

「今のままじゃ、勝てねぇか」

 

 固まっていた悟空はそう言って跳び上がり、ブロリーから更に距離を取ると悟飯とベジータを見る。

 

「頼む。オラにブロリーを近寄らせねぇでくれ」

 

 そう言った悟空の言葉に勝ち目があるのかと尋ねるよりも賭けるしかなかった二人がブロリーを注視するが、当のブロリーは悟空の行動を待つようで腕を組んだまま動かない。

 希望を全て折った上で叩き潰すと決めているのだ。

 

「ぐ……ぐ……、ぐががががが!」

 

 ブロリーが動かないのならば好都合。悟空を腕を腰だめに構えて気合を込める。

 

「あああああああ……………………!!!!」

 

 地球全体が揺れているような錯覚を覚えるほどに高まる気は、思わず悟飯とベジータが振り返るほどだった。

 

「はぁあ――――ッ!!」

 

 カッと閃光が辺り一帯を照らし出し、その光が徐々に減じていく。

 光の中心に超サイヤ人2以上のスパークとオーラの持ち主が悠然と立っている。

 

「お、お父さん……?」

「カカロット、なのか?」

 

 髪が背中にまで伸び、眉毛が無くなった悟空に思わずそう呼びかける二人。

 人相のみならず、以前とは別物の気の総量に驚愕を禁じ得ない。

 

「これが超サイヤ人3だ。まだ未完成なんで見せたくなかったんだが、今までのオラとは別物だぞ」

「試してやろう。早々に壊れてくれるなよ!」

 

 次元違いの二人の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花火が連続で爆発しているような、ずっと大地震が続いているような振動に孫悟天は目を覚ました。

 

「う……」

 

 体を起こそうとすると、手に七つのドラゴンボールが入っていたバックの紐が絡まっていた、底に穴が開いて地面に転がっていた。

 

「ドラゴンボール。そうだ、ブロリー」

 

 自分がこうやって地面に倒れていた原因である男を思い出し、痛みに嫌な汗を浮かべながら立ち上がる。

 

「お父さん」

 

 悟天には及びようもない領域で戦っている父の気を感じ取り、気が急いた所為で特に痛む右腕を動かしてしまい、斜面の立っていた足を滑らせて転倒してしまう。倒れ込んだ眼前に四星球が転がっていた。

 

「神龍、なんでも願いが叶えてくれるならお父さんを助けて」

 

 父の昔話やトランクスから聞いた話で神龍が願いさえを叶えてくれればと言ったところで、四星球が光って悟天の視界を真っ白に染める。

 

「願いは叶えてやった」

 

 荘厳な声が悟天の耳に届く。しかし、何故か悟天の体は不自然に動かない。

 

「言いこと聞いちゃった」

 

 また悟天の知らない声で誰かが楽し気に言ったのが聞こえた直後、悟天の意識が急速に希薄化していく。それに抗おうとしても果たせず、悟天の記憶はそこで途切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の悟飯には及びもつかない領域で戦う悟空とブロリーの戦い。

 

「カカロットの野郎、また俺の一歩先を行きやがって」

 

 隣に立つベジータが悔し気に言う気持ちも分からないでもない。あれだけの力があるならば最初から使って欲しかった。そうすればブロリーにあれほど苦しめられることもなかったのだから。

 

「だが、妙だな。カカロットめ、何を焦ってやがる」

 

 え、と悟飯が思わずベジータを見ると、ただ感心するばかりの悟飯と違ってベジータは冷静な戦士の目で悟空の焦りを見抜く。

 

「どういうことですか、ベジータさん?」

「分からないか」

 

 と逆に聞かれて改めて悟飯は二人の戦いを見る。

 すると、直ぐに気が付いた。

 

「これは推測だが、カカロットの気の消費が早過ぎる。未完成と言っていたのはそこに理由がある」

 

 全力で戦っているのは間違いないだろうが、それにしたって悟空の気の減りの早さは尋常ではない。

 そう、そのことは実際に戦っている悟空が一番よく分かっていた。

 

「どうした、カカロット! この程度か!」

「くっ、ブロリー!」

 

 ブロリーの挑発を拳で返しながらも、悟空は未だ未完成の超サイヤ人3の弊害をむざむざと知る。

 予想以上のブロリーを相手にして、超サイヤ人3でなくなれば敗北しかないというのに頭の中で制限時間が見えてしまったから。

 

「これで決めてやる! 受けてみやがれ!!」

 

 蹴りを一発ブロリーの胸に放って大きく距離を取りながら、超サイヤ人3を維持出来ている間に倒すべく、挑発してかめはめ波で気功波による勝負に持ち込もうとして腕を腰だめに構える。

 

「かめはめ――」

 

 大きく後ろに飛んで悟空の挑発に敢えて乗ったブロリーの手に集められた小さな気の塊が収束する。

 

「――――波っ!!」

 

 悟空が特大のかめはめ波を放ったの同時に、ブロリーはアンダースローのように収束した気の塊を放った。

 両者は中間地点で接触し、最初は小さかったブロリーの気弾が大きく膨張して数百メートルにわたって膨張する。まるで直進する光の塊を押し留めるようにかめはめ波が放たれているように見える。

 

「ぐっ」

 

 ブロリーが同様の気弾を継続して打ち込むと勢いを増し、拮抗していたバランスが崩れる。

 地球が増えるほどの衝撃の中で押し込まれていた悟空の両脇にベジータと悟飯が降り立つ。

 

「ギャリック砲!!」

「かめはめ波!!」

 

 ベジータのギャリック砲、悟飯のかめはめ波が悟空の両脇から放たれ、ようやく拮抗を取り戻す。

 

「無駄な足掻きを」

 

 二人の協力もあって侵攻を押し留めたかに見えたが、無情にもブロリーは更に気弾を撃ち込んで来る。

 

「ぐががががが!」

「がぁああああ!」

「おおおおおぉ!」

 

 負けじと踏ん張る三人だがジリ貧である。

 

「やべぇ、気が」

 

 悟空は急速に枯渇していく気に、このままでは直ぐに超サイヤ人3を維持できなくなると直感した。

 

「カカロット、気を振り絞れ!」

「耐えて下さい、お父さん!」

 

 とはいえ、根性論で気が増えるわけではない分かっている二人にもどうにも出来ない。

 

「フハハハハ、このままでは死ぬぞ! もっともっと無様に抗って見せろ!!」

 

 悟空の気の枯渇は目に見えており、そうなればこの拮抗もなくなる。自分が勝ったと確信して高笑いするブロリーに三人は何も出来ない。

 では、三人以外ならば。

 

「くそっ、俺達の力が通じない奴がいるなんて」

 

 トランクスは自分の全ての力を右手の気弾に込めつつ、父や友達の父親と兄が放っている気功波を一人で押し返しているブロリーを睨み付ける。

 

「うわぁあああああああああああ!!」

 

 溜め終わった気弾をブロリーに向かって投げつける。

 

「夢なら、覚めてよ」

 

 フラフラと頼りなく進む気弾の結末を見届けることなく、トランクスの意識が暗転してその場で倒れ込む。

 

「も、も……もうだめ―――――戻った!!」

 

 諦めかけたその瞬間に何故か全快した悟空はブロリーの気弾の侵攻が弱まったのも感じ取った。

 

「今だ! 体の(りき)、全部振り絞れ!!」

 

 悟空が全快した理由、ブロリーの気弾の侵攻が弱まった理由、それらが分からなくても悟飯とベジータにも今が残されたたった一つの勝機であると感じ取り、残っている全てのパワーを注ぎ込む。

 

「「「はぁっ――!!」」」

 

 勝機はこの一瞬にしかないと判断した三人は限界を超えたパワーを発揮して巨大な気弾をぶち抜く。

 向かって来たトランクスの気弾を弾いて油断していたブロリーは何かをする術もなくそのまま呑み込まれた。二つのかめはめ波とギャリック砲の合わせ技はそのまま宇宙の彼方へと消えていく。

 

「やったぁ……」

 

 全ての力を一瞬に込めた三人はそのまま意識を失って倒れ込む。

 凪いだ風が全てを払い落した数十秒後、意識を取り戻して駆けつけたビーデルは心底から困った顔をする。

 

「え、セルを倒した金髪の戦士が悟飯君達なのは分かったけど、私にこの状況をどうしろっていうの?」

 

 倒れ込んだまま意識を失っている三人の間近で状況が理解できず途方に暮れるビーデルだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空達が意識を失っている場所からそれほど遠くない地でバビディは楽し気にある人物を見下ろしていた。

 

「ヒッヒッヒッ、邪魔をしてくれた敵の監視をしてたら思ってもみなかった拾い物をしちゃったよ」

 

 バビディの手元には石となっている七つの球と、三種の気功波に呑まれて宇宙の彼方に飛ばされそうになっていた傷だらけのブロリーである。

 

「助けられるかどうかは微妙だったけど、ダーブラ以上の力を手下に出来るなんてボクったらついてるね。とはいえ、こいつは強すぎるし、絶対に裏切らないように今の内に徹底的に洗脳しちゃおう」

 

 バリアーも破られて成す術もなかったブロリーを間一髪で転移魔術で助けたバビディは一人ほくそ笑む。

 

「あの子供の記憶を呼んだ限りだと、このボール七つでなんでも願いが叶うのか。さてと、何を願おうかな?」

 

 最もドラゴンボールを手にしてはいけない悪が密やかに蠢動する。

 

 

 




ブロリーが超サイヤ人2になるのも、超3悟空と超2ブロリーは互角となっているのも本作設定ですのであしからず。

ブロリー敗北、そして手下化(でも従順だとは言ってない)
そしてバビディ、ドラゴンボールをゲットだぜ。
ちなみに悟天はバビディの記憶を消されただけです。ドラゴンボールも願いは悟空を全開状態にして神龍は消えました。
バビディは願いを決めていなかったので少し考えることにして、魔術で散ろうとしていたボールを回収。でも、石になった理由は分からず仕舞い。

ブロリーとドラゴンボールを手に入れたバビディは次になにをするのか。

次回「第十話 復活のF&C」

次回更新予定は活動報告にて


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