ズオァオオオッ……!!
「やったか!?」
バーンが喝采を上げる。
ついにズワウ・スの三基あるコンバーターの内の一基が破壊されたのだ。
「ドラゴン共の勢いが弱まってきている……」
ガラリアが周囲の様子を見渡して、呟いた。
「だからとは言っても……」
トカマクがズワウ・スの下方を見ながら呻く。
「焔の翼が再生を始めているな……」
トカマクのヴィーヴィルがズワウ・スの脚の近くを見て廻る。
「お館様」
バーン機がウィル・ウィプスへと通信をとった。
「ノヴァ砲でコンバーターを吹き飛ばす」
バーンからの報告を受け取ったドレイクはラウのゴラオンへと再度通信を入れる。
「ノヴァ砲で片方ずつか?」
「無理であるか?」
「ゴラオンからは射線が左側のコンバーターしか狙えない」
「では、ノヴァ砲は左側のコンバーターに集中をさせると……」
「それが確実だろうな……」
ドレイクは通信を切り、艦のクルーへと訪ねる。
「ノヴァ砲の砲身は持つか?」
「最大出力では、あと一回で砲身が溶解すると思われます」
「ラストであるか……」
ドレイクはノヴァ砲の充填を開始させた。
「シャオァア!!」
ジャコバ・アオンが天から復帰した。
彼女の片手には巨大な筒のような物が握られている。
いや、握られているという表現は正確ではない。
手に張り付いている。
それほど巨大な物を彼女は持っている。
「続けい!!」
配下の竜に乗ったフェラリオ達も様々な形状の物体を手に張り付かせている。
天のフェラリオ達はワーラー・カーレンの裂け目から地上へと急降下していった。
「何だ!?」
急降下していくジャコバ・アオンの部隊が高々度での戦いを制し、生き残ったオーラファイター達の近くを通り過ぎていく。
「あれは!?」
トッドのガラバに牽引されているアレン機から驚愕の声が上がる。
「核ミサイル!?」
「なんだとぉ!?」
アレンの声にトッドが悲鳴のような声を上げた。
「核ミサイルとは!?」
付近にいたレン機から疑問が投げ付けられる。
「人類を滅ぼす兵器だよ!!」
「悪を成す兵器か!?」
「そうだろうよ!!」
上空のオーラファイター隊は迎撃しようとしたが、あまりのフェラリオ達の速度についていけない。
「本当にあたし達を吹き飛ばすつもりかよ!?」
破損してふらふらと飛んでいるトモヨのマハカーラから怒声が響いた。
「試し撃ちである!!」
地上付近に降り立った天のフェラリオ達。
リーダーであるジャコバ・アオンから指示を受けた二人のフェラリオから核兵器が放たれた。
「あれは!?」
ショウが叫び声をあげる。
「核兵器かよ!?」
嫌悪感を滲ませながら、フェラリオの核武装隊を睨み付けるショウ。
「悪を成す兵器……」
アヴェマリアの甲板でエレとショットが呻く。
マリアはどうにか迎撃態勢を考えようとする。
「疑似オーラ発生機!! 最大出力!!」
核兵器に狙われていると知ったビショットはゲア・ガリングの防衛機能を全開にさせた。
「脱出挺は!?」
「かえって危険である!!」
部下からの意見を退けるビショット。
ゲアガリングが低い地響きのような唸りを上げ始め、オーラ・ドレットノートの上方に展開していたリーンが艦を覆う。
ヒュオオオォ……!!
爆弾に似た二つの核兵器がゲア・ガリングに接近する。
ズォオアアアアァァ……!!
凄まじい閃光と共に、ゲア・ガリングのブリッジと左舷に爆発が起こった。
「ビショット……!!」
ドレイクは轟沈していくゲア・ガリングを見やりながら、その破壊力に身体を震わせた。
「くっ!!」
ドレイクは残りの核武装隊を睨み付ける。
ジャコバ・アオンを中心としたフェラリオ達はズワウ・スの周囲を旋回している。
「ノヴァ砲を防ぐ盾のつもりか……!!」
ドレイクは呻きながら、オーラバトラー隊へコンバーターの破壊作業を続けるように指示を出した。
「やむを得ん!!」
ゼラーナ隊の艦「シルキー・マウ」の艦長であるニー・ギブンは艦をジャコバ・アオンに特攻させると宣言した。
「しかし、ではある……」
ニーはクルー達に作戦の詳細を説明し始めた。
「発射準備完了!!」
一際大きな核兵器を持つジャコバ・アオンからミサイルが放たれようとする。
「忌々しい地上の女王を務めるあのフェラリオ!!」
どうやら、ジャコバ・アオンはグラン・ガランをターゲットと定めたようだ。
「陽動として放てぃ!!」
揮下のフェラリオから核が発射された。
「艦を守れ!!」
リの騎団がヨルムーンガントの前に展開する。
リのオーラマシン各機から光の奔流が迸る。
ギュオオォ……!!
凄まじい速度で核ミサイルがリの部隊へ接近する。
どうやら地上からかき集めたフェラリオの核はその特性や威力が違うようであった。
「シュンジ王!!」
オーラバトラー隊隊長のナラシが祈るように叫ぶ。
「なんだ……?」
騎士ラージャがズワウ・スから焔の羽が飛んで来たのをその目で見た。
羽は密集してリーンを展開させているリの騎団の周囲を守るように旋回している。
「王……」
騎士バラフが眼鏡を拭きながら、その羽を見つめていた。
ズォオァァァ……!!
リの騎団に阻まれるような形で核が爆発した。
リーンと焔の羽を撒き散らしながら、リの騎団は全滅した。
シィンン……!!
二発目の核が生存しているヨルムーンガントへ接近する。
相当旧式なのか、あるいは劣化しているのか、そのミサイルは先のミサイルと比べて、極めて低速であった。
「タバコは……?」
「いえ……」
「酒とガム、どっちが良い?」
「お酒を……」
ヨルムーンガントのザン艦長達がクルーへと晩餐を振る舞っている。
誰が作ったのか解らないが、ブリッジの中央には軽食が置かれていた。
「長かったんだか短い人生だったのか……」
リの内政大臣であるオウエンが酒を口につけながら、隣の密偵長のサーラに呟く。
「あたしは良い人生だったねぇ……」
「そうかもな……」
ザンが二人の隣へ寄り、タバコをふかし始めた。
「俺は陰で愛人を数多く作ってきた」
「私は王に黙って着服に手を染めましたな……」
「あたしは賄賂で宝石を買い漁ったなあ……」
三人は顔を見合わせて笑う。
「シュンジ王の事を笑えませんな……」
「全く……!!」
接近する核ミサイルを眺めながら、ザンはタバコを吸い続ける。
「達者でな、レン……」
ザンは唯一の心残りである息子の名前を呟いた。
「いねやぁ!!」
ジャコバ・アオンはミサイルをグラン・ガランへと発射させた。
「間に合わなかったか!!」
シルキー・マウをジャコバ・アオンへ突撃させているニーが無念の声を上げた。
「あのマシン!?」
ジャコバ・アオンが自分に突っ込んでくるオーラシップの姿を見て驚愕する。
「かわしても何処までも追ってくるか……!!」
ジャコバ・アオンは目を見開き、両手を合わせ強く念を唱え始める。
「ウロボロス!! フルパワーである!!」
シーラがグラン・ガランの駆動機関の出力を最大まで上げるように命じた。
「シーラ様だけでも……」
「愚か者め!!」
退艦を進めたマフメットをシーラは怒鳴り返した。
「女王の務めであるよ……」
すでに光の羽を失ったナの女王は寂しげに呟く。
グラン・ガランから光の奔流が天空城を包み始めた。
「ズワウ・スに取りついているオーラマシン!!」
ドレイクが広域無線で怒鳴る。
「ノヴァ砲を放つ!! 退避せよ!!」
ウィル・ウィプスとゴラオンのノヴァ砲が輝き始める。
「これで決まらなければ……!!」
核の攻撃を受け、ボロボロになりながら地面へ墜落しはじめているグラン・ガランとヨルムーンガントの姿を見ながら、フォイゾン王は呻き声を上げる。
「フェラリオ共めが!!」
ノヴァ砲の気配を察知した核武装隊がウィル・ウィプスとゴラオンへ核の照準を向け始める。
「放てぃ!!」
二艦のノヴァ砲と核が発射されたのは同時であった。
「リーンでどうにか木っ端微塵になるのは防げるか……!!」
二艦の上方へ向けて迸る光の奔流を身やりながら、ドレイクは艦の出力を上げるように命じた。
ガァアアアァァン……!!
二条の光の閃光がズワウ・スの左側のコンバーターを消滅させた。
それと同時にノヴァ砲が搭載された二艦が核の直撃を受けて沈み始めた。
「そのような機械で!!」
ジャコバ・アオンは迫り来るシルキー・マウを正面から防ごうと、眼前にバリアーを張る。シルキー・マウがそのバリアーに衝突する。
バリィ!! バッバッ……!!
「くそぉ!!」
顔を歪ませながら、バリアーで艦を消滅させていくジャコバ・アオン。
「ウォッグ!!」
ジャコバ・アオンの乗竜が警告の声を上げた。
「何ぃ!?」
ジャコバ・アオンの背後に回り込んだシルキー・マウのオーラバトラー隊が彼女へ照準を向けていた。
「放て!!」
オーラバトラー隊の隊長であるキーンとリムルの声が響く。
「しもたわ」
ジャコバ・アオンは苦笑した。
オーラバトラー隊から放たれた火線が一つの巨大な塊となり、ジャコバ・アオンを襲う。
集中火線がジャコバ・アオンを消滅させた。
「コンバーターはあと一基……」
ショウはズワウ・スの背面に回り込みながら、様子を確かめる。
「だけど、ショウ……」
「ああ……」
もはや、まともに動いているオーラマシンの姿はない。先ほど、轟沈したゲア・ガリングの近くへ不時着したトッド機の姿を見ながら、ショウは考える。
「どうにか、バーン達は頑張ってくれているが……」
コンバーターに取りついているバーンやマーベル達には、もはやリーンの翼の姿はない。
バーンと同型機のリの国のズワァースが地面に墜落していった。
「ん……!!」
「どうした、ショウ?」
「一人、助けてくれそうな奴がいたな」
「誰だよ、それは?」
ショウはチャムの質問に答えずに、ズワウ・スのコンバーターの付け根付近へとヴェルバインを移動させる。
少なくなったとは言え、未だに竜が天からこぼれ落ちてきていた。