未来からの手紙   作:スターゲイザー

12 / 39


バビディの手下になった三人にも差はある




第十二話 魔人、再誕

 

 

「あれだけ強い奴らを手下にしたんだから前みたいにチマチマやってられないよ」

 

 魔人ブウが封印された玉の前で3つの戦いを観戦していたバビディは物凄い速さでメーターが動くのを見て笑みを零す。

 

「ふふん、早い早い。やっぱり僕は天才だね」

 

 どれだけ魔人ブウ復活のエネルギーが溜まったかを確認して、そのあまりにも早いメーターに驚愕しながらも自分のやり方が間違っていなかったことに喜ぶ。

 

「バビディ!!」

 

 そこに現れたのはキビトを伴った界王神。

 

「へぇ、界王神。もう来たのかい」

「ここまでです。魔人ブウの復活などさせませんよ!」

 

 ゆっくりと振り返ると十分に戦闘態勢の界王神とキビトの姿にバビディは少し焦る。

 ブロリーやセル、フリーザは魔人ブウ復活のエネルギーを得る為に戦いに振り向けているので直衛の護衛は一人もいない。界王神との一対一ならば確実に勝てる自信があるが、流石にキビトも含めた二対一は厳しい。

 

「随分と来るのが早い。良くここが分かったね」

 

 なので、冷や汗を掻いていることがバレないように会話で時間稼ぎをする。

 

「魔人ブウ復活のエネルギーを得る為には悟空さん達が戦う場所から極端に離れた地に拠点は造れない。転移された三人の居場所の中心を探してみれば大当たり。策に溺れましたね」

「むぅ……」

 

 界王神の言う通り、エネルギーを得る為には遠すぎてはいけない。戦いの余波で封印されている玉を壊されても叶わない。三ヵ所の中心という分かり易い位置に拠点を置いたのは慢心と言う他ない。

 強い戦士を得たことで慢心し、油断していたことは否めないので何も言い返せない。

 

「え?」

 

 ふと、背後からビービービーと警報のような音が連続して響いてバビディは界王神から目を離して振り向いた。

 

「ま、まさか」

 

 地球に来てから殆どエネルギーを集められていない。その音が聞こえるのはあまりにも早過ぎる。

 敵から目を離すことがどんなに危険かも分かっていながら、メーターの方へとフラフラと近づいていく。

 

「まさか、こんなに早くは」

 

 無防備に背中を見せるというあまりにも大きな隙が逆に罠だと想像させて界王神の行動を遅らせた。その間にバビディはメーターを見る。

 

「あ!?」

「ふ、ふ、ふふ、フハハハハハハハ、フルパワーになったぁ――っ!!」

 

 界王神も遅まきながらその音が何を意味するのかと理解した時、バビディはメーターがMaxになっているのを確認して哄笑を上げる。

 

「遂に魔人ブウの復活だ!! ハハハハハハハ、やっぱり僕は天才だ!!」

 

 両腕を上げて喝采するバビディの背中を見る界王神の全身が震える。

 

「な、何故こうも一気にダメージパワーが……!? あまりにも早すぎる!?」

「アイツらの力を知らないなんて馬鹿だね。僕ら以上の超パワーの僕の手下と孫悟空達の力がぶつかり合えば、そのダメージも凄まじい」

 

 界王神が思わず固まっている姿を見て、にんやりと嗤ったバビディが解説する。

 

「こうまで早いとは予想外だったけど、パパとは頭の出来が違うんだよ!」

 

 自分が作った手下と悟空達のぶつかり合いがエネルギーを作り出したと自画自賛するバビディの背後で、玉を固定していた台座から多量の蒸気が噴き出す。

 

「も、もう駄目です界王神様! 逃げましょう!」

 

 ブウの恐ろしさは界王神が身を持って知っている。キビトの言う通り逃げる方に気持ちが傾く。

 

「どうせ復活してしまうのなら」

 

 本来ならば戦う由縁のない悟空達をバビディの魔の手に巻き込んでしまった悔恨が界王神に思い切った行動を取らせる。

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 最大限に気を高めて両腕に集める。次など考えない、この一撃に全てを賭けて。

 

「いけぇええええええええええええっ――――!!」

 

 今自分が放てる最大限の一撃を以て、せめてもの一矢報いるべく界王神の気功波が放たれた。

 

「げげっ!?」

 

 界王神の無様さを嘲笑っていたところに破れかぶれの行動を予想していなかったバビディは慌てて避ける。

 遮る物の無い気功波は玉を直撃し、固定していた台からも弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた玉が地面に落ちてゴロゴロと転がり、バカっと真っ二つに割れた。

 

「出るぞ、魔人ブウ!」

 

 少しでもダメージを与えていればと界王神とキビトが身構えるが、割れた玉の中には何もない。

 

「か、空っぽ?」

「違う! そ、そんな、なんで、なんでなの!?」

「残念でしたね、バビディ。どうやら魔人ブウは私の気功波で消滅してしまっ」

 

 キビトが呆然と呟き、バビディが困惑している中で奇蹟に喜んでいた界王神は喋っている途中で上空に蒸気の煙が集まっているのを見てしまった。

 

「ブウ――ッ!!」

 

 煙は人型を為して、魔人ブウは封印からその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ」

 

 ダメージの大きさに孫悟飯は膝をついた。

 直ぐに立ち上がろうとするも息も切れてしまって力が入らない。膝に手を付いて戦っている敵を見上げる形になる。

 

「ふふ、どうやらあの時とは逆の立場になってしまったな」

 

 悟飯と違って大きな疲労や重いダメージを負っていないセルは、隙だらけのように見えて油断一つない立ち姿で見下ろしている。

 

「死んで蘇ったばかりの私にとってはつい先程のことだが、貴様にとっては七年も前との戦いが思い起こされるようだ」

 

 超パワーを警戒して一定の距離より近づかないその姿に悟飯が付け入れる隙は欠片も見いだせない。

 

「あの時は届き得なかったパワーを超えた。バビディ様のお蔭だ」

 

 油断はしていないが自分でも知らなかった潜在能力に恍惚とした笑みを浮かべ、拳を握ったり開いたりする。

 

「バビディなんかの手下になって力を得て満足か?」

「ああ、満足だとも」

 

 回復する時間稼ぎの挑発に敢えて乗ったセルが腕を広げる。

 

「貴様らには決して分からぬだろうが、バビディ様の手下に成れたことを私はとても喜んでいるのだよ」

 

 嘗てのセルならば決して言うはずもない言葉に悟飯は洗脳の力の恐ろしさを痛感する。

 

「ぬ!?」

「え!?」

 

 その時、魔人ブウの気を感じ取った二人が同時に動きを硬直させる。

 

「これが魔人ブウの気か。どんなに凄い奴かと思えば、こんな程度の戦闘力数か」

 

 魔人ブウの気を感じ取ったセルが自分よりも下だと断定して嘲笑う。

 

「やはりバビディ様の手下は私だけで十分だということだ。孫悟飯、貴様にもその場面を見せてやろう!」

「っ?!」

 

 瞬間、セルは超スピードで悟飯に近寄ると腹に気功波を放って大きく弾き飛ばした。

 吹き飛ばされた悟飯はその進行方向に魔人ブウの気があることを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔人ブウがその姿を現した時、ベジータとフリーザは拳と脚をぶつけ合っていた。

 

「どうやら、ここまでのようですね」

「ぐっ!?」

 

 ブウから感じられる不思議な気に体が硬直したベジータを尻尾で殴り飛ばしたフリーザが大きく一歩後退する。

 

「ちっ、どういうつもりだ?」

 

 頬を強かに打ち据えられ、少し距離が空いたベジータが忌々し気に血を吐く。

 

「ベジータさん、あなたとの戦いはもう終わりだということです」

 

 ベジータを殴った尻尾で地面を一度叩いたフリーザの関心は既に眼前にはない。

 

「勝負の途中で逃げる気か」

「逃げる?」

 

 挑発してくるベジータは悠然と唇を吊り上げたフリーザが決して笑っているわけではないと気づく。

 

「今回、私がバビディとかいう痴れ者に手を貸したのは今のあなた達の強さを知る為です。最初から洗脳などされていませんから、命を賭けてまで尽くす義理はありません」

 

 フリーザがゆっくりと額を撫でるとMの字が消えてなくなる。

 

「なんと言葉を変えようと逃げることに変わらんだろう」

 

 自分よりも強い者がいることを認めたフリーザの内心が荒れ狂っていることに遅まきながら察したベジータがゴクリと唾を呑む。だからといって臆してしまってはベジータらしくない。挑発を繰り返す。

 

「ええ、逃げますよ。当然でしょう。私と同格なのは精々がベジータさんぐらい。あのセルとかいう奴や特にブロリーというサイヤ人は私の遥か上にいます。その上、魔人ブウともなれば碌な結果にはならない。折角生き返ったのですから命は大事にしないといけませんからね」

 

 プライドの塊であるフリーザが自分が弱いことを認め、逃げることしか出来ないと受け入れることがどれだけ苦痛であるか。

 

「ただし、この一度だけです。私は孫悟空よりも、あのブロリーよりも、そして魔人ブウよりも遥かに強くなって戻ってきます」

 

 目だけを炯々をギラつかせて全てを睥睨するその姿は悪の帝王の名を欲しいままにしていた嘗ての姿そのまま。

 

「あんな奴らに負けないで下さいね」

 

 不吉な宣言だけを残してどこかへ飛び立っていくフリーザ。

 

「くそったれが」

 

 今、ここでフリーザを倒しておかなければ嘗てのように手の負えない敵となって戻ってくると分かっていても、底知れない魔人ブウの気を放っておくことは出来ずベジータは逆方向へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大地が鳴動する。空気が震える。

 

「がはっ!?」

 

 何度目かも分からなくなるほど打ち据えられた悟空が地に体で轍を作り上げる。

 

「はぁはぁ、仙豆……」

 

 死神が迫るが如くゆっくりと近づいて来るブロリー。回復するまで待つかのようなその姿を悔し気に見ながら、三粒目の仙豆を口に入れて呑み込む。

 

「思えば」

 

 回復した悟空が飛び上がって放った気弾を防御することなくその身体で受けてもダメージを全く受けていないブロリーが呟く。

 

「貴様と闘うのもこれで三度目か、カカロット。いい加減に見飽きてきたぞ」

「ブロリー!」

 

 気弾では効果が薄い。肉弾戦で決着を着けるべく、超スピードで近づいて背後から拳を放つ。

 

「軽い」

 

 見ることなく軽く掲げられた掌であっさりと受け止められると、悟空の全力の一撃をそう評するブロリー。

 

「攻撃とは、こうやるものだ」

 

 振り返って軽く放たれた拳が悟空の目にも映らぬ速さで腹を抉る。

 更に固めた両腕を浮き上がった背中に打ち込まれて地面に叩き落とされる。

 

「がっ!?」

 

 地面にバウンドした体を思いっ切り蹴り飛ばされた。

 近くにあった岩山に背中からぶつかってあまりの威力に体が埋もれる。

 

「げほっ、がはっ」

 

 咳き込みながら体を起こすも、口からは血が溢れている。

 途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止めている。その最中、ブロリーは大気の色が変化するほどの気を掌に球状に凝縮させ、悟空に向かって投げつける。

 小さい気弾に気付いて避けようとするが遅い。

 

「があっ!?」

 

 極大の悪寒に従って身を捻るも背にしていた岩山に着弾して大爆発が発生し、悟空はその只中に晒される。

 小さくとも破壊力は絶大。

 全身が焼け爛れような痛みの中で地を転がる悟空は、やはり恐怖を染み込ませるように歩いて向かって来るブロリーを見る。

 

「…………オラだって超サイヤ人3なのに」

 

 超サイヤ人2の時点で超サイヤ人3が互角だったのだから、同じ位階になれば不利になるのは目に見えていたが、これほどの差があるとは。

 たった数撃を受けただけなのに、仙豆を食べて回復したばかりの体がもう悲鳴を上げている。

 圧倒的な力の差に流石の悟空ですらも挫けそうになっていた。

 

「む? ほぅ……」

 

 ブロリーが彼方を見て、悟空もその理由を察する。

 

「魔人、ブウ」

 

 突如として異様な気の持ち主として考えられるのはたった一つ。ブロリーの主であったバビディの目的である魔人ブウが復活したとしか考えられない。

 直後、ブウの近くで一つの気が消失し、もう一つがこちらへと向かって来る。

 

「界王神様!」

 

 飛んでくるというより何かに弾き飛ばされたような様子でやってきた界王神は上手く着地は出来ず、何度も転がって止まった。

 

「あ、あぅぅ……」

 

 苦痛で顔面を歪めた界王神が血塗れで起き上がろうとするがダメージが大きすぎて果たせずに崩れ落ちる。

 

「か、界王神様」

 

 幸いにも彼我の距離はそこまで遠くはなかったので悟空は足を引きずるようにして界王神の下にまで移動する。

 

「悟空さん、に、逃げて」

「おや、まだ生きてたのかい。ブロリーにやられちゃってると思ったのに」

 

 そこへピンク色の巨体を従えたバビディがフワフワと宙より舞い降り、気味の悪い笑みを向けて来る。

 

「孫悟空、お前にも見せてやるよ。こいつが魔人ブウだよ」

「ブウ~♪」

 

 傷だらけの悟空の姿に更に機嫌を良くしたバビディに紹介されたブウが奇妙な踊りを舞っていた。

 馬鹿の振りをしているが恐るべき戦闘力をブウが有していることは、先程一瞬上がった気が証明している。悟空は仙豆の袋を触って残りが二粒であることを確認して計算する。

 その直後、界王神と同じように空を飛んできた悟飯が二本の足で地面に轍を作りながら着地する。

 

「悟飯!」

「と、父さん……」

 

 今の悟空とどっこいどっこいの様子の悟飯が振り向いたのと同時に、大した怪我も負っていないセルも到着する。

 

「バビディ様」

「おお、セル。お前も良くやってくれたね。お蔭でブウが復活できたよ」

 

 悟飯をこの地に飛ばした張本人であるセルは主の前で直立不動になって頭を下げ、忠誠を向けられたバビディもご機嫌で応える。

 

「それが魔人ブウですか……」

 

 バビディの後ろで「ホッホッホッホホ」と言いながら踊っているブウを見て見下した視線を向け、何の前兆もなく超スピードで近づいてその腹を右腕で貫く。

 

「な!?」

「やはりこの程度か」

 

 ブウの体の力が抜けて動かなくなったのを見たセルはバビディが何を驚いているのかすら分からない。

 

「バビディ様、あなたの僕に相応しいのはこの人造人間セルです。このような出来損ないの魔人では」

「おい、ちょっと痛いぞ」

 

 ない、と言おうとしたところでブウの顔が上がる。

 セルが腕を抜こうとするが接着されたかのように動かない。

 

「お前なんか嫌いだ!」

 

 セルの右腕の下から突き刺さるボディブロー。

 比喩ではなく、抉られた右脇腹部分から臓物と血を撒き散らし、殴られたあまりの衝撃にも右腕は抜けずに千切れる。

 

「ブウ!」

 

 それを為したブウはヨロヨロと後ずさって千切れた右腕と右脇腹を再生しようとしていたセルに向かって気功波を放ち、大爆発を見届けながら軽い様子で自らの穴の開いた腹部を復元する。

 

「あ、上がった。魔人ブウの気がば、爆発的に上がった……!?」

 

 セルがいた場所を粉微塵に吹き飛ばすような気功波の衝撃を腕で庇いながら、攻撃の瞬間に爆発したかのように上昇した気は確かに界王神が恐れるほどであると悟飯も悟る。少なくとも今の悟飯では叶う相手ではない。

 そう、今の悟飯では。

 

「ブウ、そいつはいいから先に界王神達を殺しちゃってよ」

 

 死刑宣告に等しいバビディからブウへの命令を聞いた中で悟飯が動けたのは、まだ比較的にダメージが少なかったから。

 

「くっ」

 

 界王神と悟空の下に飛んで二人の腕を掴んで今出せる全力でその場から離脱しようと考えた悟飯の前にブウが先回りしていた。

 

「消えちゃえ」

 

 ブウから極大の気功波が放たれる。

 人間の体など容易く覆い隠すほどの気功波が悟飯を呑み込んで遥か遠くに向かって飛んで行く。

 

「波――っ!!」

 

 なけなしの力を振り絞った悟空がなんとか気功波を放って撃ち落とすが、爆発に紛れて落ちた悟飯の姿は見えない。

 

「界王神様、これを食ってくれ」

 

 セルの気もまだ完全には消えていない。ブロリーは腕を組んで不気味な沈黙を守り、ブウの力は今の傷だらけの悟空では叶うものではないだろう。

 悟空は覚悟を決めた。

 残っている仙豆を界王神の口に持って行き、食べさせて回復させた後は起き上がった彼に仙豆の袋を渡す。

 

「悟飯はまだ生きてる。最後の一粒を食べさせてやってくれ」

「悟空さん、あなたは」

「頼む。後は任せた」

 

 悟空の意を汲み取った界王神が悟飯の下へ向かって飛んで行く。

 背中を見せて飛んで行く界王神を見据えたブウがバビディを見る。

 

「あいつも殺すのか?」

「界王神は後でもいいよ。まずは僕を殺そうとしてくれた孫悟空を先に始末することにしよう。さあ、やっちゃって、ブウ」

 

 ブウが蘇った以上、逃げた界王神はこの場だけは見逃して構わないと判断したバビディ。

 それよりも一度は殺されそうになったのと、十分な危険要素である悟空を先に始末するようにブウに命令する。だが、その命令を受け入れられない者がいた。

 

「待て、カカロットを殺すのは俺だ」

 

 ブロリーが悟空を殺すのは自分だと立ち塞がった。

 

「ブロリー、邪魔をするんじゃないよ」

「言ったはずだ。カカロットを殺すのは俺だと」

「う~ん、僕の命令を聞かないなんて。洗脳が甘かったかな」

 

 頑なにどこうとしないブロリーに眉を顰めたバビディが手を向けて魔術を使おうとして、ブロリーの額を見て目を見開いた。

 

「お、お前まさか僕の魔術を」

「食った。礼を言っておこう、バビディ。お前のお蔭で俺は更なる高みへと至った」

 

 超サイヤ人3である長髪を揺らしながらニヤリと笑ったブロリーはバビディに向けて口を開く。

 

「一度は命を救ってくれたことと、俺に更なる力をくれたこととを考えて去るというのならば命だけは見逃してやろう。しかし、邪魔をするならばお前達も死ね」

 

 抱いた覚悟を前にして妙な展開に目を白黒とする悟空の視線の先で、ブウがピューと頭の穴達から大量の蒸気を噴き出す。

 

「お前、生意気」

「そうだね。調教はやり直さないといけないようだ。やっちゃって、ブウ」

「ブウ!」

 

 自分を毛ほども気にしていないブロリーに怒りを見せたブウをけしかけたバビディは直ぐに後悔することになる。

 ブウはとんでもない速度でブロリーに接近すると、セルの右脇腹を容易く抉った拳を叩きつけた。

 

「それで本気か?」

「ブウ!?」

 

 顔面に拳を受けたブロリーは失望を全身で表しながら、攻撃してきた腕を掴んで逆に殴り飛ばす。その際、セルと同じように右腕が千切れる。

 

「ふん、再生か。ならば、消滅させるだけのこと」

 

 ブウは瞬く間に右腕を生やすが、その口から垂れた血は消せない。

 再生能力など極大の力の前には無意味だと知らしめるように、溢れる力を身に纏ったブロリーの猛攻が始まった。

 

「ぶ、ブウ……!?」

 

 再生を上回るほどのパワー、圧倒的なパワー、超人的なパワーがブウを追い詰める。

 殴られ、蹴られ、投げ飛ばされ、気功波が体を吹き飛ばす。

 何度体を吹き飛ばされても再生すればいいが、ブロリーの攻撃はあまりにも重すぎてブウの体に少しずつダメージが蓄積していく。

 

「どうしたんだよ、ブウ!」

「困った。ちょっと勝てない……」

 

 バビディが焦っているように、単純にして明快な理由としてブロリーが強すぎてブウは自らに勝機が薄いことを悟る。 

 攻撃を仕掛けても簡単に避けるか防御されて、ダメージを受けるのはこちらばかり。しかもまだまだブロリーは余力を残しており、持久戦になっても勝ち目が見えない。

 

「ヤバいかも」

 

 今も頭部を気功波で吹っ飛ばされ、直ぐに再生しても何も出来ずにダメージが蓄積していく現状に流石にブウも焦る。

 

「あ」

 

 その時、近くで再生中のセルを見つけたブウは少しでも足しになればと、悪魔の考えを思いつく。

 

「き、貴様……」

「いただき」

 

 ようやく頭部が再生していたところのセルが自分に覆い被さるブウに気付いても何も出来ない。

 セルは嘗て17号や18号をそうしたように自らも他者に吸収される末路に至る。

 

「ォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――ッ!!!!」

 

 セルを吸収したブウに変化が起こる。

 頭の複数の穴から蒸気を噴き出し、その身体を覆い隠す。

 

「――――――やれやれ、乱暴な吸収の仕方だ」

 

 やがて蒸気が晴れた時、そこに嘗てのふとっちょのブウの姿はない。

 長身かつ筋肉質な体型で先程の体形よりもよほど戦闘向きな体格になり、衣装部分も上半身は剥き出しになったブウがそこにいた。

 

「さて、第二ラウンドといこうか」

 

 蘇った魔人が人造人間セルを吸収して新たな姿として再誕した。その姿を見てもブロリーの余裕の笑みは揺るがない。

 

 

 




 セルは完全に洗脳され、フリーザはそもそも洗脳されていない。ブロリーは洗脳を取り込んだ。
 セルとフリーザの差は、悪としてのカリスマと経験である。ブロリーには破壊衝動を甘く見過ぎた。

 フリーザが従ったのは自分よりも強いセル・ブロリーがいたのと、悟空達の今の力を知る為。
 誇り高いフリーザが一度でも他者の前に膝を屈したのだから、次またやってくるときは更なる力を得ているだろう―――――復活のF、ゴールデンフリーザのフラグが立ちました。
 超サイヤ人ブルー、もしくは超サイヤ人4にならなければならなくなりました。

 安定と安心のブロリーの反逆。バビディの失敗は悟空を殺そうとした事だった? 流石は悟空専門のストーカー。やることが違う。

 そしてブロリーに勝てないと悟ったブウがセルを吸収。魔人ブウ:セル吸収体となりました。人格面ではセルの影響が多いようです。

 後、現段階での強さランクは以下のようになっております。

SS :超3ブロリ―>>アルティメット悟飯≧ブウ:セル吸収
S  :超3ゴテンクス>超3悟空=超2ブロリー≧ブウ
AAA:復活セル>超2悟空=超2ベジータ=超2悟飯=復活フリーザ
AA :ピッコロ
A  :トランクス≧悟天

誰かポタラを持って来るか、老界王神連れて来て悟飯をアルティメット化してくれ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。