ブルーに界王拳を重ね掛けした悟空、果たしてブラックを倒せるのか?
そこへ悟飯からピッコロ、ピッコロから界王、界王から界王神に連絡が入り、ザマスを破壊された直後のゴワスの下を界王神が訪れて事情説明。ビルスは直前にトランクスを破壊する為に地球に向かった。
「あの野郎、また界王拳を使いやがった――っ!?」
悟空が暴れた為に倒壊したビルから抜け出しながら、急激に高まった力を感じ取ったベジータが顔を上げる。
「界王拳ってセルを追い詰めた、あの?」
隣で圧し掛かってきている瓦礫を除けたトランクスも父の驚愕の叫びを耳にして、セルと闘った時のことを思い出した。
「じゃあ、早く止めないと! また死んでしまう!!」
「いや、今のアイツは超サイヤ人よりも気のコントロールが上の超サイヤ人ゴッド以上になっている。下手をしなければ死ぬことはあるまい」
ただでさえ体に負担の大きい超サイヤ人に、倍率によってはそれ以上に体に負担を強いる界王拳を併用するなど自殺行為でしかない。
セルと闘った時に悟空は超サイヤ人の上に界王拳を重ね掛けして、その無茶の果てに死んだ。
「だが、カカロットめ。幾らゴッドが超サイヤ人よりも気の制御が出来るからって無謀が過ぎるぞ」
押さえつけていた時の悟空が放っていたオーラはゴッドの赤ではなく青。
ゴクウブラックや神龍が言っていたゴッドの力を完全に取り込んだ超サイヤ人に至っていると考えた方が自然。
見上げる先でも、
「凄い。今の悟空さんならブラックにも勝てるかも」
それほどに今の悟空の力は上昇している。
最早、目にも止まらない速さで動く悟空ならばゴクウブラックにも勝てるのではないかとトランクスは希望を持った。
「馬鹿者。界王拳を使って勝てるなら最初からフュージョンになど頼らずにカカロットは一人で闘っている」
「え?」
界王拳の恐ろしさは、嘗て悟空と始めて戦った時にベジータの身に散々教え込まされた、同時にそのリスクも。
超サイヤ人ゴッド超サイヤ人との併用で死にはしなくても、体に圧し掛かる負担はかなりのものだろう。
倍率を上げて勝つ自信があるのならば最初から使っているはず。勝てるという自信が悟空にはなかったからフュージョンを選んだのだ。
「あっ!?」
「また倍率を上げやがったか」
悟空の気が更に跳ね上がった。とならば、界王拳の倍率を三倍に上げたことを意味しており、それでも戦闘が止む気配はない。
「ブラックの奴、どこまで強くなってやがるんだ」
青と紅が重なったオーラが残光を残して猟犬の如く動き回るのに対して、超サイヤ人ロゼの薄紅色のオーラは泰然自若として揺るがずに迎え撃っている。
三倍にまで引き上げてすら止む気配のない戦闘は、つまりはそれだけ倍率を上げてもゴクウブラックには及んでいないことを意味している。
「フュージョンをするぞ、トランクス!」
恐らく悟空はそう長くは持たない。
止む無しと判断したベジータはトランクスにフュージョンを強いた。拒否権など与える気などなかったのだから。
「あの、フュージョンってどうやるんですか?」
否はないのだがトランクスはフュージョンのやり方を知らない。
「お、俺があのポーズを教えなければならんのか……っ!?」
誰が見ても変と思うポーズの数々を細かく教えなければフュージョンは成功しない。そして教えられるのはベジータ以外にいないのだから思わず唖然としてしまった。
「――――」
教えている姿を想像しただけで意識が時の果てへと至りかけたが、そんなベジータに何者かが声をかけてきた。
「誰だっ!?」
声をかけられるまで接近に気付かなかったことに驚愕しながらも即座に振り返ってベジータはありえない人物に目を剥いた。
「お、お前が何故ここに――っ!?」
「ブラックゥゥゥゥゥウウウウウウウウ――――ッッ!!」
別世界線のチチと悟天を殺され、未来のチチすらもその手にかけたと聞いた悟空の理性は既に存在しない。
「どうした、孫悟空!」
界王拳を使用した悟空すらも容易くあしらうゴクウブラックが向けられる憎しみに笑う。
「まだまだそんな程度ではなかろう!」
前蹴りが腹に叩き込まれた。感情が一線を超えて痛みを感じない悟空であっても衝撃は消せない。
蹴り飛ばされて鋭角に軌道を変えた悟空を追うゴクウブラックにはまだまだ余裕がある。
「三倍だ!!」
足りないのならばもっと力を。界王拳の倍率を上げるまでである。
二倍から三倍へ。二倍ですら体がギシギシと軋んでいたのに、三倍に引き上げたことでバラバラになりそうな負担が襲い掛かって来る。
「それがどうした!」
あの野郎をぶち殺せるならばなんでもいい、と悟空は体が爆散するような負担を無視するように叫びを上げた。
「がっ!? はっ」
それでもまた頭突きで跳ね飛ばされて、体勢を崩したところに追い打ちを仕掛けられる。
「馬鹿め、後ろだ!」
空中で制動をかけてゴクウブラックの姿を見ようとすれば、その一瞬で背後に回られて蹴り飛ばされる。
「――波っ!」
先にあったビルを壊しながら突き抜けながらゴクウブラックに向かって気功波を放つが当たった感じはしない。
「体、持ってくれよ!」
三倍でも足りない。ならば、その先へ。
もう悟空は躊躇いはしなかった。
「四倍界王拳だっ!!」
四倍に増した倍率は遂にゴクウブラックに追いつく。
追いかけて来たゴクウブラックに対して、消えたと錯覚するほどの速度で切り返した悟空の拳が顔面に叩き込まれると滝のような鼻血が噴き出した。
「そうだ、俺を超えて見せろ! それでこそ、孫悟空だ!」
ダメージを受けたにも関わらず、ゴクウブラックは喜色を満面に浮かべて笑う。
しかし、四倍に至った悟空の戦闘力はゴクウブラックを完全に上回っていた。
「はぁっ!!」
殴り飛ばしたゴクウブラックの進路上に先回りして、両足を揃えて上空へと蹴り飛ばす。
「くっ」
空中で急制動をかけて止まったゴクウブラックが後を追ってくる悟空目掛けて気弾を放つ体勢を取るが、その瞬間には鋭角に軌道を変えて背後に回り込んでいる。
「っ!?」
ゴクウブラックも反応して背後に向けて気弾を放つが、更に速度を上げた悟空は気弾を躱して顔面を蹴りつける。
「孫悟空っ!!」
尚も追撃を仕掛ける悟空の進路にザマスが割り込む。
「邪魔を、するなぁっ!!」
悟空の目に映るのはゴクウブラックのみ。
ザマスをゼロ距離からの気弾で腹に大穴を開けると、悟空はゴクウブラックに向かって行く。
(私とあの者、一体なにが違うのだ?)
不老不死の肉体故にザマスは腹に大穴が開こうとも直ぐに再生する。
それでも悟空のあの姿を見ると、あれほど嫌っていたはずの憎悪と憤怒を撒き散らす人間の感情が間違っているという根拠が揺らいで来た。
「ええい!」
既に賽は投げられている。迷いなどザマスに抱く資格はない。
だとしても、迷いの茨がザマスの奥深くに突き刺さったまま抜けることはない。
「ブラッーーがっ!?」
数秒の間にゴクウブラックは既にボロボロ。界王拳の倍率を四倍に引き上げた悟空の強さは完全にゴクウブラックを超えている。
しかし、ゴクウブラックだけを付け狙う悟空の背中は隙だらけだった。実力で大きく劣るザマスですら隙を突けるほどに。
「邪魔を――」
「無駄だ。如何なる攻撃も私には何の意味もない」
不老不死で傷が一瞬で治るザマスは、時にはその身を盾にしてゴクウブラックを守る。
「流石は私だ!」
「ぐぁっ!?」
時にはザマスの体ごと悟空に向かって攻撃してくるなど予想できるはずもない。
同じ精神の持ち主だから連携は抜群で、瞬く間に悟空が追い込まれていく。
「死ねぇッ!!」
幾度もの攻防の果てに、ボロボロのゴクウブラックの攻撃が悟空にクリーンヒットする。
既に倒壊していたビルの瓦礫の中に叩き落とされる悟空。
「ぁ……う、ぅ……」
同時に限界を超えていた体から界王拳が解けてしまい、気力で抑え込んでいたダメージも一気に襲い掛かって来る。
「――やる」
指一本動かすだけでも死にたいと思うほどの激痛が悟空に襲い掛かって来る。
「――――してやる」
なのに、悟空は痛みなど大した問題ではないとばかりに、目をたった一つの感情に染め上げて動こうとしている。
「――――――殺してやる」
体の上に乗っている瓦礫を除ける力すらないというのに、憎悪に染まった悟空の眼はゴクウブラックを睨み付けている。
「やはりお前は野蛮で残忍なサイヤ人だ、孫悟空」
中立であるべき神とは違う真逆の尖った精神性を発露する悟空の姿に、自分を振り返ることが出来ないゴクウブラックは空中から下りて来ながら嘲った。
「憎悪に突き動かされ、勝ち目のない相手に向かって来る。実に人間らしく知性の欠片もない醜い行動だ」
全宇宙の界王神を殺すことで破壊神も殺したゴクウブラックの肩にザマスが手を置いた。
「見るがいい。俺はまた強くなったぞ」
ザマスの復活パワーによって更なるパワーアップを果たしたゴクウブラックが纏う超サイヤ人ロゼのオーラが力強さを増す。
「素晴らしい。サイヤ人の肉体こそ、神の恵みの究極。打たれれば打たれるほど力が高まる。はっ!」
恍惚した笑みを浮かべながら気の剣を空いている手の平に刺す。
「怒りをパワーに変える。単純にして人間にしか思いつかないおぞましい方法故、つい見逃していた。そうか、怒りか」
バチバチと気の剣が刺さったゴクウブラックの手の平の近くで気がスパークする。
「宇宙を穢す人間への怒り、黙認する神々への怒り、人間風情に敗北した無力な自分への怒り!」
剣が柄から抜かれるように気の剣が引き抜かれていく。
「無知蒙昧なる人間よ、神の怒りを思い知れ!」
抜き放たれた気の剣は溢れ出る力の高まりによって鎌へと形を変えていた。
「怒りをパワーに変えたことで、俺はまた新たな力を手に入れた」
軽く気の鎌を振るうと、空間が切り裂かれた。
ポッカリと空いた空間の狭間は、この世ならざる異様な空間を覗かせていた。
「怒りが力の源と成り得るのならば、誰よりも強い怒りを抱えたこの俺こそが最強だ」
気の鎌を肩に引っ掛けたゴクウブラックは嫌らしい笑みを浮かべて動くことの出来ない悟空を見下す。
「孫悟空、お前の怒りは俺を強くしてくれた。感謝するぞ」
「ブラック……っ!!」
ゴクウブラックは憎しみで殺せると言わんばかりに殺気を向けて来る悟空に恍惚の笑みを浮かべる。その姿を横で見ざるをえないザマスは思うところがあるようだが何も言わなかった。
一度は失望しても更なる力を持って現れた悟空の感情の爆発に十分に満足したゴクウブラックは最後の楽しみを味わおうとする。
「神に抗う罪人よ。その魂の欠片も残さずに消え失せるがいい」
即ち、悟空を殺すこと。
確実に悟空を殺すべく向けた手の平に極大の気を溜めながら宣言する。
指一本動かすだけでも魂が砕けんばかりの痛みに悶絶してもおかしくない悟空は、向けられた気弾を睨み付けることしか出来ない。
「「――させん!」」
悟空をこの世から抹殺する気弾が放たれるその直前、声が二重に聞こえる者が割り込んだ。
「なっ!?」
悟空にだけ意識を向けていたゴクウブラックは咄嗟に反応したものの、攻撃を受けたことで気弾が彼方へと飛んで行って大爆発を起こす。
「ベジータ? トランクスでもない。フュージョンか」
揺れる片耳の耳飾りを付けた戦士が遮二無二に向かって来るのを、先程までならば苦戦しただろうがパワーアップしたことで楽々と捌くゴクウブラック。
「遅すぎたな」
戦士の正体を看破したゴクウブラックの攻撃がベジータとトランクスが合体したベジークスを弾き飛ばす。
「そう、遅すぎたのだ何もかもが。私も、お前も」
地上に降りたザマスは悟空の近くで、闘う二人を見上げながら一人ごちた。
「終わらせよう」
ベジークスはゴクウブラックと戦っているが、単純な実力差とフュージョンの制限時間を考えればそう遠くない内に決着はつく。
もう惑わされたくないザマスは終わらせるべく悟空に向かって手を振り上げた。
「止めるのだ、ザマス」
振り上げた手が聞こえた声にピタリと止まった。
ありえない人物の声が、ありえないタイミングで聞こえたことにザマスの時間が停止する。
「お、お前は…ゴワス!?」
後ろにザマスの知らない界王神らしき少年もいて、ザマスの明晰な頭脳が推測を立てる。
「成程、そちらの世界のゴワスか。時の指輪で来たのだな」
「そうだ、こちらの界王神様から全て聞いたぞ」
ザマスとゴワスの会話に頭が付いていかない悟空に少年の界王神――――悟空達の第七宇宙の界王神が傍へとやってくる。
「大丈夫ですか、悟空さん」
「界王神様、なんで……」
「北の界王を通して悟飯さんから話を聞いて、いてもたってもいられなくなりました」
僅かに動くことすら出来ない悟空を痛ましげに見つめた界王神の背後からもう一人の人物が現れる。
「――――」
「お、オメェはヤジロベー!?」
その人物の登場に悟空は目を剥いた。
「よう、孫」
髭がモシャモシャのヤジロベーはそう言って、ニヤリと笑ったのだった。
悟空 ゴッド後ブルー 190000
ブルー・界王拳 2倍 380000 3倍 570000 4倍 7600000(76万)
ブラック・ロゼ (50万)ゴジ―タにやられ回復後 60万 ブルー・界王拳回復後 (80万)
ベジークス・ゴッド 77万6千
悟空はブルー・界王拳で四倍で76万の戦闘力に至るものの、ブラックと不死身のザマスの連携に敗北。
ゴクウブラックは更にパワーアップ。
ベジータとトランクスがフュージョンしてベジークスとなって戦うが、ベジークス・ゴッドが77万6千に対してブラック・ロゼは80万になっているので勝てず。
ここでゴワスと界王神の登場。
現代で、悟飯からビッコロ、ビッコロから界王、界王から界王神に連絡が入り、
ビルスによってザマスを破壊された直後のゴワスの下を界王神が訪れて事情説明。共に悟空がいる未来の世界に向かう。
ビルスはザマス破壊後にトランクスを破壊する為に地球に向かっているところ。
ヤジロベーが齎すものとは一体?